2011.2.22琉球新報
気分障害通院:公費負担は過去最多の7541人

 県内でうつ病などを含む気分障害で通院治療している人のうち、公費負担となる自立支援医療費(精神通院医療費)の支給を受けている人は、2009年度で7541人に上り、過去最多を更新した。
 
 県内で「心の病」が増えている目安の数字とされており、1999年度には942人だった公費負担患者が、10年で約8倍に増加。専門家は失業やリストラなどといった経済的問題をはじめとするさまざまなストレスの要因が背景にあると指摘している。
 
 県立総合精神保健福祉センターによると、気分障害による公費負担患者は支給認定全体(2万7336人)の27・6%を占めている。最も多い統合失調症(1万1078人)の40・5%に次いで2番目に多い。男女別では、男性が2691人、女性が4850人で、女性の割合が高い。
 
 同センターの仲本晴男所長は「うつ病は世界的にも増加傾向にある。失業やリストラなど社会的要因を背景に沖縄も例外ではない」と指摘する。
 
 自立支援医療費は、継続通院が必要な患者を対象とし、審査を経て認定される。県内では復帰特別措置法により自己負担はない。患者本人や家族が市町村に申請するが、人に知られるのを懸念して申請しない人もおり、潜在的な患者数はさらに膨らむと見込まれる。
 
 県障害保健福祉課によると、精神科医療施設に通院する患者数は08年6月現在で3万6857人。医療費公費負担の割合から、約1万人が気分障害で通院していると推計される。
 
 クリニックアクア(那覇市、金城みづえ院長)は、20〜40代の働き盛りにうつ病の外来患者が多いことを挙げ「自立支援の申請数の増加はうつ病患者の増加に言い換えられる」と指摘。かいクリニック(那覇市)の稲田隆司院長は「ストレス社会で患者が増えている。真面目で頑張りすぎて、うつになる従来型に加え、社会への適応が困難な若者の現代うつも多い」と話した。
 
 とくだ心療内科(うるま市)の徳田毅院長は「経済的に治療が困難な人以外にも、申請が自分はうつ病だと認める一種の通過儀礼にもなっている」と述べた。(慶田城七瀬)
 
 <用語>気分障害
 
 気分や感情が沈んだり、高揚したりする病気の総称。国際疾病分類(第10版)によると、うつ病や躁(そう)うつ病、気分変調症などを含む。大半がうつ病といわれ、睡眠障害や憂うつな気分、自殺願望、日常・社会機能の著しい低下が2週間以上持続する状態をいう。
 
(琉球新報)
 
2011年2月22日

2011.2.20毎日新聞
ひきこもり:精神科医の7割「精神疾患と診断」8カ国調査
 日本など8カ国の精神科医239人にひきこもりについて聞いた国際共同調査で、7割が「精神疾患と診断できる」と回答したことが19日、和歌山市であった国際シンポジウム「ひきこもりとネット依存」で明らかになった。日本は外来治療を勧める医師が大半だが、共同調査した医師の1割は「積極的な治療はしない」と回答。韓国は半数が「入院を勧める」とするなど、国によって判断が分かれている現状も浮かび上がった。
 
 九州大の加藤隆弘特任助教(精神医学)らが調査したもので、「自宅にひきこもってインターネットを利用し、家庭内トラブルも抱え医療機関に来た」など、日本の少年・青年の典型的な2症例を示し、精神科医の対応を聞いた。
 
 その結果、どの国もカウンセリングなどでの精神療法を重視する傾向があることや、農村部より都会でひきこもりが目立つ実態などが浮かんだ。ネットの利用が進む韓国では「ネット依存症」と診断する精神科医が多いことも分かった。
 
 加藤助教は「海外でも聞き取り調査をするなど、ひきこもり状態を起こす要因を調べることが大切」としている。【久木田照子】
 
毎日新聞 2011年2月20日 13時09分

精神障害者の受け皿作り進む 医療・福祉両面で
2011年2月17日朝日新聞
 
 
県立鶴岡病院で月1回行われる「山形版アクト」チームのケア会議。医師、看護師、精神保健福祉士、福祉団体職員らが利用者の支援策を話し合う=鶴岡市高坂
 
 
県が鶴岡市に設けた「リカバリーハウス」。延べ10日間ほど利用した市内の女性(26)は「一人暮らしをする自信がついた」
 
 これまで長期入院を強いられがちだった精神障害者が地域社会で生活できるように支援する動きが、県内でも庄内地方を中心に広がっている。県が地域と連携して主導。退院後、社会生活になじめずに症状が悪化するケースも多いだけに、孤立しない環境づくりときめ細かな支援に力を入れている。
 
 鶴岡市の県立鶴岡病院の1室で、医師や地元のNPO法人「やすらぎの会」のスタッフら8人が机を囲んだ。「この間の大雪の時、何本も電話が来たよ。いつもと違う環境が不安なんだなぁ」。訪問看護を受け持つ看護師が利用者の様子を報告した。
 
 鶴岡病院を拠点に、県が昨年11月からモデル事業として始めた包括型地域生活支援プログラム(山形版アクト)の月1回のケア会議の風景だ。
 
 アクトは病状が不安定な在宅の精神障害者に、医師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士など各種の専門職がチームを組んで支援するプログラム。利用者は訪問看護などの「医療」や買い物の同行や住宅確保などの「生活支援」のサービスが受けられる。1970年代に米国で始まり、欧米を中心に普及。日本では2003年、千葉県市川市で始まり、現在は10団体以上が取り組んでいる。
 
 県は09年度から、2年以上の長期入院者の退院時に3万円を支給するなどして地域生活を促しており、山形版アクトはその先の支援となる。現在の利用者は、鶴岡市内で統合失調症などを患う20〜60代の男性3人。11年度末まで試験的に行ったうえ、本格的な事業化を検討する。
 
 他県などの一般的なアクトが病院単独でチームを編成するのに対し、山形版アクトの特長は病院と福祉団体が協力する点にある。「医療」を病院、「生活支援」を福祉団体が受け持つことで、人材不足やコスト面の課題の解消を図るだけでなく、きめ細かな対応にもつながるという。「医療と生活の両面の支援があって、利用者が地域で生活できるようになる」とやすらぎの会の高橋一夫理事長は話す。
 
 県は昨年6月から、精神障害者に鶴岡市内のアパートの部屋を貸す「リカバリーハウス」の運営も始めた。家族内でトラブルがあった際などの一時的避難所や、一人暮らしを体験する場として使える。利用者らが自由に会話を楽しむ場となる「クラブハウス」も昨年9月、酒田市内の空き店舗を利用して設置した。
 
 県障がい福祉課の小笠原寛指導調整主幹は「退院した精神障害者が社会生活をしていくためには、地域の受け皿が必要。将来的には同様の支援の枠組みを県全域に拡大していきたい」と話している。(高田正幸)

自殺者減少率、全国1位 昨年の三重県内、地道な活動に手応え
2011年2月6日 10時30分中日新聞
 
 昨年1年間の三重県内の自殺者数は前年より117人少ない359人となり、減少率が24・6%で全国1位だったことが警察庁のまとめで分かった。自殺を思い悩む人からの電話相談に応じるNPO法人「三重いのちの電話協会」は「地道な活動が広がってきたのでは」と手応えを感じている。
 
 同協会の相談員には現在、70人が登録。女性が9割を占め、2回線の電話=059(221)2525=で午後6〜11時まで年中無休で対応。30〜50代男女からの相談が多く、年間7千件ほど寄せられる。
 
 会話はお互い匿名のまま進められる。電話の主は「多重債務を抱えてしまった」「うつ病でつらい」「独り暮らしで話し相手がいない」などと悩みを打ち明け、相談員は気持ちの整理がつくまで耳を傾ける。「死にたい」という深刻な内容も全体の10%ほどある。
 
 受付時間は常に電話がふさがった状態となるため、同協会事務局の野殿照子さん(70)は「電話がつながらない時もあり、すべての相談に応え切れず心苦しい」と話す。「受付時間を広げるのが理想だが、時間の都合がつく相談員が足りないのが現状」という。
 
 相談員になるためには1年3カ月の研修を受け、カウンセリングの知識や実践的な電話対応を学ぶのが条件で、現在、17人が研修中。野殿さんは「相談員に興味がある人を募集している」と呼び掛けている。問い合わせは同協会事務局=電059(213)3975=へ。
 
(中日新聞)

2011.1.31読売新聞
心の健康自己管理を 「WRAP」普及団体始動
 
仲間と行動計画表 18日北区 米国人招き実践講演
 
 
2月の講演会に向けて打ち合わせをする倉田さん(中央)ら「らっぴーち」のスタッフ(岡山市北区で)  誰もが心健やかに毎日を過ごすために米国で考案された自己管理の考え方「元気回復行動プラン(WRAP=ラップ)」が、日本でも注目され始めた。県内では、昨年11月に普及団体「WRAPeach(らっぴーち)」=岡山市中区国富、倉田真奈美代表(41)=が発足、心の健康に関心のある人たちと勉強会などを行っている。来月には、米国でWRAPに携わっている中心メンバーを招いた講演会を同市内で開く予定で、準備に奔走している。(辻本洋子)
 
 WRAPは、そううつ病などに苦しんだ米国人女性メアリー・エレン・コープランドさんが、同様の悩みを抱える約120人に「元気を保つ方法」を尋ね、その結果を基に考案した。
 
 「自分の専門家は自分」という考え方を基本に、心の状態と行動を、▽元気を保つために毎日すること▽体調を乱すきっかけは何か▽体調の乱れの自覚症状と対応策――など六つに分け、項目ごとに自分に合った行動を盛り込んだ計画表を作る。1人でも作れるが、仲間と話し合いながら作ることで新しいアイデアが得られ、継続しやすくなる。心の病気の有無に関係なく、誰でも気軽に取り組めるといい、現在は全国で30以上のグループが活動している。
 
 倉田代表は22歳の時に体調を崩し、入退院を繰り返している精神疾患の当事者だ。投薬治療を続けているが、自分でも何かできないかと探していた時、WRAPと出会い、09年に東京で開かれた勉強会に参加。他の参加者の発表に刺激を受け、行動計画表を作って実践した。その結果、「体調の落ち込みが少なくなり、薬の量や入院の回数、日数が減った」と感じたという。
 
 WRAPを県内でも広めたいと、昨年11月、心の健康に悩む当事者と支援者約20人を中心に「らっぴーち」を設立。県内の病院などで当事者や家族を対象に勉強会を開く活動をしている。
 
 講演会は、2月18日午後1時半から岡山市北区奉還町の岡山国際交流センターで開かれ、米国でWRAPの普及に携わるスティーブン・ポクリントンさんが実践方法などを紹介する予定。倉田代表は「自分で自分を管理することで、前向きな気持ちになれます」と参加を呼び掛けている。参加費は前売り1000円(当日1500円)。
 
 問い合わせは、らっぴーち事務局(086・270・3322)。
 
(2011年1月31日  読売新聞)

障害者「総合福祉部会」の検討内容に見解提示へ―厚労省
医療介護CBニュース 2011年1月25日(火)21時9分配信
 
 
今年初の会合を開いた総合福祉部会(1月25日、厚労省)
 
 内閣府の「障がい者制度改革推進会議」の総合福祉部会は1月25日、第11回会合を開き、同部会の各作業チームが新法「障害者総合福祉法」(仮称)の策定に関する論点の検討結果を報告した。会合の冒頭であいさつした厚生労働省の岡本充功政務官は、この検討結果に対して厚労省としての見解を示す方針を明らかにした。新法は、障害者自立支援法に代わるものとして政府が2013年8月の施行を目指している。
 
 岡本政務官はあいさつの中で、新法には公平で透明性のある制度設計と、少子・高齢化が進む中での安定的で持続可能な運営が不可欠と指摘。その上で、「このような観点から厚労省として気が付いた検討(内容)についてコメントをさせていただきたい」と述べ、次回以降の会合で見解を提示するとした。
 
 会合では、新法について、昨年10月から「法の理念・目的」などの各論点を検討している第1期の作業チームがその内容を報告した。
 
■新法の名称には「福祉」でなく「社会生活の支援」を
 法の理念・目的作業チームの報告では、新法の主な守備範囲が障害者の社会生活支援だとしたほか、障害者を権利主体でなく保護の対象として位置付けてきた障害者関連法の名称に「福祉」が使われてきたなどと指摘。これらを踏まえ、新法の名称は障害者総合福祉法でなく、「障害者の社会生活の支援を権利として総合的に保障する法律」が適切だとした。
 
■精神医療の質向上へ根拠規定の新設を
 障害者基本法改正案などについて議論する推進会議と合同で設置された医療作業チームは報告で、精神障害者の「保護者制度」やいわゆる「社会的入院」を解消するための根拠規定を障害者基本法に設けるべきと主張。精神医療全般については、一般医療よりも薄い人員配置の基準を改めるなど、質の向上につながる施策を国が行う根拠規定の新設を求めている。
 
 次回会合からは第2期として、利用者負担や地域移行などの論点を議論する新しい作業チームがスタートする。一方、▽医療▽就労▽障害児支援▽選択と決定・相談支援プロセス(程度区分)―の作業チームは、第1期に引き続き検討を進める。ただし、医療作業チームはこれまでの精神医療ではなく、一般医療をテーマに据える。
 総合福祉部会は今年5月に作業チームからの報告を受けた後、8月には推進会議に「新法の骨格」を提案する予定。
 
.最終更新:1月25日(火)21時9分

医療観察法下 高い自殺率 5年で17人
2011年1月22日 朝刊東京新聞
 
 殺人や傷害事件などを起こし、心神喪失などで不起訴処分や無罪になった場合に適用される「医療観察法」で入院、通院の処遇を受けた人は二〇〇五年七月の法施行から五年間で千四百二人に上り、うち十七人が自殺していたことが分かった。複数の精神科臨床医は「一般通院者らに比べ、高い自殺率」と指摘。「専門的な医療」を施すという法の趣旨が問われそうだ。 
 
 医療観察法は、重大な刑事事件(未遂も含む)を起こした精神障害者に対し、国の定める指定医療機関での「社会復帰を目的とした手厚く専門的な医療」の提供を定めている。しかし、法案段階から日本精神神経学会や障害者団体から「再犯予防をうたった拘禁」との批判が出ていた。
 
 同法の付則に施行五年後の見直しがあり、政府は昨年十一月、施行状況を国会報告。報告に自殺者数は明記されていないが、医療関係者や国会議員らへの取材で、昨年七月末までに入院者三人、通院者十四人が自殺していたことが分かった。
 
 一年前に精神保健指定医の研修会で発表された資料によると、同法で入院中の自殺未遂件数は既遂の約十倍という指摘もあった。
 
 全処遇者の1%を超える自殺者数について、法務省保護局の担当者は「事件後という特殊な状況で、一般精神障害者の自殺とは比較できない」と話す。
 
 だが、精神科医療史研究会の世話人を務める岡田靖雄医師は「高い自殺率」と評した上で、「事件当時を無理に振り返らせる治療法などに重大な欠陥があるのでは」と詳しい検証を求めている。
 
 
 
 
 
施行5年 揺れる医療観察法
2011年1月22日東京新聞
 
 手厚い医療が逆に、事件を起こした精神障害者を自殺に追い込んでいないか−。昨年7月末までに医療観察法の処遇下にあった計1402人のうち、計17人が自殺していたことが分かった。昨年11月に国会に提出された政府報告には自殺者の統計、原因は記されていない。同法に基づく指定医療機関の設置も遅れ、鑑定入院中の人権も問題視されている。法の見直し時期を迎え、厳しい検証が求められる。 (田原牧)

認知症患者の訪問看護導入 県立高松病院
2011年1月20日朝日新聞
 
 
患者や家族、ケアマネジャーと一緒に、日々の生活の様子について情報交換する瀬戸さん。笑いが絶えず、和気あいあいとした雰囲気だった=石川県宝達志水町
 
 認知症患者が精神科病院に長期入院する「社会的入院」の増加が社会問題になるなか、かほく市の県立高松病院(倉田孝一院長)は訪問看護を導入し、患者をなるべく早く自宅や地域に戻す取り組みを進めている。認知症患者の治療の方向性を議論する厚生労働省の検討チームが先月まとめた中間報告に先駆けた挑戦。関係者は「全国的なモデルにしたい」と意気込んでいる。
 
■「脱・病院」全国に先駆け
 
 「ご飯、おいしい? ちゃんと食べてる?」。1月のある日、同病院の訪問看護師、瀬戸幸子さんは金沢市の70代の夫婦宅を訪問した。2度入院した軽度の認知症の妻を夫が介護している。「最近は妻に笑顔が戻って。それがうれしくてね」。約1時間の訪問を通じて、患者と家族の健康状態や夫婦間の状態もさりげなく観察。「介護者の家族の健康管理も仕事」と瀬戸さん。「自宅では患者さんの様子が病院とは全く違う。家族関係も見えるし実態に近い話が聴ける」という。
 
 厚生労働省によると、入院している認知症患者の約7割は精神科病院に入院。その数は1999年から08年の間に約1万4800人増えた。在院日数も平均で1年近くと長い。症状が落ち着いても帰る場所がない「社会的入院」が増えているからだ。一方、高松病院では00年4月〜09年3月の入院患者は平均的に2〜3カ月で退院。時期などが違うため一概には比べられないが、それでもかなり短い。
 
 その鍵を握るのが訪問看護だ。同病院では09年度に導入し、今は2人で約30人を担当する。患者や家族のほか、地域の介護支援専門員(ケアマネジャー)やヘルパーらとも顔が見える関係を作って情報を交換し、医師に報告。診療や薬などに反映させていく。「認知症は治せないが、症状の進行を緩やかにすることはできる」と副院長の北村立医師。入院が必要なほど悪化させないようにするために必要な「早く適切な診療」に、訪問看護師からの情報が大きな意味を持つという。
 
 北村医師らが入院期間を減らす努力をするのは、長引くほど患者の身体機能が大幅に落ちるからだ。入院中の患者は行動範囲が狭まるため、足腰も弱くなる。入院が3カ月以上になると身体機能が顕著に落ち、家族の介護負担も増すため退院が難しくなるという。「病院は治療の場で生活の場ではない」と北村医師。「必要な時だけ入院させ、なるべく在宅でみるほうが患者にとってはいい。これが全国モデルになれば」
 
 その言葉を裏付けるように、厚労省も入院中心の治療から、精神科の訪問看護などに重点を置きつつある。昨年12月、同省の検討チームがまとめた中間報告には、「地域での生活を支えるためのアウトリーチ(訪問支援)を充実させる」「(入院患者の)症状の軽減を目指し退院を促進する」「地域で専門機関として介護・福祉との連携などに積極的な機能を果たす」など、同病院がすでに取り組む内容が多く盛り込まれた。
 
 全国的に広めるには課題もある。長期入院が前提だった精神科の診療報酬体系では、在院日数を増やして空きベッドを作らないほうが病院経営にはプラス。訪問看護も、狭い地域内で数をこなせば収益性が上がるが、高松病院の患者は能登地域〜金沢までと広範囲で、収益の面では「ほぼボランティア」と北村医師。「うちがやれるのも、不採算部門を担うのが役目の公立病院だから。今後、国は診療報酬体系などシステムを変えていく必要がある」
 
 厚労省の担当者も「長期入院を前提とした精神科の医療システムは、今後転換が必要になると思う」としている。(井手さゆり)

2011.1.8毎日新聞
老いの未来図:介護・医療の現場で 預け先なく精神科入院(その1) /千葉
 ◇認知症男性、帰らぬ人に 妻倒れ万策尽きる
 緊急避難的な預け先が見つからず、精神科病院へ−−。外房地域でデイサービス施設を営む女性が、通所していた認知症の高齢男性を巡る5年前の苦い記憶を打ち明けた。「助けて」。男性を自宅で介護し、病気で倒れた妻から助けを求められ、要介護者を一時的に預かる施設に電話を掛け続けた。受け入れ先はなく、やむを得ず精神科病院へ入院させ、男性はそのまま帰らぬ人となった。「仕方なかった」。取材に、女性は何度か繰り返した。仕方がないその背景とは、何だったのか。【黒川晋史】
 
 ◇デイサービス経営の女性「仕方なかった」
 女性によると、男性はもともと自宅で妻と2人で暮らし、妻に介護されていた。ともに80代の、典型的な老老介護世帯。男性は04年6月から女性が運営する施設のデイサービスを利用し始めた。
 
 男性には戦時中、軍紀の乱れをただす憲兵だった過去があり、性格は頑固。デイサービスの最中に他の利用者をしかり飛ばすこともあった。高齢者が進んで話す戦争体験は一切語らなかったという。女性は「思い出したくないことがあるのか。心に闇を抱えているようだった」と振り返る。
 
 以前、暴力や暴言が目立つとして他の施設で利用を断られていたが、女性の施設では利用者の行動を縛らない方針が性に合ったのか、特段の問題行動はなかった。
 
   ◇  ◇
 
 妻の“SOS”は翌年の正月、松がとれぬころ発せられた。「熱が出て家で主人の面倒を見られない。どうすればいいでしょうか」。施設のデイサービスは午後4時まで。やむを得ず男性を施設で一晩預かることにした。夜、明かりの消えた施設のホールを行ったり来たりする男性に、「遅いので休みませんか」と声を掛けた。
 
 この時の様子を、女性は書き残している。「(男性は)崩れていく自分に戸惑うように、両手で私の手をちぎれるほど握りしめた。『これから自分はどうしたらいいのか』。泣きそうな顔だ。『もうおしまいだ』。独り言が漏れる」
 
 その晩は何とか寝かせた。男性を担当するケアマネジャーは、妻から連絡を受けた直後から短期で預かるショートステイ施設などに次々電話し、翌日も掛け続けた。「うちでは見られません」。ベッドに空きがないなどを理由にすべて断られた。施設は男性をもう1泊預かり、万策尽きて2日目の夕方、近隣市の精神科病院へ入院させた。ケアマネジャーが車で連れていった。
 
   ◇  ◇
 
 妻は発熱で5日間ほど寝込んだ。回復したが、自宅で介護を続ける自信をすっかりなくしていた。男性はそのまま入院を続けた。
 
 2月の誕生日に1日だけ男性は外出を許され、帰宅した。施設の職員が花束とすしを持って訪ねた。「誕生日おめでとう」。入院前と明らかに様子が違っていた。うつむいたまま、じっと黙り込んでいる。その日のうちに病棟へ戻り、1週間後に息を引き取った。
 
 「入院させた時、そのまま帰ってこないとは思わなかった。ショックだった」。女性は沈んだ声で振り返る。「知らない場所で、知らない人に囲まれ、気力も体力も尽きたのではないか。治療薬の影響もあったのか」。病院でどのような状況だったのか、今も分からないという。
 
 「かといって、うちで面倒を見るのは厳しかった。あの時、入院させる以外、ほかに何もできなかった」。女性は、自らに言い聞かせるかのように「仕方がなかった」を何度か繰り返した。
 
 「同じようなケースは、多数あるのではないか」と女性は言う。「今日(昨年12月)もショートステイ施設に電話し、『いっぱいなので無理』と断られたばかりです」
 
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 介護や医療など高齢者を取り巻く問題について体験談や情報、意見、記事への感想、要望をお寄せください。あて先は〒260−0026千葉市中央区千葉港7の3毎日新聞千葉支局「老いの未来図」取材班。ファクス043・247・0508、電子メールchiba@mainichi.co.jp
 
毎日新聞 2011年1月8日 地方版
 
 
 
2011.1.8毎日新聞
老いの未来図:介護・医療の現場で 預け先なく精神科入院(その2止) /千葉
 ◇ショートステイ不足 「治療外入院」問題に
 男性のように、治療以外の目的で医療機関の精神科に緊急入院するケースは「社会的入院」として問題視されている。淑徳短期大社会福祉学科の亀山幸吉教授は、「病的な症状が少しでもあれば、精神科病院は簡単に入院させる傾向がある」と指摘する。認知症で要介護認定を受けた高齢者は必ず何らかの心身の不調があるため、入院の条件を満たす可能性が高い。入院後に投薬などで状態が悪化するケースも少なくないという。
 
 一方、緊急避難時の預け先となるべきショートステイ施設の大部分は満杯で、数カ月前からの予約で埋まっている。自治体が用意する特養などの長期入所施設に入れず、複数のショートステイ施設を渡り歩く利用者も少なくないという。
 
 ショートステイ施設の不足や使い勝手の悪さは以前から指摘されており、国は06年度の介護保険制度の改正で、緊急時の受け入れ体制を整える施設に介護報酬を増やす「緊急短期入所ネットワーク加算」などを盛り込んだ。
 
 だが、亀山教授によると、ベッドに空きがある状態は経営上マイナスで、緊急対応用に一部を空けておく施設は少ないという。さらに、仮に空きがあっても、トラブルを起こすリスクのある高齢者は入所させない場合も多い。同教授は「預け先がない場合、自治体同士連携して空きを探したり、施設への行政指導で急きょベッドを増やすなどの対応はできるはず。対策を取らない自治体が多いのは問題だ」と指摘する。
 
 男性の精神科入院を見守っていた女性も「ショートステイ施設は今も同じメンバーが入れ替わり使い、入所経験に乏しい緊急の利用者は相変わらず行き場がない」と嘆く。
 
 また、介護施設を経営する別の専門家によると、仮に入所できても、慣れない環境へ急に投げ込まれ弱ってしまうお年寄りも多く、「受け皿が足りないのは明らかだが、入所後のサービスの質の確保も重要だ」としている。
 
2011.1.8毎日新聞
老いの未来図:介護・医療の現場で 預け先なく精神科入院(その1) /千葉
 ◇認知症男性、帰らぬ人に 妻倒れ万策尽きる
 緊急避難的な預け先が見つからず、精神科病院へ−−。外房地域でデイサービス施設を営む女性が、通所していた認知症の高齢男性を巡る5年前の苦い記憶を打ち明けた。「助けて」。男性を自宅で介護し、病気で倒れた妻から助けを求められ、要介護者を一時的に預かる施設に電話を掛け続けた。受け入れ先はなく、やむを得ず精神科病院へ入院させ、男性はそのまま帰らぬ人となった。「仕方なかった」。取材に、女性は何度か繰り返した。仕方がないその背景とは、何だったのか。【黒川晋史】
 
 ◇デイサービス経営の女性「仕方なかった」
 女性によると、男性はもともと自宅で妻と2人で暮らし、妻に介護されていた。ともに80代の、典型的な老老介護世帯。男性は04年6月から女性が運営する施設のデイサービスを利用し始めた。
 
 男性には戦時中、軍紀の乱れをただす憲兵だった過去があり、性格は頑固。デイサービスの最中に他の利用者をしかり飛ばすこともあった。高齢者が進んで話す戦争体験は一切語らなかったという。女性は「思い出したくないことがあるのか。心に闇を抱えているようだった」と振り返る。
 
 以前、暴力や暴言が目立つとして他の施設で利用を断られていたが、女性の施設では利用者の行動を縛らない方針が性に合ったのか、特段の問題行動はなかった。
 
   ◇  ◇
 
 妻の“SOS”は翌年の正月、松がとれぬころ発せられた。「熱が出て家で主人の面倒を見られない。どうすればいいでしょうか」。施設のデイサービスは午後4時まで。やむを得ず男性を施設で一晩預かることにした。夜、明かりの消えた施設のホールを行ったり来たりする男性に、「遅いので休みませんか」と声を掛けた。
 
 この時の様子を、女性は書き残している。「(男性は)崩れていく自分に戸惑うように、両手で私の手をちぎれるほど握りしめた。『これから自分はどうしたらいいのか』。泣きそうな顔だ。『もうおしまいだ』。独り言が漏れる」
 
 その晩は何とか寝かせた。男性を担当するケアマネジャーは、妻から連絡を受けた直後から短期で預かるショートステイ施設などに次々電話し、翌日も掛け続けた。「うちでは見られません」。ベッドに空きがないなどを理由にすべて断られた。施設は男性をもう1泊預かり、万策尽きて2日目の夕方、近隣市の精神科病院へ入院させた。ケアマネジャーが車で連れていった。
 
   ◇  ◇
 
 妻は発熱で5日間ほど寝込んだ。回復したが、自宅で介護を続ける自信をすっかりなくしていた。男性はそのまま入院を続けた。
 
 2月の誕生日に1日だけ男性は外出を許され、帰宅した。施設の職員が花束とすしを持って訪ねた。「誕生日おめでとう」。入院前と明らかに様子が違っていた。うつむいたまま、じっと黙り込んでいる。その日のうちに病棟へ戻り、1週間後に息を引き取った。
 
 「入院させた時、そのまま帰ってこないとは思わなかった。ショックだった」。女性は沈んだ声で振り返る。「知らない場所で、知らない人に囲まれ、気力も体力も尽きたのではないか。治療薬の影響もあったのか」。病院でどのような状況だったのか、今も分からないという。
 
 「かといって、うちで面倒を見るのは厳しかった。あの時、入院させる以外、ほかに何もできなかった」。女性は、自らに言い聞かせるかのように「仕方がなかった」を何度か繰り返した。
 
 「同じようなケースは、多数あるのではないか」と女性は言う。「今日(昨年12月)もショートステイ施設に電話し、『いっぱいなので無理』と断られたばかりです」
 
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 介護や医療など高齢者を取り巻く問題について体験談や情報、意見、記事への感想、要望をお寄せください。あて先は〒260−0026千葉市中央区千葉港7の3毎日新聞千葉支局「老いの未来図」取材班。ファクス043・247・0508、電子メールchiba@mainichi.co.jp
 
毎日新聞 2011年1月8日 地方版
 
 
 
2011.1.8毎日新聞
老いの未来図:介護・医療の現場で 預け先なく精神科入院(その2止) /千葉
 ◇ショートステイ不足 「治療外入院」問題に

 男性のように、治療以外の目的で医療機関の精神科に緊急入院するケースは「社会的入院」として問題視されている。淑徳短期大社会福祉学科の亀山幸吉教授は、「病的な症状が少しでもあれば、精神科病院は簡単に入院させる傾向がある」と指摘する。認知症で要介護認定を受けた高齢者は必ず何らかの心身の不調があるため、入院の条件を満たす可能性が高い。入院後に投薬などで状態が悪化するケースも少なくないという。
 
 一方、緊急避難時の預け先となるべきショートステイ施設の大部分は満杯で、数カ月前からの予約で埋まっている。自治体が用意する特養などの長期入所施設に入れず、複数のショートステイ施設を渡り歩く利用者も少なくないという。
 
 ショートステイ施設の不足や使い勝手の悪さは以前から指摘されており、国は06年度の介護保険制度の改正で、緊急時の受け入れ体制を整える施設に介護報酬を増やす「緊急短期入所ネットワーク加算」などを盛り込んだ。
 
 だが、亀山教授によると、ベッドに空きがある状態は経営上マイナスで、緊急対応用に一部を空けておく施設は少ないという。さらに、仮に空きがあっても、トラブルを起こすリスクのある高齢者は入所させない場合も多い。同教授は「預け先がない場合、自治体同士連携して空きを探したり、施設への行政指導で急きょベッドを増やすなどの対応はできるはず。対策を取らない自治体が多いのは問題だ」と指摘する。
 
 男性の精神科入院を見守っていた女性も「ショートステイ施設は今も同じメンバーが入れ替わり使い、入所経験に乏しい緊急の利用者は相変わらず行き場がない」と嘆く。
 
 また、介護施設を経営する別の専門家によると、仮に入所できても、慣れない環境へ急に投げ込まれ弱ってしまうお年寄りも多く、「受け皿が足りないのは明らかだが、入所後のサービスの質の確保も重要だ」としている。
 

情動制御の脳内物質、働き解明 山口大教授ら
 '11/1/5 中国新聞
 

 ▽「精神疾患 新薬開発に期待」
 
 山口大と東京農大の研究グループは4日、脳の細胞内のタンパク質の量と質を一定に保つ物質が、脳神経の発達や情動面の発達に重要な役割を果たすことをマウスの実験で実証したと発表した。「不安障害など精神疾患の病態解明、治療薬開発への活用が期待できる」としている。
 
 山口大大学院医学系研究科の渡辺義文教授(59)、内田周作助教(33)たちのグループ。細胞内にある「熱ショック因子」と呼ばれる分子の一つ、「HSF1」に着目し、HSF1を持たないマウスの神経細胞や行動パターンを調べた。
 
 その結果、不安、攻撃性など情動の制御にHSF1が重要な役割を果たしていることを確認。生後間もない段階で脳内のHSF1が正常に機能したかどうかが、その後の発達に大きく影響することも分かった。
 
 同グループは「幼少時の虐待などの環境ストレスや、遺伝的要因でHSF1の機能に異常が生じると脳や心の発達に影響を及ぼす可能性がある。HSF1の機能を高める薬の開発で改善が期待できる」としている。研究成果は米国科学アカデミー発行の総合学術雑誌「PNAS」の電子版に掲載される。(藤田龍治)

秋田の自殺者、13年ぶり400人下回る 予防策実る?
2011年1月7日3時7分朝日新聞
  
 厚生労働省の統計で15年連続で自殺率が最も高い秋田県の2010年の自殺者数が、前年より70人減って368人になったことが6日、県警の速報値でわかった。秋田県の自殺者数が400人以下になるのは97年以来13年ぶり。民間、行政、大学が連携した「秋田モデル」と呼ばれる予防対策が効果を上げたとみられる。
 
 全国の自殺者は12年連続で3万人を超え、月内に発表される10年の自殺者数も3万人を上回る見通しだ。その中で秋田県はほとんどの世代で減少、特に30〜59歳の働き盛り世代の自殺者は153人と前年から52人も減った。
 
 秋田県では、自殺率が高いことへの危機感から、行政だけでなく、民間団体、大学が協力して対策に乗り出してきた。県は00年度から自殺対策予算をつけ、これまでに3億円以上を計上した。
 
 民間の動きが活発なのが大きな特徴で、自殺予防に取り組む団体は全国130のうち、秋田県だけで40あり、悩みの内容ごとに細かく相談できるように対応。秋田市のNPO法人「蜘蛛(くも)の糸」は、中小企業経営者や弁護士、司法書士が多重債務者を、保健師や精神科医がうつ病などの精神疾患患者を、それぞれ専門的な観点からケアしている。一つの団体にこだわらず、ほかの団体を紹介する仕組みもある。
 
 秋田大学も協力、こうした団体と定期的に勉強会を開いており、本橋豊・医学部長は民間主導の動きを「対策が、現場の動きの中から出てくる。新しい公共だ」と話す。(矢島大輔)

2010.12.24共同通信
統合失調症、脳内アミノ酸不足か 九州大グループが実験
 統合失調症の患者にみられる感情や会話、社会性の喪失といった症状に関わっているとされるグルタミン酸の神経伝達異常に、アミノ酸の一種である「Lセリン」の脳内での不足が関係していることを、九州大の古屋茂樹教授らのグループがマウスを使った実験で24日までに突き止め、米生化学・分子生物学会誌(電子版)に発表した。
 
 古屋教授は脳内でLセリンを増やす方法の研究も進めており、統合失調症の発症メカニズムの一端を解明し、治療薬の開発に結び付く可能性も期待されている。
 
 Lセリンは、グルタミン酸の神経伝達時に、刺激を受け取る受容体を活性化させるアミノ酸「Dセリン」の元となる物質。これまで統合失調症の患者について、血液中などのDセリンの含量低下が報告されてきた。
 
2010/12/24 20:11   【共同通信】

■地域で支える精神科治療 病院なくしたイタリア
 地区ごと受診・休息拠点/入院も本人の意思尊重
 2010/12/19 読売大阪朝刊 くらし健康・医療面
 

 精神科医療の分野で最も大胆な改革を実行した国はイタリアだ。精神科病院を基本的になくし、地域での精神保健サービスを軸にして支えている。その実情を伝えるために3人が来日し、11月に東京、横浜、大阪、長崎で講演した。なぜ、どのように改革を進めたのか。大阪市での講演内容を中心に紹介する。(編集委員・原昌平)
 
 ■出発点は人間の尊厳
 イタリアの本格的な改革は1971年、北東部の港町トリエステで始まった。県立精神科病院の院長になった精神科医フランコ・バザーリア(80年死去)が病院の劣悪な状況を批判し、全患者を共同住居やアパート、自宅通院に移していった。
 サルデーニャ島に住むイタリア家族会連合会会長のジゼッラ・トリンカスさん(59)が精神科病院を初めて訪れたのは74年。統合失調症になった姉の入院先だった。「見捨てられたみじめな場所。閉鎖病棟に多数のベッドが並び、悪臭がして、トイレのドアにカギはなかった。治療の場所ではなく、姉は絶望していた」
 バザーリアたちが訴えたのも人間の尊厳の回復と支配・被支配ではない治療関係だった。その声は広がり、トリエステの実践を踏まえて78年、全国レベルで精神科病院の新設・新たな入院を禁止する法律が成立した。トリンカスさんたちは家族会を作り、精神科病院に代わる地域サービスを求めて運動した。
 姉はいま共同住宅に住み、スタッフの24時間のサポートと、精神保健センター
の定期的な訪問を受けている。適量の薬で状態は安定している。
 「入院隔離ではなく、社会の一員として、家族や友人と一緒に暮らすことが、治療のためにも大切だし、それは可能だ」とトリンカスさんは語りかけた。
 
 ■笑顔と抱擁が基本
 10万床以上あった公立の精神科病院は99年に全国で姿を消した。残っているのは、入院や治療の強制が許されない民間精神科病院(約4000床)と、法務省管轄の司法精神科病院(約1000床)だけだ。
 代わりの主役は、地区ごとの保健公社が設けた精神保健センター。人口5万〜10万人に1か所あり、いつでも急な受診や個室での休息に利用できる。訪問サービスの拠点でもある。地域には人口1万人に1か所以上、24時間ケアのグループホームがつくられている。
 急性期の病状の時はどうするのだろうか。受け皿は総合病院の精神病床(1施設15床以下)で、入院・治療は本人の意思を原則にする。どうしても必要な時は強制入院・強制治療もあるが、厳格な手続きが求められ、期間は7日間。延長にも7日ごとに司法審査が行われる。
 医療の進め方には地域差があるが、トリエステでは「笑顔と抱擁」で信頼関係を築き、人手をかけて説得する。患者にとって病院が怖い場所でなくなれば強制の必要は少なくて済み、早期の治療にもつながるという。
 地域への移行に住民の反対はなかったのだろうか。
 「どの国でも摩擦はある。ローマで反対に遭った時は、患者は精神的に苦しんでいる人たちだ、そうした人たちを助けるサービスだと伝え、理解を得ていった」と精神科医のトッマーゾ・ロザーヴィオさん(71)は説明した。
 
 ■日本の病院を見て
 一行は講演の合間に、京都市左京区の民間病院を見学した。日本ではレベルの高い部類に入る精神科病院だ。
 「病棟は清潔でスタッフも誠実だが、入院患者のまなざしには悲しみとあきらめが交じっていた」(トリンカスさん)
 「きれいな病棟でも、病院にいると疾患が慢性化してしまう」(ロザーヴィオさん)
 日本の精神病床は35万床。人口比でも絶対数でも世界一多い。入院中心から地域中心への転換は政府も掲げており、厚生労働省の検討会では、病床を半分に減らすべきだという意見も出ているが、なかなか進まない。病床の9割が民間であることがイタリアと事情の違う点だ。
 社会学者のマリアグラツィア・ジャンニケッダさん(62)は「人手とお金を病院ではなく、地域に使えば、もっと人間らしいことができる。民間病院でも、お金は国民から出ているのだから、政府が決断すれば変えられる」と強調した。
 
◇写真=地域で暮らすイタリアの精神障害者は社会協同組合で働く人が多い。写真はトリエステの病院跡地に作られたレストランのスタッフ=大阪・光愛病院看師、有我譲慶さん提供
◇写真=ジゼッラ・トリンカスさん
◇写真=トッマーゾ・ロザーヴィオさん
◇写真=マリアグラツィア・ジャンニケッダさん

【ゆうゆうLife】認知症患者への訪問診療に光明
2010.12.17 09:33産経新聞

 
患者の元を訪れる上野医師。
一時は拘束が必要だった人がすっかり穏やかになった =千葉県匝瑳市の九十九里ホーム病院  
 
徘徊、激しい怒り 劇的に改善
 
 精神科病院に入院する認知症の人が増えている。暴言や暴力、徘徊(はいかい)や妄想などに、家族の介護が限界に来るためだ。しかし、認知症になっても今までの暮らしが続けられるよう、自宅や施設へ訪問診療をする医師がいる。こうした取り組みは全国でもごく少ないが、家族からは「入院させるか、心中するかしかないと思っていた。家で介護できるまでになり、本当に感謝している」との声が上がっている。(佐藤好美)
 
 千葉県旭市に住む原幸子さん(64)=仮名=は元看護師。しかし、昨年秋、同居の母、トミさん(88)=同=に認知症状が出始めると、親を殺して自分も死のうとまで思い詰めた。
 
 発端は、トミさんが「おカネをとられた」と言い出したこと。娘婿を敵視し、「垂木で殴られた」「『死ね』と言われた」などと触れ回り、原さんが取りなすと、矛先を原さんに向けた。原さんが夫に「母は病気だから我慢して」と言うと、夫婦仲もギスギスした。母親は夜中は大きな音でタンスを開け閉めし、明け方は大声で徘徊する。病気の自覚はないから、医者には頑として行かない。原さんは「不眠とストレスで考えられなくなりました」と振り返る。
 
 その頃、精神科病院「海上寮療養所」が認知症の人への訪問診療をすると聞いた。電話で相談すると、上野秀樹副院長が来てくれた。上野医師は訪問診療で病名診断をし、薬の数を絞り、必要な薬を処方する。徘徊や暴力の理由を探り、家族や生活環境の改善も図る。
 
 トミさんは「オラは病気でねえ」と、処方された薬を飲もうとしなかったが、ケースワーカーが「頭をたたかれて痛かったね」と同調すると涙ぐみ、一転して素直に薬を飲むようになった。症状は劇的に改善。数日後には怒らなくなり、泡を吹いて話していたのが収まり、1週間後には娘婿とテレビを見るまでになった。
 
 上野医師は介護する家族に携帯電話の番号を教え、24時間相談を受ける。「患者さんの状態には波がある。状態の変化も大きいので、次の診察まで放置するより、すぐに薬を調節した方が治療は簡単です」という。
 
 原さんも対応を学んだ。繰り返される話を否定せず、初めてのように聞いた。トミさんがおカネに執着するのは昔、独力で家計を支えた不安の名残だろうと、財布に10万円を入れて渡し、使うたびに小遣い帳に記入させ、残額を数えさせた。おカネがあることを納得させるためだ。
 
 トミさんには今も妄想があるが、激しい怒りや昼夜逆転はない。原さんは「一時は入院させるしかないと思った。入院させていたら、今のおばあちゃんはいなかったと思う。先生は本当に神様だと思っています」と話している。
 
                   ◇
 
病院、特養へ…採算合わず
 
 認知症の人の介護が限界に来たとき、最初に頭に浮かぶのは施設への入所だ。しかし、特別養護老人ホーム(特養)には空きがなく、認知症グループホームは経済的に余裕がないと難しい。
 
 地域で在宅介護が困難なケースの相談に応じる「地域包括支援センター」は、上野医師の取り組みを高く評価する。「今までは、家族と泣きながら患者を精神科病院に入院させて、もう少し何とかならなかったのかと後味の悪かったこともある。海上寮が訪問診療を始めて、家族が家でみられるようになった。選択肢が増えた」
 
 認知症で精神科病床に入院する患者は平成20年に約5万2千人。9年前の1・4倍に増えた。
 
 しかし、上野医師は昨年から約200人に訪問診療を行い、「入院しか手段がなかった人は3人でした」という。入院させずに済む人が入院しているのでは、との思いが消えない。「精神科病院は生活の場ではないので、認知症の人を入院させれば身体機能が低下し、症状が悪化することもある。薬による治療に効果があることが多いので、自宅で治療できる可能性がある」と指摘する。
 
 上野医師は病院や特養へも訪問診療をする。その一つ、九十九里ホーム病院(千葉県匝瑳(そうさ)市)では数年前から、患者に認知症が目立つようになった。看護師を殴る患者もいた。同院には精神科がなく、外部の精神科受診を勧めても、「外聞が悪い」と嫌がる人も多かった。病院ソーシャルワーカーの佐谷(さや)久美子さんは「世間体を気にする人も、上野先生がベッド脇に来てくれれば受診できる。薬を減らしたら攻撃的でなくなり、拘束せずに済むようになった患者さんもいます。スタッフのストレスも激減しました」と喜ぶ。
 
                   ◇
 
 多くの人が歓迎する認知症の訪問診療。受診を拒否する認知症の人は多いから、これが突破口になると期待もされる。しかし、こうした医療は提供する側も受ける側も採算が合わない。病院間の訪問診療では、治療費は入院病院が請求するルールだが、長期入院を扱う病院はしばしば個別の治療費が請求できない。
 
 海上寮側も「田舎ですし、訪問診療は日に4、5件が限度。うちの人件費は安いが、先生の人件費にもなりません」(病院事務)という。上野医師が24時間態勢で電話を受けても“すずめの涙”だ。それでも続ける理由を「キリスト教系の病院ですし、ボランティア精神ですかね」(同)という。しかし、ボランティア精神に頼っていたら取り組みは広がらない。認知症の人も家族も救われない。

2010.12.14読売新聞

障害者自立支援法 どう変わる?

 障害者への福祉サービスを定めた法律が改正されたそうだけど、具体的にどう変わるの?

自閉症なども支援対象に

 この法律は「障害者自立支援法」で、今月、改正法が国会で成立した。項目ごとに異なるが、2012年4月1日までに施行される。

 自立支援法は、身体、知的、精神障害者への支援を一本化し、2006年に始まった。だが、福祉サービスを利用した障害者が、費用の1割を支払う「応益負担」を原則としたため、「障害が重く、多くのサービスを必要とする人ほど負担が大きくなる」との批判が集まっていた。

作図 デザイン課 佐々木明日香 

 そのため今回の改正では、応益負担から、家計の支払い能力に応じて支払額を決める「応能負担」へと、負担の方式を変えることにした。現在の制度でも、低所得層の負担の減免があるが、改正により、応能負担であることが法律上も定められ、その趣旨がはっきりすることになる。

 もう一つの改正点は、福祉サービスの対象として、身体、知的、精神障害に加え、発達障害を位置づけたことだ。自閉症やアスペルガー症候群、注意欠陥・多動性障害、学習障害などがこれにあたる。

 新たな給付も盛り込まれた。

 日常生活支援が必要な人が共同で暮らすグループホーム、介護も必要な人向けのケアホームは、家賃の負担が大きかったため、所得などの条件を満たせば、利用者は特定障害者特別給付費を受けられるようになる。1人では外出が難しい視覚障害者には、ヘルパーらが援助する「同行援護」サービスを創設することが決まった。

 障害児に関しては、同時に児童福祉法も見直され、通所で療育を行う児童発達支援などが導入される。学齢期の子どもの放課後活動や社会生活へ向けた訓練の場になってきた放課後型のデイサービスも制度化される。対象は18歳未満だが、必要なら20歳になる前まで引き続き利用できる。

 自立支援法は、昨年9月に長妻厚労相(当時)が将来の廃止を表明。これに代わる新法「障害者総合福祉法(仮称)」の制定に向け、内閣府の障がい者制度改革推進会議が議論を進め、13年8月の新法施行を目指している。だが、その間の制度の改善を求める声が上がり、つなぎの緊急措置として、今回の改正が行われた。(梅崎正直)

20101214  読売新聞)

 


 「精神疾患は身近な病気」理解求め署名活動
2010年12月11日 21:01日テレニュース

 鬱病や統合失調症への理解と支援を求めて、患者と家族らの団体「こころの健康政策構想実現会議」が11日、東京・新宿駅前で署名活動を行った。
 
 この団体は「鬱病や認知症などを含む精神疾患は身近な病気」として、政府に、治療や支援の充実を掲げた基本法を作るよう求めている。患者らは「早い段階で適切な治療を受ければ、病状は安定する」として、長期の入院でなく、家庭で暮らせるように、訪問型のカウンセラーなど新たな支援の実現を訴えた。
 
 団体は、来年3月までに100万人の署名を集めて、国会に提出することを目指している。

体の痛み 話さぬ鬱病患者
2010.12.7 08:45産経新聞

  鬱病患者の多くが、首や肩など体の痛みについて医者に話さない傾向にあることが、塩野義製薬(大阪市中央区)と日本イーライリリー(神戸市中央区)の調査で分かった。鬱病の症状には痛みもあるものの、話さなかった人の7割は症状と認識していなかった。
 
 調査は8月、過去5年以内に鬱病と診断されて鬱病治療薬を服用し、がん、関節リウマチ、痛風の治療薬を服用していない、20〜50歳の男女3374人に行った。
 
 それによると、全体の59・9%が鬱病に伴い、体の痛みも経験。頭が35・7%で最も多く、肩21・5%▽胃20・9%▽首17・6%−が続いた。
 
 人数を663人に絞った調査では、痛みを感じた424人のうち156人が症状を医師に話していなかった。「鬱病の症状だと思わなかった」69・2%▽「主治医から聞かれなかった」35・3%▽「どう話したらいいか分からない」−などが主な理由だ。
 
 精神科医ら456人への聞き取りでは、「痛みは精神の症状に影響を及ぼす」と考えるのは83・2%。64・7%が「痛みについて話してもらうことで治療効果が上がる」としている。

2010.12.7毎日新聞
現場から記者リポート:薬物依存症 仲間と一緒に克服 /滋賀

 ◇自助組織「びわこダルク」
 ◇グループセラピー、軸に 合法の薬乱用、苦しむ人も
 薬物依存症患者の自助組織「びわこダルク」(大津市丸の内町)が先月、開設から8年を迎えた。これまでに約90人の入所者を受け入れ、現在は25〜64歳の14人が共同生活を送りながら回復プログラムに励んでいる。長年続けてきた薬物を「仲間がいるからやめられる」と語る入所者は多い。一方で、精神安定剤や睡眠薬など、合法の薬への依存症が年々増えているという。ダルクを訪ね、薬物依存の現状や課題を探った。【村瀬優子】
 
 住宅地に溶け込む木造2階建ての民家。その離れに集い、入所者たちはほぼ毎日グループミーティングを行う。この日のテーマは「薬を使ったきっかけ、やめるきっかけ」。テーマは毎回変わるが、「言いっぱなし、聞きっぱなし」の原則は揺るがない。質問も意見もしない。円になって座り、タバコをふかしたり瞳を閉じたり、思い思いの格好で静かに耳を傾ける。
 
 白髪交じりの男性(64)は「小さいころから劣等感の塊だった。女の子と話をすることもできなくてね。社会に出てから興味本位で薬をやったら、何でもはっきり言えて、やりたいことができるようになった。一生使おう、と気持ちが楽になった」と淡々と話した。生活費は薬に消え、妻や子供すら邪魔になった。金銭的にもたなくなってギブアップした。静かに語り終えると、次の発表者が話し始めた。
 
 回復プログラムはこうしたグループセラピーが中心だ。「自分の中にたまっているものを話すことで、悪い熱が出て、解放されていく」とスタッフの吉田充良さん(46)は言う。「仲間の話を聞くことで、自分を振り返ることもできる」。スタッフ全員が全国のダルクで治療したことがある薬物経験者だ。ボランティアスタッフのユウキさん(29)は愛知県出身。高校時代に友人に誘われて覚醒剤を始め、生活が立ちいかなくなるほど依存するようになった。07年に母親の勧めでダルクに入所。当初は薬を打ちたいと思ったが、「買いに行こう」と誘ってくる友人も近くにいない。周りは真剣に薬をやめようとしている人ばかりだ。次第に欲求は薄れていった。猪瀬健夫施設長(46)の勧めで、通信制の高校にも入学した。「次の人生に向けて、いくらでも協力してくれる環境。ダルクに来て希望が持てた」
 
 一方、17年間覚醒剤を使い続けた猪瀬施設長は、最後の使用から約11年経った現在も、「打ちたい」と思うことがあるという。「意志や根性ではどうにもならない領域に入り込むのが覚醒剤」と話す。風邪薬依存症のノブさん(37)はせき止め液の瓶を1日15本飲み続けた。何度も病院に運ばれ、月30万円は薬代に消えたが、近所の薬局で手軽に手に入り、やめられなかった。ダルクに来て薬を断って5年になるが、「仲間といるからやめていられる。1人になったら手を出してしまうと思う」と話す。妻とは離婚し、将来やりたいことも見つからない。「思い出すのは薬を使って楽しかったことばかり。自分がどこに行きたいか分からない」と胸中を漏らした。
 
 スタッフによると、風邪薬のように合法な薬物への依存症は増えているという。中でも、精神安定剤や睡眠薬は医師の処方によるため、本人や家族も危険を認識しにくい。びわこダルクに入所していた睡眠薬依存症の次男(26)がいる鳥取県の母親(54)は、「1年半で三十数件の交通事故を起こし、保険にも入れなくなった。息子を車に乗せ、夜の海にダイブできたらどんなに楽かと思ったこともあった」と苦しみを語る。うつ病が広がる社会で、薬物依存症は人ごとではない。回復しても、再発の危険はつきまとう。ある入所者は言った。「後悔しているのは最初の1回」と。
 
毎日新聞 2010年12月7日 地方版

精神障害者への訪問支援で大幅なコストダウンも―民主PTがヒアリング
医療介護CBニュース2010年 12月2日(木)22時49分配信
 
 民主党政策調査会の「精神保健医療改革プロジェクトチーム(PT)」は12月2日、地域で生活する精神障害者への訪問支援(アウトリーチ)について、関係者からヒアリングした。出席者からは、アウトリーチを活用することで精神医療の大幅なコストダウンが図れるとの意見が出た。
 
 ヒアリングに出席したのは、包括的地域生活支援(ACT)を実施している「たかぎクリニック」(京都市)の高木俊介院長や、日本認知療法学会の大野裕理事長ら。
 
 たかぎクリニックで実践するACTは、医師や看護師、精神保健福祉士、作業療法士などが多職種連携し、アウトリーチにより症状管理や服薬支援などを提供する仕組み。高木氏は、ACTによる効果として▽入院日数の減少▽症状の改善▽入院費用の減額―などを列挙。
 人口40万人で統合失調症の有病率を0.8%、入院者の割合を25%と仮定した場合、アウトリーチの導入により年間20億円以上のコストダウンを図れるとの試算結果も示した。
 
■精神障害者の支援「推し進めたい」
 政府の評価会議が1日、来年度予算概算要求の特別枠に盛り込まれた精神障害者アウトリーチ推進事業をB判定(予算を重点配分)に位置付けたのを受け、PTの議員からは、在宅や地域での精神障害者支援を「推し進めたい」といった声が上がった。
 
.最終更新:12月2日(木)22時49分

2010.12.3毎日新聞
障害者自立支援法:参院で改正案可決・成立

 障害福祉サービスの原則1割を負担する障害者自立支援法の議員立法による改正案が会期末の3日正午過ぎ、参院本会議で民主、自民、公明各党などの賛成多数で可決・成立した。社民、共産両党は反対した。サービス量に応じた負担から支払い能力に応じた負担を掲げ、発達障害を対象に明記する内容で、13年8月までの同法廃止と新法施行までの「つなぎ」との位置づけ。
 
 発達障害者や知的障害者の団体などから早期成立を求める声が強まる一方、同法違憲訴訟の元原告らは「1割負担の仕組みが残る恐れがある」と強く反発している。
 
 新法は、ほかに▽グループホームを利用する個人への助成▽障害児向け放課後型デイサービスの制度化▽相談支援体制の強化▽知的障害者らのため成年後見の利用支援を市町村の必須事業にする−−などの内容。【野倉恵】
 

毎日新聞 2010年12月3日 12時35分(最終更新 12月3日 13時49分)
 

働く人の心をケア、サイト「こころの耳」で新コンテンツ開始へ/厚労省
2010年11月29日神奈川新聞
 

 「いのちの日」(12月1日)に合わせ、厚生労働省が設置する働く人のためのメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」で新コンテンツがスタートする。
 
 近年、職場でメンタル面の不調を訴える人が増えている。サイトでは不調を抱える本人だけでなく、家族、事業者からの「どこに相談したらよいか分からない」「どのような支援策があるのか」といった悩みに応えている。
 
 新コンテンツとして、事業者向けの「e―ラーニングで学ぶ『実践!メンタルヘルス対策の進め方』」(52分)がすでにスタート。職場の環境改善や心の健康づくりに向けた計画策定などについて学べる。また、心の病を克服した著名人からの映像メッセージ「わたしの体験」シリーズに、作家の荻野アンナさんが12月1日から登場。仕事と両親の介護からうつ病を発症した荻野さんが、克服への道のりを語る。
 
 サイトのアドレスはhttp://kokoro.mhlw.go.jp
 

「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(自殺対策を含む)」
http://kokoro.mhlw.go.jp/

2010.11.28読売新聞
精神科医寄り道人生
能登に腰据え「治す」より「共に生きる」
 
 
穏やかな表情で診察に当たる西村さん  林に囲まれた病院、窓一つない無機質な診察室で、精神科医の西村正史さん(62)は日々、30〜40人の患者と向き合っている。患者の話に耳を傾けた後、西村さんは、自らの治療方針を包み隠さず打ち明ける。
 
 「治して欲しければ、ほかの病院に行って下さい。でも、一緒に生きていって欲しければ、僕はどこまでもお付き合いしますよ」
 
 医師になって9年目。七尾市の公立能登総合病院に勤めている。患者の中には、西村さんの率直な物言いに戸惑いの表情を浮かべる人も。そんな時、思わず「やはり自分は不器用なセンセイだな」と苦笑が漏れる。
 
     ◇
 
 寄り道だらけの人生を歩んできた。親戚(しんせき)そろって東大卒の「東大一家」。重圧に耐えながら、東大理1に入ったものの、大学紛争の波にのみ込まれた。時はベトナム反戦運動真っ盛り。基地を脱走した米兵の手助けをすることに明け暮れた。
 
 街には、「神田川」の切ないメロディーが流れていた。歌詞に導かれるように、高校時代の同級生で早稲田大に進学した女性と同棲(どうせい)。親の逆鱗(げきりん)に触れて勘当された。食うに困って始めたのが塾講師だった。仲間と一緒にアパートを借り、睡眠時間を削って教材を作った。大学は中退したが、懸命に走り続けた。だが、10年目を迎えるころ、心の中に焦燥感が芽生えてきた。
 
 「子どもたちは日々、成長するのに、自分は毎年同じことを繰り返しているだけ」。
 
 仲間に塾を任せてスペインに渡った。内戦で隣人が敵味方に分かれて殺し合った人口40人の村で聞き書きを行い、人が戦うことの意味を見つめ直そうとした。だが、心の傷を無理やり掘り返そうとしている自分に嫌気が差し、挫折感を背負ったまま、帰国した。
 
 3年ぶりに教壇に戻ると、心に病を抱えた生徒が増えていた。非行や摂食障害、リストカット、うつ……。「何とか、彼らを救いたい」。心理学の本を読みあさったが、机上の理論は何の役にも立たなかった。
 
 「先生も一緒に医学部行かない?」。医学部志望の生徒に投げかけられた一言で未来が開けた。そうか、おれが精神科医になればいいのか。受験勉強はお手の物、2年後、46歳で金沢大に入学した。
 
     ◇
 
 「能登総合病院へ行ってくれ」
 
 医師免許取得後、担当教授に派遣先を告げられた時は戸惑った。
 
 「どこ、それ?」
 
 すでに54歳。この地で修業して一人前になったら、東京に戻ってクリニックを開く、そんな青写真を描いていた。
 
 腰掛け気分が一掃されたのは、ある事件がきっかけだった。受け持ちの患者に統合失調症で10年以上入院している女性がいた。「脳にハンデがあっても、周囲が支えていけば、社会生活を送れるはず」。その思いで女性を母親の元に返し、通院治療に切り替えた。
 
 だが、世話役の母親は精神的に追い詰められて娘を絞殺、自らも命を絶ってしまった。
 
 「準備が整わないうち社会に戻し、孤立させてしまった」。自らの判断を悔いた。と同時に、精神病患者に対する偏見の根強さも思い知らされた。精神医療の遅れを目の当たりにし、手をこまねいていられなくなった。
 
 目下の課題は認知症。過疎地域だけに潜在的な患者の数は計り知れない。民生委員に独居老人や高齢者世帯の全戸調査を依頼し、潜在的患者の洗い出しに乗り出した。自らもボランティアで不登校や拒食の子どもの相談に応じ、子どものうつやいじめに関する講演会も行っている。
 
 大学紛争の終焉を告げた東大安田講堂陥落から40年以上がたった。同棲していた女性は妻となり、東京での編集会社経営を経て、今は大学の授業を聴講する日々。自身の放浪癖も災いし、結婚生活のほとんどを別居で過ごしてきた。以前、白衣姿で妻の家に戻ったときは「何かのコスプレ?」とからかわれたが、今も自分のわがままを温かく見守ってくれている。
 
 「この地で医療や福祉の安全網からこぼれた人を救うにはまだまだ、やるべきことが多い」。妻の元に戻り、2人で穏やかな生活を送るのはしばらく先になりそうだ。
 
(石坂麻子)
 
(2010年11月28日  読売新聞)

法令の「障害」表記は当面「現状維持」―障がい者改革会議
医療介護CBニュース 2010年11月22日(月)22時35分配信

 

 内閣府の「障がい者制度改革推進会議」は11月22日、26回目の会合を開き、菅直人首相を本部長とする「障がい者制度改革推進本部」から諮問を受けて検討していた、法令などにおける「障害」の表記の在り方について、「当面は現状維持」とした。

 

 会合では、同会議の「『障害』の表記に関する作業チーム」が7月からの検討結果を報告。障害者団体や一般企業からのヒアリングや、内閣府で募集したパブリックコメントを分析した結果、さまざまな立場の人や団体が「さまざまな表記を用いており、現時点で新たに特定のものに決めることが困難」と指摘した。そして、法令などにおける「障害」の表記について、「当面、現状の『障害』を用いること」「今後、制度改革の集中期間内(2014年ごろまで)を目途に一定の結論を得ることを目指すべき」との見解を示した。

 

 また報告では、「障害」「障碍(しょうがい)」「障がい、しょうがい」の表記に関して、それぞれの普及状況を定期的に調査する必要性などが示された。
 これを受け、佐藤久夫委員(日本社会事業大教授)は、「碍」が常用漢字に含まれていない点について、「パブリックコメントでは4割が(『障碍』を)支持したにもかかわらず、常用漢字に含まれないのは不公平」と述べ、常用漢字への追加を文化庁に提言すべきとした。
 また、関口明彦委員(全国「精神病」者集団運営委員)は、常用漢字に含めることが法令での使用を認めることにつながると指摘した上で、「自治体によって『障害』と『障碍』の表記に分かれるのは問題がある」と述べた。
 
■差別禁止部会がスタート
 この日は、障がい者制度改革推進会議の会合後に、差別禁止部会の初会合が開かれ、委員の互選により、棟居快行委員(阪大教授)が部会長に選出された。
 今後は、政府が目指している13年の通常国会への「障害者差別禁止法案」(仮称)の提出に向け議論する。12年の後半にも部会として意見を取りまとめ、同会議に提出する予定。

 

.最終更新:11月22日(月)22時35分

2010.11.18キャリアブレイン

中間とりまとめに向けた骨子案を提示厚労省検討チーム

 

 厚生労働省は1118日、「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」に、中間取りまとめの骨子案を発表した。早期の認知症における正確な鑑別診断や、退院支援・地域連携クリティカルパスの開発・導入などを提言する内容。検討チームでは、骨子案をたたき台に、次回の会合で中間取りまとめを行う。

 骨子案では、精神科医療の認知症に対する基本的な考え方として、認知症の人への支援では本人の思いを重視。また、残された能力を最大限生かした支援をする認知症の早期から専門医による正確な鑑別診断が受診できる体制を整備する入院を前提と考えるのではなく、地域での生活を支えるための精神科医療とするBPSD(認知症の周辺症状)や身体合併症で入院が必要な場合は、できる限り短期での退院を目指す認知症患者を地域で受け入れるためのシステム作りの推進退院支援・地域連携クリティカルパスを開発・導入する地域の中で、精神科医療の観点から後方支援的な機能を果たすなどが盛り込まれた。

 中間取りまとめでは、この基本的な考え方に基づき、認知症患者に対する精神科医療の役割や、精神科に入院している認知症患者への対応、認知症患者が地域で生活するための取り組みなどについて、具体的な方向性が示される見通しだ。



「患者本人の思いを重視」に賛否

 構成員による議論では、「基本的な考え方」に盛り込まれた「本人の思いを重視する」との文言の取扱いをめぐり意見が分かれた。河崎建人・日本精神科病院協会副会長は「極めて大切なことだが、具体的な提案では、どのような内容を落としこんでいくのか。(認知症患者の意思を支援に反映させるのは)とても難しい」と指摘した。
 渕野勝弘・淵野会緑が丘保養園院長も「非常に基本的なことなので、冒頭に書くかどうか、もう一度考える必要がある」と述べた。

 一方、野村忠良・東京都精神障害者家族会連合会会長は、「人が人をケアする際、(その文言の精神がなかったら)おかしな方向に行きかねない。冒頭に置いた方がいい」とした。

20101118 23:38 キャリアブレイン


うつ病治療へ かかりつけ医と精神科医連携の手引書
2010年11月18日朝日新聞
 
 うつ病患者の治療でかかりつけ医と精神科医の連携を進めようと、福井県と同県医師会が「かかりつけ医と精神科医の連携に関する手引き」を作った。役割分担や連携の方法を明確にし、うつ病の早期発見から診断、治療まで円滑につなげるのが狙いだ。
 
 うつ病は精神的な症状以外に食欲不振、腰痛などの身体症状が表れることも多く、患者本人はうつ病だと気付かないまま、最初にかかりつけ医で受診する場合が多い。このため、かかりつけ医と専門の精神科医がいかにして連携し、早期発見、治療につなげていくかが課題だった。
 
 「手引き」は、かかりつけ医から精神科医に患者を紹介する流れを明記し、役割分担をはっきりさせた。患者として想定しているのは働き盛りでストレスが多いとされる30〜65歳。不眠が2週間以上続いている人、不眠が2週間未満でも疲労、倦怠(けんたい)感、頭痛などの症状を訴える人に、かかりつけ医はうつ病の兆候を調べる「スクリーニング」を実施する。
 
 まず、「一日中、気分がゆううつでしかたがない」「疲れやすくてしかたがない」など9項目の質問に答えてもらい、該当項目で患者の心の状況を把握する。重い症状のうつ病が疑われる場合は精神科の医療機関に連絡し、患者に受診を勧める。
 
 一方、かかりつけ医で治療可能なうつ病と判断された場合は、精神科医からアドバイスを受けながら、抗うつ剤などで治療を進める。自殺を望んでいたり、幻覚や妄想などの症状が表れたりしている場合はすぐに精神科医を紹介する。かかりつけ医からの紹介で診察した場合、精神科医は診察結果や治療計画をかかりつけ医にも伝え、患者の情報を共有する。
 
 「手引き」は2千部作り、県医師会を通じて医師に配布した。福井県の担当者は「うつ病は自殺の原因の一つになっている。その予防につながることを期待したい」と話している。(日比真)

高齢者の医療事故7人に1人 月1万5千人死亡
2010.11.17 11:42産経新聞

  米国の病院に入院した高齢者の7人に1人が投薬ミスや手術中のミス、院内感染などの医療事故の被害を受け、月に推計約1万5千人が死亡しているとする調査報告書を16日、米厚生省の行政監視機関である監察官事務所が発表した。
 
 同事務所は「驚くべき割合だ」としており、政府は対策強化が求められそうだ。
 
 同省の調査チームが、2008年10月に米国の高齢者向け公的医療保険(メディケア)を利用して退院した780人を対象に調査。その結果、入院患者の13・5%に相当する月間約13万4千人が医療事故によって健康被害に遭い、うち約1万5千人が死亡したと推計された。44%は適切な対策をとっていれば、防ぐことができた事故とみられるという。
 
 医療事故により入院期間が長引くなどして、保険の支払額は08年10月だけでも3億2400万ドル(約270億円)増えたとしている。(共同)

2010年11月16日産経新聞
 
精神疾患で休職の公立校教員 復帰訓練受けたら76%復職
 精神疾患で休職した政令市を除く府内の公立小・中・高校などの教員のうち、平成15年度から始まった職場復帰支援事業に参加した教員の76%にあたる106人が、年度内に職場復帰していることが分かった。15日開かれた府議会の決算特別委員会で明らかにされた。
 
 民主党・無所属ネットの中村哲之助議員の質問に答えた。「訓練に参加している教員の割合は、1割にも満たない。有効なら、もっとその効果をアピールして参加を募るべきだ」と中村議員は指摘した。
 
 府教委によると、15年度から21年度までの7年間で、精神疾患で休職した教員は延べ1999人(政令市除く)。うち、職場復帰した教員は約40%の延べ790人だった。
 
 一方、15年度から始まった「府公立学校教員職場復帰支援事業」に参加したのは139人で、うち106人が職場復帰したという。
 
 同事業は、府教委が公立学校共済組合近畿中央病院(兵庫県伊丹市)に委託して実施。約3カ月間、休職中の教員同士で模擬授業を行ったり、運動や芸術、音楽、院内ボランティアをしたりして復帰に向けた訓練を行っているという。
 
 20、21年度でみると、復帰後も定着する教員の割合は51%だが、訓練に参加した教員の定着率は68%。また、2年以上休職した教員全体の復帰率は27%で、訓練を受けた教員の復帰率は40%と、訓練に参加したほうが全体と比べて高くなる効果が表れているという。
 
 文科省などによると、大阪市と堺市の政令市を加えた大阪府内の小・中・高などの教員のうち、平成20年度に精神疾患で休職した教員は計583人。東京都の540人を上回り、全国最多となっている。
 
 
(2010年11月16日 08:04)
 
大阪府583人、全国最多 精神疾患で休職教職員
2010年11月16日 大阪日日新聞

 自律神経失調症や適応障害などの精神疾患と診断された教職員の休職者数は、大阪府が全国で最も多いことが15日、文部科学省への取材で分かった。2008年度中に休職した府内の公立小・中学、高校、支援学校の教職員は583人を数え、2番目に多かった東京都の540人を43人上回った。精神疾患で休職する教職員は全国的に増加傾向にあり、職場復帰の支援態勢の構築が課題になっている。
 

 文科省の統計によると、精神疾患による全国の休職者数は1999年度に1924人だったが、2008年度は5400人に増え、増加率は2・8倍。病気休職全般に占める精神疾患の休職比率は43%から63%へ20ポイント上昇した。
 
 大阪府教委は03年度以降、休職者の職場復帰支援として委託した公立学校共済組合近畿中央病院(兵庫県伊丹市)での模擬授業を通して「教室」に対する拒否反応の解消などに努め、09年度までに訓練を受けた休職者139人中106人が年度内復帰を果たしている。
 
 しかし、近畿中央病院は京都、兵庫の各府県教委からも受託し、今後も休職者が増え、訓練ニーズが高まればほかの「受け皿」の確保が急務になる。
 
 15日の大阪府議会決算特別委で中村哲之助議員(民主)の質問に対し、府教委は「都道府県別でみれば大阪が全国で一番、精神休職者が多い実態がある」と説明。発症要因として「学校の問題に限らないが、例えば学級運営がうまくいかない、保護者のクレーム対応が大変なども挙げられる」(教職員人事課)としている。
 
 
2010.5.31読売新聞
精神疾患の先生、復職へサポート…都教委がチーム  
 東京都教育委員会は、精神疾患で休職した都内公立校教員の復職を支援する新しい取り組みを始める。
 
 「リワーク(職場復帰)プラザ東京」と名づけたチームを28日に発足させ、心の病気に悩む先生たちを支える。
 
 都教委によると、2008年度に休職した都内公立学校の教員は788人で、このうち精神疾患によるものが540人(69%)に上る。激務などを背景に増加傾向にあるという。従来、精神疾患で休職した教員は、通院などを経たうえで自己判断で復職を決めていた。ところが学校側から十分な支援が得られず、約半数が一度復職しても再び休職する事態となっていた。
 
 新しい取り組みでは、精神科医や校長OBら約30人が都教委内にチームを作り、教員一人ひとりに復職計画を作成して受講を義務づける。週3日の出勤訓練から始め、約3か月後には実際に授業を行えるところまでサポートするという。
 
(2010年5月31日 読売新聞)

2010.11.13読売新聞

禁断症状に苦しむ人々救え  NPO「薬物」と闘う

「埼玉ダルク」 通所者、年々増加 覚せい剤事件、摘発は減少傾向 5〜6割が「再犯」

 薬物依存対策に取り組むNPO「埼玉ダルク」(さいたま市)に通う人が増え続けている。覚せい剤使用をやめられず、繰り返し逮捕される芸能人が話題に上るように、多くの人が依存状態から抜け出せないでいる。「完治しない病気。クスリが欲しいという衝動と一生付き合う」。ダルク施設長の辻本俊之さん(52)はそう話す。





 刑務所を出所した元受刑者、頼るあてもない依存症の人たちが、わずかな望みをかけて門をたたいてくる。教会脇に立つ施設2階で、辻本さんは禁断症状を抱える男性たちの輪に入り、切り出す。「今日は1年前と今を比べよう」。男性らは率先して挙手し、過去を語り始める。「どうにでもなれ、とクスリを使っていた」「留置場で釈放される日を待ちわびていた」……

 ミーティングやレクリエーション活動を通じて、薬物依存との闘いを支援するダルク。35都道府県にあり、県内では辻本さんが2004年7月に設立した。運営スタッフのほぼ全員が依存症経験者だ。

 ミーティングは1時間。ほぼ毎日3回行う。通所開始から3か月の間は、欠かさず参加するのがルール。本名は名乗らず、あだ名で呼び合う。「自分は変わったか」「薬でのトラブル経験」など様々なテーマを設け、話し合う中で自分を見つめ直してもらう。

 参加者の9割は、過去に覚せい剤を常用していた人たちという。コウスケさん(仮名)(47)も、20年近く使用を続けていた。「今でもクスリを打ちたくてたまらない時があるが、同じ問題で苦しむ仲間と一緒だと気が安らぐ。なんとかやめたい」と話す。コウスケさんはダルクが借りる一軒家で暮らしている。

 県警薬物銃器対策課によると、覚せい剤事件で摘発された人は昨年538人。5年前の628人と比べると減少傾向にある。しかし、5〜6割は「再犯」といい、埼玉ダルクの通所者も年々増えている。発足した04年度は29人だったが、09年度は82人。今年度は11月時点で20〜60歳代の男性約50人が通う。電話での相談件数は年間500件に上る。

 「やめられない人が増える中、ダルクの活動が浸透し始めた」と辻本さんはみる。しかし、リハビリを続けられず、再び薬物に手を出す人は少なくない。通所者のうち、社会復帰を果たせたのは、これまで2〜3割。使用を繰り返し、再び施設に戻る人もいる。

 コウスケさんは厳しい表情だ。「これが最後のチャンスだと思う。駄目なら落ちるところまで落ちるしかない。何をしてもやめられないということだから」

 相談は、埼玉ダルク(電048・823・3460)へ。

   「家族含めた支援必要」

 辻本さんは「依存症への理解は進まず、支援の体制も十分でない」と感じている。

 さいたま保護観察所では、仮釈放期間が6か月以上の人に対し、最低5回、再犯防止のプログラムを施し、簡易の薬物検査などを義務付けている。希望者も検査を受けられるが、いずれも「抜き打ち」でない。毎年約400人が受検するが、再使用が発覚するのは1〜2人程度。抑止効果には疑問の声がある。

 刑務所を満期で出所した人や、有罪判決を受けたものの保護観察処分を受けなかった人には、プログラムは実施されない。違法薬物を使用し、10回以上刑務所に入るケースも珍しくない。

 「彼らを家族が受け入れなければ、薬物で築いた人間関係しか残らず、再犯の危険が高まる。家族を含めて支援する必要がある」と小沢政雄・統括保護観察官。さいたま保護観察所は、依存症の人の家族を対象に、精神科病院や保健所、自助グループを紹介する「家族会」を開催している。

20101113  読売新聞)


2010.11.11読売新聞
精神疾患の早期支援(5)発症1年内の治療 効果的

 
 
1970年東大医学部卒。三重大学精神神経科教授などを経て2006年から現職。日本精神神経学会副理事長。日本統合失調症学会理事長東京都立松沢病院院長 岡崎祐士(おかざき・ゆうじ)さん
Q&A
 東京都立松沢病院院長の岡崎祐士さんに、精神疾患の早期支援の意義と課題を聞きました。
 
 ――統合失調症を早期に発見して治療すると、経過がよくなるのでしょうか。
 
 はい。英国の調査では、幻覚や妄想などの症状が表れてから、薬物治療を1年未満に始めた患者と、1年以上たってから始めた患者では、前者の再発率が明らかに低かったのです。
 
 更に衝撃的だったのは、1年未満に治療を始めた患者の中で、カウンセリングなどで治療した患者は、効果のある薬を使わなかったにもかかわらず、1年以上たってから薬物療法を始めた患者よりも再発率が低かったことです。医師や周囲の人たちが、早期から適切にかかわることが非常に重要だと分かりました。
 
 ――1年を境に何が変わるのですか。
 
 画像検査機器の進歩で、統合失調症患者の脳は発症から数年の間に前部や側頭部で軽度の萎縮が進むことが分かりました。適切な薬物療法や、物事の受け止め方を変える心理療法で、萎縮を抑制できる可能性があります。特に1年以内などの早期から治療を始めると、より効果が期待できます。
 
 ――精神疾患の早期支援チームは現在、どのくらいありますか。
 
 訪問まで行う早期支援チームは多くありません。三重県津市の県立こころの医療センターや、同県四日市市のささがわ通り心・身クリニック、私たちの都立松沢病院のチームなど、数か所だと思います。精神科が早期の相談に応じる大学病院は、東大、東邦大、東北大、富山大など数か所あります。
 
 各チームの成果を踏まえ、厚生労働省は早期支援の充実を図る意向だと思います。支援方法の詳細なガイドラインを作り、一定水準以上の機能を発揮できるチームを全国で早急に設ける必要があると思います。
 
 ――早期支援はうつ病でも効果がありますか。
 
 うつ病も治療が遅れると、再発しやすくなります。うつを何度も繰り返すうちに、以前は耐えられた軽いストレスに耐えられなくなり、再発につながるようです。英国では、統合失調症と同様に、早期支援チームの訪問対象となっており、この活動で若い世代の自殺率が低下しました。
 
 ――早期支援を効果的に行うために、医師の診療レベルをどう上げたらよいですか。
 
 若い医師の病院での研修のあり方から見直す必要があるでしょう。軽症から重症まで様々な状態の患者と接し、救急や地域医療など多様な治療形態を経験できる仕組みを作ることが重要です。早期支援では、医師は精神保健福祉士や心理士、看護師らと「多職種チーム」で治療にあたりますが、国立大病院では心理士すら雇用しない時代が長く続いたため、チーム医療の教育が十分にできない状況があります。医師や看護師以外のスタッフを、早急に充実させる必要があるでしょう。(佐藤光展)
 
(2010年11月11日 読売新聞)

体内時計正す新睡眠薬 鎮静・抗不安作用に頼らず 生活習慣病の対策にも

 2010/11/12 日本経済新聞

 

 鎮静作用や抗不安作用に頼らない新タイプの睡眠薬が登場した。不眠の原因の一つとなる体内時計の乱れを正し、寝付きや眠りをよくするという。専門家らは副作用も少ないとみている。不眠が続くと高血圧症や糖尿病などを悪化させるという指摘もあるなか、生活習慣病対策として活用しようとする試みも始まった。

 

不眠症治療薬「ロゼレム」はこれまでとは違う仕組みで眠りを誘発する

 新しい不眠症治療薬は武田薬品工業が7月に発売した「ロゼレム(一般名ラメルテオン)」。脳の松果体からメラトニンが出て視交叉(こうさ)上核にある体内時計の中枢にスイッチが入る状態を疑似的に再現する。メラトニンは眠りを誘発する物質として知られ、日中はほとんど出ず、夕方からだんだんと分泌されるようになる。

 

 

昼夜逆転が改善

 

 

 日本大学医学部の内山真主任教授(精神医学)はこの夏以降、若い世代に多い不眠症であるリズム障害の患者を対象に、ロゼレムを使ってきた。

 

 例えば、朝方4〜5時までに眠れず、逆に昼ごろまで起きられずに完全に昼夜逆転した「概日リズム睡眠障害」の患者に処方、服用を続けてもらったところ、次第に夜になると眠くなるようになり、症状が改善された。

 

 内山主任教授は「いわゆる体内時計が乱れたリズム障害の傾向が強い不眠症の人にはロゼレムはよく効きそうだ」と話す。

 

 ひと言で不眠といってもその原因はいくつかある。体内時計の乱れのほかに、緊張や不安、寝過ぎなどで、寝付きが悪くなったり夜中に何度も目が覚めたりするようになる。

 

 国内の不眠症治療で今、よく使われているのがベンゾジアゼピン系睡眠薬だ。入眠時のリラックス効果や抗不安作用、目覚めたときの爽快(そうかい)感など、薬が合えば熟睡感が得られる。

 

 半面、半ば鎮静作用を利用して強引に「眠らせる」ため、服用後の記憶喪失や、ふらつき・転倒といった筋弛緩(しかん)作用、途中でやめると不眠がひどくなる常習性といったマイナス面も見過ごせない。

 

 

 

 

 不眠症患者の睡眠薬への不安は大きい。久留米大学医学部の内村直尚教授(神経精神医学)らは、同大病院精神神経科外来患者650人余りを対象にアンケート調査を実施した。睡眠薬に対し「大変心配している」(33%)と「少しは心配している」(34%)を合わせて、7割弱の患者が不安を抱いていることがわかった。さらに58%の患者ができれば服用をやめるか量を減らしたいと考えており、27%が医師に相談もせずに中断や減量をしていたという。

 

 ロゼレムは、脳の中枢神経系に作用して精神機能に影響を及ぼす向精神薬でもなければ、習慣性のある医薬品としての厚生労働相の指定も受けていない。日本医科大学の伊藤敬雄講師(精神医学)は「睡眠薬というより、リズム調整剤という言葉が適切だ」と話す。同大病院では11月から精神科だけでなく、一般内科でも処方するようになった。

 うつ病の兆しとして不眠になることはこれまでもよく知られていたが、2000年以降、不眠は高血圧症や糖尿病、脂質異常症や逆流性食道炎など様々な疾患のリスク要因になると考えられるようになった。例えば、ある研究報告によると、1年以上の不眠が続くことで、2型糖尿病になるリスクが正常な人に比べて1.7倍になるという。

 

 

一方、臨床現場では高血圧症や糖尿病の患者によく眠れているかどうか質問する医師はまだ少ない。患者が不眠を訴えない限り、見落とされることになる。

 伊藤講師は「副作用を考えると、生活習慣病対策に従来の睡眠薬を使うのは難しかった。海外ではメラトニンはサプリメントとしても売っている。ロゼレムだと新しい適用が可能かもしれない」と話す。

 

即効性期待できず

 もちろんいくつか問題点はある。

 個人差もあるが、ベンゾジアゼピン系のような即効性は期待できない。また、精神的に不安な状態が不眠の主因になっている人にはあまり効かないとされる。実際、米国では数年前から販売されているが、「既存の睡眠薬にとって代わるほどの普及はしていないようだ」(ある精神科医)。

 日本の場合、不眠を訴えて病院に足を運ぶ人はまだ少なく、寝酒に頼っている人も多い。内山主任教授は「日中の快適性を保つようにすることが不眠症治療のゴールと考えれば、依存性と副作用のないロゼレムは使い勝手のいい薬だ」とみている。

(編集委員 矢野寿彦)

[日本経済新聞夕刊20101112日付]


若者の「心の不調」サポート 厚労省がサイト
2010/11/8 12:31 日本経済新聞

 厚生労働省は、心の不調に気付いたときの対処法を紹介する若者向けのウェブサイト「こころもメンテしよう〜10代、20代のメンタルサポートサイト」を開設した。
 
 厚労省などによると、自殺の約3割はうつ病などの精神疾患が原因。15〜39歳の死因の1位は自殺で、特に20代では死因の5割近くを占める。
 
 サイトは「不安でたまらない」など精神疾患の症状や対策を分かりやすい言葉で説明。「気分の落ち込みが続いたり、ストレスでつらかったりするときは、無理せず周囲の人や公的な窓口に相談を」と呼び掛けている。
 
 「こころもメンテしよう」で検索できる。〔共同〕
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/

2010.11.10読売新聞
精神疾患の早期支援(4)県が委託 地道に自宅訪問
 
 
電話相談を受ける今成貴聖さん(右)(千葉県松戸市のほっとねっとで) 千葉県の男性(37)は、20代後半から5年間、母親と暮らす家に引きこもった。
 
 20代初めから幻聴に悩まされ、数年間耐えたが、母親の説得で精神科を受診し、統合失調症と診断された。入院治療を何度か受けたものの、次第に治療を拒むようになり、家に引きこもった。幻聴は続いたままだった。
 
 母親は4年前、知り合いの医師に相談した。医師は家を訪問したが、男性は薬物治療を受け入れなかった。そこで、適切な治療に導くため、この医師が連携したのが、千葉県が2004年に設置した中核地域生活支援センターだった。
 
 同センターは、福祉関係の様々な悩みに24時間、365日対応している。県内13ブロックの社会福祉法人などに業務を委託し、電話対応や訪問活動を行っている。県健康福祉指導課は「県民から寄せられる年間約9万件の相談のうち、精神疾患関連の多さが目立つ」と話す。
 
 この男性への支援は、松戸市などを担当する千葉健愛会「ほっとねっと」が受け持った。精神保健福祉士の資格を持つ今成貴聖さんが、月に数回、男性の自宅訪問を続け、まず母親とうち解けた。「本人に対面できなくても、家に他人が来る状況に慣れてもらうことが大切」と考えたためだ。
 
 次の目標は「こちらが味方だとさりげなく伝えること」。母親との会話を装いながら、隣の部屋の男性に「散歩で気分転換してみては」などと聞こえるように話した。やがて男性は、今成さんが訪れた時に部屋から出てくるようになり、散歩や食事などで一緒に外出するようになった。
 
 かかわりを続けて2年、男性は今成さんに伴われて精神科を受診した。今では一人で通院したり、電車に乗って遠方に出かけたりできるようになった。
 
 精神疾患の早期支援は、医療の役割と考えられがちだが、医師を拒絶する人や未受診で病気かどうか分からない人まで、医療チームが訪問対応するのは難しい。そこで必要なのが、行政の精神保健サービスだが、十分に機能しているとはいいがたい。
 
 厚生労働省研究班などが行った精神疾患患者の家族調査では「引きこもりの悩みを保健所に相談しても、聞くだけで何もしてくれない」「信頼できる医師や心理士が知りたいのに、教えてもらえない」「夜間に症状悪化で困っても、頼れる場所が全くない」などの不満が多く寄せられた。
 
 内閣府の調査によると国内の40歳未満の引きこもり者数は70万人に上り、増え続けている。その多くが、精神的な問題を抱えているとみられている。千葉県の試みなどを参考に、精神保健サービスの立て直しが急務だ。
 
(2010年11月10日 読売新聞)


2010.11.10読売新聞
精神疾患の早期支援(4)県が委託 地道に自宅訪問

 
 
電話相談を受ける今成貴聖さん(右)(千葉県松戸市のほっとねっとで) 千葉県の男性(37)は、20代後半から5年間、母親と暮らす家に引きこもった。
 
 20代初めから幻聴に悩まされ、数年間耐えたが、母親の説得で精神科を受診し、統合失調症と診断された。入院治療を何度か受けたものの、次第に治療を拒むようになり、家に引きこもった。幻聴は続いたままだった。
 
 母親は4年前、知り合いの医師に相談した。医師は家を訪問したが、男性は薬物治療を受け入れなかった。そこで、適切な治療に導くため、この医師が連携したのが、千葉県が2004年に設置した中核地域生活支援センターだった。
 
 同センターは、福祉関係の様々な悩みに24時間、365日対応している。県内13ブロックの社会福祉法人などに業務を委託し、電話対応や訪問活動を行っている。県健康福祉指導課は「県民から寄せられる年間約9万件の相談のうち、精神疾患関連の多さが目立つ」と話す。
 
 この男性への支援は、松戸市などを担当する千葉健愛会「ほっとねっと」が受け持った。精神保健福祉士の資格を持つ今成貴聖さんが、月に数回、男性の自宅訪問を続け、まず母親とうち解けた。「本人に対面できなくても、家に他人が来る状況に慣れてもらうことが大切」と考えたためだ。
 
 次の目標は「こちらが味方だとさりげなく伝えること」。母親との会話を装いながら、隣の部屋の男性に「散歩で気分転換してみては」などと聞こえるように話した。やがて男性は、今成さんが訪れた時に部屋から出てくるようになり、散歩や食事などで一緒に外出するようになった。
 
 かかわりを続けて2年、男性は今成さんに伴われて精神科を受診した。今では一人で通院したり、電車に乗って遠方に出かけたりできるようになった。
 
 精神疾患の早期支援は、医療の役割と考えられがちだが、医師を拒絶する人や未受診で病気かどうか分からない人まで、医療チームが訪問対応するのは難しい。そこで必要なのが、行政の精神保健サービスだが、十分に機能しているとはいいがたい。
 
 厚生労働省研究班などが行った精神疾患患者の家族調査では「引きこもりの悩みを保健所に相談しても、聞くだけで何もしてくれない」「信頼できる医師や心理士が知りたいのに、教えてもらえない」「夜間に症状悪化で困っても、頼れる場所が全くない」などの不満が多く寄せられた。
 
 内閣府の調査によると国内の40歳未満の引きこもり者数は70万人に上り、増え続けている。その多くが、精神的な問題を抱えているとみられている。千葉県の試みなどを参考に、精神保健サービスの立て直しが急務だ。
 
(2010年11月10日 読売新聞)


2010.11.9読売新聞
精神疾患の早期支援(3)認知症の進行 遅らせる

 
 
地域の福祉施設情報をネットで公開している内海さん(北海道の砂川市立病院で) 脳が次第に萎縮するアルツハイマー病などの認知症を、根本的に治す方法はない。だが、早期から治療と支援を行えば、進行を遅らせ、本人や家族の生活の質を維持できる可能性がある。各地でその取り組みが始まった。
 
 熊本県では昨年、熊本大学病院と七つの精神科病院が手を結び、独自の認知症治療ネットワークが生まれた。各病院は地域の開業医や介護福祉関係者と連携し、認知症の兆候が出た人を早期から受け入れ、診断と治療にあたる。ネットワークの要である同大学病院は、診断が難しい患者や、身体疾患を合併する患者など、精神科病院では対応が難しいケースを積極的に受け持つ。
 
 グループホームで夜間徘徊や暴言、暴力行為が続き、退所を求められた70歳代の認知症の女性は、昨年、同大学病院で入院治療を受けた。認知症の症状悪化の背景には、昼夜逆転の生活があることが多い。この女性も睡眠リズムが乱れていた。しかし、安易に睡眠薬を出すと、意識がもうろうとして転倒する恐れがあるため、同病院神経精神科教授の池田学さんは投薬を避けた。
 
 代わりに、研修医や看護師が日中、頻繁に話しかけたり、軽い運動を勧めたりして、眠る時間を調整した。顕著な幻覚、妄想もあったが、これを抑える薬を一時的に少量使うと治まった。2週間後には昼夜逆転はなくなり、行動が落ち着いた。女性は再び、グループホームに戻ることができた。
 
 この女性は、もし適切な治療を受けられなければ、子や孫の家で同様の症状を起こし、本人が事故にあったり、家族を追い詰めたりする恐れがあった。池田さんは「介護福祉施設で受け入れが困難になり、行き場をなくす患者は少なくない。適切なタイミングでの『医療的介入』は、家族など介護者を守ることにもつながる」と話す。
 
 北海道中央部の中空知地区では、医療と福祉の連携強化が進む。砂川市立病院精神神経科部長の内海久美子さんらが中心となり、介護福祉施設の最新の空き状況や、医療施設、福祉相談窓口の場所などの情報を提供するインターネットサイトを開設。医療や福祉により早くつながる仕組みづくりを進めている。
 
 内海さんは「認知症治療にたずさわる医師は、治せないという負い目がある。だからこそ、早期から様々な手を尽くして、患者の生活の質の維持に努めなければならない」と話す。
 
 認知症の早期支援などを目的に、厚生労働省は拠点病院の整備を進めている。だが経験のある医師は少なく、支援体制は自治体ごとに大きな開きがある。先駆的地域の試みを生かし、全国で格差なくサービスを行えるよう、対策が急務だ。
 
(2010年11月9日 読売新聞)


2010.11.8読売新聞
精神疾患の早期支援(2)誤診で投薬 未来奪う

 
制作した絵本を手にする宮田さん(長崎県大村市の大村共立病院で)
 〈うさぎくんは、自慢の長い耳に変な声が聞こえるようになった。命令したり、バカにしたり、家でも森でも、どこへ行っても聞こえてくる。頭の中がぐるぐるぐるぐる、怖くて夜も眠れない〉
 
 これは、統合失調症を子ども向けに解説した絵本「そらみみがきこえたひ」(情報センター出版局)の一部。長崎県の大村共立病院副院長、宮田雄吾さん(精神科医)が厚生労働省の科学研究費補助金をもとに制作した。このほか、うつ病や摂食障害など四つの精神疾患の絵本を作り、県内の全小中学校にセットで配布した。
 
 うさぎくんはその後、医師の診察を受けて、薬と休養で元気を取り戻した。宮田さんは、子どもが精神疾患を学ぶ意義について「精神疾患は若いころに発症するものが多く、事前に知識を持つと早期受診につながる。家族や友人の精神疾患を正しく理解できる効果もある」と話す。
 
 もっとも、幼少期や思春期には、病気ではないのに「そらみみ」が聞こえることがある。国内の中学生約1万人を対象とした調査では、約15%が幻聴や妄想に似た体験をしていた。
 
 東京都精神医学総合研究所研究員の西田淳志さんは「苦痛を伴う幻聴は、将来、精神疾患につながる可能性があり、継続的支援が必要。だが、たわいのない幻聴や妄想は自然に治まる。安易に病気に結びつけるべきではない」と指摘する。
 
 「統合失調症の早期発見の名のもとに、多くの子どもたちがひどい誤診、薬害を受けてきた」
 
 そう語るのは、発達障害の人たちを支援するNPO法人ノンラベル(京都市)の理事長、田井みゆきさん。特に、知的障害がないのに、円滑な対人関係を築けない高機能広汎性発達障害の人たちが被害を受けた。過去の怖い体験を急に思い出す特徴や、聴覚の感覚過敏などが、統合失調症の初期症状とされてしまったのだ。
 
 田井さんは「現在かかわる170人のうち、40人近くが誤診の被害者。長期の大量投薬の影響で、誤診と分かっても薬を止められなくなったり、手足のしびれなどの後遺症が残ったりする人もいる」と話す。
 
 誤診や過剰診断は、うつ病でも生じやすい。宮田さんは「若者のうつ状態は、周囲と折り合いがつかずに落ち込む適応障害の場合が多い。生活環境の調整や、良好な対人関係の築き方を学ぶことが最優先で、安易に抗うつ薬を使うべきではない」と話す。
 
 若者の心の不調をいち早く拾い上げ、支援する仕組み作りは大切だ。だが、診療する精神科医が「診断力」の向上を怠ったままでは、早期支援は若者の未来を奪うことになりかねない。
 
(2010年11月8日 読売新聞)

2010.11.5読売新聞
精神疾患の早期支援(1)希望や目標 失う前に
 
 
早期支援の打ち合わせをする西田淳志さん(左)とスタッフ(東京都世田谷区の都立松沢病院で) 学校の友達や隣家の住人が、僕の悪口を言う。去年の初めからずっと続いているんだ。夜になると、知らない男の話し声が聞こえてきて、怖くて眠れない――。
 
 心身が疲弊した東京の男子高校生Aさん(17)は、学校に行けなくなった。だが、悪口や男の声は現実の出来事ではなかった。Aさんは幻聴や被害妄想に苦しむ統合失調症の初期段階にあったのだ。
 
 統合失調症は、主に10代後半〜20代で発症。本人が苦しみを明かさず、治療が遅れることが少なくない。
 
 東京都精神医学総合研究所研究員の西田淳志さんは「治療の遅れで、最初の治療が半ば強制的な入院になることもある」と指摘する。
 
 その場合、患者の自尊心は傷つき、以後の治療に非協力的になる。退院後は薬を飲まなくなり、通院をやめる。そして社会復帰が遠のく。
 
 このような負の連鎖を断ち切るため、東京都立松沢病院(世田谷区)は昨秋、若者を対象とした早期支援チームをつくった。本人や家族がすぐ相談できるように、電話による窓口を開設。西田さんと精神保健福祉士の瀧本里香さんらスタッフ4人が、様々な生活支援を行っている。瀧本さんらは自宅(同区と隣接区に限定)などを訪問して話を聞く。生活環境を知ることでより適切な支援につながるからだ。
 
 Aさんは昨年末、母親に幻聴を明かして早期に同病院を受診し、薬物治療で幻聴は減った。しかし、通学を再開すると、再び夜間に人の声が聞こえてきた。
 
 さらに薬を増やすと、意欲低下などの副作用が表れ、勉学に支障が出る恐れがある。そこで瀧本さんは、音楽を聴く、散歩する、寝てしまうなど、幻聴が聞こえた時の対処法を助言。Aさんは、軽い幻聴には惑わされなくなった。
 
 Aさんの夢は「音楽関係の仕事に就くこと」。目指す大学の受験勉強に疲れ、幻聴が悪化することもあるが、「幻聴の程度でストレスを測り、勉強時間の調整などでうまく対処できている」(瀧本さん)という。
 
 瀧本さんらは約30人を支援。就職の模擬面接をしたり、希望の仕事を一緒に探したりすることもある。
 
 英国の調査では、早期支援を3年間受けた統合失調症の若者の就労率は、受けていない人の10%前後を大幅に上回る55%に達した。西田さんは「統合失調症になっても社会で活躍できる。症状と付き合いながら、生活の希望、目標をかなえる支援が不可欠」と訴える。
 
 同病院の取り組みなどを踏まえ、厚生労働省は精神科チームの訪問体制を各都道府県で整備することの検討を始めた。だが、精神疾患の早期発見には、誤診の恐れもつきまとう。早期支援の期待と課題を追う。
 
(2010年11月5日 読売新聞)

精神病床に入院中の認知症患者、6割が「半年以内の退院ない」―厚労省調査
医療介護CBニュース2010年11月4日(木)23時36分配信
 
 
「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」の第11回会合(11月4日、厚労省内)
 
 精神病床に入院している認知症患者の6割余りが、半年以内に退院する見込みがないことが、11月4日までの厚生労働省の調査で分かった。同日に開かれた「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」の第11回会合で報告された。調査では、精神病床に入院している患者の9割近くが何らかの身体合併症を抱えていることも明らかになった一方、日々の意思の疎通が困難な入院患者は4割弱、毎日のように徘徊を繰り返す患者は約3割だったことも分かった。
 
 調査は、北海道や東京、愛知、鹿児島などの9病院に入院する454人の患者を対象に、9月27日から10月4日にかけて実施。主な調査項目は、各患者の精神症状や身体合併症の状況、必要となる居住先や支援で、患者が入院している病棟の病棟師長が回答した。
 
 それによると、「居住先・支援が整った場合の退院の可能性」については、「近い将来(6か月以内)の退院の可能性はない」患者が62.3%を占めた。以下は「現在の状態でも、居住先・支援が整えば退院は可能」(20.3%)、「状態の改善が見込まれるので、居住先・支援が整えば近い将来には可能」(16.5%)、「状態の改善が見込まれるので、居住先・支援などを新たに用意しなくても、近い将来には退院が可能」(0.9%)と続いた。さらに、近い将来の退院の可能性がない患者について、その理由を尋ねたところ、「精神症状・異常行動を伴うため、入院による身体合併症のケアが必要」(37%)が最も多く、以下は「(他害行為や大声を出す以外の)迷惑行為を起こす可能性が高い」(28%)、「介護が必要だが、本人の症状が落ち着かず、介護の支援があったとしても生活が組み立てられない」(10%)、「大声を出す可能性が高い」(7%)、「他害行為の危険性が高い」(6%)などと続いた。
 
 認知症以外の身体合併症の有無に関しては、「外来通院が適当な程度の身体合併症がある」(61%)が最多で、以下は「入院治療が必要な身体合併症がある」(26%)、「なし」(13%)となった。
 
 調査時点から過去1か月の精神状態・異常行動の頻度については、ほぼ毎日、意思の疎通が困難な患者は38%、ほぼ毎日、徘徊する患者は30%だった。また、「医療行為への抵抗」「自傷行為」「スタッフへの暴力」「異食」「職員とのトラブル」といった行動をほぼ毎日起こす患者は、いずれも1割に満たなかった。
 
■「認知症患者本人の意思も調査を」
 
 調査結果の報告を受けて行われた議論では、構成員から「この調査は病棟師長が答えたもの。入院している患者本人の希望についての調査があってもいいのではないか」(野村忠良・東京都精神障害者家族会連合会会長)、「入院している患者本人の意見を聴く努力をしないのでは、何のためにこの会をやっているのかと思う」(野澤和弘・毎日新聞論説委員)といった意見が相次いだ。柴田範子・NPO法人「楽」理事長は、「高齢者のほとんどは、自宅で生活したいと思っている。(入院している認知症患者についても)一度、自宅に帰すという挑戦をしてみることが重要ではないか」と提言した。
 
.最終更新:11月4日(木)23時36分

精神障害者の保護者制度、抜本見直しを
医療介護CBニュース 2010年11月1日(月)23時1分配信
 
 
内閣府の「障がい者制度改革推進会議」は、23回目の会合を開き、医療合同作業チームによる報告などが行われた(11月1日、東京都内)
 
 内閣府の「障がい者制度改革推進会議」は11月1日、23回目の会合を開いた。医療分野での障害者施策における論点を整理する医療合同作業チームのメンバーが、10月に開いた初会合での議論の内容を報告。精神障害者の医療保護入院などにおける責任者として当事者の親などを規定している精神保健福祉法の「保護者制度」について、抜本見直しを視野に議論していく方針などを示した。
 
 同チームの堂本暁子座長(前千葉県知事)は、▽「社会的入院」を解消し、自立した生活および地域社会への包摂のための施策の根拠となる規定を設ける▽医療保護入院に係る同意を含む「保護者制度」を解消するための根拠となる規定を設ける▽強制的な入院などの人権制約が行われる場合に適性手続を保障する規定を設ける―の3点について、議論を進めていくことを報告した。
 特に「保護者制度」については、精神保健福祉法により、精神障害者を親などの「保護者」の同意のみで医療保護入院させられることが、自己決定権の侵害だとして抜本見直しが必要だとしている。また、「保護者」の立場からも、医師への協力などの義務を課されることに対し、家族の負担が大きいとして問題視しており、自治体やその他の公的機関が責任を負う制度に改めることも視野に検討する。
 
 さらに、精神保健福祉法そのものの存廃も議論の対象として提示された。川崎洋子委員(NPO法人全国精神保健福祉会連合会理事長)はこの日の会合で、「保護者制度の解消は何としてもやりたい。今ここでしないと、『保護と収容』の生活が続く」と主張した。
 
 また会合では、障害者基本法改正案の各則関係部分の「国際協力」「選挙等」「公共的施設のバリアフリー化」に関しても話し合われた。とりわけ「公共的施設のバリアフリー化」では、建物などのハード面だけでなく、情報などのソフト面でのバリアフリー化を求める声が委員から上がった。ほかにも、「地方において駅や建物単体でのバリアフリー化が進む一方、それらをつなぐ交通面でのバリアフリー化が遅れている。切れ目のない移動手段の確保が必要」(尾上浩二・NPO法人障害者インターナショナル日本会議事務局長)との意見も出た。
 
.最終更新:11月1日(月)23時1分
 
 
 
 
 

2010.10.21キャリアブレイン
精神障害者の保護者と入院制度で検討チーム―厚労省
 
 厚生労働省は10月21日、「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」の第10回会合を開催した。会合では、11月から12月をめどに、精神障害者の保護者制度と入院制度のあり方について検討するワーキングチームを、同検討チームの第1期メンバーによる会合の下に設置すると報告。ワーキングチームでは、精神障害者の強制入院などの問題解決に向けて、両制度の問題点や改善点について議論する。
 
 今年6月に閣議決定された内閣府の障がい者制度改革推進会議による「障害者制度改革の推進のための基本的な方向」を踏まえ、「保護者に課せられた義務の法的意義とあり方」「医療保護入院等入院制度のあり方」を主な論点に、法律の専門家を中心とする構成員で議論。定期的に同検討チームの第1期メンバーによる会合を開いてワーキングチームの検討状況を報告し、来夏をめどに方向性を示す。
 
■「医療版小規模多機能が必要」
 
 また、同日開催された同検討チームの第2期会合では、認知症患者に対する精神科医療体制を再構築するための取りまとめの議論を行った。構成員からは医療へのアクセスの強い新たな介護施設として「医療版小規模多機能型居宅介護のような仕組みが必要なのではないか」(三上裕司・日本医師会常任理事)などの指摘があった。
 
 また、事務局が第2期の論点の一つとする「現在入院している認知症患者への対応および今後入院医療を要さない患者が地域の生活の場で暮らせるようにするための取り組み」について議論した。
 
 論点のポイントは、「認知症に対する医療側と介護側との認識を共有化するための取り組み」と「入院医療を要さない認知症患者の円滑な移行のための受け皿や支援の整備」の2つ。
 
 地域の受け皿の一つとして、小規模多機能型居宅介護の医療アクセスを強化した施設案が出たほか、事務局が論点の一つとして示した「退院支援・地域連携クリティカルパス(退院支援・地域生活医療支援計画)の導入」についての議論が目立った。
 
 構成員からは、「退院後の地域の受け皿をどうすべきかが重要」(河ア建人・日本精神科病院協会副会長)、「利用者不在の工程表にならない注意が必要」(長野敏宏・財団法人正光会常務理事)などの意見があった。
 
 
 

( 2010年10月21日 23:06 キャリアブレイン )

2010.10.29毎日新聞
障害者集会:新たな支援求め1万人が参加 東京で
 
障害者自立支援法に代わる新たな支援策の実現を求める参加者たち=東京都千代田区の日比谷野外音楽堂で2010年10月29日、野倉恵撮影 障害者自立支援法に代わる新たな支援策の実現を求める集会とデモ行進が29日、東京都千代田区の日比谷野外音楽堂と周辺で行われ、全国の障害者ら約1万人が参加した。
 
 集会では、厚生労働省の岡本充功政務官が「新たな総合福祉法制の検討では、透明性、公平性や財源が大切」とあいさつした。
 
 参加者を代表して、視覚障害者の織田津友子さんが「どの地域でも障害者が差別なく地域で暮らせる権利を保障してほしい」といったアピール文を読み上げた。【野倉恵】
 
毎日新聞 2010年10月29日 22時10分(最終更新 10月29日 22時15分)
 
 
 

2010.10.29キャリアブレイン
1万人超の障害関係者が「自立支援法の廃止を」
 
 日本障害者協議会などは10月29日、東京都千代田区の日比谷公園で、障害者自立支援法の廃止と、同法に代わる「障害者総合福祉法」(仮称)などの新法制定を訴える「10.29全国大フォーラム」を開催した。会場には、1万人を超える障害関係者が集まった。
 
 フォーラムでは、厚生労働省の岡本充功政務官があいさつし、2013年8月までの「障害者総合福祉法」(仮称)施行を目指すことが閣議決定されたことに触れ、「(障害関係者への)透明性と公平性のある安定した施策に向けて、一歩一歩だが確実に進めていく」と述べた。
 民主党政策調査会「障がい者政策プロジェクトチーム」の谷博之座長は、障害者自立支援法で医療費の自己負担上限額が設定されている自立支援医療について、「非課税低所得者の無料化を求める声が届いている。来年度の予算獲得に努力したい」との意気込みを示した。このほか、社民党や共産党などの国会議員も参加し、障害者自立支援法の廃止を訴えた。
 障害者基本法の改正案などについて議論している内閣府の「障がい者制度改革推進会議」の藤井克徳議長代理は、前通常国会で廃案になった障害者自立支援法の改正案に触れ、「今開かれている臨時国会で提出されないという話はない。提出されて成立すれば、障害者自立支援法の根を残す可能性もある」と懸念を示し、「今が大事な時期だ」と強調した。
 
 また、障害者の立場からは8団体が、それぞれの障害にかかわる問題を訴えた。その後、参加者は2組に分かれ、国会議事堂や東京駅周辺などを約1時間半かけてデモ行進した。
 
( 2010年10月29日 21:32 キャリアブレイン )
 
 
障害者支援制度に当事者の声を
10月29日 18時10分 NHKニュース

障害者支援の新たな制度作りが進められているなか、全国の障害者団体が東京で集会を開き、制度に当事者の声を十分反映させるよう訴えました。
 
この集会は、全国の障害者団体でつくる「日本障害者協議会」などが開いたもので、会場の東京・千代田区の日比谷公園には、障害者やその家族などあわせておよそ1万人が集まりました。障害者の支援制度をめぐって、国は、福祉サービスに原則1割の自己負担が必要な今の障害者自立支援法を廃止し、3年後までに新たな法律を制定する方針を示しています。集会では、新たな制度を議論するために国が設けた検討会のこれまでの経過が説明されました。そして、サービスの利用負担は経済状況や生活の実態を踏まえたものにすることや、障害の対象を発達障害や難病などにも広げることなどを盛り込んだアピールが採択され、主催者が「当事者の声を十分反映した法律にしてほしい」と訴えました。このあと参加者たちは、横断幕や旗などを掲げて「わたしたちの手で新しい法律を作ろう」などと訴えながら東京都心を練り歩きました。

2010.10.14キャリアブレイン
「認知症医療、医師対応だけでは限界ある」―厚労省検討チーム

   
 厚生労働省は10月14日、「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」の9回目の会合を開き、認知症患者に対する精神科医療体制を再構築するための取りまとめの議論に入った。事務局から認知症対策を議論した第2期(第5−8回)の論点が示され、構成員らからは「精神科医療=医師によるもの」では対応に限界があり、精神科医療にかかわるすべての職種との役割分担と連携が欠かせないとする意見があった。
 
 事務局は第2期の議論を「認知症患者に対する精神科医療の役割の明確化(論点1)」と「現在入院している認知症患者への対応および今後入院医療を要さない患者が地域の生活の場で暮らせるようにするための取り組み(論点2)」に整理。今回の会合では、論点1が中心に議論された。論点2は次回(21日開催予定)議論される。
 
 論点1のポイントは、「地域での生活を支えるための精神科医療」「認知症の周辺症状(BPSD)を有する患者への精神科医療」「身体合併症を有する認知症患者への入院医療」「地域全体の後方支援機能」の4つ。
 
 地域生活を支援する精神科医療について、事務局が「専門医の早期診断」「訪問診療・看護や24時間の電話対応」が必要とした点について、「担当する患者数が多くなると、医師が直接電話対応するには限界がある。地域生活を支援するには、医師とそのほかの職種との連携が欠かせない」(長野敏宏構成員=財団法人正光会常務理事)などの意見があった。認知症患者を支える地域づくりについては、「介護保険外の支援をする地域住民や関連事業を評価する仕組みが必要」(栗林孝得構成員=社会福祉法人雄勝福祉会平成園施設長)などの指摘もあった。
 
 
 

( 2010年10月14日 22:25 キャリアブレイン )
 
 
 

2010.9.30キャリアブレイン
 若年性認知症への対策を望む声も−厚労省検討チーム

   
 厚生労働省は9月30日、「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」の8回目の会合を開催した。会合では構成員らからのヒアリングを実施。構成員らからは、認知症患者を支える制度やサービスに関する情報提供を充実させるべきとする声や、若年性認知症への対策の必要性を訴える声が上がった。
 
 渕野勝弘構成員(医療法人社団淵野会緑ヶ丘保養園院長)は、身体合併症を抱える重度の認知症患者を受け入れるための「高度認知症病棟」(案)の創設を提案。また65歳未満で認知症を発症する人が全国で約3万8000人いるとされる点に言及し、「若年の認知症患者専用の施設の整備や、専門の医師やコメディカルスタッフの育成が不可欠」と主張した。
 
 河岸光子構成員は、認知症の家族を在宅介護した立場から発言。利用できる施設やサービスについて十分な説明を受ける機会があまりなかったことや、ショートステイの予約を取ることが極めて難しかったことなど、自らの体験を語った上で、「ソーシャルワーカーを増員するほか、家族が認知症の症状や各種の制度に関する十分な説明を受けられるようにしてほしい」と述べた。
 
 松本均構成員(横浜市健康福祉局高齢健康福祉部介護保険課長)は、2011年度から14年度にかけて、特別養護老人ホーム(特養)を毎年300床ずつ整備するなど、今後の同市の取り組みについて紹介。また、精神病床に入院している認知症患者の退院を促進するため、「患者がどの程度の医療や介護を必要としているか、よく分析する必要がある。同時に医療・看護・介護など認知症にかかわる関係者の連携と意識共有を図らなければならない」と述べた。
 

■「精神病床に認知症患者が入院しない工夫が必要」
 

 また、昨年11月から認知症患者に対する精神科訪問診療を手掛ける海上寮診療所(千葉県旭市)の上野秀樹副院長は、重症のBPSD(認知症に伴う各種の問題行動)を持つ患者を含め、既に約100人の患者を訪問診療したが、精神科に入院せざるを得なかった患者は3人だけだったことを報告。「医療機関側に『患者は入院させずに外来で支える』という強い意志があれば、訪問診療でも十分に対応できる。精神病床に入院している認知症患者の退院を促すだけでなく、認知症患者が入院しない工夫も必要」と指摘した。
 
( 2010年09月30日 23:31 キャリアブレイン )
 
 
 

2010.9.16キャリアブレイン
認知症支える医師足りない―厚労省検討チーム

   
 厚生労働省は9月16日、「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」の7回目の会合を開催した。会合では、在宅医療・介護で認知症患者を支える課題や取り組みについて構成員からヒアリングを実施。認知症に対応できる医療機関や医師の不足、リハビリテーションの重要性などが報告された。
 
 医療の立場から三上裕司構成員(日本医師会常任理事)は、認知症患者への専門医療の提供体制の確保と普及を図るため、認知症疾患医療センターの機能拡充と整備が必要と指摘。また、認知症に対応できる医師の資質向上や、専門医療と診療所などの地域との連携強化も図るべきとした。
 
 東憲太郎構成員(医療法人緑の風理事長)は、老人保健施設で試行的に行われた認知症短期集中リハビリテーションの有効性を強調。実施施設は昨年10月の調査時点で22.7%と1年前の約2倍になるなど、現場の支持を得つつあるとした。
 
 介護施設の立場からは、柴田範子構成員(NPO法人楽理事長)が認知症患者を「地域で暮らす生活者」として見る視点が重要と指摘。認知症になっても、人間としての尊厳を尊重し続けて最後を看取った介護者の事例などを紹介した。
 
 このほか、阿式明美構成員(特別養護老人ホーム長春苑施設長)、栗林孝得構成員(社会福祉法人雄勝福祉会平成園施設長)、松浦美知代構成員(医療法人財団青山会介護老人保健施設なのはな苑看護部長)が、認知症の介護や看護の現状と課題などを報告した。
 
 
 

( 2010年09月16日 21:29 キャリアブレイン )
 
 
 

2010.9.13キャリアブレイン
合併症抱える認知症患者への支援策求める声、相次ぐ―厚労省の検討チーム

   
 厚生労働省は9月13日、「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」の6回目の会合を開催した。会合では、認知症患者に対する治療内容や、精神科病院で認知症患者に行う医療の役割などについて、構成員からヒアリングを実施。構成員からは、特に身体合併症を抱える認知症患者への支援策の必要性を訴える声が相次いだ。
 
 ヒアリングでは、河ア建人構成員(日本精神科病院協会副会長)と三根浩一郎構成員(医療法人幸明会新船小屋病院院長)、長野敏宏構成員(NPO法人ハートinハートなんぐん市場理事)が発言した。河ア構成員は、入院治療が必要な身体合併症を抱えた認知症患者は、精神病床の入院患者の4分の1近くに達する一方、身体合併症の認知症患者の転院はスムーズに進まないと指摘。「重度の認知症と身体合併症を抱える患者に対応する精神病床の整備が必要」と訴えた。三根構成員も、認知症と身体合併症を抱える患者のための病床整備の必要性を述べた上で、「患者50人に対し、作業療法士や精神保健福祉士が1人では対応は困難」とし、人員配置基準を見直すべきと主張した。
 
 また、長野構成員は愛媛県愛南町における認知症地域ケアの取り組みなどについて紹介。同町における精神科医療全般の課題として、「住居、在宅サービス、施設サービス、医療、リハビリ、家族支援、多機関連携、経済など、すべての『量』が不足している」と指摘した。また、精神科への入院については、「病棟は一生を終える場所ではない。BPSD(認知症に伴う各種の問題行動)が著しいなど、どうしても必要な場合だけ、短期間限定で利用するよう、工夫すべきではないか」と述べた。
 

 このほか、構成員からは「認知症と身体合併症を抱える患者を診るための医療センターを整備すべき」(岡崎祐士・東京都立松沢病院院長)、「入院を大前提に考える前に、在宅でどれだけ支えられるかを考えるべきではないか」(柴田範子・NPO法人楽理事長)などの意見が上った。
 
 
 

( 2010年09月13日 23:06 キャリアブレイン )

2010.9.2キャリアブレイン
地域精神医療体制の検討チーム、第2期スタート―厚労省
   
 厚生労働省は9月2日、「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」の5回目の会合を開催した。地域精神保健医療のアウトリーチ体制の具体化を検討した第1期(今年5−6月)に代わり、認知症患者と精神科入院医療の議論を行う第2期の初会合という位置付け。
 
 第2期の論点は「認知症患者に対する入院医療の役割の明確化」「入院中の認知症患者への対応」「入院する必要のない人が入院を継続しないための取り組み」の3点。足立信也政務官は初会合で、「現状の医療保険と介護保険の範囲に限らず、本来どうあるべきかの議論をしてもらいたい」と述べた。
 
 検討チームの構成員からは、「財源や住宅の確保などを考えると、財務省や国土交通省も含めた省庁間の連携が欠かせない」「退院可能な患者は介護施設で積極的に受け入れるべき。介護保険料の引き上げを覚悟して介護施設での受け入れ体制を整備すべき」「認知症に対する医療、介護、地域の役割をそれぞれ出し合って、それぞれに何が欠けていて何が必要かを洗い出す必要がある」などの意見があった。
 
 今後、月内に3回会合を開き、「認知症患者に対する治療内容と治療経過」「精神科病院で認知症患者に行う医療の役割」「認知症の福祉・介護サービス利用者への対応」などについて構成員からヒアリングする。
 
 
 

( 2010年09月02日 22:05 キャリアブレイン )

2010.10.21キャリアブレイン
精神障害者の保護者と入院制度で検討チーム―厚労省
 
 厚生労働省は10月21日、「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」の第10回会合を開催した。会合では、11月から12月をめどに、精神障害者の保護者制度と入院制度のあり方について検討するワーキングチームを、同検討チームの第1期メンバーによる会合の下に設置すると報告。ワーキングチームでは、精神障害者の強制入院などの問題解決に向けて、両制度の問題点や改善点について議論する。
 
 今年6月に閣議決定された内閣府の障がい者制度改革推進会議による「障害者制度改革の推進のための基本的な方向」を踏まえ、「保護者に課せられた義務の法的意義とあり方」「医療保護入院等入院制度のあり方」を主な論点に、法律の専門家を中心とする構成員で議論。定期的に同検討チームの第1期メンバーによる会合を開いてワーキングチームの検討状況を報告し、来夏をめどに方向性を示す。
 
■「医療版小規模多機能が必要」
 
 また、同日開催された同検討チームの第2期会合では、認知症患者に対する精神科医療体制を再構築するための取りまとめの議論を行った。構成員からは医療へのアクセスの強い新たな介護施設として「医療版小規模多機能型居宅介護のような仕組みが必要なのではないか」(三上裕司・日本医師会常任理事)などの指摘があった。
 
 また、事務局が第2期の論点の一つとする「現在入院している認知症患者への対応および今後入院医療を要さない患者が地域の生活の場で暮らせるようにするための取り組み」について議論した。
 
 論点のポイントは、「認知症に対する医療側と介護側との認識を共有化するための取り組み」と「入院医療を要さない認知症患者の円滑な移行のための受け皿や支援の整備」の2つ。
 
 地域の受け皿の一つとして、小規模多機能型居宅介護の医療アクセスを強化した施設案が出たほか、事務局が論点の一つとして示した「退院支援・地域連携クリティカルパス(退院支援・地域生活医療支援計画)の導入」についての議論が目立った。
 
 構成員からは、「退院後の地域の受け皿をどうすべきかが重要」(河ア建人・日本精神科病院協会副会長)、「利用者不在の工程表にならない注意が必要」(長野敏宏・財団法人正光会常務理事)などの意見があった。
 
( 2010年10月21日 23:06 キャリアブレイン )

2010.10.22毎日新聞
うつ病:運動療法が効果 薬効きにくい人も改善 再発率低く

 
歩き方を指示する鈴木宏医師(右)。背筋を伸ばし、大またでかなり速く歩くことが必要だ=東京都豊島区で うつ病を運動で治す試みが注目されている。薬の効きにくい人が改善することがあるほか、再発率が低いとの研究成果も出ている。
 
 首都圏に住む30代の男性会社員は、自宅近くを15分、週4回速歩きをしている。腕を大きく振り、ハアハアと息が弾むほどのスピードを保つ。終わるとじっとり汗をかく。2カ月後、気分が晴れてきたのを実感するようになった。
 
 「うつうつと家に閉じこもっていたが、今は友人とお茶をしたり、人と積極的にかかわれるようになった」と男性は話す。10年以上抗うつ薬を飲んでいるが、これほど変わったのは初めて。両親と電話で話すと「声が明るくなった」と言われた。夜寝て朝起きる規則正しい生活になり、会社への復職を考え始めている。
 
 男性が通う「青葉こころのクリニック」(東京都豊島区)の鈴木宏医師は「運動すると気分がすっきりして前向きになれる」と話す。大事なのは、一人一人に適した強度と頻度の運動を一定期間続けることだ。クリニックは患者の脈拍や最大酸素摂取量を測り、速度や運動量を指示。患者は週3〜4回、計1時間程度の速歩きをする。
 
 歩くときは、信州大医学部が開発した計測器を腰につけ運動量を測る。「記録を確認できるので意欲が続きやすい」と鈴木医師。昨年の開院後、延べ約20人が取り組み、続けられた17人のほぼ全員に効果があったという。
 
 運動療法は、自殺を考えるような重いうつ病患者には勧められないが、軽症から中等症のうつや、自分の好きな仕事や活動の時だけ元気になる新型うつにも効果がみられるという。
 
 米国デューク大の調査では、薬物療法の後にうつ病を再発した人は38%だったが、運動療法をした人の再発率は8%だった。鈴木医師は「人には自然回復力がある。運動は主体的に取り組むためか、再発しづらい印象がある」と話す。
 
 専門知識が必要なため、運動療法を行う診療所はほとんどなく、健康保険もきかない。鈴木医師は、信州大運営のNPO法人で1カ月1万2600円で指導している。
 
 □   □
 
 聖路加看護大の小口江美子教授(予防医学)らは08〜10年、薬が効かないうつ病患者4人に運動療法を併用したところ、うつ状態が改善し、日本精神神経学会などで発表した。休職・休学中だった4人は、4カ月〜1年6カ月にわたってウオーキングに取り組み、全員が会社や大学に戻れた。
 
 「朝起きられず午前の活動が苦手なうつ病の人たちに、運動を日課にしてもらうのは大変だった。でも最後には笑顔も見られるようになり、歩く習慣も根付いた」と小口教授。
 
 うつの程度を測るハミルトンうつ病評価尺度(23以上は重症、7以下は回復)を調べたところ、ある大学生は運動前に22ポイントだったのに終了後は7ポイントに下がっていた。
 
 なぜ、運動すると気分が安定するのか。
 
 生物学的には、脳血流や脳内の神経伝達物質が増え、ストレスホルモンが安定するとされている。共同研究した慶大医学部の渡辺衡一郎専任講師(精神神経科学)は「ひきこもりがちの患者さんに日課ができることは大きい。定期的な体力測定で体力増強がわかり、励みになって意欲が増し、うつ症状の改善につながった可能性がある」と話す。
 
 各国では、運動の効果は認められつつある。渡辺講師によると、英国や米国テキサス州の治療ガイドラインは、軽症うつに運動を勧めている。
 
 慶大病院では年内にも、軽症者数十人を集め12〜16週間にわたってウオーキングやジョギングの運動療法を試み、効果を確かめる研究を始める。冨田真幸助教(同)は「一人一人の体力にあった運動量をアドバイスする、テーラーメードの治療を行う。将来的には、運動でうつを予防する取り組みにつなげたい」と話している。【山本紀子】
 
毎日新聞 2010年10月22日 東京朝刊

アルコール依存 早期発見に賞

20101022日朝日新聞三重

依存症者への介入法を医師や看護師に説明する猪野亜朗さん(右)=四日市市芝田2丁目


精神科医+内科医+地域が連携「三重モデル」

 保健衛生の向上に貢献した団体や個人に贈られる第62回保健文化賞(第一生命保険主催、朝日新聞厚生文化事業団など後援)に、三重県アルコール関連疾患研究会が選ばれた。全国に先駆けて精神科医と内科医が連携してアルコール依存症を早期に発見する「三重モデル」と呼ばれる態勢をつくったことが評価された。贈呈式は26日、東京である。(斉藤佑介)

 アルコール依存症は健康を害するだけではなく、飲酒運転や暴言、暴力、家庭崩壊につながる。自殺予防総合対策センターが昨春まとめた調査では、自殺者の4人に1人が酒がらみのトラブルを抱え、その半数が自殺時にも飲酒していたとして、自殺の背景に飲酒問題があると指摘した。

 「精神科医と内科医が呼応し、早期に発見、対処することが重要。早く専門医にかかれば回復する」と、かすみがうらクリニック(四日市市)の副院長で、研究会代表の猪野(いの)亜朗(あろう)さん(68)は話す。

 アルコール専門の精神科医の猪野さんらは1970年代、依存症者の自助グループ「断酒の家診療所」(津市)を立ち上げた。

 だが90年代まで、一般病院や内科医からアルコール専門の医療機関に紹介されるケースは少なく、一般病院で受診後、専門医に紹介されるまでにかかった期間は96年時点で平均7年以上だった。そのため、末期症状に進むケースが後を絶たなかった。

 猪野さんは96年、内科医と精神科の専門医が連携し、早期治療のためのネットワークをつくろうと、高瀬幸次郎・県立総合医療センター院長らと研究会を発足。現在、医師ら34人で運営する。

 年2回、総合病院で講座を開き、依存症の診断や患者の話に耳を傾けて専門治療へと結びつける介入法などを指導してきた。

 これまでに、県内にある100床以上の公的・一般病院の21病院のうち19病院で講座を開き、1600人以上が参加。内科医のほか、看護師や保健師、ソーシャルワーカーから消防士まで参加し、地域ぐるみで依存症の解決に取り組む態勢は「三重モデル」と呼ばれるようになった。

 また、四日市市では、一般病院、保健所、企業の産業医、市医師会が連携して「四日市アルコールと健康を考えるネットワーク」(代表・高瀬院長)ができるなど、現在、依存症者の県内の専門医療機関への紹介は、平均3年未満に短くなった。

 猪野さんは「救急外来に、多量飲酒の患者が運ばれている。依存症との関連も指摘され、救急医の負担になっている可能性がある。消防や救急医との連携を深め、解決の一助となりたい」と話す。

 依存症に関する相談は、県立こころの医療センター(059・235・2125)、かすみがうらクリニック(059・332・2277)へ。


2010.10.18毎日新聞
向精神薬:生活保護で無料入手、ネット転売し月50万円不正取得(上)

 
精神疾患を装って集めたという向精神薬。「裏サイト」などを通じて転売していた 生活保護受給者が医療機関で大量入手した向精神薬を転売する事件が相次いでいる。医療費が無料となる生活保護制度を悪用した貧困ビジネスの一つとされるが、転売に関与していた大阪市内の30代男性が毎日新聞の取材にその実態を証言した。生活保護を受給しながら、多い時は薬の転売だけで月50万円を得ていたという。男性は「生活保護は金になる」と言い切る。その手口とは−−。【藤田剛】
 
 向精神薬の転売を始めたのは約4年前。「薬は高く売れる」と知人から聞いたのがきっかけ。大阪市内の総合病院の精神科を受診、「うつ状態になる」「幻聴や幻覚に悩まされる」と精神疾患を装うと、簡単に薬の処方を受けることができた。「医師から症状の偽装を疑われたことはない。求めればすぐ薬を処方してくれた」と話す。
 
 その後、生活保護受給者なら医療費がかからないことを知り、受給者となった上で、向精神薬の入手を続けた。薬はハルシオンやエリミンなどの睡眠薬と、レキソタンやワイパックスなどの精神安定剤。計7〜8種類あった。4病院で受診して、1カ月に1種類あたり約220錠を入手することもあったという。こうして集めた薬はすべて転売した。
 
 販売は主に「裏サイト」と呼ばれるインターネット掲示板などを利用した。連絡先は、他人名義で登録された「飛ばし携帯」の電話番号。授受は手渡しが大半だったが、振り込みでの決済を求められれば他人名義の口座も利用した。足が付きにくい大阪市西成区の露天商などを通じて売ることもあった。
 
 客の要望に応えるため、薬の効能も研究。図書館で薬の専門書を読みあさり、“売れ筋商品”も把握した。人気の睡眠薬は1シート(10錠)あたり5000〜7000円で売れたというが、病院ではこうした薬を指定して求めることもあった。「前に使っていた」と言うと、怪しまれることはなかったという。
 

2010年10月18日
 

2010.10.18毎日新聞
向精神薬:生活保護で無料入手、ネット転売し月50万円不正取得(下)

 
精神疾患を装って集めたという向精神薬。「裏サイト」などを通じて転売していた また男性は、生活困窮者らを囲い込んで、生活保護費をピンハネする「囲い屋」にも手を染めていた。西成区の公園などでホームレスに声をかけ、アパートをあっせんして生活保護の申請に同行。保護費から月7万〜8万円を徴収した。「ホームレスには、まずカップ酒をあげて仲良くなる。相手を警戒させないのがコツだ」と話す。利益は月に約200万円にも上った。
 
 ブランド品を身につけ「旅行や遊びを繰り返した」という男性。「役所も病院もチェックが甘すぎる。生活保護は天国のような制度」と声を潜めた。
 
 ◇病院の処方にも問題
 転売を巡っては、厚生労働省も事態を重視。今春、実態調査したところ、今年1月に精神科に通院した受給者のうち2555人が複数の医療機関から重複して処方を受け、うち1797人に対する処方が不適切だったと判明。自治体にレセプト(診療報酬明細書)点検の徹底を要請した。
 
 一方、今回の男性のような転売行為が事件になるケースも。神奈川県警は4月、大阪市西成区の受給者を通じて薬を仕入れていた男を麻薬及び向精神薬取締法違反容疑で摘発。大阪府警も8月、処方せんをカラーコピーして薬局から薬を入手したとして、女を詐欺容疑で逮捕している。
 
2010年10月18日
 

2010.10.17毎日新聞
精神科訪問診療:実施訴える集い、平塚で22日開催 /神奈川

 精神障害者が地域で暮らせるよう、県精神障害者家族会連合会(神家連)と湘南社会復帰協会は22日午後0時半から、精神科の訪問診療の実現を考える「県民の集い」を平塚市中央公民館で開く。
 
 精神科の訪問診療・在宅ケアは、入院中心の治療を見直し、医療や福祉の多職種のチームが24時間体制でケアしながら社会復帰までの支援をする米国で始まったACT(包括型地域生活支援)という取り組み。国内でも静岡や岡山など12カ所で実践されているが、県内で取り組む医療機関はまだない。
 
 当日は京都で04年から在宅ケアを続けている高木俊介医師が講演。高木医師や県精神保健福祉センターの桑原寛所長らによる「ACTかながわを目指して」と題したパネルディスカッションが予定されている。午前10時〜午後3時には同公民館3階で患者の家族向けに相談会も開く。
 
 申し込み不要で参加無料。問い合わせは神家連(045・821・8796)。【百武信幸】
 
毎日新聞 2010年10月17日 地方版

てんかんの仕組み、興奮抑え役の細胞が逆作用? 玉川大
2010年10月17日9時50分朝日新聞

    
 神経の興奮を抑える細胞が、逆に興奮して、てんかんを起こしている可能性があることを玉川大学の磯村宜和(よしかず)教授らのグループが見つけた。薬が効きにくいタイプのてんかんの仕組みの解明や薬開発につながりそうだ。13日付米専門誌に発表する。
 
 てんかんは、神経細胞が過剰に活動して起こる。グループは、ネズミの脳の一部を薄く切ったものに、電気刺激を加えた。多数の神経細胞が同じタイミングで過剰に活動し、てんかんと同じ状態になったところで、詳細に調べた。
 
 通常は、神経細胞の活動を抑える働きをもつ「介在細胞」が、逆の作用をして神経を興奮させていることを見つけた。介在細胞の働きを弱める薬で、興奮を抑えることもできた。
 
 抗てんかん薬の中には、介在細胞の働きを強めるものがある。「薬が効かないタイプのてんかんの一部は、今回、見つけた仕組みで説明できる可能性がある」と磯村教授は話している。(瀬川茂子)
 
 

2010.10.14毎日新聞
キャンパス・デイケア:精神疾患治療と学業両立 支援態勢確立−−和歌山大 /和歌山
 ◇医師や看護師常駐
 和歌山大学(和歌山市栄谷、山本健慈学長、約4000人)は、精神障害と診断された学生が医師や看護師らの治療や支援を受けながら通学できる「キャンパス・デイケア」を、校内で本格的に始める。病気と上手につき合いつつ学べる態勢作りで、全国の大学でも珍しい試みという。
 
 同大によると、精神障害と診断される学生が増えている。1982〜92年には計100人だったが、93〜03年は計328人に上った。精神疾患を抱えた学生を支援しようと、同大は04年にサポート室を開設し、現在は年間延べ1500人以上が利用している。
 
 デイケアは、支援態勢をさらに発展させる試み。精神科医1人と常勤看護師2人のほか、非常勤のカウンセラー(臨床心理士や精神保健福祉士)が、同大保健管理センターに常駐する。
 
 対象は、同大の健康診断で、統合失調症▽感情障害(そううつ病)▽摂食障害−−と診断された学生のうちの希望者。今年の場合、精神障害と診断された127人のうち、この3疾患と診断された人は計約40人だった。
 
 3疾患に診断された人は、従来は休学して医療機関で治療やリハビリに専念した後、復学する場合が多かった。デイケアの設置で、大学生活を送りながらの治療が可能になるという。
 
 デイケアでは、適切な量の薬を正しい時間に飲んだり、規則的に食事をとったりするよう指導。人間関係の築き方も助言する。集団療法では、論文の仕上げ方や就職活動の方法など、「大学生活でのスキルアップ」を図る。さらに、かつて同様の支援を受けた先輩学生や卒業生のグループが、仲間作りを手伝う。
 
 11月にもセンターは改修を終え、キャンパス・デイケア室などがオープンする予定。精神科医で同センター所長の宮西照夫教授は「心や体の悩みを抱えながらも大学生活を達成できれば、自信が生まれて回復にもつながる」と話している。【久木田照子】
 
毎日新聞 2010年10月14日 地方版
 
和大生の悩み 大学でケア
2010年10月07日朝日新聞
 
◎統合失調症・気分障害・ひきこもり/生活面、医師ら手助け
 
 精神障害を抱える大学生をサポートしようと、和歌山大学(和歌山市栄谷)は、学内で専門家が治療、支援する「キャンパス・デイケア」を今月半ばにも始める。精神科医と看護師計3人が「保健管理センター」に常駐し、薬の飲み方や食事の生活指導などにあたる。(直井政夫)
 
 ケアを始める背景には、統合失調症、気分障害(うつ病など)、ひきこもりなどメンタルな問題をもつ学生の急増がある。保健管理センターの精神科医が治療や支援をしている学生は6月時点で127人。09年の同時期は119人だった。近年、急増しているという。
 
 センター所長の宮西照夫教授は「欧州では、学生のケア態勢が整っている大学が多いが、日本ではほとんど整備されていない」と訴えた。
 
 「デイケア」は、学生と接しやすい学内で治療、支援するのがねらい。センター内に面談や指導をする部屋を設け、精神科医の宮西教授と看護師2人が午後2時から3時間半ほど常駐する。精神保健福祉士と臨床心理士各1人が非常勤のカウンセラーを務める。
 
 スタッフは病状や治療の状況を調べ、服薬、食事、生活面の個人指導をするほか、対人関係の築き方や会話力を磨く集団指導もする。
 
 「デイケア」は3年前から試験的に始まり、成果を上げてきたという。宮西教授は「学生に身近な大学でサポートするのが効率的で、再発を防ぐ意味でもベスト。学生を支援するのは、大学として当然だ」と話した。

震災障害者「精神・知的」も調査開始 県と神戸市」
(神戸新聞 2010/10/13 08:40)
 
震災障害者「精神・知的」も調査開始 県と神戸市 
 阪神・淡路大震災で負傷し、後遺症が出た「震災障害者」の実態把握を進める兵庫県と神戸市が、原因特定が難しい精神・知的障害者の調査に乗り出したことが12日、分かった。これまで兵庫県と神戸市は、身体に障害が残った被災者に限って被害を確認してきたが、今後は対象を拡大し、さらに把握を進める。
 

 兵庫県は今年4月、被災者支援の枠組みから取り残されてきた震災障害者の実態を把握するため、震災後に身体障害者手帳を交付した人を対象に調査を開始した。
 
 8月には、震災が原因と特定できた障害者について、神戸市把握分と合わせて328人(うち死亡117人)‐との中間集計をまとめた。この際、県は「精神・知的障害者についても調査実施を検討する」としていた。
 
 調査は、兵庫県と神戸市が1995年1月以降に障害者手帳などを交付した精神・知的障害者約4万人が対象。手帳申請時の書類に、障害の理由を「震災」などと記述している人の抽出を始めた。
 
 ただ、精神・知的障害は原因の特定が難しく、震災との因果関係があいまいなケースもあるとみられる。今後、家族との死別や復興過程で心の病になった人を含めるかなど、精査が必要となる。
 
 また、兵庫県などは災害時の負傷者対策につなげるため、身体の震災障害者に被災場所や治療経緯などを尋ねるアンケートを今月中にも実施する。精神・知的障害者については、専門家の意見を聞きながらアンケートが可能かどうかを検討する。
 
(井関 徹、黒田勝俊)
 
 
 
「精神的後遺症も調査開始 阪神大震災障害者の対象拡大」
(共同通信 2010/10/12 20:17)
 
精神的後遺症も調査開始 阪神大震災障害者の対象拡大
 兵庫県が阪神大震災で精神的な後遺症や知的障害を負った人の実態調査を始めたことが12日、県への取材で分かった。これまでは、けがなどで体に障害を負った人を「震災障害者」として調査してきたが、災害対策を充実させるためには対象拡大が必要と判断した。
 
 県によると、調査対象は1995年1月17日の震災発生から今年3月末までに、自治体に障害者手帳の交付を申請した精神障害者や知的障害者。添付された医師の診断書で、震災が原因と判断できる人を新たに震災障害者に含める。現在、神戸市と協力して診断書の確認作業を進めている。
 
 今月中に、震災障害者を対象に被災直後の様子や治療状況などに関するアンケートを実施する。精神障害者らについては、医師らと検討して回答に支障がないと判断した場合のみ実施する。
 
 県はことし8月に震災障害者が328人(うち死亡者117人)に上るとの結果を発表。精神障害者らについては、原因の特定が難しいとして調査対象に含めていなかった。
 
  【共同通信】
 
震災障害者(2010年7月30日)阪神大震災で重傷を負い後遺症のある被災者。これまで追跡調査が行われず、実態が分かっていなかった。震災の混乱で病院が正常に機能せず、平常時のような適切な治療が受けられなかったり、避難生活などの心理的負担で症状が悪化したりした例もあるとされる。中井洽防災担当相はことし3月「災害で障害を負った人のケアは本当に遅れている」と述べ、取り組みを強化する方針を示した。
精神障害者(2005年10月1日)統合失調症、そううつ病、神経症、アルコール依存症など精神にかかわる病気の患者。厚生労働省の統計によると、総数は約227万人。約3割を占める統合失調症は幻覚や妄想、意欲低下などの症状を伴う精神疾患で、発症は100人に1人程度とされる。入院中の精神障害者は約33万人。このうち受け入れ条件が整えば退院できる「社会的入院」患者が約7万人とされ、治療の重点は病院などの医療機関から地域社会に移りつつある。
 
 
 
 
 
震災障害者、県も調査へ 専門家ら指摘で方針転換(2009/12/23) 神戸新聞
震災障害者、県も調査へ 専門家ら指摘で方針転換

 兵庫県は、阪神・淡路大震災で重傷を負い、後遺症が出た「震災障害者」について、実態調査に乗り出す方針を固めた。今後、専門家らに依頼し方法や実施機関などを検討、2010年度に調査したい考え。同様の調査は既に神戸市が実施の意向を示しており、震災発生から15年を前に、震災障害者対策に向け、行政がようやく動き出した。(石崎勝伸)
 

 総務省消防庁によると、震災による重傷者は1万683人。後遺症の出た人数は、両足の機能を完全に失うなど災害障害見舞金の支給対象となった最重度の63人しか分かっていなかった。県内では政令指定都市の神戸市を除き、県が障害者手帳申請の審査を担当するが、これまで「支援内容を障害の原因によって変えるべきではない」と震災障害者の実態を調査してこなかった。
 
 しかし、専門家らによる県の「復興フォローアップ委員会」(座長=室崎益輝・関西学院大教授)が今月1日、治療の遅れなど災害時特有の要因がある可能性も踏まえ、実態把握の必要性を指摘。これを受け県も従来の方針を転換、調査に乗り出すことになった。
 
 具体的な調査内容、方法は同委員会に検討を依頼。来年3月に同委がまとめる復興施策の提言に基づいて実施機関などを決定する。
 
 県復興支援課は「重傷者の中でどれくらいの人に障害が残ったかなど、大災害の影響を探ることができれば。調査結果を見た上で、今後の施策にどう生かすか判断したい」としている。
 
(2009/12/23)

2010.10.6読売新聞
「触法精神障害者」社会復帰へ 県、草津に入院機関

近畿3か所目 2013年度開設 費用12億円 国庫負担で
 県は5日、殺人など凶悪事件を起こし、心神喪失などを理由に刑事責任を問えない「触法精神障害者」について、社会復帰させるための国指定の入院機関を県立精神医療センター(草津市)に2013年度に開設させることを明らかにした。建設費は12億円を見込んでおり、全額が国庫負担で実施する。県は基本・実施設計費として、県議会に提案中の補正予算案に約510万円を計上しており、来年度予算にも約4600万円を盛り込む。大阪、奈良に次いで、近畿で3か所目。
 
 国は2005年の医療観察法施行以降、入院機関の全県整備を目標に各県に設置を呼びかけているが、県内では医師確保に難航して整備が先送りされてきた。
 
 入院の必要がある精神障害者は県外施設へ入院し、退院後は滋賀に戻って社会復帰を目指すという形を取っているが、精神科医3人が着任できる見通しがつき、事業実施が決まった。
 
 対象は、殺人や放火など凶悪犯罪を起こしたが、心神喪失や心神耗弱を理由に不起訴処分になったり、裁判所から無罪判決を受けたりして、裁判所の審判で入院が決定した精神障害者。18か月間をめどに、精神科医や精神保健福祉士が作成した専門のプログラムに沿って社会復帰を目指す。
 
 施設は同センターの敷地内に、2階建ての専用病棟(23床、延べ床面積約3030平方メートル)を増設。病棟は二重扉など特殊な構造にし、夜間は警備員を置くなどの措置も取られる。
 
 県病院事業庁は「文化や言葉の問題から、入院から社会復帰まで地元で調整した方が復帰率が高まる、という統計もある。地域の理解を得ながら、障害者の社会復帰の流れを作っていきたい」としている。
 
(2010年10月6日  読売新聞)

2010.10.05共同通信
精神障害者支援の賞で募集
 
 NPO法人地域精神保健福祉機構 (通称コンボ、千葉県市川市)は、精神障害者の社会参加や自立に取り組む個人や団体を支援する「精神障害者自立支援活動賞(リリー賞)」の候補者を募集している。
 対象は精神障害の当事者で、本人やほかの精神障害者の自立支援活動を1年以上にわたって行っている個人またはグループ。今回は7回目で、2組を選考し、それぞれ表彰状と副賞100万円を授与する。募集は年末まで。
 同機構は「より多くの人が統合失調症などの精神疾患に対する正しい理解を深め、より良い環境整備の一助としたい」としている。問い合わせは募集事務局、電話047(320)3870。
リリー賞募集のお知らせ (2010-08-27)
 
困難な状況を克服して社会参加を果たされた精神障害の方々の中から、特に優れた活動をなさっている方を表彰し支援します。この賞をとおして、精神保健福祉に貢献されている方々の姿を社会に広く紹介することで、医療と社会の環境整備や充実に寄与し、精神障害(特に統合失調症)に関する理解を深める一助となることを目的にしています。
 
【募集期間】
 2010年9月1日(水)〜12月31日(金)  ※当日消印有効
 
【応募資格】
精神障害の当事者で、ご自身の自立または他の精神障害者の自立支援活動を、1年以上にわたって行っている個人または当事者グループ
 
【表彰および副賞】
@2組の個人またはグループを表彰します
A受賞者には、表彰状と副賞(100万円)を授与します
B都内で授賞式を開催します(2月中旬を予定)
 
 

COMHBOとは(概要)特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構・コンボ
Community Mental Health & Welfare Bonding Organization
精神障害をもつ人たちが主体的に生きて行くことができる社会のしくみをつくりたい。
そのために、私たちは、地域で活動するさまざまな人たちと連携し、科学的に根拠のあるサービスの普及に貢献します。
 
■コンボは、これからの10年、以下の課題に力を入れて活動します。
 
・当事者、家族および専門職を対象とした情報提供
・ACT・家族心理教育・就労支援など科学的根拠にもとづく
  プログラムの実践および普及活動
・精神科治療薬の多剤大量処方の是正に関する諸活動
・学校に精神保健福祉教育を取り入れるための諸活動と
  早期介入プログラムの導入
・世界レベル・全国レベルの迅速で、正確な、役立つ情報提供と
  国際交流・全国交流
・当事者の視点、科学的根拠にもとづく実践プログラムの観点から、地域精神保健福祉の発展に資する活動
 
■地域精神保健福祉機構・コンボとは
 
平成19年2月にスタートした新しい団体です。英語名=COmmunity Mental Health& welfare Bonding Organizationの頭文字をとって、COMHBO(コンボ)と称します。
 
■コンボは次のような団体であることを常にめざしています。
 
@ 精神障害をもつ人たちやその家族等、当事者の視点を活動の中心にすえる
 
医療・福祉などさまざまな現場において、当事者は受け身の立場におかれがちです。私たちは、当事者が主体的に生きていくことができる環境づくりをめざすにあたって、当事者の視点を活動の中心にすえていきます。
A 科学的な根拠に基づく精神保健医療福祉サービスの普及活動を進める
 
精神障害者やその家族は、有効性について科学的な根拠があり、質の保証されているサービスを受ける権利を持っています。私たちは、そのようなサービスに関する情報提供と技術支援を積極的に行ない、サービスの普及と、社会の意識変革と実施システムの構築に貢献します。
B 志を同じくする人や団体が有機的に連携し、地域精神保健福祉の向上をめざす
 
さまざまな立場の人間が有機的に連携をすることが可能であれば、私たちはより物事を多面的・総合的・創造的に考えることが可能となるでしょう。地域の草の 根的活動が大きなパワーとなり、望ましい社会の実現に多大な貢献をすることでしょう。私たちは立場・職種・領域にとらわれない自由闊達な組織をめざしてい ます。
 
 

 「こころの元気+」は2007年3月に創刊されたメンタルヘルスマガジンです。メンタルヘルスというと、医療的な知識が中心の雑誌をイメージされると思います。もちろん、医療的な知識はとても重要です。ですから、この雑誌には、最新の知識に基づく医療的な情報もたくさん掲載しています。それを書いてくださる筆者の方も、第一線で活躍されている方ばかりです。
 
 でも、この雑誌では、そうした医療的な知識以外にも大切にしていることがあります。それは、同じ病気を経験した人の生の声です。
 他の人はいったいこんなときに、どうしているんだろう? そんなことを考えることはないでしょうか? この雑誌には、毎回いろいろなテーマで、同じ病気を経験した人たちの体験談をたくさん掲載しています。
 
 どんな雑誌をつくるのか――。
「こころの元気+」を初めてつくるときに、私たちは時間をかけて議論しました。
 そのときに、次のようなことを話しました。
 
 精神疾患は慢性化することが多いので、将来に対する不安がつきまといます。そのため、病気についての正しい知識を知り、「病気とつきあう」ことが大切です。慢性化する病気は人生の方向性に大きな影響をもたらします。病気のために、仕事をやめざるを得ない、結婚がしにくい、離婚せざるを得ない――。
 
 そのような場面に遭遇したときに、どうしたらよいのか。自分の生き方・将来をどのようにしたらよいのか、他の人はどうしているのか…。
 そうしたことを考えなくてはいけない場面が必ずといってよいほど訪れます。
 
 そのときに、だれでも、挫折感をもち、自信を喪失してしまう、などの経験をします。私たちコンボは、そうした挫折感から抜けだし、再び自信をもてるような雑誌にしたいと考えました。そうした本人向けの雑誌はこれまで日本にはありませんでした。
 
 この雑誌は、そのような情報を提供するための唯一の雑誌として創刊しよう。そうした思いからこの雑誌が誕生しました。今後とも「こころの元気+」をよろしくお願いいたします。

2010.10.3共同通信
心の病、国挙げて対策を 基本法成立求めフォーラム

 心の病の専門家や当事者らが3日、東京都内で「こころの健康国民フォーラム」を開き、「精神疾患対策に国を挙げて取り組むために『基本法』の制定を」と訴えた。
 
 フォーラムには約500人が参加し、複数の国会議員も出席。厚生労働省の藤村修副大臣は「うつ病は国民的な病気となっており、国も対策を進める」と述べた。
 
 専門家は、自殺や引きこもりといった社会問題の背景に精神疾患があると指摘。がんや循環器疾患と並ぶ「三大疾患」に位置付け、優先的に対策を行うべきだと強調した。具体例としては、重症化を食い止めるため、地域の支援体制を整備したり、医療従事者のチームが当事者宅を訪問したりすることが挙げられた。
 
 うつ病患者の黒川常治さん(41)は当事者の立場から「誰もが精神疾患になりうるが、今は必要な人に支援が届かず、当事者への偏見もある。社会で問題を共有することが必要だ」と訴えた。
 
 フォーラムでは、心の健康を守る国の「基本法」制定のため、100万人を目標に署名運動を行うことも確認された。
 
2010/10/03 17:48   【共同通信】

入院患者の2割が医師の薬剤投与が原因で健康被害 京大研究チームがまとめ
2010.9.28 22:18産経新聞

  入院患者のうち約2割に薬剤投与が関連する健康被害があることを、京都大大学院医学研究科の森本剛講師(総合内科学)らの研究チームがまとめ、28日発表した。100回の入院で29件発生する計算になるという。同様の研究は日本では初めて。28日付の米内科雑誌「ジャーナル オブ ジェネラル インターナル メディシン」に掲載された。 
 
 研究チームは平成16年1〜6月にかけ、聖路加国際病院(東京)、麻生飯塚病院(福岡)、洛和会音羽病院(京都)の3病院を調査。無作為に選択した計15診療科と集中治療棟の入院患者のうち、延べ約3500人の患者のカルテや血液データなどを精査した。
 
 その結果、2割にあたる約730人に投薬が原因とみられるめまいや下痢などの健康被害を確認。さらに0・4%にあたる14人が、鎮静剤による血圧の低下や、鎮痛薬が原因で発症した胃潰(かい)瘍(よう)からの出血など、薬剤の副作用などが関連して死亡していたという。
 
 森本講師は、投薬はいずれも正当な治療行為だったが、さまざまな効能がある薬剤が開発されたことや、複数の薬剤を同時に服用する機会が増えたことが一因と指摘。そのうえで、「入院期間が長いほど健康被害も多くなる傾向にあり、薬剤投与による健康被害は入院生活に伴う『疾患』ともいえる。より包括的な実証研究を進め、安全な医療の構築に努めたい」と話した。

2010.9.25共同通信
厚労省、心の病を自宅訪問で支援 自殺対策も

 うつ病など精神疾患を抱えた人の自宅を訪問し支援するため、厚生労働省は2011年度に、精神科医や看護師らでつくる専門家チームを医療機関に設置するモデル事業を、全都道府県で始める。
 
 受診や相談をためらう間に重症化するのを防ぐのが目的で、自殺防止につなげる狙いもある。患者の家族は「社会とのつながりを回復する第一歩になる」と歓迎している。
 
 厚労省によると、精神疾患があっても、偏見を気にして病院に行かなかったり、途中で治療をやめたりして症状が悪化する人が少なくない。
 
 国内の自殺者数は12年連続で年間3万人を超え、うち約3割は、うつ病などの精神疾患が原因。担当者は「病院で患者を待つ従来の医療では十分に対応できていなかった」と説明する。
 
 チームは精神科医や看護師、作業療法士、精神保健福祉士など数人で構成。家族らからの依頼を受け自宅を訪れて家族や本人と話し合い、通院治療などにつなげていく。
 
2010/09/25 18:01   【共同通信】

精神疾患 自宅訪ね支援
2010年09月24日朝日新聞
 
 
チームで情報を共有し、患者一人ひとりに合った支援計画を立てる=鳥取市三津の鳥取医療センター
 
◆鳥取医療センターに新チーム
 

 統合失調症など精神疾患の患者が地域で暮らしながら24時間365日、医療と福祉の支援を受けられる「包括型地域生活支援プログラム(ACT)」が全国で広がってきた。県内でも、国立病院機構鳥取医療センター(鳥取市三津)が平日の日中のみだが、医療と福祉のサービスをチームで提供する活動を始めた。今後24時間支援を目指すが、診療報酬の対象になっていないことが制度上の課題として残る。
 

 鳥取医療センターの医療と福祉の訪問チーム「AOT(Assertive Outreach Team)」は精神科医、看護師、精神保健福祉士、作業療法士、心理療法士が連携。情報を共有しながら患者それぞれに合った支援計画を作成している。患者の自宅を訪問するだけでなく、必要があれば買い物先などにもついていく。
 

 入院するしかないとみられた重度の患者も地域で暮らせるようにしたいと昨年10月に開始。チームでの訪問支援は県内で唯一という。入院時から関係づくりを始め、退院後にも医療と福祉のサービスが途切れないようにしている。
 

 活動はまだ、平日の午前8時半〜午後5時15分のため、「ACT」の基準は満たしていないが、24時間支援を目指していく。メンバーの植田俊幸医師は「とにかく今は、支援している人がより良い生活を送れるようにし、対象者を増やしていきたい」と話す。
 

 早稲田大学大学院の田中英樹教授(精神保健福祉学)は「精神疾患のある患者は、社会生活を営む力を落とさないため、地域で暮らしながら治療するのが重要だ」とみるが、医療現場は依然、入院中心なのが現状だ。
 

 厚生労働省の精神保健福祉対策本部が2004年、「入院医療中心から地域生活中心へ」という改革ビジョンを発表。10年間で進めるとしたが、中間点の09年、有識者による検討会は「地域生活を支える医療・福祉などの支援体制が不十分。多くの長期入院患者が存在し、行政を含めて関係者が反省すべきだ」とした。
 

 田中教授によると、精神病患者の入院病床は世界で160万床あるとされ、2割の33万床が日本。日本は民間病院が多く、入院中心から地域中心に転換するには経営的に難しい面があると指摘する。
 

 そんな中、地域社会でのACTの活動は期待されるが、活動自体は診療報酬の対象ではなく、AOTも現状では、ほぼボランティア。今後、患者を増やし、24時間支援を目指すうえで「経済的な裏付けがないことが大きな壁になっている」(植田医師)という。(西村圭史)
 

   ◇
 

◇◆◇ACT◇◆◇
 
 包括型地域生活支援プログラム(Assertive Community Treatment)の略。1960年代後半に米国で始まり、欧州などで効果が報告されている。日本では2003年、千葉県市川市でACT―Jが初めて開始され、京都府、北海道、岡山県、島根県など1道1府8県で12団体が活動中。鳥取県のAOTのほか、約10団体がACTを目指している。

民間病院収益二極化、診療報酬下げが直撃 “医療弱者”へ悪影響も
2010.9.25 20:52産経新聞

  民間の大規模病院と中小病院で、経営状態が二極化している実態が明らかになった。背景には、政府が長らく続けてきた診療報酬の引き下げによる「淘汰の誘導」や、高評価を得る優良病院への患者の集中があるとみられる。ただ、明治以来日本の医療の中心を担ってきた民間病院の減少が進めば、患者の選択肢の狭まりや、地方の高齢者など“医療弱者”への悪影響も懸念される。
 
 厚生労働省の統計によると、平成2年に1万を超えていた全国の病院数は、22年3月末時点で約8700施設に減少した。
 
 その大きな要因となったのが、診療報酬の改定だ。22年度は全体で0・19%の引き上げとなったものの、自民党政権が続いた21年度まで、10年連続で計7%も引き下げられた。
 
 大阪市の中堅病院院長は「今後(診療報酬引き下げを)意図的にやれば、病院経営の淘汰はさらに進む。国は民間病院を整理し、公立病院を残すことしか考えていない」と憤る。
 
 この院長は「僻地医療を公立病院だけで支えられるのか」と警鐘も鳴らす。実際、民間病院が破綻した地域では、公立病院も医師不足から診療科が減り、結果的に住民が地域内で必要な診療を受けられなかったり、選択肢が狭まったりするケースも表れている。
 
 一方、都市部の大病院も安泰とはいえない。東京都心で約500床を抱えるある総合病院は、最高水準の医療体制が高く評価され、著名人も数多く利用するが、本業である医業損益は赤字で、不動産の運営益で全体の黒字を確保しているのが実情だという。
 
 医療関係者は「模範的な医療を提供しても、赤字経営は避けられないという事実に、国も国民も気づいていない」と指摘している。
 

 大病院と中堅病院、収益力の二極化くっきり 帝国データ調査
2010.9.25 20:23産経新聞

  年間総収入が30億円以上ある全国の民間病院事業者で、平成20年度までの3年間の最終損益が判明した法人のうち、3期連続で黒字を確保した法人が5割あまりある一方、3期連続で赤字に陥った法人も1割弱あったことが、信用調査会社「帝国データバンク」のまとめで分かった。赤字法人はすべて中堅事業者で、診療報酬の引き下げや特定の大病院の“ブランド化”が進んだ中、民間病院の経営で二極化が顕著となっている実態が表れた。
 
 同社は、兵庫や岡山の大規模病院が昨年、相次いで民事再生手続きを申請したことなどを受け、医療法人や社会福祉法人、財団法人など全国803事業者の決算状況を調査した。
 
 その結果、20年度(21年3月期)が前期より増収となったのは66%の530法人で、規模が大きい法人ほど増収の割合が高かった。
 
 また、過去3年間の最終損益が判明した547法人のうち、3期連続で黒字を確保したのは55%の301法人。逆に3期連続で赤字だったのは8・2%の45法人で、すべて年間総収入が300億円未満の中規模事業者だった。
 
 帝国データバンクは「長く続いた診療報酬引き下げのほか、患者の大病院志向が高まり、中規模以下の安定経営が難しくなっている」と分析している。
 
 一方、全国に144ある国立病院は20年度、約7割が黒字を確保。しかし、地方自治体が運営する公立病院は、逆に約7割が赤字となった

2010.9.23河北新報
障害者、地域生活に定着を 宮城県プラン素案

 宮城県は22日、2011〜17年度の障害者施策の土台となる「みやぎ障害者プラン」の素案をまとめ、県障害者施策推進協議会(会長・阿部重樹東北学院大教授)に示した。「施設から地域での生活へ」とうたった現行プランの理念を踏まえ、地域で暮らす障害者の定着に向け、就労促進などを新たな重点目標に据えた。
 目標実現のための施策として、素案では、住まいの場となるグループホームやケアホームの整備促進、職業訓練の強化、授産施設の商品開発力の強化による工賃引き上げなどを挙げた。
 長期入院の割合が多く、社会復帰が遅れがちな精神障害者への対応も重視。退院に向けた地域の受け入れ環境の整備を進める一方、精神疾患の早期発見・早期治療の必要性を広く呼び掛け、重症化の予防に力を入れる方針を示した。
 この日の協議会では、福祉施設から地域生活に移った障害者が09年度までの4年間で計324人に上り、県の目標を2年早く達成した半面、就労環境は依然として厳しいことが報告された。
 報告によると、授産施設などでの工賃は平均月額約1万4000円に低迷し、県の目標(2万7000円)の約半分。福祉施設を退所し、一般の企業などに就労した人も09年度で87人と、目標の8割にとどまっている。
 委員からは「障害者が働く事業所は零細なところが多く、現場の頑張りだけでは厳しい。プラン推進のための機関をつくるぐらいの姿勢が必要だ」との指摘があった。
 県は、協議会の議論を基に、11月にプラン中間案を作成。最終的にはパブリックコメント(意見公募)も実施し、本年度内に策定する。
 

2010年09月23日木曜日

2010.9.18時事通信
脳の一部の大きさに異常=自閉症、解明に期待−東大

 人に合わせた行動が難しいなどの特徴がある自閉症の患者は、脳の「下前頭回(かぜんとうかい)」の一部の体積が小さかったり、特定のホルモンの働きが低く、脳の「扁桃体(へんとうたい)」と呼ばれる部分が大きかったりすることが分かった。東京大大学院医学系研究科の山末英典准教授らが18日までに米生物学的精神医学会誌の電子版に発表した。
 自閉症やそれに似た発達障害は、症状の種類や程度が幅広いが、遺伝性が高い場合、脳で働く遺伝子の異常による機能障害が原因と考えられる。研究成果は発症メカニズムの解明と治療法の開発に役立つと期待される。
 山末准教授らが日本人の自閉症患者13人の脳を磁気共鳴画像診断装置(MRI)で測定したところ、大脳の前頭前野の最も後ろにある「下前頭回弁蓋部」の体積が通常より小さかった。特に右側部分が小さいほど、他人の行動をまねて学習する際などの障害が重かった。
 また、自閉症患者は、他人の感情を理解し、信頼関係を築く際に働くホルモン「オキシトシン」の働きが低く、このオキシトシンを受け取るたんぱく質が多い「扁桃体」の体積が大きい傾向があった。山末准教授らは、オキシトシンをスプレーで鼻に噴霧し、治療効果があるか検証する臨床試験を行っているという。(2010/09/18-05:17)

2010.9.16共同通信
医療、介護従事者に恩返し 美容、飲食60社で割引
 

 経営するネイルサロンでつめのケアをする平口実希さん=16日午前、金沢市
 「家族でさえ投げ出したくなるのに嫌な顔をせずにケアしてくれる。何か恩返ししたいと思って」。石川県の美容室や飲食店で医療や介護に携わる人を対象に、割引サービスなどをする「エンジェル・スマイル」という活動が広がっている。金沢市でネイルサロンを経営する平口実希さん(42)が自らの看護体験をきっかけに始めた。
 
 平口さんは幼少期、母が統合失調症で入退院を繰り返した。医師や看護師が暴れる母を丁寧にケアしてくれた。
 
 30歳の時に立ち上げたネイルサロン。介護施設で働いている人はすぐに分かる。手の荒れ、短く切ったつめ。5%の割引サービスを始めた。「それ、いいね」。知り合いの経営者が集まり、昨年9月に団体を設立した。
 
 仕組みは簡単だ。サービスを受けたい医療、福祉従事者は会に登録し、加盟店舗で会員証を提示すると、割引や優待制度を受けられる。今では福井県も含め60社以上が加盟する。
 
2010/09/16 08:39   【共同通信】

2010.9.15毎日新聞
総合病院:精神科悲鳴 2年半で4割離職、若手ばかりに
 
自殺未遂者ケアなど専門的な治療ができる総合病院に06年8月時点で勤務していた精神科医892人についてその後の勤務先を調査したところ、約2年半後には約4割が診療所の開業などを理由に離職したことが分かった。日本精神神経学会で発表された。この間、総合病院の医師は16%減っている。毎日新聞にも国立病院機構横浜医療センターの武川吉和精神科部長(48)が投書を寄せ「ベテランがごっそり開業し、総合病院精神科の滅亡は加速しそうです」と訴えた。精神科医療を担う総合病院が大きく揺らいでいる。【堀智行、奥山智己
 
 横浜市戸塚区のベッドタウンにある横浜医療センター。10年ほど前から周辺の市や区に精神科診療所が次々と開業した。地域の診療所が外来を担当し、症状が重い場合は総合病院が診る−−。武川部長は、精神科医療に関する国の検討会がめざす役割分担が進むことを期待していた。
 
 しかしもくろみは外れた。診療所には患者が押し寄せ、予約は1カ月待ち状態に。センターの外来は開業医からの紹介患者が急増した。入院設備のない診療所にとって、とりわけ自殺未遂を繰り返す患者らの治療は難しく、総合病院を頼るしかない事情はある。
 
 だが多くの開業医は、総合病院などの勤務医だった40代以上の医師たちだ。一方、センターは武川部長以外のベテラン医師が既に退職し、ほかの3人は30代の若手でキャリアは2〜6年。武川部長は「ライフスタイルの変化もあり、時間外勤務のない開業医志向が強まった。診療所の医師が対処に困り回してきた患者を、経験の浅い若手が治さないといけない状況だ」と嘆く。
 
 センターは救命救急体制を充実したことで、自殺未遂者の搬送が増加した。「救急の比重が高まる中、外来もではパンクする」。やむなく外来を予約制にして患者数を制限した。それでも食事を取る間もなく外来と病棟を行き来する日が続く。
 
 総合病院への患者の期待は大きい。「退院しても診療所への紹介を嫌がられることがある。紹介しないと受け入れ能力はすぐいっぱいになる。寄らば大樹という思いが開業医にも患者にもある」
 
 武川部長が自分が退職した時の後任として思い浮かぶのは、経験が10年に満たない若手ばかり。彼らも長くは勤めてはくれないだろう。「私のように総合病院にいるのは留年しているようなもの。救急から療養までの精神科医療のネットワークに医師が適正に配置されないと総合病院の部長をやる人がいなくなってしまう」
 
 ×   ×
 
 日本精神神経学会で発表されたデータは、06年8月の専門医認定試験を申し込んだ精神科医6881人の勤務先について2年7カ月後の09年3月時点と比較したもの。このうち総合病院に勤めていた892人中約4割の354人が離職。一方、単科の精神科病院などから移ってきた医師は211人にとどまり、総合病院の医師は16%減った。学会関係者は「少人数で激務をこなす総合病院が敬遠されている」と指摘する。
 
毎日新聞 2010年9月15日 20時43分

2010.9.14毎日新聞
精神疾患:対策を早く 英国人研究者、英国の取り組み紹介へ /東京
 ◇損失推計、対策を提言した英国人研究者
 先進的な精神保健医療改革で自殺対策に効果をあげた英国で、精神疾患で約14兆円の社会的経済的損失が出ると推計し、対策を提言した英国人研究者が10月3日、ベルサール九段(千代田区)である「こころの健康国民フォーラム」で英国の取り組みを紹介する。主催団体の担当者は「日本でも精神疾患は5人に1人がかかる国民病。特に若者の健康被害は精神疾患で最も多く起きており、英国のように早く対策をとらないと社会保障など社会基盤を揺るがしかねない」と話す。【堀智行】
 
 フォーラムは精神科医療の質の向上を目指す患者や医師らでつくる民間団体「こころの健康政策構想実現会議」が主催。王立ロンドン大精神医学研究所のポール・マクローン博士が講演する。
 
 英国は98年、精神疾患による社会的経済的損失を約4・6兆円と推計。損失額を基に、優先的に取り組む政策をまとめ、心理療法や在宅医療の普及などで97〜07年までの10年間で自殺率(10万人当たりの自殺者数)を15%減少させた。
 
 マクローン博士はこの成果を踏まえ、今後の精神科医療のあり方を示そうと08年、将来の精神疾患による社会的経済的損失を算出。少子高齢化にともない認知症患者が増加することを踏まえ、2026年時点で約14兆円のコストがかかると推計。精神科医だけではなく看護師や心理療法士など他職種の専門家らがチームを作り、地域に出て患者を診療するアウトリーチなどの取り組みを強化できれば、コスト削減ができるなどの対策をまとめ、政府に提言した。
 
 日本でも今月、厚生労働省が初めてうつ病と自殺による経済的損失額が約2・7兆円に上るとの推計を出している。実現会議の西田淳志事務局長は「損失額を試算することで問題の大きさや優先的に進める政策を把握することができる。今後急激な少子高齢化が予想されており、今から対策をとらなければ手遅れになる」と話す。
 
 フォーラムは午後2〜5時。参加費は一般2000円、患者・学生は1000円。定員は400人。事前申し込みの場合は、申込書(氏名・連絡先を記入)を事務局(03・3326・7288)までファクスする。
 
〔都内版〕
 
毎日新聞 2010年9月14日 地方版

健診でメンタルチェックも 板橋区が全国に先駆け実施し予想外の反響
2010.9.13 17:16産経新聞
  
自殺者数が減らないことが社会問題化している中、東京都板橋区では全国の自治体に先駆け、平成22年度から35歳の区民向け健康診査に心の診断を取り入れ、予想を超える反響を呼んでいる。区によると、自殺者の9割が鬱(うつ)病(びよう)などの心の病気があったといわれることから、早期発見、早期治療のために実施に踏み切ったという。
 
 区では35歳になった区民が毎年健康診査を受けられるようにしているが、22年度から初回となる35歳限定で心の診断を取り入れることにした。6〜10月に月1回実施し、当初の定員は計1025人だったが、予想を上回る予約があり、定員を急遽(きゅうきょ)1645人に増やしている。
 
 心の診断は、厚生労働省のマニュアルを基に、「毎日の生活が充実していますか」「わけもなく疲れたような感じがしますか」など8項目をチェックするもの。
 
 その結果、一定の項目に該当した人には、保健師による面接を行い、さらに必要と判断される場合は専門医を紹介するという。
 
 区によると、6〜8月に健康診査を受けた約800人のうち、専門医を紹介したのは24人いたという。区は「予想以上の人が専門医を必要としていた」とし、「健康診査を自殺予防につなげ、区民の健康づくりを支援していきたい」としている。

https://form.cao.go.jp/shougai/opinion-0004.html#top
 
 
内閣府
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「障害」の表記についての意見募集
 
 障がい者制度改革推進会議の第一次意見を踏まえ、推進会議の下に設けられた「障害」の表記に関する作業チームでは、「障害」の表記についてどのような表記とすべきか検討を始めているところですが、今後の議論の参考とさせていただくため、「障害」の表記について国民の皆様から広くご意見を募集いたします。
 
 お寄せいただいたご意見については、原則として個別には回答いたしませんので、あらかじめ、ご承知ください。
 
【「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」(平成22年6月7日障がい者制度改革推進会議取りまとめ)】
 
第3 障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方
 2.基礎的な課題における改革の方向性
  7)障害の表記
「障害」の表記については、「障害」のほか、「障がい」「障碍」「しょうがい」等の様々な見解があることを踏まえ、障害者の「者」にあたる部分の表記の在り方も含め、推進会議としては、今後とも、学識経験者等の意見を聴取するとともに、国民各層における議論の動向を見守りつつ、それぞれの考え方を整理するなど、引き続き審議を行う。
 

〆切は2010年9月30日とのこと

2010.9.5キャリアブレイン
「障害の予防」で意見分かれる―障がい者制度改革会議
 
 内閣府は9月6日、「障がい者制度改革推進会議」の第19回会合を開き、障害者基本法の改正について議論した。同法で、障害の原因になる傷病の早期発見・治療の推進などを定めた第3章の「障害の予防に関する基本的施策」について削除すべきかどうかで構成員の意見が分かれた。
 
 会合では、中西由起子構成員(アジア・ディスアビリティ・インスティテート代表)が、「『予防』には、悪いものをあらかじめ防ぐという意味がある」と述べ、同章の削除を求めた。また、尾上浩二構成員(NPO法人障害者インターナショナル日本会議事務局長)は、同章が優生思想の下で策定されているとして、「障害の予防ではなく、障害を持っていても子どものころから地域で暮らせる支援を整備する方向性での規定が必要」と主張した。
 これに対し、新谷友良構成員(社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会常務理事)は、中耳炎への適切な治療がなかったために聴覚障害に至るケースを挙げ、「治療で治る人の(治療を受ける)選択肢は認めるべき」と指摘。また、大濱眞構成員(社団法人全国脊髄損傷者連合会副理事長)も、角膜再生医療による難病治療を紹介して、「治癒のために先進医療を受ける権利は明記する必要がある」と訴えた。
 
 また同会議は「医療」「就労」「児童」の3分野について、障害者自立支援法に代わる新法の策定について議論する「総合福祉部会」との合同作業チームで、現行の障害者制度の中で議論すべき論点を整理する予定。この日はそのメンバーが決定した。
 医療分野は、堂本暁子座長(前千葉県知事)、関口明彦構成員(全国「精神病」者集団運営委員)、川崎洋子構成員(NPO法人全国精神保健福祉会連合会理事長)。就労分野は、松井亮輔座長(法大名誉教授)、新谷構成員、竹下義樹構成員(社会福祉法人日本盲人会連合副会長)。児童分野は、大谷恭子座長(弁護士)、長瀬修構成員(東大大学院特任准教授)。
 
( 2010年09月06日 22:05 キャリアブレイン )

2010.9.7毎日新聞
自殺やうつ病:09年経済的損失2.7兆円 厚労省初調査

 
自殺やうつ病による経済的損失 厚生労働省は7日、自殺やうつ病での失業などによる09年の経済的損失額が推計で約2.7兆円に上るとする調査結果を発表した。長妻昭厚労相が政府の自殺総合対策会議に報告した。同様の調査は英国で実施され、その後の精神保健医療改革が自殺対策に大きな効果を上げている。日本での調査は初めて。
 
 調査は、英国の取り組みを知った長妻厚労相が指示し、国立社会保障・人口問題研究所の金子能宏(よしひろ)社会保障基礎理論研究部長らが実施した。
 
 損失額は、09年に15〜69歳で自殺した2万6539人が亡くならずに働き続けた場合に得られた生涯所得額と、03年のうつ病患者数の推計値をもとにした失業給付額や医療給付額など、計6項目の総額を加え推計した。
 
 調査結果によると、額は多かった順に▽自殺による生涯所得の損失額1兆9028億円▽うつ病による生活保護の支給額3046億円▽うつ病の医療費2971億円▽うつ病で休業したことによる賃金所得の損失額1094億円▽うつ病での自殺や休業で支給された労災補償給付額(労災年金を含む)456億円▽うつ病による求職者給付額187億円−−の計2兆6782億円だった。
 
 また、こうした損失がなければ今年度のGDP(国内総生産)が約1.7兆円引き上げられると試算した。
 
 英国は98年、日本よりも多岐にわたる調査で、精神疾患による経済的損失額を約4.6兆円と推計。薬物療法に抵抗感がある英国民の精神科受診率を向上させるため、心理療法の普及を実施した。その結果、97〜07年の10年間で人口10万人当たりの自殺者数(自殺率)を9.2人(95〜97年の平均値)から7.8人(05〜07年の平均値)へ15%減らしている。
 
 日本の自殺は12年連続で3万人を超え、自殺率は07年で24.4人。同年の英国の自殺率6.4人の約4倍に上る。【堀智行】
 
毎日新聞 2010年9月7日 11時01分(最終更新 9月7日 14時38分)
 
2010.9.7毎日新聞
自殺やうつ病:損失2.7兆円 医師「大げさではない」

 自殺やうつ病による経済的な損失が09年で約2.7兆円に上るとの厚生労働省の発表について、自殺者の遺族からは「人の命をお金に換算しないと重大さが伝わらず、世の中が動かないのは悲しい」との嘆きが聞かれる。一方、うつ病で仕事を失ったり休職した人たちは、復職を支援する精神科医の下で懸命にリハビリを続ける。現場の医師は「この数字は決して大げさではない」と述べるとともに「復職に向けた企業側の協力が不十分だ」と問題点を指摘した。【奥山智己、堀智行】
 
 東京都港区のオフィス街にある精神科診療所「メディカルケア虎ノ門」。午後8時の診察終了間際になっても待合室にはスーツ姿の男性患者が目立つ。
 
 同院が治療に加え、復職支援に取り組み始めたのは05年。五十嵐良雄院長は「働き盛りの30代を中心に、うつで休職しなければならない人が増えてきたことがきっかけだった。症状が落ち着いて復職しても、すぐに休職する患者も多く、『なんとかしなければ』と思った」と言う。
 
 早期の復職を焦る患者が多い一方、長期休職後の復職で出勤するだけで疲れてしまったり、同僚とうまくコミュニケーションがとれずに再び休職に追い込まれるケースも少なくない。患者はプログラマーや公務員、医師などあらゆる職種に及ぶ。「憂うつだけど早く治して出社したい」「今度は確実に復職したい」。その訴えは切実だ。
 
 復職支援のプログラムはまず、心理療法やストレッチなどの簡単な運動をして体を慣らす。徐々に回復すると、職場の業務に近い作業をこなしながら職場復帰の準備を進める。
 
 こうした医療機関は全国で増え始め、80カ所に上るという。五十嵐院長は「復職後、すぐに残業させられる患者もいる。企業側の職場復帰の取り組みは不十分。主治医が職場の労働環境を把握できるようにしたり、会社と連携して復職支援を進める必要がある」と話す。
 
 働き盛りの夫を亡くした家族も、職場の支援の必要性を訴える。大阪市の女性(40)の夫は社員約100人の建設コンサルタント会社に勤め、01年に河川事業の仕事から未経験のダムの担当に換わった約2カ月後、34歳で自ら命を絶った。忙しさから健康診断を受診せず、精神科にも通院していなかったという。
 
 女性は「お金に換算しないと重大さが伝わらないのは悲しい」と嘆きつつ、「うつ病の早期発見だけでなく、企業は発症させないための職場環境づくりにも力を入れ、行政はそれを支援してほしい」と話している。
 
毎日新聞 2010年9月7日 12時16分

2010.9.7毎日新聞
こころを救う:うつなどで損失2.7兆円 「企業の対応、不十分」復職支援医師ら訴え

 自殺やうつ病による経済的な損失が09年で約2・7兆円に上るとの厚生労働省の発表について、自殺者の遺族からは「人の命をお金に換算しないと重大さが伝わらず、世の中が動かないのは悲しい」との嘆きが聞かれる。一方、うつ病で仕事を失ったり休職した人たちは、復職を支援する精神科医の下で懸命にリハビリを続ける。現場の医師は「この数字は決して大げさではない」と述べるとともに「復職に向けた企業側の協力が不十分だ」と問題点を指摘した。【奥山智己、堀智行】
 
 東京都港区のオフィス街にある精神科診療所「メディカルケア虎ノ門」。午後8時の診察終了間際になっても待合室にはスーツ姿の男性患者が目立つ。
 
 同院が治療に加え、復職支援に取り組み始めたのは05年。五十嵐良雄院長は「働き盛りの30代を中心に、うつで休職しなければならない人が増えてきたことがきっかけだった。症状が落ち着いて復職しても、すぐに休職する患者も多く、『なんとかしなければ』と思った」と言う。
 
 早期の復職を焦る患者が多い一方、長期休職後の復職で出勤するだけで疲れてしまったり、同僚とうまくコミュニケーションがとれずに再び休職に追い込まれるケースも少なくない。患者はプログラマーや公務員、医師などあらゆる職種に及ぶ。「憂うつだけど早く治して出社したい」「今度は確実に復職したい」。その訴えは切実だ。
 
 復職支援のプログラムはまず、心理療法やストレッチなどの簡単な運動をして体を慣らす。徐々に回復すると、職場の業務に近い作業をこなしながら職場復帰の準備を進める。
 
 こうした医療機関は全国で増え始め、80カ所に上るという。五十嵐院長は「復職後、すぐに残業させられる患者もいる。企業側の職場復帰の取り組みは不十分。主治医が職場の労働環境を把握できるようにしたり、会社と連携して復職支援を進める必要がある」と話す。
 
 働き盛りの夫を亡くした家族も、職場の支援の必要性を訴える。大阪市の女性(40)の夫は社員約100人の建設コンサルタント会社に勤め、01年に河川事業の仕事から未経験のダムの担当に換わった約2カ月後、34歳で自ら命を絶った。忙しさから健康診断を受診せず、精神科にも通院していなかったという。
 
 女性は「お金に換算しないと重大さが伝わらないのは悲しい」と嘆きつつ、「うつ病の早期発見だけでなく、企業は発症させないための職場環境づくりにも力を入れ、行政はそれを支援してほしい」と話している。
 
毎日新聞 2010年9月7日 東京夕刊

http://prw.kyodonews.jp/open/release.do?r=201009071341
 

2010年9月7日
  
特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構・コンボ
日本イーライリリー株式会社
 

第7回 精神障害者自立支援活動賞(リリー賞)-ひとりひとりの輝くあしたへ-
〜いまだ偏見が根強い精神疾患への理解促進と当事者のより良い環境整備のために〜
応募期間:2010年9月13日(月)〜12月31日(金) ※当日消印有効
 
 
特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構・コンボ(事務局:千葉県市川市、以下「コンボ」)は、本年9月13日(月)より、精神障害者の社会参加や自立に向け長年尽力し、意欲的に取り組む個人や団体の活動を支援する「第7回 精神障害者自立支援活動賞(通称:リリー賞)−ひとりひとりの輝くあしたへ−」の募集を開始します。
本賞は、精神障害者の社会参加支援や地域社会での自立を促す活動を行っている当事者・当事者団体を表彰し支援するため、2004年に設立しました。この支援制度を通じ、精神保健福祉に貢献されている当事者または当事者グループや、その独自の活動を社会へ広く紹介することにより、精神疾患に関する一般への理解を得る機会となることを目的とし、協賛の日本イーライリリー株式会社をはじめ、多くの保健福祉団体が後援として参加しています。
精神疾患、特に統合失調症は、疾患により生じる当事者の言動や仕草などを否定的にとらえられることも多く、偏見がいまだに根強く残っています。多くの当事者は、対人コミュニケーション障害による社会性の低下だけではなく、周囲の偏見などにより、強い不安と孤独感を抱えています。また、疾患により孤立が深刻化すると、当事者と社会とのつながりが絶たれてしまい、社会参加が非常に困難となります。
「コンボ」では、困難な環境や状況を乗り越え活動している当事者を表彰する本賞を通じて、より多くの方々が統合失調症をはじめとする精神疾患に対する正しい理解を深め、そして、当事者にとってより良い環境整備及び充実の一助となるよう、活動してまいります。つきましては、報道関係の皆様にも、主旨にご賛同いただき、募集告知活動のご協力を賜りたく、何卒宜しくお願い申し上げます。
 

*募集詳細はhttps://www.lilly.co.jp/に掲載しておりますのでご参照願います。
 
[関連リンクURL]
https://www.lilly.co.jp/

心の病、音楽の光を
2010年09月05日朝日新聞
 
 
チラシを手に話す加藤政実さん=豊橋市
 ●精神障害持つ人対象 コンクール
【「健常者と同じと感じて」豊橋で来年1月】
 
 心に障害を抱える人が社会とかかわるきっかけをつくろうと、豊橋市で来年1月、精神障害を持つ人の楽曲を審査する音楽コンクールが開かれる。主催する同市のNPO法人によると、精神障害に特化した音楽コンクールは全国にも例がないという。音楽祭を通して「障害のある人もない人も、何も違いがないことを感じてほしい」と意気込む。(山田雄介)
 

 こころの病・チャレンジド音楽の祭典「とよはし音楽祭」は、2011年1月15日に豊橋市民文化会館で開かれる。心に障害を抱える人からの楽曲を募集している。作詞▽作曲▽作詞作曲演奏の3部門に分け、演奏時間5分以内の楽曲を審査する。上位10〜15人が当日、ステージで演奏を披露し、グランプリなど八つの賞が贈られる。作品のテーマは自由。演奏には応募者に加えて、誰でも参加できる。「チャレンジド(challenged)」とは「挑戦すべき試練を神から与えられた人」という意味で、米国では障害者をこう呼ぶことがある。
 主催するのは02年に設立された豊橋市のNPO「福祉住環境地域センター」。障害者の支援を目的に、心身に障害がある人にパソコンを教えたり、フリーペーパーを発行したりしている。
 障害の有無を超えてみんなが共演する「ゆいフィールコンサート」を同市で3回開催してきた。最初は、ステージでの演奏前に各自が障害の有無などを自己紹介していたが、回を重ねるごとになくなったという。代表理事の加藤政実さん(60)は「障害者も健常者もステージ上ではわからない。一体だった」と振り返る。
 心身に障害がある全国のアマチュアミュージシャンによるコンテストとして、03年に始まった「ゴールドコンサート」にも足を運ぶが、精神障害のある人の参加は少ないと感じていた。とよはし音楽祭が「精神に障害を抱える人が一歩でも前に出るきっかけになれば」と思う。同時に「彼らが健常者にとっての『非日常』を生きているわけではない。『同じ日常』を生きていると分かってほしい」と力を込める。
 応募方法は楽譜、楽曲の意図を記した書類と曲を録音したMDかCDを同センターに送る。期間は11月20日まで。作品は未発表のものに限る。問い合わせは福祉住環境地域センター(0532・52・4315)へ。

2010.9.6京都新聞
障害者アート、京都などに常設館 湖国の団体 設立呼び掛け
 
アトリエで創作活動に励む知的障害のある人たち(亀岡市・重度知的障害者入所施設みずのき)
 知的や精神に障害がある人が表現活動を行う「アウトサイダー・アート」の作品を常設展示する美術館を、京都府を含め全国9カ所で設立する計画が進められている。パリで開催中の「アール・ブリュット・ジャポネ」展で日本の作品が高い評価を得る中、関係者は「魂を揺さぶる作品を身近に感じてほしい」と話している。
 
 「アウトサイダー・アート」とは、正規の美術教育を受けずに表現する芸術。仏では、「アール・ブリュット」(生の芸術)と言われ、専門のアートフェアが開かれるなど関心が高い。国内では、常設展示する美術館は滋賀県近江八幡市の「ボーダレス・アートミュージアムNO−MA」を含め数カ所だ。
 
 計画は、NO−MAを運営する滋賀県社会福祉事業団やNPO法人「はれたりくもったり」(湖南市)などが今春、全国の福祉・美術関係者に呼び掛けた。日本財団の助成を受け、京都のほか、岩手や高知、沖縄などに設立される予定という。
 
 府内は亀岡市の社会福祉法人「松花苑」が運営し、来年度中にも同市内にオープンする。同法人の重度知的障害者入所施設「みずのき」は1960年代から絵画教室を開き、小笹逸男さん(86)の作品がスイスの美術館に収蔵されるなど評価されている。
 
 山崎孝さん(70)は円をモチーフにした独特な絵を描く。普段はよく歩き、話も多く活発だが、アトリエでは、使い込んだ絵筆でキャンバスに向かって無言で集中する。
 
 沼津雅子施設長は「魅力ある美術館にし、すばらしい才能を地域の人に知ってもらうとともに、街づくりと連携したい」と話している。
 
【 2010年09月06日 13時21分 】

2010.9.7読売新聞
「うつ病兆候」会社に知らせません…厚労省案

 厚生労働省は7日、企業の健康診断に導入予定の、精神疾患の兆候を調べる仕組みの案を公表した。
 

 うつ病などの兆候である不眠や食欲減退の有無を健診時に医師が問診し、兆候があれば労働者だけに知らせて医師と面接させる内容だ。
 
 当初は企業側にも所見を知らせる方針だったが、プライバシー保護の観点から方針を変更した。
 
 関連する労働安全衛生法や労働安全衛生規則などの改正が必要になる可能性があり、長妻厚労相は今後、諮問機関の「労働政策審議会」に案を示して詳細を詰めたうえで、2012年度にも実施する考えだ。
 
 健診の問診では「食欲がない」「よく眠れない」などをチェック項目とする。疾患の兆候があり、さらに医師との面接でも疾患の可能性があると判断された際は、労働者の同意を得たうえで、医師が企業に就業制限や休業の必要性に関する意見を示す。
 
(2010年9月7日20時16分  読売新聞)
 
健診とは別にストレス検査、企業に義務付け 検討会提言
2010年9月7日19時37分朝日新聞
    
 職場での精神疾患を把握する方法について検討していた厚生労働省の「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」は7日、健康診断とは別に、うつなどの兆候がないかなどをチェックするストレス検査の義務付けを提言する報告書を公表した。
 
 7月の報告書案では、プライバシー保護に対する懸念があったため、健康診断でストレス検査を行うことは見送られた。今回の報告では、ストレス検査を健康診断と別の枠組みにし、プライバシーを守る方法も示すことで、すべての企業が取り組みやすいようにした。
 
 報告書によると、企業は健康診断とは別に「よく眠れない」「ゆううつだ」などの項目を含むストレス検査を実施。医師は、面接が必要であると判断した場合、労働者本人だけに通知し、企業には知らせないようにする。
 
 面接に応じるかどうかは本人が判断する。面接の結果、医師が休業や残業の制限、配置転換などが必要と判断した場合、本人の同意を得た上で、企業に意見を言うことができる。企業側は面接を理由に本人に不利益な取り扱いは行ってはならない。
 
 報告書案の段階では、健診の問診票にストレス検査の項目を追加し、自覚症状を確認するとしていた。ただ、自覚症状の有無や医師との面接の必要性は企業側に伝えられる形となっていた。このため、検討会の委員や厚労省内からは「自覚症状のある労働者が不利益な取り扱いを恐れ、きちんとした検査はできない」などの異論が出ていたという。
 
 今後、公労使でつくる労働政策審議会で労働安全衛生法改正の必要性も含めて議論し、早ければ2012年度からの実施を目指す。ストレス検査に含める項目や、検査費用の負担、医師の守秘義務などの問題については労政審で詰める。

2010.9.7共同通信
定期健診でストレス検査 うつ兆候あれば面接へ
 企業が実施する職場の定期健康診断で、職場に起因するストレスを調べる方法を厚生労働省の検討会が7日、まとめた。医師の問診でうつ病の兆候を確認し、所見があれば従業員が産業医などと面接、精神疾患が疑われる場合は専門医を受診する。近く労働政策審議会に報告し、早ければ2011年度中に必要な法改正を目指す。
 
 仕事のストレスが原因の精神疾患が悪化したり、自殺を防ぐのが狙い。
 
 報告書によると、定期健診の項目に「食欲がない」「よく眠れない」「憂うつだ」「イライラしている」などを盛り込むよう義務付ける。医師が問診で必要と判断した場合は本人に通知し、従業員は産業医と面接する。プライバシーに配慮し、事業者には症状や不調の状況を知らせない。
 
 面接の結果、精神疾患の疑いがある時は産業医などが専門医を受診するよう本人に勧める。本人が同意した場合に限り、産業医は事業者に配置転換や時間外労働の制限、要休業などを助言し、事業者が働く環境の改善につなげる。
 
 企業の健康診断は労働安全衛生法で年1回の実施が義務付けられており、血圧や肝機能など検査する項目が規則で定められている。「食欲がない」などの質問は、現在でも身体の不調を診るため盛り込まれているが、ストレス反応を浮き彫りにするため質問項目を増やしたり、期間や重症度などを具体的に聞いたりする。
 
2010/09/07 19:06   【共同通信】

2010.9.5読売新聞
かかりつけ医92%、うつ患者に専門医を紹介

94%は対応に苦慮…
 自殺と関連の深いうつ病の疑いのある患者を、精神科医に紹介した経験を持つ県内のかかりつけ医が9割超にのぼることが、県の調査で分かった。身体症状が先に出やすいうつ病は、最初にかかることが多い内科などで見過ごされることが少なくないと指摘されていたが、専門医への「橋渡し」は進んでいることが裏付けられた。ただ、かかりつけ医は不慣れで戸惑いながら患者に対応しており、また専門医の治療にも課題が多い。橋渡しは入り口に過ぎないとの指摘もある。(今川友美)
 

  うつ病は、睡眠障害や倦怠(けんたい)感、頭痛などの身体症状が、まずは表に出やすい。うつ病と診断された人のうち、精神科などの専門科で初診を受けたのは1割に満たないというデータもある。
 
 そこで、自殺防止を呼びかける県は、2008年度からかかりつけ医を対象に県内各地で研修を実施。専門医が講師となり、うつ病診療の基礎知識や治療法、専門医への紹介方法を習得させている。10年度は石巻、塩釜、大崎市で行い76人が参加。今回の調査はこの参加者に対して行われ、うち74人が回答した。
 
 調査結果によると、92%が専門医への紹介を経験していた。患者の症状は「自殺願望・抑うつ気分」が18%で最も多く、「強い焦燥感」14%、「睡眠障害・疲れやすさ・気力の減退・そううつ状態」9%と続いた。専門医への紹介にとどまらず、薬物療法などの治療も積極的に行うかかりつけ医は全体の70%に達した。
 
 一方、「患者の対応に苦慮している」と回答したのは94%にのぼり、専門外の治療に負担を感じていることが明らかになった。その内容は「治療方法」27%、「診断」23%、「患者との接し方」21%、自殺をほのめかす人などへの「危機対応」19%の順に続いた。処方される向精神薬のなかには、自殺願望を強めてしまうものもあることから「副作用を心配しながら処方するのは勇気がいる」と明かす人もいた。
 
(2010年9月5日  読売新聞)

2010.8.28毎日新聞
精神障害者家族会連:北九州市に支援拡充要望 /福岡

 「北九州精神障害者家族会連合会」(末安良光会長)は27日、障害者や家族の支援拡充を求める緊急要望書を北九州市に提出した。精神障害者の緊急時医療体制の充実▽障害者手帳の色や形の統一▽医療費補助の拡大▽家族会への助成金の支援−−などを求めている。
 
 末安会長は「精神障害者に対する社会の偏見もあり、本人や家族は大変な思いをしている」と話した。市障害福祉部の山田裕司担当課長は「手帳の統一は今後検討していきたい」と応えた。
 
〔北九州版〕
 
毎日新聞 2010年8月28日 地方版

2010.8.30毎日新聞
日本アディクション看護学会:「依存症」理解深めて−−恵庭で11月 /北海道
 
◇アルコール、薬物だけじゃない 摂食障害や家庭内暴力も対象
 ◇「家族も参加を」呼びかけ
 アルコールや薬物依存症、摂食障害などのアディクション(依存症)を患う人たちが生きやすい社会を考える「日本アディクション看護学会」(理事長、松下年子・埼玉医大教授)の学術大会(北海道アルコール看護研究会共催、毎日新聞北海道支社など後援)が11月6、7の両日、北海道文教大学恵庭キャンパス(恵庭市)で開かれる。
 
 アディクションは「嗜癖(しへき)」や「耽溺(たんでき)」とも訳される英語で、本人の性格や意思にかかわらず、害があるのにやめられない悪癖やコントロール障害を一般に指す。
 
 医学・看護の専門用語としてはアルコールや薬物依存だけでなく、摂食障害を「食べ物への依存」、ひきこもりやドメスティックバイオレンスなどの家庭内暴力、虐待などを「人への依存」と幅広くとらえる。本人の健康や社会生活に支障をきたすほか、家族ら周囲の人を巻き込んで問題化する傾向が強く、見た目に病気と分かりにくいため、周囲の理解も得にくい現状がある。
 
 同学会は大学の看護学の研究者や看護師らで02年に発足。学術大会は年1回の研究大会で道内での開催は初めて。
 
 今年は「当事者のための退院促進支援とは」をテーマに、摂食障害者やアルコール依存症などについての講演や、アディクション患者への支援のあり方などを考えるシンポジウムがある。大会後には精神障害などを抱えた人らの活動拠点となっている福祉施設「べてるの家」(浦河町)の見学を希望者を対象に実施する。
 
 大会長を務める北海道文教大人間科学部看護学科の大沢栄教授(精神看護学)は「日本ではまだアディクションへの理解が足りず、偏見もある。関係者が出会う場として、当事者の家族にもぜひ来てほしい」と呼びかけている。
 
 大会への参加申し込みは9月15日までで、学生1000円、一般6000円。問い合わせは同学科(0123・29・8026)へ。【円谷美晶】
 
毎日新聞 2010年8月30日 地方版

2010.8.26毎日新聞
DV:女性の6人に1人被害 過去5年間、4割相談なし−−県調査 /鳥取
 ◇暴力追放へ窓口増設を

 女性の6人に1人、男性の32人に1人がドメスティックバイオレンス(DV)を受けたことがあると県の調査に回答したことが分かった。うち過去5年間でDV被害を受けた人の約4割はどこにも相談していなかった。県男女共同参画推進課が25日、鳥取市内で開いた研修会で報告した。【宇多川はるか】
 
 県は昨年8月、県内の男女2410人を対象にアンケートを配布し、1333人から回答を得た。DVについて女性に聞いたところ、「この1年に被害を受けた」が2・8%▽「この2〜5年に被害を受けた」が3・4%▽「5年以内にはないが、過去に被害を受けた」が11・7%で、「被害あり」の回答者は計17・9%に上った。男性の経験者は計3・1%だった。
 
 被害相談については、「相談しなかった」の43・4%に次いで、「家族や親せきに相談した」が34・0%と多く、一方で市町村の窓口は7・5%▽警察は3・8%と公的機関への相談は少なかった。
 
 男女間の暴力をなくすために必要なことを聞いたところ、51・4%が「早期に相談できる窓口の増設」を要望した。
 
 県子育て支援総室のDV対策の担当者は「窓口があっても相談するかしないかは被害者の判断。児童虐待と異なり、そこが難しいところ」と話している。
 
毎日新聞 2010年8月26日 地方版

2010.9.3読売新聞

 厚生労働省は3日、複数の精神科で今年1月、向精神薬を重複処方されていた全国の生活保護受給者2555人のうち、約7割にあたる1797人について、処方量が多すぎるなど不適切な受診行為だったとする調査結果を公表した。
 

 大阪市で発覚した生活保護受給者に処方された向精神薬が違法に転売された事件を受け、同省で調査していた。
 
 同省は、7月公表分の複数医療機関で重複処方を受けていた2746人のうち、精神科に通院していた2555人について調べた結果、転院や処方された薬の種類が異なるなど処方が適切だったのは758人で、残りは不適切だったと判断した。
 
(2010年9月3日19時27分  読売新聞)

2010年8月31日産経新聞関西
 
向精神薬転売目的で詐取 生活保護の女2人 処方箋偽造、容疑で逮捕
 医師から受け取った処方箋(せん)をコピーするなどして薬局に提出し向精神薬をだまし取ったとして、大阪府警は30日、有印私文書偽造・同行使と詐欺の疑いで、住所不定、無職、梅本さとみ被告(34)=覚せい剤取締法違反罪で起訴=ら2人を逮捕した。府警によると2人は犯行当時、いずれも生活保護を受けており、「金が欲しかったので生活費の足しに転売するつもりだった」と供述。府警は転売方法や売却先を調べる。
 
 ほかに逮捕されたのは、住所不定、無職、増田相子被告(42)=覚せい剤取締法違反罪で起訴。
 
 梅本容疑者の逮捕容疑は1月18日、同棲(どうせい)していた生活保護受給者の男性(60)が大阪市西成区の診療所から受け取った処方箋をカラーコピーして同区の薬局に代理として提出。睡眠導入剤などの向精神薬や胃薬計375錠(計1万1870円相当)を詐取したとしている。
 
 増田容疑者は5月31日、京都府八幡市の病院から出された14日分の薬の処方量を30日分と書き換え、西成区の薬局にそのコピーを提出。向精神薬約90錠をだまし取った疑いが持たれている。
 
 大阪市が今年7月末に梅本容疑者の調剤明細書などを点検したところ、逮捕容疑の分を含めて計4カ所の薬局に偽造した処方箋を提出していたことが判明。増田容疑者も、2カ所の薬局に偽の処方箋を提出していたという。
 
 生活保護受給者の医療費は医療扶助で全額公費で負担されるが、向精神薬については、西成区の受給者から薬を買い取って転売した男が今年4月に麻薬取締法違反容疑で神奈川県警に摘発され問題化。大阪市の抽出調査では、今年1月に精神疾患で医療機関を受診した受給者322人のうち、80人が基準以上の向精神薬を受け取っていたことが判明した。
 
 大阪市健康福祉局は今回の事件を受け「手口は極めて悪質かつ巧妙で、被害額について返還を求めるとともに刑事告発をする方針」とコメントした。
 
(2010年8月31日 09:57)

2010.8.26キャリアブレイン
民主党で障害者団体にヒアリング―障がい者政策PT
 
 民主党の政策調査会の「障がい者政策プロジェクトチーム(PT)」は8月26日、第2回会合を開き、障害当事者団体13団体で構成される日本障害フォーラムからヒアリングを行った。同PTの谷博之座長は冒頭あいさつに立ち、「政府、民主党、PTが一体となって、今までの課題を前進できるように、予算を含めて頑張りたい」と述べた。
 
 ヒアリングでは、内閣府の「障がい者制度改革推進会議」が6月に取りまとめた「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」などについて同フォーラムから意見を聞いた。
 会合後に記者会見した同PTの園田康博事務局長によると、同フォーラムは第一次意見を基本的に評価するとした上で、同会議について、▽民主党から菅直人推進本部長や長妻昭厚生労働相などに同会議の出席を働きかける▽厚労省や文部科学省などの関係各省庁と同会議の連携を強化するよう民主党から働きかける▽同会議などの事務局体制を強化するための、担当室の人員の倍増―などの機能強化を求めた。同時に、人員の倍増などのための予算の確保を要望した。
 さらに、推進会議の総合福祉部会が「障がい者総合福祉法(仮称)の制定以前に早急に対応を要する課題の整理(当面の課題)」でまとめた、利用者負担の見直しなど「重点課題」4点に関しても、2011年度の概算要求で「予算措置を確実に行うための予算の確保」を求めた。
 
 園田衆院議員は同フォーラムから出された要望について、「障害者自立支援法の改正が必要なものも含まれているが、法改正をして実現するか新法の制定まで待つかは、これから決めていかなければならない」と述べた。
 
 同PTは今後、総合福祉部会に参加している関係団体やその他の関係団体などから6−7回程度ヒアリングを行う予定。次回会合は9月9日で、引き続きヒアリングを行う。
 

( 2010年08月26日 19:30 キャリアブレイン )

2010.8.17読売新聞
「うつ病」健診、2段階で…政府方針
 
自覚症状まず問診 兆候あれば面接へ
 政府が2011年度からの導入を目指す、企業の健康診断でうつ病などの精神疾患の兆候を調べる制度の概要が明らかになった。
 
 医師の問診に、うつ病などの兆候である不眠や頭痛の有無などを盛り込み、所見があれば専門医が診断する。プライバシーに配慮して企業側には所見の有無だけを伝え、詳細は伝えない方針だ。
 
 企業の健康診断に精神疾患に関する項目を盛り込む方針は、長妻厚労相が4月に表明し、厚生労働省が実施方法を検討してきた。その結果、健診項目に精神疾患の有無を盛り込めば、専門医の判断が不可欠となることから、すべての企業に実施を求めることは困難と判断。うつ病などの兆候として表れる自覚症状のチェックにとどめ、所見があった場合だけ専門医の診断に進むという2段階で実施することとした。
 
 具体的には、健康診断の問診で、うつ病などの兆候が疑われた場合、医師は結果表に「要面接」などと記載し、専門医との面接が必要であることを企業側と本人の双方に通知する。この段階では、うつ病などに対する社会的な理解が進んでいない現状を考慮し、どのような自覚症状があったかなどの詳細は企業側に分からないように配慮する。専門医との面接の結果、精神疾患が疑われる場合は、企業側を交えての話し合いの場を持つ。
 
 厚労省は、自覚症状のチェック項目として「頭痛」や「胃の調子」「睡眠」「食欲」など精神疾患に対応できるものに労働安全衛生規則を改正するか、規則はそのままにして指針を作り、来年度には実施したい考えだ。
 
(2010年8月17日 読売新聞)

2010.8.20日経プレスリリース
キューライフ、「テレビが患者・医療現場に与える影響」調査結果を発表
「テレビが患者・医療現場に与える影響」2,200人調査
副作用番組の影響は大きいが、患者・医療者間の相談につながる可能性も大
 
 
 
 日本最大級の病院検索サイト、医薬品検索サイト、医療情報サイトを運営する総合医療メディア会社の株式会社QLife(キューライフ/本社:東京都世田谷区、代表取締役:山内善行)は、『テレビの「薬」情報が患者・医療現場に与える影響実態調査』の結果を発表した。インターネット上でアンケートを行い全国の生活者2,198人から有効回答を得た。
 
 それによると、生活者が「医療情報」を最も得ているメディアとしては、テレビが1位であり、かつ最も「行動に影響がある」ことがわかった。NHKの方が民放よりも、医療情報を得る場合の、信頼性が高い。また、テレビが、自分や家族が使う薬の「副作用」を話題にしていた場合、13%が医療者に相談せずに「まず、服用を中止」してしまう。ただしほとんどの人は、医師や薬剤師に相談をする。日頃から医師や薬剤師による「薬の説明」は不十分と感じているため、テレビが適切な内容で薬の情報を発信した場合には、患者・医療者間のコミュニケーションが促される構図が明らかとなった。
 
 この結果について、東京大学大学院薬学系研究科・澤田康文教授は、「テレビ番組が、医薬品の適正使用上、重要な役割を果たすことが分かった。生活者は独自判断せず医療者に相談すること、医師・薬剤師はテレビの影響力を認識して相談には慎重に答えることが、必要だ。さらに、番組制作・放送者は、専門家の参画を得て、医療現場への影響を予測し医薬品の不適正使用につながらない情報発信をする必要がある。」と述べている。
 

【調査の背景】
 患者や生活者が、病気や治療法などについて学ぶのは、医療従事者からとは限らない。むしろ、テレビや新聞などマスメディアを介して情報に触れる方が多いのではなかろうか。
 それらの情報のなかには、「医薬品の副作用」に関するものもある。副作用のことを突然知らされた患者は、「この薬を飲み続けては危険」と自己判断で薬を止めてしまうことがあり、医療者が把握しないまま「離脱症状」(突然の服薬中止によって起こる副作用、軽微なものから重篤なものまである)が発生している可能性もある。
 2009年6月にNHKが放映した番組『クローズアップ現代:抗うつ薬の死角〜転換迫られるうつ病治療〜』は、抗うつ薬の服用が他人を攻撃する危険性をはらむという内容で、大きく話題になったため、この番組を調査題材として、患者や医療現場への影響実態や、それに対する医療者の見方を確認した。
 

【調査結論の概要】
●生活者が医療情報を得るメディアとしては、テレビが1位
 ・リーチ(多くの人が接している)が最多のメディアは、テレビである。
 ・最も情報量/頻度が多いのもテレビであり、最も「行動に影響ある」のもテレビである。
 
●NHKと民放では、視聴のされ方に違いがある
 ・NHKを短時間視聴し、民放を長時間視聴する人が多い。
 ・医療情報を得る場合には、NHKの方が民放よりも信頼性が高い。
 
●テレビで「自分/家族の薬」が出ていたら、患者は、医療者に質問する
 ・9割が、その内容を気にする。
 ・出ていた話が「副作用」に関するものだったり、疑問があったりした場合には、多くの人が医師や薬剤師に質問をする。ただし13%は、独自判断で「まず、服用を中止」してしまう。
 
●NHKの番組『うつ薬の死角〜転換迫られるうつ病治療』は、視聴者に質問をさせた
 ・当該番組を見知っていたのは24%。
 ・うち、81%は医療者に質問した(または、そう想像する)。ただし独自判断で服用中止する人も11%に上る。
 
●医師や薬剤師による「薬」の説明は不十分
 ・医師説明には33%、薬剤師説明には53%の人しか、十分と感じていない。
 ・疑問がある場合にはほとんどの人が医療者に質問するが、自分で調べられるから、と質問しない人も5%いる。女性の場合には、“遠慮”が原因で医療者に質問できない人も多い。
 

【調査実施概要】
▼実施概要
 (1)調査対象:全国の生活者
 (2)有効回収数:2,198人
 (3)調査方法:インターネット調査
 (4)調査時期:2009/10/16〜2009/11/04
 
▼本調査の位置づけ
 本調査は、他の2つの調査と一体となって、一つの研究テーマを構成した。すなわち、医師向け調査(インターネット調査、2009年6月19日〜7月13日、有効回答181件)、ならびに薬剤師向け調査(インターネット調査、2009年6月19日〜7月13日、有効回答346件)である。
 その研究テーマとは、『テレビ番組は医師、薬剤師と一般生活者の医薬品使用意識にどのような影響を及ぼすか?』であり、結果の概要が、第13回日本医薬品情報学会総会・学術大会(平成22年7月23日)で東京大学大学院薬学系研究科教授・澤田康文によって発表された。
 
▼有効回答者の属性
 ※添付の関連資料を参照
 
 
※以下、詳細な内容は添付の関連資料を参照
 

<株式会社QLifeの会社概要>
 会社名:株式会社QLife(キューライフ)
 所在地:〒154−0004 東京都世田谷区太子堂2−7−2 リングリングビルA棟6F
 代表者:代表取締役山内善行
 設立日:2006年(平成18年)11月17日
 事業内容:健康・医療分野の広告メディア事業ならびにマーケティング事業
 企業理念:生活者と医療機関の距離を縮める
 サイト理念:感動をシェアしよう!
 URL:
http://www.qlife.co.jp/
 
 
 
 
 
 
 
副作用番組の影響は大きいが、患者・医療者間の相談につながる可能性も大 「テレビが患者・医療現場に与える影響」2,200人調査
2010年8月20日 [金]QLife
QLifeは、『テレビの「薬」情報が患者・医療現場に与える影響 実態調査』の結果を発表した。インターネット上でアンケートを行い全国の生活者2,198人から有効回答を得た。
 
それによると、生活者が「医療情報」を最も得ているメディアとしては、テレビが1位であり、かつ最も「行動に影響がある」ことがわかった。NHKの方が民放よりも、医療情報を得る場合の、信頼性が高い。また、テレビが、自分や家族が使う薬の「副作用」を話題にしていた場合、13%が医療者に相談せずに「まず、服用を中止」してしまう。ただしほとんどの人は、医師や薬剤師に相談をする。日頃から医師や薬剤師による「薬の説明」は不十分と感じているため、テレビが適切な内容で薬の情報を発信した場合には、患者・医療者間のコミュニケーションが促される構図が明らかとなった。
 
この結果について、東京大学大学院薬学系研究科・澤田康文教授は、「テレビ番組が、医薬品の適正使用上、重要な役割を果たすことが分かった。生活者は独自判断せず医療者に相談すること、医師・薬剤師はテレビの影響力を認識して相談には慎重に答えることが、必要だ。さらに、番組制作・放送者は、専門家の参画を得て、医療現場への影響を予測し医薬品の不適正使用につながらない情報発信をする必要がある。」と述べている。

2010.8.18毎日新聞
こころを救う:産後うつ、理解深めて 毎年10万人前後、発症
 
支援団体が開いたフォーラムでは、夫の無理解から、治療が遅れるケースも報告された=東京都文京区の文京区民センターで、水戸撮影 ◇早期治療なら薬不要 回復へ夫の役割重要
 出産後に思うような子育てができずに自分を責めたり、イライラして子どもを傷つけたりする母親がいる。出産後の女性の1割がかかる「産後うつ」という病気だが、医療機関や家族の認識不足から適切なサポートを受けられず、苦しむケースもある。【水戸健一、斎藤広子】
 
 「この世から消えてしまいたい」。さいたま市の主婦(32)は4月上旬、第1子を産んだ直後から気分が沈みがちになった。出産した病院に相談したが、担当の産婦人科医は「初めての出産で疲れているだけ」と言うばかり。「別の病院を探して」と突き放された。
 
 途方に暮れ、懇意の医者に相談。紹介された心療内科で産後うつと診断された。現在もカウンセリングが続いている。会社員の夫(34)は「妻の様子がおかしく、一刻を争う事態だった。なぜ出産した病院で診てもらえなかったのか」と憤る。
 
   □
 
 産後うつは産後半年ごろまでに発症し、憂うつな気分や食欲不振、体のだるさなどが2週間以上続く。産後のホルモンバランスの変化や家事育児の増加が、興味の喪失や慢性的な疲労感を引き起こすといわれている。7月下旬には、2月に出産した日本テレビの女性アナウンサー(34)が自殺。親族がテレビ番組に出演して、うつ病の診断を受けていたと明かした。
 
 産後うつに詳しい三重大学保健管理センターの岡野禎治教授(精神医学)によると、国内では産後の女性の約8〜14%、毎年10万人前後がかかると言われている。岡野教授は「まじめできちょうめんなタイプが多い」と話す。
 
 問題は、産婦人科が出産後のケアに積極的にかかわろうとせず、小児科も子どもの健診が中心で、病気が見過ごされがちなことだ。また投薬治療が中心の心療内科は、授乳への影響を懸念して母親が敬遠する傾向にある。
 
 日本周産期メンタルヘルス研究会の宗田聡理事(パークサイド広尾レディスクリニック院長)は「出産後の相談窓口をつくらなければならない。投薬が必要な患者は1〜2割。早期に治療を始めれば、カウンセリングで回復が可能」と強調する。
 
 母親が産後うつにかかったら、家族や周囲はどう接すればよいのだろうか。岡野教授は「体をゆっくり休めることが必要なので、できる限り家事や育児を代わってあげて。特に夫が病気のつらさを理解して、一緒に専門医を受診してほしい」と助言する。
 
 気をつけたいのが回復期だという。「治療後2〜3カ月は自殺の危険がある。勝手に治ったと判断して薬をやめたりしないでほしい。家族も専門医の判断があるまで気を抜かずに見守って」と話す。
 
   □
 
 民間団体は、病気への理解を深めるための取り組みを進める。
 
 父親の育児支援をするNPO法人「ファザーリング・ジャパン」は9日、東京都内で「父親たちで考える産後うつ問題」と題したフォーラムを開催。仕事帰りの男性ら約200人が耳を傾けた。妻(44)が7年前に産後うつにかかったという会社員(46)が講演、「最初は単なる疲れと思い、妻の弱音をグチと聞き流してしまった。『大変といっても育児休暇中だろ』と言ってしまった」と打ち明けた。
 
 産後うつの自助グループで情報サイトを運営する「ママブルーネットワーク」には、症状を理解しない夫との関係に悩む声が寄せられる。宮崎弘美代表は「うつで体を動かせない妻に対して、気分転換の外出を勧めるなどのずれた助言をしてしまう夫もいる。回復に家族の適切なサポートは不可欠」と訴える。
 

毎日新聞 2010年8月18日 東京朝刊

2010.8.17毎日新聞
こころを救う:患者の自殺、募る後悔 埼玉・精神科医団体が事例分析
  ◇「もう一歩、踏み込んでいれば」 経験共有し生かす
 自分の患者をなぜ救えなかったのか。埼玉県内の精神科クリニックでつくる埼玉精神神経科診療所協会(悳(いさお)智彦会長)が通院患者の自殺事例を会員から集め、分析を進めている。協会幹部は「後ろめたい経験をさらけ出すのはつらいが、一人でも自殺を減らしたい」と説明する。こうした取り組みは全国の精神科の診療所団体でも例がないという。【江刺正嘉】
 
 協会は自殺対策基本法の施行をきっかけに07年度、自殺予防委員会を設置。診療所名を公表しないことを条件に報告を求めている。09年度までの3年間に、60カ所の診療所のうち、33カ所から144人の事例が寄せられた。
 
 
里村淳院長 集計の責任者を務める富士見メンタルクリニック(富士見市)の里村淳院長(63)の患者も複数自殺している。「患者が多い日に診察時間が短かったのが悪かったのか」「もう一歩気持ちに踏み込んでサポートしていれば」。後悔の思いに駆られてきた。
 
 他の医師たちの報告の自由記述欄にも同じような気持ちがつづられている。「もっと話を聞いておけば」「患者との信頼関係が築けたというのは思い込みだった」……。多くの医師が「まさか、あの人が」と、予想外の人が自殺した経験をしていた。
 
 しかし、改めてカルテを読み返すと、自殺のサインとも取れる微妙な変化を見つけることもある。「私も母が亡くなった年齢と同じ年になりました」。こうした記述に「ああ、これだったのか」と自分を責める。
 
 これまで実態が不明だった精神科診療所へ通院していた患者の自殺のデータを集めれば、有効な対策を立てられるのではないか。こうした視点で分析した結果、自殺した144人のうち、通院期間は1〜5年が70人と最も多かった。次いで1年未満が45人、6年以上は29人だった。4分の3の107人は規則正しく通院していた。
 
 うつ病が66人と半数近くを占め、自殺の手段では首つりが61人で最も多く、飛び降り18人、向精神薬などの過量服薬15人。144人のうち4分の1の38人が、過去に過量服薬を経験していた。里村院長は「受診態度がまじめで、比較的長く通院している人が自殺するケースが多いのには驚いた。今後も事例を集め、つらい経験やデータを会員が共有することで対策への取り組みが進むのではないか」と話している。
 
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 情報やご意見をメール(t.shakaibu@mainichi.co.jp)、ファクス(03・3212・0635)、手紙(〒100−8051毎日新聞社会部「こころを救う」係)でお寄せください。
 

毎日新聞 2010年8月17日 東京朝刊

2010.8.20毎日新聞
こころを救う:専門医と連携、G−Pネット 過量服薬で救急搬送、一般医処方が1割超
  ◇神戸で新システム
 自殺リスクが高い患者の適切な治療に結び付けようと、神戸市医師会は今年7月、内科などのかかりつけ医と精神科医が連携して治療にあたる「神戸G−Pネット」を作った。市内の病院が向精神薬などの過量服薬で救急搬送された患者を調査したところ、精神科以外の一般科で薬を処方されたケースが1割を超えており、調査担当者は「一般医がうつ病を診る機会が増える一方、適切な診断や投薬ができないこともある」として、ネットで医師間の協力が進むことを期待する。【堀智行】
 
 G−Pネットは、一般医と精神科医を示す英語の頭文字から命名された。いくつかの地域で誕生し、自殺対策の先駆的取り組みとして注目されている。
 
  過量服薬で救急搬送された患者の調査を行ったのは神戸市立医療センター西市民病院。04〜06年の273件(194人)を調べたところ、市販薬を大量服薬するなどしていたケースを除き、医療機関からの処方は229件で、うち201件(88%)は精神科医、28件(12%)は内科、外科など他科で処方されていた。
 
 「眠れてますか」。神戸市北区にある近藤内科クリニックの近藤誠宏院長(55)は患者の精神疾患を疑うと必ず、こう確認している。「疲れる」「食欲がない」。うつ病患者は、体の不調を訴えることが多いため、症状を見極めるには睡眠状態が一つの指標となる。
 
 近藤院長は投薬しても改善しないなど症状が重い場合、知り合いの精神科医に紹介してきた。だが予約が数カ月待ちのところもあり、市外の精神科医に頼むこともあった。多くの一般医が同じ悩みを抱えている。精神科医への紹介をスムーズにするため、近藤院長ら同市医師会理事が中心となり「神戸G−Pネット」設立の準備を進めた。
 
 同ネットは一般科で精神疾患も治療する市内の開業医142人の患者の中に重い症状が出ると、患者情報を集約するセンター(専門病院)に連絡。センターが精神科診療所や専門病院を紹介する。精神科医からは「これ以上患者が増えては困る」と慎重な意見もあったが、11診療所と9専門病院の協力を得て今年7月に運用を始めた。
 
 紹介を受けた医療機関は診察後、病状を元の開業医とセンターに報告し、今後の治療にも役立てる。受診しない患者がいればすぐに確認できる。
 
 過量服薬の患者調査とG−Pネット設立にかかわった西市民病院の見野耕一精神神経科部長(52)は「軽い患者を一般医が診察し、重ければ精神科医が診るという役割分担が進むことにつながる」と話す。経済的困窮など自殺の原因が多岐にわたる中、ネットと司法書士会などとの連携も視野に入れている。
 

毎日新聞 2010年8月20日 東京朝刊

2010.8.13毎日新聞

睡眠薬処方:4年間で3割増 厚労省、初の指針策定へ


05年に睡眠薬を飲んでいた患者の4年後の服用状況と処方量の変化

 医療機関が処方する向精神薬のうち、患者1人に出す睡眠薬の1日分の量が05〜09年の4年間で3割増えたことが、厚生労働省研究班による過去最大規模の約30万人への調査で分かった。処方された患者の約3割が4年後も服用を続け、このうち薬が減っていない人は約7割に上ることも判明。調査担当者は「投与後の効果の見極めが十分でないため、漫然と処方されている可能性がある」と指摘する。厚労省はデータを基に睡眠薬の投与や減量の方法を定めた初のガイドライン策定に乗り出す。

 調査は国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)の三島和夫・精神生理研究部長らの研究班が実施。複数の健康保険組合に加入する約30万人を対象に、05年以降の各年4〜6月の診療報酬請求明細書(レセプト)を基に向精神薬の処方実態を調べた。

 調査によると、05年に睡眠薬を服用していた患者の1日分処方量の平均と09年の平均を比べると3割増加。また05年の患者4807人のうち、4年後には約3割にあたる1312人が睡眠薬を飲み続けていた。飲み続けた人の4年間の処方量の変化は▽「増えた」52%▽「変わらない」16%▽「減った」32%。減量されていない患者が68%に上った。

 向精神薬全体については05年から2年間を調査した結果、05年に1回以上処方された人は1万426人だったが、07年は約1・2倍の1万2290人に増えた。不安や緊張を抑える抗不安薬と睡眠薬は年齢が高いほど処方される患者の割合が増加。65歳以上の女性では、05年は10%が処方を受けていたが、07年には14%に増えた。

 処方診療科は、抗うつ薬と主に統合失調症の治療に使う抗精神病薬については精神科が6〜7割。抗不安薬と睡眠薬は精神科が4割にとどまり、内科、整形外科などの一般身体科が半数以上を占めた。

 三島部長は「重篤な症状のために長期間服用しなければいけない患者もいるが、効果が乏しいまま向精神薬が処方されているケースが多いのではないか。心身にも影響が出る恐れがあり、処方が適切か医師は定期的に確認し減量を検討することが必要」と指摘する。【堀智行】

 

毎日新聞 2010813日 230

 

 

 

2010.8.13毎日新聞

睡眠薬処方:再発に不安、減量できず

 過去最大規模のレセプト調査で、4年間で睡眠薬の処方量が3割増え、長期服用者の約7割で薬が減量されていないなど、処方後の対応が立ち遅れている現状が明らかになった。調査を担当した国立精神・神経医療研究センターの三島和夫精神生理研究部長は「精神科診療所などは外来に追われており、時間のかかる減量が後手に回っている可能性がある」と指摘する。【堀智行】

 三島部長らの研究班は、医療機関で向精神薬処方がどの程度減量されているかを詳細に分析するため、約30万人のレセプト調査に加え、秋田大付属病院のうつ病の患者約160人に対する約3年間の処方を調査。発症時と再発前後で抗うつ薬と睡眠薬の平均処方量の変化を比較した。

 調査結果によると、うつ病が治っても、再発予防のためや、患者が不安を訴えたりすることを理由に抗うつ薬と睡眠薬を処方し続け、再発を繰り返すたびにさらに薬が増えるケースが多かった。

 減量が進まない背景には、関連学会や厚生労働省研究班などで作成した診療ガイドラインの不備や多忙な精神科診療所の現状がある。診療ガイドラインは向精神薬の使用期間の目安や長期服用のリスク、減量方法までは記載していない。また多くの患者を抱える診療所などでは1人にかけられる時間は限られ「減量は手間がかかるうえ、減量した場合の診療報酬上の手当てもないため対応が遅れがち」(三島部長)という。

 こうした状況に、三島部長は他科医や薬剤師との連携強化を訴える。高齢化が進み、内科などのかかりつけの医師が向精神薬を処方するケースが増えていることを踏まえ「治りにくい場合はかかりつけ医が患者に精神科医を紹介する仕組みの普及が必要」という。また「薬剤師が患者から薬に関する相談などがあれば、医師に情報提供するシステムを整備すべきだ」と指摘する。

 三島部長は「診察室ですべて診るのは無理がある。孤立無援の医療では患者のデメリットも大きい。チーム医療や減薬に関するガイドラインの策定が急務だ」と話した。

 

毎日新聞 2010813日 232

 


性犯罪対策 NPO法人設立へ
2010年8月14日 4時40分NHKニュース
 
性犯罪者の再犯を防ぐための取り組みが、日本では欧米より大きく遅れているとして、精神科医や弁護士などがNPO法人を設立し、効果的な対策を研究して、国に実現を求めていくことになりました。
 
 
 
このNPO法人は、性犯罪を犯した人のカウンセリングなどに当たっている、国立精神・神経センターの精神科医、福井裕輝さんなどが中心となって、弁護士や心理学者などとともに設立するものです。性犯罪をめぐっては、6年前、奈良県で小学生の女の子が殺害された事件をきっかけに、刑務所などで再犯を防ぐための教育プログラムが導入されましたが、福井さんらは、対象が一部の性犯罪者に限られるなど、欧米に比べて対策が大きく遅れていると指摘しています。このため、精神療法や薬物療法など医学的な治療も含めて、性犯罪の再犯を防ぐための対策を研究するとともに、性犯罪者を更生させるための専門的な機関を速やかに設立するよう国に求めていくため、28日に都内でNPOの設立に向けた集会を開くことにしています。NPOの発起人代表を務める福井裕輝さんは「日本の対策は海外に比べて20年以上遅れており、性犯罪の被害を食い止めるための効果的な方法を探り、国に早急な対策を求めていきたい」と話しています。

2010.08.10共同通信

難治の統合失調症に新薬  
患者登録を義務付け

 通常の抗精神病薬で十分な効果が見られない「治療抵抗性」の統合失調症に対する初の治療薬「クロザピン」(製品名クロザリル )が発売され1年が経過した。副作用の心配から、患者などの登録を義務付け、これまでの投与は約100人と少ないが、専門医は「症状に改善が見られ、リハビリへの意欲が出た」などと評価している。
 統合失調症は妄想、興奮といった「陽性症状」、他人との心の通じ合いなどに障害が出る「陰性症状」、認知障害などさまざまな症状が現れるとされる。「人間関係や社会活動に支障をきたすことが問題。症状だけに目を奪われると治療はうまくいかない」と、石郷岡純・東京女子医大主任教授(精神医学)。

 

ストレスへの抵抗力を強め、病気から健康な状態にもっていく手伝いをするのが治療の考え方で、この点では薬物療法も心理社会療法(リハビリ)も共通だという。

 抗精神病薬は、薬物療法の中心。脳内の神経伝達物質ドーパミンの経路に作用し、症状を改善する効果があるとされる。クロザピンは、第1世代、第2世代と言われるこれまでの薬を2種類以上、十分な量と期間使用しても良くならない患者に使用される。「各国の臨床試験でも、ほかの薬に比べ症状改善の程度が大きく、長期間使用しやすい」と、石郷岡教授。
 最初の承認は1960年代だが、白血球中の一部の成分が激減し、感染症などに至る「無顆粒球症」の死亡例が報告されたため、80年代以降は治療抵抗性の患者だけを対象に、白血球などのチェックが必要な薬となった。米、英、カナダなどでは患者の定期的な血液検査などを実施する制度を導入、昨年4月承認の日本でも厳しい基準がつくられた。
 患者以外に医療機関や医師、薬剤師らも登録制で、治療開始時にはそれまで使用していた薬の投与を中止し、原則として18週間入院、医師の管理下で治療に入る。その後も副作用の監視を続けるとともに、管理態勢を第三者委員会がチェックする。発売元のノバルティスファーマ(東京)によると、治療を行える登録医療機関は7月1日時点で79。
 東京女子医大病院ではこれまでに約10人を治療。石郷岡教授は「制度が機能すれば、副作用自体は起きたとしてもそれによる感染症は防げる。薬の良さを家族も含めて理解してもらえれば、治療はうまくいっている」としている。


向精神薬“素人売人”が急増 大量服用で死亡も
2010.8.9 21:01産経新聞
 
医薬品だが大量服用すると死に至るクスリが多数出回っている 生活保護受給者による向精神薬の不正受給が2000件以上に上ることが明らかになった。不正入手したクスリを転売する事件も続発しており、制度を悪用した“貧困ビジネス”が横行しているようだ。背景には、「向精神薬を違法薬物の代用品として乱用する人が増えている」との指摘もあり、捜査当局は警戒を強めている。(夕刊フジ)
 
 厚生労働省は先月27日、今年1月時点で生活保護を受給した約183万人のうち、精神科に通院していた約4万2200人(1月分のみ)を対象に実施した調査結果を公表した。受給者のレセプト(診療報酬明細書)を全国でサンプル調査したところ、1カ月間に複数の医療機関から重複して向精神薬が処方されていた者が746人もいたことが判明した。
 
 「調査は今年4月に大阪市西成区で発覚した事件を受けて実施された。受給者が病気を装って入手した向精神薬が、インターネットで転売されたのです。今回発覚した多くが、同様の不正行為にかかわっている可能性が高いと考えられます」(厚労省関係者)
 
 向精神薬とは、精神疾患の治療に用いられる抗うつ剤や睡眠薬などのこと。精神科医の診断により患者に処方されるが、使用法によっては違法薬物と似たような効果が得られるため、乱用者が急増。クスリの横流しを商売にする者も増えている。
 
 関東信越厚生局の元麻薬取締官は「乱用者が現れ始めたのは10年ぐらい前。ここ5年ほどで一気に広がった」と語る。
 
 「ただ、覚醒(かくせい)剤や大麻のような“市場”がなく、実入りも少ないため暴力団が組織的にかかわることは少ない。逆に増えたのが“素人売人”」
 
 警視庁関係者によると、中枢神経に作用し、覚醒剤に似た効果を持つ抗うつ剤「リタリン」や、「ピンク」と通称される睡眠導入剤の「ハルシオン」などがジャンキーの“人気銘柄”。中毒性があり、大量に服用すると死亡の危険性もあるという。
 
 薬物依存者のリハビリ施設「沖縄ダルク」の三浦陽二氏は「クスリの耐性ができてくるので、どんどん量が増えてくる。意識が混濁したまま飲み続け、いつの間にかブラックアウトを起こし、朝にはクスリの容器が空になっていることもよくあるらしい」と話す。
 
 もともとが医薬品なので、他の違法薬物よりも罪の意識が薄く、処方箋(せん)さえあれば簡単に手に入る環境も乱用に拍車をかけているようだ。前出の元捜査官は次のように言う。
 
 「合法だからと安易に考えてはいけない。営利目的での譲渡は麻薬特例法が適用され、罪が重くなる。病気を装って複数の病院から手に入れた睡眠薬をネットで売りさばいた25歳の女は、初犯なのに懲役5年の実刑判決だった。気軽に密売に手を染めると、重い現実が待っていることを自覚してほしい」

2010.8.9毎日新聞
医療行為:「たん吸引」など特養以外に拡大へ
 介護職員による「たん吸引」などの医療行為について、厚生労働省検討会は9日、対象施設を特別養護老人ホーム以外にも拡大し、10月をめどにモデル事業を始めることを決めた。介護職員によるこうした医療行為の法制化を検討していた厚労省は、来年の通常国会に関連法改正案を提出する方針。これまで「やむを得ない措置」として厚労省通知で例外的に認められてきた医療行為が、法律で明確に位置づけられる。
 
 新たな対象施設はグループホームや老人保健施設など。【野倉恵】
 
毎日新聞 2010年8月9日 23時28分

心神喪失と診断、勾留17年の被告が自殺か 千葉
2010年8月9日20時37分朝日新聞

    
 1992年に強盗殺人の罪で逮捕、起訴されながら、その後の精神鑑定で統合失調症による「心神喪失」と診断され、千葉刑務所(千葉市)の拘置施設に17年以上も勾留(こうりゅう)されていた男性被告(49)が死亡したことが9日、千葉刑務所などへの取材で分かった。同刑務所は自殺とみている。
 
 死亡した被告は92年10月、千葉県松戸市のガソリンスタンドで店長(当時38)を殺害し、現金約56万円を奪ったとして逮捕された。起訴後、千葉地裁松戸支部で裁判が始まったが、被告は裁判官らとの受け答えもままならず、精神鑑定で「心神喪失」と診断された。同支部は94年12月に公判停止を決定したが、被告は専門の病院で入院治療を受けることなく、拘置施設に留め置かれた。
 
 千葉刑務所によると、被告は7月30日午前0時10分ごろ、頭にけがをした状態で拘置施設の単独室で倒れていた。千葉市内の病院で治療を受けたが、8日午後7時半ごろ死亡した。死亡した状況から、刑務所は自傷行為による自殺とみている。
 
 被告の元弁護人は「裁判所や地検は『被告の訴訟能力の回復を待つ』と説明していたが、医療機関への入院など適切な治療を受けさせなかった。自殺という重大な結果を招いた責任は重い」と指摘している。
 
 

2010.8.10読売新聞
心神喪失被告を16年拘置、目にはし刺し死亡

 精神鑑定で心神喪失と診断され公判が停止された後も、16年近く千葉刑務所(千葉市若葉区)で拘置されていた40歳代の男性被告が死亡したことがわかった。
 

 自傷行為とみられる。同刑務所が9日発表した。
 
 発表によると、被告は7月30日午前0時過ぎ、両目にはしが刺さった状態で発見され、8日に病院で死亡した。はしは木製で被告のものだった。
 
 千葉地検などによると、被告は1992年10月、千葉県松戸市内でガソリンスタンド店長(当時38歳)を鉄パイプで殴って死亡させ、約56万円を奪ったとして強盗殺人罪で起訴された。精神鑑定で心神喪失とされ、千葉地裁松戸支部は94年12月に公判停止を決定したが、その後も同刑務所に拘置された。
 
 弁護側は95年、同支部に拘置執行停止を請求。しかし、そのまま留め置かれたため、昨年9月に「訴訟能力を回復するには治療が必要」として、医療施設へ移すよう求める意見書を同支部に提出していた。
 
 男性の元弁護人は「裁判所がなぜ放置してきたのかわからない。鑑定書で自傷他害の恐れがあると指摘されていた通りになったのだから裁判所に責任があるのではないか」と話している。同刑務所は「普段から異常な行動は見られなかった」としている。
 
(2010年8月10日01時36分  読売新聞)

2010.8.3毎日新聞
障害者支援法改正案:与野党に再提出しないよう声明
 福祉サービスの利用者負担を障害が重いほど負担が大きくなる「応益負担」から支払い能力に応じた「応能負担」に変更する障害者自立支援法改正案について、現行の支援法違憲訴訟の元原告・弁護団は2日、「当事者の意見を聞いていない」として、与野党に再提出しないよう求める声明を出した。
 
 厚生労働省内で会見した元原告・弁護団は、▽改正案は適用期限を明記しておらず、現行の支援法延命になりかねない▽応益負担が残るおそれがある−−などと指摘した。
 
 元弁護団長の竹下義樹氏は「再提出を明言する議員もいる。和解にあたり『障害者の意見を聞く』とした政府と原告の基本合意を踏みにじる動き」と批判した。【野倉恵】
 
毎日新聞 2010年8月3日 東京朝刊

2010.8.4毎日新聞
うつ病:脳の特定たんぱく質が抑制の働き 群馬大など発見
 脳内に豊富に存在する特定のたんぱく質が、うつ病を抑制する働きを持つ可能性があることを、群馬大と藤田保健衛生大、大阪大の共同研究グループが発見し、4日付の米科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」に発表した。
 
 群馬大によると、このたんぱく質は「SIRPα」と呼ばれ、これまではどのような役割を果たすのか判明していなかった。
 
 研究グループが、SIRPαを持たないよう遺伝子操作したマウスと、正常なマウスを強制的に泳がせてストレスをかける実験を行った結果、SIRPαを持たないマウスは正常なマウスに比べ、うつ症状の指標とされる「無動状態」の時間が平均2割長くなった。
 
 また、ストレスを受けたSIRPαからは、「リン酸化」と呼ばれる反応が生じていたことも確認された。リン酸化は、外部から受けた刺激を脳に伝える際に起きる。研究グループはこの結果などから、SIRPαがうつ病を抑制する何らかの作用を脳に及ぼしている可能性があると結論付けた。
 
 群馬大生体調節研究所の的崎尚客員教授(生化学)は「うつ病の発症システムを解明する手がかりの一つとなることを期待している」と話した。【鳥井真平】
 
毎日新聞 2010年8月4日 10時06分
 

うつ病発症防ぐ脳内分子機能を解明 群大研究グループ
2010.8.4 10:52産経新聞

 
 ストレスを受けた際、特定の脳内分子が反応し、うつ病の発症を防ぐ働きをしていることを、群馬大生体調節研究所・的崎尚客員教授らの研究グループが発見し、4日付の米科学誌「ジャーナル オブ ニューロサイエンス」に発表した。既存の抗うつ剤では効果の表れない患者に適応する新たな治療薬開発につながる可能性があるという。
 
 的崎教授によると、外部からのストレスに反応していることが分かったのは「SIRPα」といわれる脳内分子。
 
 研究グループでは、この分子はストレスを受けると細胞内の酵素と結合し、「リン酸化」という化学変化を起こす点に着目。「SIRPα」を取り除いた「ノックアウトマウス(KOマウス)」と通常のマウスのそれぞれに「強制水泳テスト」を行い比較。その結果、KOマウスの脳細胞内では「リン酸化」が起きず、うつ状態を示す無動の時間が増加する結果が出た。
 
 うつ病を発症する仕組みとしてはこれまで、ホルモンや神経伝達物質の機能異常が指摘され、対応した薬物などが治療に用いられてきた。しかし、薬の効かない患者もおり、発病原因は十分に解明されていない。
 
 的崎教授は「『リン酸化』を制御できる方法を考案し、自殺の大きな要因にもなっているうつ病対策につなげたい」としている。
 

2010.8.4共同通信
ストレスに対し抗うつ作用 特定タンパク質、群馬大
 

 強制的に泳がせたマウスの脳の断面。SIRPαがリン酸化した部分が白くなっている(群馬大の的崎尚客員教授と大西浩史准教授提供)
 脳の神経細胞にある特定のタンパク質が外界からのストレスに反応し、うつ病にならないよう脳を守っている可能性が高いとのマウスでの研究結果を、的崎尚群馬大客員教授(神戸大教授、生化学)らが米神経科学会誌に4日、発表した。
 
 的崎教授は「うつ病の原因の理解や、新たな治療薬の開発が期待できる」としている。
 
 このタンパク質は細胞表面の「SIRPα」。別のタンパク質「CD47」と結合し、細胞外の信号を受け取って伝えるが役割は不明だった。
 
 的崎教授らは、遺伝子操作でSIRPαを持たないマウスを作り実験。足の届かない水槽で強制的に泳がせてストレスを与えると、逃げられないと絶望して暴れるのをやめる「無動時間」が正常なマウスに比べ長かった。CD47を持たないマウスでも同様の結果で、強いうつ傾向を示した。
 
 正常マウスでは、こうしたストレスを受けると、ストレスの応答で重要とされる海馬や扁桃体などの領域でSIRPαにリン酸が付け加わる「リン酸化」が起きていたが、CD47を持たないマウスではリン酸化が弱かった。このため的崎教授らは、SIRPαがCD47と結合、リン酸化し、ストレスから脳を守っていると結論づけた。
 

2010/08/04 06:40   【共同通信】
 
 
 
 
 
2010.8.4時事通信
ストレスから脳守るたんぱく質=うつ病治療で応用に期待−群馬大など

 脳内に豊富に存在するたんぱく質「SIRPα」が、ストレスから脳を守る機能を持っていることを群馬大、大阪大などの研究グループがマウスの実験で突き止め、4日付の米科学誌ジャーナル・オブ・ニューロサイエンスに発表した。研究が進めば、うつ病やストレス性疾患などの治療で応用が期待できるという。
 SIRPαは神経細胞に突き刺さるように存在する分子。アンテナのような部分があり、別の神経細胞からの信号を受け取る役割を持つ。
 研究グループは、遺伝子操作でこのたんぱく質を無くしたマウスを強制的に水槽で泳がせ、ストレスを与え実験。水槽から逃げ出すのをあきらめ動かない状態を「うつ状態」とし、正常なマウスと遺伝子操作したマウスを比べると、うつ状態を示す無動時間は正常なマウスの方が2割程度短かった。
 実験後マウスの脳を調べたところ、SIRPαは別のたんぱく質と結合し、リン酸が加わるなど変化が生じていた。この変化が神経細胞に影響を与え、ストレスから脳を守っている可能性が高い。
 的崎尚群馬大客員教授(生化学)は「うつ病の原因はまだよく分かっていない。SIRPαの機能を詳しく調べることで、新たな治療薬の開発も期待される」としている。(2010/08/04-06:15)

2010.8.4共同通信
医療観察法で初の重大再犯 2人殺害容疑で逮捕の男
 大阪市で5月、男性2人を刺殺したとして殺人容疑で逮捕された男(45)が、事件の約3カ月半前まで、重大な他害行為を行い心神喪失などで不起訴となった場合に適用される医療観察法の入院治療を受けていたことが4日、関係者への取材で分かった。
 
 2005年の施行以来、医療観察法対象者が重大な再犯の容疑で逮捕されたケースが明らかになったのは初めて。同法は症状を改善し再び同様の行為をせずに社会復帰させることが目的で、現在、施行後5年の見直し時期を迎えている。
 
 法務省精神保健観察企画官室は「同法の対象者だったかどうかも含め、個別のケースには答えられない」としている。
 
 男は5月、男性2人の胸などをナイフで刺し殺した疑いで大阪府警に逮捕された。「命を狙われており、やられる前に殺した」と話し、大阪地検が供述の不自然さなどから精神鑑定が必要と判断し、鑑定留置されている。
 
 男は08年、コンビニで客を殴った傷害容疑で逮捕されたが起訴されず、同法対象者として佐賀県内の指定病院に入院。その後大阪府内の病院に移り、ことし1月末に裁判所の判断で「処遇終了」となり退院、一般の精神科に通院していた。
 
2010/08/04 12:59   【共同通信】

毎日新聞
兵庫県:阪神大震災障害者300人超 被災時の対策検討へ

 
阪神大震災で倒壊し、道路をふさいだビル 阪神大震災(95年1月)が原因で身体に後遺症を負った震災障害者が、兵庫県内で少なくとも300人以上に上ることが30日、県の集計で分かった。震災被災者が疾病・外傷を負った場所は、同県内が大半で、震災障害者全体の人数の輪郭が浮き上がってきた。県は年内にも調査結果をまとめ、自然災害による障害者を新たに生まないための方策を探る。
 
 今回、集計した人数には、神戸市が昨秋集計した市内の震災障害者183人のほか、既に亡くなった人、県外に転出した人も含む。
 
 兵庫県は今春から調査を実施。神戸市を除く県内の自治体で、震災後に身体障害者手帳を取得した人の申請書類約20万人分を調べ、「疾病・外傷発生年月日」を「95年1月17日」としている人と、障害を負った原因を「震災」と明記している人を探した。作業は約9割まで進んだという。県と神戸市は、震災で精神障害や知的障害を負った人への調査も今後検討する。
 
 震災障害者の実態について、国は自然災害で障害を負った被災者が対象の「災害障害見舞金」が被災地全体で64人に支給されたことしか把握していない。
 
 井戸敏三知事は「どんな治療体制をとっていれば(震災障害者の)被害を軽減できたのか、検討する下敷きにしたい」と話している。【川口裕之、内田幸一】
 
毎日新聞 2010年7月31日 2時33分(最終更新 7月31日 2時41分)

2010.8.3毎日新聞
こころを救う:患者の視点で「精神科マップ」 仙台・自死遺族の自助グループ代表

  ◇長男への思いに押され
 どこの精神科にかかればいいのか迷う患者は多い。肉親を自殺で失った遺族同士が支え合うグループ代表で仙台市の主婦、田中幸子さん(61)は遺族らから寄せられた情報を基に、市内の地図とファイルに治療内容を記録し続けている。「こころのマップ」と名付けた。「あの子のために何かをしなければ」。亡くなった長男への思いが、母を突き動かしている。
 
 警察官の長男健一さん(当時34歳)はめまいがやまず、仕事のストレスもあって精神科診療所に通院していた05年11月、命を絶った。田中さんは食事はおろか、水さえ口にしたくない。見かねた次男に勧められ、福島市にある遺族の自助グループの会に夫と参加した。だが、仙台に同様の会はない。自ら「藍(あい)の会」をつくった。
 
 夜中も枕元に携帯電話を置く。ホームページなどに載せた電話番号を見て遺族らが相談を寄せてくるからだ。自殺前に精神科を受診していた人が多いことに気づいた。しかも特定の病院や診療所が目立つ。「強い薬多量」「患者とのトラブル多し」……。仙台市の地図に赤い丸印で医療機関を示し、ファイルに治療内容と「○」や「×」の評価を書き込む。
 
 医学的な信頼度は高くないかもしれない。公表もできない。でも、患者のために役立てられないか。精神科は情報や評判があまり聞こえてこない。マップを基に「患者から見たいい医師の条件」をまとめて冊子を作ろうと計画している。
 
 田中さんは宮城県の自殺対策推進会議のメンバーも務めている。自殺予防につながると思えば、精神医療の批判もした。「素人に何が分かるのか」と反発された。だが熱意が伝わり、精神科医から「手伝えることはありませんか」と連絡が来るようになった。
 
 
 息子を思い、毎日涙がこぼれる。なぜ救ってやれなかったのか。どうして「母ちゃん、助けて」と言ってくれなかったのか。それでも田中さんは自分を奮い立たせる。「自殺問題は健一からの問いかけ。健一に何か返さなきゃ」
 
 藍の会を設立してこの夏で4年。藍は長男が着ていた制服の色だ。【奥山智己】
 
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 情報やご意見をメール(t.shakaibu@mainichi.co.jp)、ファクス(03・3212・0635)、手紙(〒100−8051毎日新聞社会部「こころを救う」係)でお寄せください。
 
毎日新聞 2010年8月3日 東京朝刊

2010.7.28毎日新聞
こころを救う:薬物依存に占める割合、向精神薬「10年で2倍」
 

外来を受診した女性に最近の様子を聞く成瀬暢也医師=埼玉県伊奈町の県立精神医療センターで14日
 
報告症例に占める依存症原因薬物の割合 ◇「自殺リスク周知を」
 薬物依存症患者の中で医師の処方する向精神薬によって依存症になった人の割合が、ここ10年余りで2倍になっていることが、国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)の調べで分かった。依存症患者は自殺リスクが高いとされる。全国でも数少ない薬物依存症の専門治療施設、埼玉県立精神医療センター(同県伊奈町)で現状を取材した。【江刺正嘉】
 
 医師「お変わりありませんか」
 
 患者「高校生の長男が進学か就職かで悩み、私によく当たるんです」
 
 7月中旬、外来を受診した女性(41)と成瀬暢也(のぶや)副病院長(50)の診察室でのやり取りを、双方の了解を得て取材した。
 
 女性は向精神薬の依存症と診断され、08年7月から5カ月間、センターの依存症病棟に入院。専門治療を受けて少しずつ回復し、今は3週間に1度の通院を続ける。
 
 「以前なら悩みがあると薬を飲んで紛らわしていたのに、今は人に相談しながら問題に向き合えるようになった。よく頑張っているね」。成瀬医師がほめると、女性は笑顔でうなずいた。
 
 女性は夫の暴力や浮気がきっかけで眠れなくなり、27歳のころ精神科病院に通い始めた。睡眠薬を処方されたが症状は改善せず、大学病院に転院。「眠れないのでもっと薬を出して」と求めると、副作用が強い睡眠薬など10種類が出されるようになった。
 
 女性がさらに薬を要求したため、病院は「手に負えない」と別の精神科病院を紹介。転院先の医師は女性の求めに応じ、一日分が約40錠にまで増えていったという。
 
 女性は薬が増えるにつれて薬が効きにくくなり、すぐに現実のつらさと直面して「死にたい」と思うようになり、処方された薬を一気に飲む自殺未遂を繰り返した。3カ所目の病院でも「薬のコントロールが不能」と判断され、センターを紹介された。
 
 成瀬医師は「患者はもちろん、医師でも依存症について十分な知識を持たない人が多いのではないか。過量服薬による自殺や自殺未遂を防ぐためには、依存症の危険性をもっと周知する必要がある」と指摘する。
 
 ◇飲み続けると、効く時間短く
 国立精神・神経医療研究センターは精神科病床がある全国の全医療施設を対象に、87年からほぼ隔年で9〜10月の期間にアルコールを除く薬物依存症で入院か通院をした患者について、どの薬物が原因か調査を実施している。シンナーなどの有機溶剤は91年の40・7%をピークに減少。一方、向精神薬(睡眠薬と抗不安薬)は96年に5・6%と最低だったが、じわじわ上昇し08年は13・0%で有機溶剤とほぼ並んだ。最も多い覚せい剤は同年、全体の半分を占めた。
 
 薬物依存症の専門家によると、向精神薬にはつらさや不安、不眠を軽減する効果があるが依存性のあるものもある。飲み続けると薬が効きにくくなることもあり、気分が安定する時間が短くなる。薬が切れた状態で現実に向き合うのが怖くなり、薬を手放せなくなる。そして次第に精神的に追いつめられ「死ぬしかない」「死んでもいい」と自殺願望が高まる場合があるという。
 
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毎日新聞 2010年7月28日 東京朝刊

2010.7.26長崎新聞
ダウン症患者にも効果との研究成果 アルツハイマー型認知症の治療薬
 

 
長崎大学病院の森内浩幸教授(左)、みさかえの園むつみの家の近藤達郎診療部長
 先天性の染色体異常疾患「ダウン症候群」(ダウン症)の患者にみられる急激な日常生活能力の低下(退行現象)などの治療に、アルツハイマー型認知症の治療薬「塩酸ドネペジル(アリセプト)」が効果がある、との研究成果を長崎大学病院小児科の森内浩幸教授や諫早市の重症心身障害児(者)施設「みさかえの園むつみの家」の近藤達郎診療部長らの研究グループがまとめた。今年に入り8年間の研究内容を日本小児科学会の雑誌で発表した。
 
 退行現象は、これまでできた日常活動が短期間にできなくなる症状。患者の約10人に1人の割合で起き、20歳前後に多くみられる。具体的には▽動作の緩慢▽表情の乏しさ▽会話の減少▽睡眠障害−が挙げられる。改善は容易でなく、家族に精神的苦痛を強いてきた。また患者は加齢につれアルツハイマーにみられる症状が増え、60歳以上の75%に上るという報告もある。出生率の増加、平均寿命の伸びが顕著な中で対策が求められていた。
 
 塩酸ドネペジルは、神経伝達物質「アセチルコリン」を分解する酵素「アセチルコリンエステラーゼ」の働きを阻害する作用を持ち、アルツハイマーの進行を抑える薬剤。国内では1999年に認可された。現在はアルツハイマー型認知症にしか医療保険適用が認められていない。
 
 近藤部長らは2001年7月に薬の存在を知り検討を始めた。1999年には英国の医学雑誌でダウン症患者のQOL(生活の質)を向上させた事例が報告されたことも判明。長崎大学病院倫理審査委員会の承認を経て、02年6月からこれまでに長崎、佐賀両県の患者約60人(使用開始年齢13〜58歳)に投与してきた。
 
 その結果、服用後1〜数カ月で▽起床や食事といった生活パターンの確立など日常生活の改善▽精神的安定の維持▽表現力や語彙(ごい)数など言語機能の向上▽排尿機能の改善−といった効果があった。ただダウン症患者は解毒機能が低く薬剤の血中濃度が高くなりやすいため、過度に投与すると下痢や尿失禁、パニック症状などの副作用があることも分かった。
 
 森内教授と近藤部長は「患者の合併症の治療は進んだが、生活能力そのものを向上させる医療的手段はなかった。適正な用法、用量を守ればこの薬物療法は画期的だ。ダウン症患者への保険適用化を目指したい」としている。
 
 ◆ズーム/ダウン症候群(ダウン症)
 
 体細胞の21番染色体が1本余分に存在し、計3本持つことで発症する先天性の疾患群。英国人医師、ダウンが1866年に初めて報告した。さまざまな程度の精神運動発達の遅れのほか、先天性心疾患や白血病などの合併症を引き起こす可能性がある。高齢出産の増加や医療技術の進歩などに伴い、国内で出生する割合は1975年の932人に1人から、2005年は583人に1人に増加。11年は340人に1人にまで増えるとも言われている。西オーストラリアの研究では2000年度の患者の平均寿命は58.6歳だった。日本の患者の平均寿命は60歳程度と推測されている。

2010.7.28毎日新聞
いのちの電話:相談員不足 今年度希望者まだ11人 ニーズ高い深夜帯手薄 /北海道
 匿名で悩んでいる人の話を聞く「北海道いのちの電話」(011・231・4343)が、相談員不足に直面している。「死にたい」と訴える自殺志向の電話が昨年初めて800件を超えるなど重要性は年々高まっているが、昨年度は40人いた新規の相談員希望者が今年度はまだ11人。事務局は「不況下でボランティアは集まりにくいが、何とか草の根の活動を守りたい」と募集を続けている。
 
 北海道いのちの電話は79年にスタートし、1日も休まず相談を受け付けている。昨年は過去5年で最多の1万8336件の電話を受けたが、「つながるのは20回に1回程度」という込みよう。自殺志向の電話は過去最多の831件に上り、前年から1割以上増えた。
 
 相談員は現在169人で、主婦や会社員、学生などさまざま。資格は必要なく、講義や体験学習など1年半の研修を経て認定される。ただ、高齢化が進み、有職者も増えているため、行政の対応が手薄で最もニーズが高い深夜帯の人手不足が深刻だ。
 
 事務局によると、最近はうつ病や統合失調症を患う中高年男性の相談が増加。市外通話料金がかからないIP電話の普及もあって、全国各地からかかり、通話時間も長くなる傾向があるという。
 
 相談員は無報酬だが、8年間続けている札幌市内の主婦(51)は「相手の気持ちを受け止め、共感することを心掛けるうちに、家族の話もきちんと聞けるようになった。大切なことを学べた」と話す。元保育士の女性(61)は「電話口で『きょうは死なないから』と言ってもらえると、心からよかったと思う」とやりがいを語る。
 
 今年度の募集は31日までで、対象は20歳以上。研修費用として3万円かかり、申し込み時に希望理由などの作文を提出する。問い合わせは事務局(011・251・6464)。【清水健二】
 

毎日新聞 2010年7月28日 地方版

毎日新聞
こころを救う:うつ100万人/上 手に山盛りの薬、毎日

  ◇症状改善せず処方増加/多面的な療法必要
 うつ病を含む気分障害の患者数が、昨年末の厚生労働省の発表で初めて100万人を超え、104万人(08年10月時点)になった。12年前の2倍以上に達する勢いで、なかなか治らず苦しむ人も少なくない。治療の現場で何が起きているのか。【山本紀子】
 
 手のひらいっぱいに盛った薬を口に押し込み、一気に水を流し込む。そんな仕草が「気持ち悪かった」と夫が打ち明けたのは、妻(37)のうつ病が治ってからだった。
 
 首都圏に住むこの女性は勤め先で新しい仕事に追われていた25歳の時、うつ病を発症した。「たくさんの薬が出て、症状は悪くなるばかり」。眠れず夜中に頭をかきむしり、家にこもった。不規則な生活と薬の副作用で8キロ太り、休職続きで職も失った。社会とのつながりを断たれ、死を考えることもあった。
 
 
12年闘病した女性は、治る手がかりを求め、多くのうつ病関係の本を買い求めて読んだという=山本紀子撮影 水泳、アロマセラピー、カウンセラー通い……。あらゆることを試し、うつ病関係の本も読みあさった。ある抗うつ薬だけは「効いた」と思えた。気持ちが落ち着いてくると、薬をやめたくなった。医師に「調子いいです」と訴えたが「現状で安定しているから」と減らしてくれない。
 
 このままではずっと薬漬けだ。考えた末、「子どもがほしいので産婦人科のある病院に転院したい」と願い出た。紹介状を書いてもらった先の病院で頼み込み、徐々に薬を減らしてもらった。
 
 「あなた、もううつ病じゃありませんよ」。今年4月、新任の主治医は最初の受診でそう切り出し、カルテを眺めて「薬を飲みすぎていたかもしれませんね」とつぶやいた。
 
 うつを脱するまでに通った医療機関は8カ所。「医者は薬を飲むことしか教えてくれず、回復する方法は必死であがいて自分で見つけました」。12年間の闘病が何だったのかとの思いは消えない。
 
     □
 
 「薬を飲んで休養すれば治る」と言われることの多いうつ病だが、「初めの薬がすっと効いて治るのは4割程度」と野村総一郎・防衛医大教授は言う。治療が長引くと多剤多量処方になりがちで、服用するほどにつらさが副作用のためなのか病気が悪化したのか、見極めが難しくなる。
 
 抗うつ薬は低用量から始め徐々に量を増やすのが一般的だ。添付文書に記された標準投与量を上回る薬を投与する医師もいるが、京都大の古川寿亮教授は懐疑的だ。「有効性が高まることはなく、むしろ副作用が増えます」
 
 いま国内で承認されている抗うつ薬は50種類を超える。しかし、うつ病の本当の原因は現在も解明されておらず、誰にでも効く特効薬はまだない。薬の効果についてもさまざまな議論があり、今年1月には米医師会誌に「軽〜中等症うつ病への薬の効果は、偽薬と変わりない」との論文も発表されている。
 
     □
 
  関東地方の30代男性会社員はうつ病を患い8年になる。副作用で攻撃性が出ることもある抗うつ剤を飲んだ時は、無性に上司を殴りたくなることがあった。音と光に過敏になり、カサカサいうスーパーのレジ袋の音が不快でならない。
 
 母親は「薬が効いた実感はなく、副作用にばかり悩まされた」と話す。主治医に「副作用が出たようです」と訴えても「病気の症状です」と否定され、量も種類も増えていく。
 
 息子がかかった病院は10カ所近く。母親は通院に付き添ってきたが「過労なのか本人の特質なのか、うつの原因を探ろうという姿勢を感じたことがない」。診察室で話していると、3分を過ぎたあたりで看護師にそっと肩をたたかれる。医療への不信感は消えず、今は運動と食事療法で回復を願う毎日だ。
 
 各国のうつ病治療に詳しい慶応大の渡辺衡一郎専任講師によると、軽症のうつ病に対し、カナダでは心理療法と薬、豪州では心理教育、英国では医療費削減の目的もあって薬は推奨せず、考え方を変える訓練を勧める。
 
 渡辺さんは言う。「治療の中心は薬物だが、他にも療法があるべきだ。患者さんが多重債務などを抱えていないか、周囲は病気を理解しているか、なども考慮しながらストレスを取り除かなければならない。日本でも今後は薬物療法と並び、心理療法や運動など自己回復力を刺激する多面的なアプローチが必要」
 
 本人や家族が満足できる治療はどうすればできるのか。北里大の宮岡等教授は「薬やさまざまな治療のプラス面、マイナス面を医師が説明し、患者さんと医師が話し合って治療方針を決めることが大切」と話す。
 
 ◇患者急増の背景は
 うつ病急増の理由については、専門家の間でも見解が分かれる。
 
 「データを分析すると、さまざまな国で新規の抗うつ薬の発売後に患者が増えている」と指摘するのは、パナソニック健康保険組合東京健康管理センターメンタルヘルス科部長で精神科医の冨高辰一郎さん。「治る病気で早期受診が大切とのメッセージが浸透し、受診者が増えた」とも言う。
 
 一方、防衛医大の野村教授は「診断基準の普及でうつ病という診断がつきやすくなり、従来と異なる新しいタイプのうつ病の人も通院するようになった。不況や雇用環境の悪化もあると思う」と話す。
 
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毎日新聞 2010年7月27日 東京朝刊
 
 
 
 
 
 
 

2010.7.29毎日新聞
こころを救う:うつ100万人/下 多面的な治療で効果
  ◇「薬中心」転換、心身に働きかける療法併用へ

 多くの病院で、うつ病患者にさまざまな治療薬が処方されている。最近は、薬に加えて、心の持ちようを前向きにする認知療法、定期的に体を動かす運動療法があり、それぞれ効果を上げている。薬中心のうつの治療法に広がりが出てきた。
 
    □
 
 東京都の30代女性は3年前にうつ病になった。夜勤が月8回という看護師の激務がたたった。気配りを絶やさず、人の顔色が気になる性格で、上司が渋い顔をしていると自分のミスのせいと思い込んでしまう。「ささいなことで涙が出て夜中に目がさめる。ひどい疲労感から、仕事場にタクシーで通っていた」
 
 抗うつ薬や抗不安薬を飲み少しは楽になった。だが、うつは収まらず、携帯サイトによる認知療法をやってみた。「うつ・不安ネット」というサイト(利用料月315円)で、慶応大の大野裕教授が監修している。
 
 −−悲しい時はどうしますか?
 
 −−きょう楽しかったことは?
 
 ゲーム感覚で画面の質問に答えていくとメッセージが浮かぶ。
 
 −−つらい現実に目が向けられ、大きな進歩でしたね
 
 認知療法は、まず自分の考え方や受け止め方(認知)の特徴に気づかせる。そのうえで、問題に柔軟に対処する訓練をする。カウンセラーとの対面が基本だが女性は「携帯サイトは帰宅途中の電車内でも困った時すぐできる」と話し、自分に合っていたという。
 
 大野教授は「認知療法には再発予防効果もある」と言う。「薬併用で効果が上がり、薬だけで治らない人も試してみる価値がある」
 
 銀座泰明クリニックの精神科医、茅野分さんは「症状が重いと気力が伴わず難しい」としながらも「比較的軽く心理的葛藤(かっとう)のある方へは、十分効果が期待される」という。
 
 看護師を辞め派遣社員として働く女性は、いま変化を感じている。「ただ自分を責めるのでなく、状況を冷静に見られるようになった。最近は上司の怒った顔を見ると、『どうしたんですか』とコミュニケーションが取れるようになった」
 
    □
 
 対面の認知療法は1回数千円〜1万円とかなり高額だが、今春から健康保険が使えるようになった。だが、熟練した医師は少なく、保険がきく病院も見つけにくい。ある精神科医は明かす。「うちは少数の患者にひっそり認知療法をしている。看板に掲げたら長蛇の列で困ってしまう」
 
 大野教授は「医師だけに許されている保険の認知療法を将来は看護職や心理職などにも広げるべきだ」と提言する。そのうえで、国の支援の必要性を強調する。「今年は人材養成の予算が年間1000万円ついたが、英国は3年間で360億円かけている」
 
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 一定量の運動を続けて心身を健康にするのが運動療法だ。
 
 東京都内の男性会社員(44)は週1回のボクシングのトレーニングを続けている。ジムでは、コーチ相手にパンチを繰り出す。ハアハアと息が上がり、全身から汗が落ちる。
 
 「5回しかできなかったキックが7回連続になり、階段を上がっていくのが楽しい」
 
 調子がいいので医師と相談し、抗うつ薬を減らしたら、薬を飲まずにすむようになった。投薬時は「もうろうとして生きてる感じがしなかった」と言うが、今は適度に疲れ、よく眠れる。「会社のストレスが原因だったが、吹っ切れました」
 
 男性の主治医の青葉こころのクリニック(東京都豊島区)院長の鈴木宏さんは「ややきつい運動を一定の頻度で続けると1〜2カ月後の効果が望める」と話し、多くの場合、薬物を併用する。「軽〜中等症の人に有効で、重症者でも効果が出ることがある」。鈴木さんは元ボクサーという経歴がある。そこで、格闘技が好きという男性にジム通いを勧めたのだった。
 
 早歩きとゆっくり歩きを繰り返すウオーキング療法にも取り組んでいる。信州大がお年寄りの生活習慣改善のため開発したものを取り入れた。専用の計測器を腰につけると、その人にあった速度を指示、運動量も記録してくれる。
 
 最近では、うつ病患者の体内で減っている脳由来神経栄養因子(BDNF)が運動で増えることも、欧米の研究で明らかになっている。日本では慶大病院が、運動療法をうつ病の軽症者に導入する準備を進めている。【山本紀子】
 
 ◇休養、カウンセリング…治癒の要因さまざま
 病院検索サイトなどを運営する「QLife」が今年4月、元患者にアンケートをしたところ、うつ病が治ったきっかけは(1)時間と共になんとなく(43%)(2)休養で楽になった(41%)(3)薬が効いた(38%)−−が多かった=自由回答。
 
 うつを克服しうつ病患者の家族にもなった体験から「うつの家族の会 みなと」を発足させた砂田くにえさんは「薬だけでは治らない人もいる。私は抗うつ薬で低め安定の状態になり、認知療法などで考え方を変え、最後は勤め先を見つけ自尊心を得て回復しました」と話す。
 
 うつ病当事者・家族会「NPO法人 ザフト」を運営する宮城和子さん(46)は夫が8年の闘病を経て回復した。「仕事を辞めて十分な休養をとり、心の底にわだかまっていた親とのあつれきに向きあった。『必ずよくなる』という主治医の言葉を信じた。焦りは禁物です」
 
毎日新聞 2010年7月29日 東京朝刊

生活保護受給2700人、複数の精神科から向精神薬
2010年7月27日12時51分朝日新聞

    
 生活保護受給者を使って不正入手した向精神薬が大量に転売された事件を受けて、緊急調査をしていた厚生労働省は27日、今年1月に複数の医療機関から向精神薬を処方されていた受給者が全国で少なくとも2700人を超えると発表した。中には標準量を大幅に超えていたケースもあり、同省は不正の可能性もあるとみて追跡調査する。
 
 緊急調査は、大阪市の生活保護受給者から大量に向精神薬を入手させ、インターネットで転売していた事件が4月に発覚したことを受けて実施。全国の都道府県と政令指定市、中核市が精神科を受診した受給者を抽出し、今年1月分のレセプト(診療報酬明細書)から向精神薬を処方された中で重複受診していないかどうかを調べた。
 
 調査結果によると、1月に精神科に通院した受給者42197人のうち、2746人が同月中に複数の医療機関から向精神薬を処方された。最も多かったのは東京都で781人。事件が起きた大阪市は146人だった。
 
 生活保護受給者は、医療扶助によって医療費は全額公費から出されるため、制度を悪用された形だ。ただ、重複受診して処方されること自体は必ずしも不正に当たるわけではなく、同省がさらに実態を詳細に分析している。
 
 大阪市の調査では、重複受診や過剰投与されていた160人のうち、80人が通常の基準を超える向精神薬を受け取っていた。うち18人は基準の3倍以上の量を処方されていたという。
 
 長妻昭厚労相は27日の閣議後の記者会見で、「不適切に向精神薬を入手しているか判明していないが、多くのケースで過剰に処方されている疑いがある。追跡調査して見極めたい」と述べた。同省は同日、自治体に対し、複数の医療機関から向精神薬を処方された受給者の病状や処方状況を把握するよう求める通知を出した。
 
 

2010.7.28読売新聞
 向精神薬、生活保護の2746人に重複処方

 大阪市西成区の生活保護受給者に処方された向精神薬を巡る違法転売事件で、厚生労働省が調査したところ、今年1月時点で、少なくとも全国の生活保護受給者2746人が複数の医療機関から重複して向精神薬を処方されていたことがわかった。
 

 厚労省は処方量が適正だったかどうか、各自治体に追跡調査を求めた。調査は、今年4月に実施。受給者のうち医療扶助を受け、今年1月に精神科に通院していた4万2197人が対象になった。
 
 長妻厚労相は27日の閣議後の記者会見で、「不適切に向精神薬を入手しているかどうかは判明していないが、多くが過剰に出されている可能性がある。調査で見極めていきたい」と述べた。
 
(2010年7月28日19時58分  読売新聞)

自殺未遂患者6割、境界性パーソナリティ障害 病院調査
2010年7月28日2時0分朝日新聞

    
 向精神薬を大量に飲んだりリストカットを繰り返すなど、自殺に関連する行動で精神科に入院した患者の約6割が、若年層に多い「境界性パーソナリティー障害」と診断されていたことが、東京都立松沢病院の研究でわかった。日本の自殺予防の施策は中高年のうつ病が中心だが、若い世代への対策も必要と専門家は指摘する。
 
 都の精神科救急医療の拠点病院である松沢病院に2006〜07年に入院した患者のうち、自殺未遂を経験した155人(男性68人、女性87人)を対象に面接調査した。自殺未遂の方法は、薬の過剰摂取が約3割、リストカットが約4割を占めた。
 
 境界性パーソナリティー障害と診断されたのは全体の56%。女性の方が割合が高く、男性の41%に対し女性は67%だった。平均年齢は33歳で、障害がない人に比べ8歳若かった。
 
 境界性パーソナリティー障害は思春期から青年期の患者が多く、衝動的な自傷行為を繰り返す場合が多い。自殺リスクの高さは欧米では報告されており、8〜10%が自殺に至るとされる。
 
 精神科で処方された向精神薬の過量服薬は社会問題となっており、厚労省研究班の調査では、精神科を受診していた自殺者の58%が自殺時に向精神薬を大量に飲んでいた。同省は6月、自殺の危険性がある患者には向精神薬を長期間、大量に処方しないよう呼びかける通知を日本医師会などに出した。
 
 先進7カ国中、日本は唯一、15〜34歳の若い世代の死因で自殺がトップを占める。警察庁によると、20〜30代の自殺率は昨年、統計を取り始めた1978年以降で最悪を記録した。松沢病院の林直樹・精神科部長は「日本の自殺対策は中高年のうつ病対策に偏っているが、境界性パーソナリティー障害が多い若年層への対策も必要だ」と指摘する。(岡崎明子)
 
     ◇
 
 〈境界性パーソナリティー障害〉 物の見方や考え方に著しい偏りがあり、社会生活を送るのが難しい。若い女性に多く、人に見捨てられるのではないかと強い不安を抱く、対人関係が両極端で不安定、薬の大量摂取やリストカットなどの自傷行為を繰り返す――といった症状が出る。米国では人口の2%が診断基準に当てはまるとされ、治療は薬物療法と精神療法が中心となる。

2010.7.29毎日新聞
こころを救う:向精神薬の過剰処方防止を要望 遺族団体、厚労省に
  家族を自殺で亡くした遺族でつくる全国自死遺族連絡会(田中幸子代表)は28日、厚生労働省を訪れ、医療機関による向精神薬の過剰処方を防ぐよう求める文書を提出した。
 
 田中代表は遺族1016人に調査し、約7割が精神科に通院中に自殺していた結果に触れ「精神科の早期受診を呼びかけて受診率を高めるだけではだめで、投薬治療に偏っている今の治療内容を見直してほしい」などと求めた。
 
 文書を受け取った精神・障害保健課の荒川亮介・心の健康づくり対策官は「過剰処方については問題意識を持ち、具体的な改善策を検討している」と話した。
 
 この問題をめぐっては、厚労省が6月、向精神薬の過剰処方に注意を促す通知を日本医師会などの関係団体や自治体に出すとともに、省内の「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」で過量服薬対策を進めている。【百武信幸】
 
毎日新聞 2010年7月29日 東京朝刊

2010.7.27毎日新聞
損賠訴訟:適切な処置せず、左半身マヒに 病院側を提訴 /福岡

 入院中に脳梗塞(こうそく)を起こしたうえ適切な処置がなされずに左半身がマヒしたとして、北九州市の40代の女性が門司区の医療法人を相手に1億2952万円の損害賠償を求める訴訟を地裁小倉支部に起こした。
 
 訴状などによると、女性は03年10月6日、精神疾患で同区の法人運営の病院を受診。早期入院が必要との診断に興奮状態となり、鎮静剤を投与された。閉鎖病棟に入院したが、同6〜7日にかけて脳梗塞の症状が表れ、9日、脳梗塞と診断された。医師は8日に異常を確認しながら適切な治療をしなかったため左半身マヒになったとしている。
 
 法人側は「脳梗塞が起きたことは事実だが、医療過誤はなかったと考えている」としている。
 
〔北九州版〕
 

毎日新聞 2010年7月27日 地方版

向精神薬の過剰摂取 対策協議
 5時9分  NHKニュース

自殺した人の中に精神疾患の治療で処方された向精神薬を過剰に服用していたケースが多いことから、厚生労働省は薬の過剰な服用を防止する対策について協議を始めました。
 
この協議は、自殺やうつ病の対策を検討する厚生労働省のプロジェクトチームが始めたもので、27日夜の会合には、精神医療の医師や自殺対策に取り組むNPO法人の関係者らが出席しました。会合では、去年までの2年間に自殺した人のうち、追跡調査が可能だった76人の半分に当たる38人が1年以内に精神科を受診し、そのうち19人については自殺したときに向精神薬を過剰に服用していたという厚生労働省の調査結果が紹介されました。これについて、出席者からは「精神科の中には薬物治療に頼りすぎて多量の薬を処方する医師もいて、そのことが過剰な服用につながっている」といった指摘や「患者が医師の指示どおりに薬を服用しているか細かくチェックできる仕組みが必要だ」といった意見が出されていました。プロジェクトチームでは、早ければ来月にも向精神薬の過剰な服用を防ぐ対策をまとめる方針です。

2010.7.24京都新聞

裁判所入院決定に地域差、京都4割
「心神喪失」精神障害者


医療観察法における地方裁判所別の審判結果(件)

 重大事件を起こし心神喪失で無罪となった精神障害者らを対象とする心神喪失者等医療観察法について、全国の地裁の審判結果に、大きな地域差があることが分かった。施行から昨年末までで、入院決定が8割を占める地裁がある一方、京都地裁は4割にとどまる。精神医療の地域格差の反映ともいえるが、「予防拘禁にあたる」と同法に対する批判が根強いだけに、議論を呼びそうだ。

 最高裁によると、施行から昨年末までに各地裁の医療観察法の審判(事件に関与がなかったなどの却下を除く)は1509件あり、▽入院950件▽通院287件▽医療観察法での処遇が不要との決定(不処遇)が272件で、約6割が入院だった。地裁別に見ると、東京地裁は▽入院106件▽通院14件▽不処遇31件と、入院が7割と高く、埼玉や千葉も同程度だった。全体数は少ないが、青森は8割を超え、大津も7割だった。大津を含めて不処遇がゼロの地裁は5カ所あった。

 一方、京都地裁は▽入院14件▽通院5件▽不処遇16件で、入院決定は4割にとどまった。大阪や神戸は5割程度となっている。

 決定の地域差について京都産業大の川本哲郎教授(刑事法)は「指定入院医療機関の整備の遅れが一因」と指摘する。医療観察法で入院決定された触法精神障害者の受け入れ先として国は800床を整備するとしたが現在は566床で、京阪神では大阪府に5床だけだ。「審判結果にこれだけ地域差があるのは、法の下の平等に反する」とした。

 京都弁護士会の大杉光子弁護士は「京都地裁の入院決定の少なさは、地域の精神医療の受け皿が相対的に整っていることを示している。地域医療を充実させることで十分対応でき、医療観察法は廃止すべき」としている。

20100724 0930


2010.7.22読売新聞関西
コピー処方せん薬局見抜けず、向精神薬不正入手…大阪
生活保護悪用、<薬の貧困ビジネス>
 大阪市内の生活保護受給者の男性が今年1月、医師から受け取った処方せんをカラーコピーして薬局4か所に提出し、多量の向精神薬を不正入手していたことが、市の調査でわかった。市は麻薬及び向精神薬取締法違反(処方せん偽造)などの疑いがあるとみて、大阪府警と連携して不正の手口解明を目指す。
 
 男性は精神疾患で医療機関を受診していたが、今年4月、覚せい剤取締法違反容疑で逮捕され、市は保護を廃止している。
 
 市が今年1月の男性の診療報酬明細書や調剤明細書などを点検したところ、薬局5か所に処方せんを提出していたことが判明。うち1か所は原本だったが、4か所がカラーコピーだった。男性は定められた量の5倍の向精神薬を同時期に入手していたことになる。
 
 カラーコピーは医師の印影が鮮明で、薬局側も偽物と見抜けなかったという。市は1月以外の調査も進めているが、今のところ同様の不正は確認されていない。
 
 受給者は自己負担なしで診療や薬剤の処方を受けられ、費用は生活保護の医療扶助として全額公費で支払われる。今年4月には、大阪市西成区の受給者から不正入手した向精神薬を違法転売したとされる事件が起きており、市は処方せんを偽造し、だまし取った向精神薬を売りさばく目的があったかどうかも調べる。
 
 大阪市では、1月だけで受給者80人が向精神薬を過剰入手していたことが判明。医療機関や薬局への聞き取り調査では「受給者の家族が来院し、家族分も処方したことがある」「処方量が多くても、継続患者の場合はそのまま処方する」などの情報が寄せられており、生活保護を悪用した<薬の貧困ビジネス>について引き続き調査を進める。
 
 全国最多の14万2000人の受給者がいる大阪市の2008年度の医療扶助は1129億円で、保護費全体の47%を占めている。
 
(2010年7月22日  読売新聞)

2010.7.24毎日新聞
こころを救う:向精神薬で自殺未遂、診療所は… 人、設備足りず拒否も

 医療機関で処方された向精神薬を飲んで自殺を図る人が増えている問題で、過量服薬の恐れがある患者への対応は、診療所ごとに大きく異なる。診察を断る診療所がある一方、受け入れても有効な手立てを打ち出せずにいるところは少なくない。患者をどう支えるか。両方の診療所を訪ねた。【堀智行、奥山智己】
 
 ◇しわ寄せが他の患者に 採算ギリギリまで診察
 「自殺未遂などの問題行動には対応できません」。静岡県の精神科診療所の院長がホームページにこう掲げ開業したのは2年前だ。
 
 精神科医歴20年。勤務医時代、昼夜問わず患者が担ぎ込まれる救急の仕事はきつかったが、命を預かるやりがいも感じた。だが自殺を図る患者を救っても感謝されず、逆に助けたことを責められた経験もある。「トラブルメーカー。自ら命を絶とうとした人を他の患者と同じように助ける気にはならない」
 
 今の診療所は看護師もいない。過量服薬する患者を受け入れれば時間も手間もかかる。そのしわ寄せは他の患者へ向かう。「未遂者を誰が責任を持って診るのかという仕組みがない。行政が作るべきだ。私は他の患者をあふれさせてまで、診る気はない」と言う。
 
   ◇  ◇
 
 「せんせえ、お薬飲んじゃった」。6月下旬、川崎市の精神科診療所に30代の女性患者から電話がかかった。同僚や夫との関係に悩むたび、過量服薬を繰り返してきた。今回も向精神薬50錠を飲んだという。通院を始めて2年、手を尽くしてきたが過量服薬は止まらない。院長(49)はすぐ救急病院の受診を勧めた。
 
 都内の精神科病院の勤務医を経て3年前に開業した。1日の患者は約60人。診察時間は長くて40分。患者の訴えを聴き、経営も成り立つぎりぎりのラインだ。自殺未遂後には1時間かけ、話に耳を傾けることもある。再発を防ぐには薬の管理など周囲の協力が欠かせないが、単身者の多い都会では支援者を探すのも容易ではない。薬を出さなければ転院してしまうかもしれない。「『もう診られません』と言うのは簡単だが、断れば他の医師に押し付けることになる」。ジレンマが募る。
 
 人も設備も足りない診療所で患者をどう支えるか、試行錯誤が続く。7月上旬、30代の女性が再び過量服薬したと連絡があった。
 
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 情報やご意見をメール(t.shakaibu@mainichi.co.jp)、ファクス(03・3212・0635)、手紙(〒100−8051毎日新聞社会部「こころを救う」係)でお寄せください。
 
毎日新聞 2010年7月24日 東京朝刊
 
 
 
2010.7.24毎日新聞
こころを救う:向精神薬で自殺未遂、診療所は… 松本俊彦氏の話
 ◇医師支える体制を−−国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦自殺予防総合対策副センター長の話
 過量服薬を繰り返す患者に熱心にかかわっても経営的にはマイナスだ。治療をサポートする臨床心理士などを雇えば、人件費捻出(ねんしゅつ)のため、さらに短い時間で多数の患者をさばかなければならなくなる。熱心な精神科医には燃え尽きる人も少なくない。自殺リスクの高い患者と精力的に向き合う医師を支える体制を整える必要がある。
 

毎日新聞 2010年7月24日 東京朝刊

女性86.44歳、男性79.59歳 平均寿命また更新
2010年7月26日19時31分朝日新聞

    
 日本人の2009年の平均寿命は男性79.59歳、女性86.44歳で、いずれも過去最高を4年続けて更新したことが26日、明らかになった。女性は25年連続の世界最長寿で、男性は5位だった。がん、心疾患、脳血管疾患の3大疾患と、肺炎の死亡率が全体的に下がったことが影響した。
 
 厚生労働省がこの日発表した「簡易生命表」でわかった。前年の平均寿命より、男性は0.30歳、女性は0.39歳延びており、前年の延び(男性0.10歳、女性0.06歳)を大きく上回った。
 
 厚労省によると、男性の平均寿命の1位はカタールの81.0歳(07年)。前年より4.3歳延びていた。2位は香港で、アイスランドとスイスが続いた。女性は日本に次ぐのが香港で、フランス、スイス、スペインの順。
 
 日本人が3大疾患で死亡する確率は男性54.65%、女性51.84%で、いずれも前年より下がった。3大疾患が克服されると、男性は87.63歳、女性は93.43歳まで平均寿命が延びるという。
 
 
平均寿命 日本人女性86・44歳、25年連続世界一 男性は5位転落
2010.7.26 21:19産経新聞

  平成21年の日本人の平均寿命が男性79・59歳、女性86・44歳と、ともに4年連続で過去最高を更新したことが26日、厚生労働省の調べで分かった。「肺炎や心臓病による死者の減少が寄与した」(同省)という。海外と比べると、女性は25年連続の世界一だが、男性は前年の4位から5位に順位を下げた。
 
 厚労省によると、平均寿命は前年よりも男性で0・3年、女性で0・39年長くなった。男女差は6・85年で、前年よりも0・09年広がった。
 
 医療技術の進歩などで平均寿命は伸びる傾向にあるといい、「3大死因」(がん、心臓病、脳卒中)の死者が減少傾向にあるほか、今年は特に肺炎の死者が少なかったという。
 
 平均寿命を世界の主な国や地域と比べると、女性の2位は香港(86・1歳)で、3位はフランス(84・5歳)。一方、男性の1位はカタールで81歳。前年の76・7歳からわずか1年で大幅に伸びた。2位は香港(79・8歳)、3位はアイスランドとスイスが79・7歳で並んだ。
 
 65歳まで生存する確率は男性で86・7%、女性で93・6%。90歳までは男性22・2%、女性46・4%だった。
 
 21年生まれの子供が将来、3大死因で死亡する確率は男性が54・65%で、女性は51・84%。いずれもがんの比率が最も高かった。3大死因が克服されれば、男性で8・04歳、女性で6・99歳、寿命が延びるという。

2010.7.24読売新聞
「ひきこもり」70万人、予備軍155万人
 
  家や自室に閉じこもって外に出ない若者の「ひきこもり」が全国で70万人に上ると推計されることが、内閣府が23日に発表した初めての全国実態調査の結果から分かった。
 
 将来ひきこもりになる可能性のある「ひきこもり親和群」も155万人と推計しており、「今後さらに増える可能性がある」と分析している。
 
 調査は2月18〜28日、全国の15〜39歳の男女5000人を対象に行われ、3287人(65・7%)から回答を得た。
 
 「普段は家にいるが、自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」「普段は家にいるが、近所のコンビニなどには出かける」「自室からは出るが、家からは出ない」「自室からほとんど出ない」状態が6か月以上続いている人をひきこもり群と定義。「家や自室に閉じこもっていて外に出ない人たちの気持ちが分かる」「自分も家や自室に閉じこもりたいと思うことがある」「嫌な出来事があると、外に出たくなくなる」「理由があるなら家や自室に閉じこもるのも仕方がないと思う」の4項目すべてを「はい」と答えたか、3項目を「はい」、1項目を「どちらかといえばはい」と回答した人を、ひきこもり親和群と分類した。
 
 その結果、ひきこもり群は有効回答の1・8%、親和群は同4・0%で、総務省の2009年の人口推計で15〜39歳人口は3880万人であることから、ひきこもり群は70万人、親和群は155万人と推計した。
 
 ひきこもり群は男性が66%と多く、年齢別では30歳代が46%を占めた。一方、親和群は女性が63%を占め、10歳代の割合が31%と高かった。
 
 ひきこもりとなったきっかけは、「職場になじめなかった」と「病気」がともに24%で最も多く、「就職活動がうまくいかなかった」が20%で続いた。不登校(小学校・中学校・高校)12%、人間関係がうまくいかなかった12%、大学になじめなかった7%、受験(大学・高校)に失敗した2%。
 
(2010年7月24日05時02分  読売新聞)
 
 
 
 「ひきこもり」推定70万人 「家族に申し訳ない」7割
2010.7.24 05:00産経新聞

  自宅にこもり、ほとんど外出しない「ひきこもり」が全国で推定約70万人に達することが23日、内閣府が行った「ひきこもりに関する実態調査」で分かった。調査では家庭や学校でうまく関係を築けないまま成長し、社会でも溶け込めず不安を抱えてひきこもる人々の姿が浮き彫りになった。
 
 調査は2月、全国5千人の15〜39歳を対象に行い、3287人から有効回答を得た。統合失調症や身体的な病気、妊娠、家事、育児の理由以外で6カ月以上ほとんど家から出ず、外出は近所のコンビニや趣味の用事の時だけと回答した人を「ひきこもり」と定義したところ、全体の1.79%が該当。人口推計から全国のひきこもりは約69・6万人と推計した。男女別では男性が66.1%と3分の2を占め、年齢別では35〜39歳が23.7%、続いて30〜34歳(22%)、20〜24歳(20.3%)となった。
 
 ひきこもるきっかけは「職場になじめなかった」「病気(統合失調症以外の精神疾患)」が23.7%で「就職活動がうまくいかなかった」(20.3%)、「不登校」(11.9%)と続いた。小中学校時代の経験では「学校で我慢することが多かった」(55.9%)、「一人で遊んでいる方が楽しかった」(27.1%)、「家族に相談しても役に立たなかった」(18.6%)、「親が過保護だった」(同)などの該当者の割合が一般の人の2倍を超え、幼少時に周囲との関係がうまく築けていなかった実態が見えた。
 
 一方、現在の不安要素は「家族に申し訳ないと思うことが多い」が71.2%で最も多く、「集団の中に溶け込めない」(52.5%)、「他人がどう思っているかとても不安」(50.8%)と続いた。
 
 調査の座長で明星大学大学院人文学研究科の高塚雄介教授は「今の社会は言語コミュニケーション能力の高さが重視されており、そこができない人は流れから外れ、ひきこもる傾向にある」と指摘。「人の気持ちには言葉にできないものもある。子供たちへの教育も含め、気持ちをうまく表現できない人を受け入れる社会を作る必要があるのではないか」と話している。

北病院が医療観察入院機関に 山梨
2010.7.21 10:36産経新聞

  山梨県立北病院(韮崎市)が厚生労働省から医療観察法に基づく指定入院医療機関認定を受け、20日開設した。従来の精神科医療とは別に、心神喪失状態で重大な罪を犯し、不起訴処分となった患者を裁判所が入院、通院による治療を決定する。平成15年7月に患者の社会復帰を促進するため公布された「医療観察法」に基づく医療機関。
 
 厚労省は全国で720床の整備を目標とし、都道府県による指定入院医療機関整備を進めている。山梨県内には国立施設はなく、北病院が新たに鉄筋コンクリート平屋建て約670平方メートルの病棟を建設した。事業費3億3千万円は全額国の補助。病室は5床全個室、作業療法室、集団精神療法室などを設けている。指定医療機関基準により、院内に新病棟倫理会議や治療評価会議などを設置した。

2010年07月15日09:48岐阜新聞
脳内遺伝子の認知機能関与、岐阜薬大教授ら初めて証明

 
研究成果について発表する岐阜薬科大の原英彰教授(右)と神戸大の白井康仁教授=14日午後、岐阜市役所
 
 岐阜薬科大学の原英彰教授(薬効解析学)や神戸大学などの研究グループは14日、脳内で脂質を代謝する役割を果たす遺伝子「ジアシルグリセロールキナーゼβ」(DGKβ)が、記憶や認知機能に深く関与していることを世界で初めて証明した、と発表した。同日付でアメリカのオンライン科学誌「PLoS ONE」に発表した。アルツハイマー病などの精神疾患を治療する新薬開発の手掛かりになるという。
 
 DGKβは、学習や記憶の形成に重要な、脳の海馬と呼ばれる部位の「スパイン」の表面に多く存在。シナプスから放出される神経伝達物質などによる刺激を受けた際、細胞内で情報伝達を行う重要な働きを示す。
 
 研究グループは、DGKβが欠損したマウスをつくり、約3年にわたって実験。DGKβが欠損したマウスは、通常のマウスと比較すると40%ほど記憶力が低下していることを突き止めた。
 
 岐阜市役所で会見した原教授と神戸大の白井康仁教授は「DGKβは、記憶障害と関連するアルツハイマー病や、うつ病など精神疾患に深くかかわっている。研究結果は、精神疾患発症のメカニズム解析や、DGKβの増加や活性化に作用する新薬開発の突破口になると考えられる」と説明した。

2010.7.13毎日新聞
こころを救う:「人数こなさないと経営できぬ」 自殺図る患者、診きれず

  医療機関で処方された向精神薬を飲んで自殺を図る人が増えている問題で、大量服薬した患者がたびたび救急搬送される東京都内の精神科診療所の院長が取材に応じた。60代の院長は「患者をじっくり診察したいが、人数をこなさないと経営が成り立たない」と話した。そのうえで「医師も患者も現状の治療に満足できていない」と述べ、診療報酬をめぐる国の医療政策を批判した。主な一問一答は以下の通り。【江刺正嘉、堀智行】
 
 −−過量服薬で自殺を図る患者に兆候はありますか。
 
 院長 分かっていたら手を打つ。やられた後に、しまったということはある。
 
 −−処方する薬の量は多いですか。
 
 院長 過量服薬することが予想できる人には出さない。そういう患者は(状態をよく見るために)本当は頻繁に診察することが必要だ。週に1回とか。
 
 −−なぜできないのですか。
 
 院長 (通院患者から症状を聞き、適切なアドバイスをする)精神科の診療報酬が4月から患者1人当たり200円引き下げられた。こんなに安くなると、患者の数をこなさなければ診療所の経営が成り立たない。数をこなすと、1人に対する診察時間が短くなってしまう。「この人にはもう少し話を聞きたい」と思っても、次に患者が待っている状態だ。
 
 −−患者によって違いがある、と。
 
 院長 治りやすい人も治りにくい人もいる。(今の診療報酬体系では)それを同じように扱わないといけない。厚生労働省はここをまったく無視し、医療費を減らすことばかり考えている。いちばんのしわ寄せは患者に来るんです。
 
 −−自殺を図る患者に本来、どう接すればいいのですか。
 
 院長 薬の処方以外に、なぜ死にたいのか患者が抱えている問題を一緒に考えながら解決していくことです。それが現状ではなかなか難しい。困難な患者を診る医師への負担ばかりが増えてしまう。
 
 ◇過量服薬の一因に−−国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦・自殺予防総合対策副センター長の話
 今の診療報酬体系では精神科医が1人の患者に時間をかけて話を聞きにくい。短い診察時間だと患者は医師を信頼せず、薬をもらうだけの関係になりやすいため、過量服薬につながる可能性が高まる。じっくり患者の話に耳を傾けることで患者とのつながりを作れる体制を整える必要がある。
 
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 情報やご意見をメール(t.shakaibu@mainichi.co.jp)、ファクス(03・3212・0635)、手紙(〒100−8051毎日新聞社会部「こころを救う」係)でお寄せください。
 
毎日新聞 2010年7月13日 東京朝刊

2010.7.10読売新聞
統合失調症発症原因究明へ成果、県障害者コロニー発達障害研究所
関与のたんぱく質働きを解明

 県心身障害者コロニー発達障害研究所(春日井市)は9日、統合失調症の発症の原因究明につながるたんぱく質の働きを解明した、と発表した。成果は、精神医学の学術誌「モレキュラー・サイカイアトリー」の電子版に掲載された。

 同研究所によると、統合失調症は、幻覚や妄想が生じるなどの精神疾患で、100人に1人程度発症するが、詳しい発症メカニズムは分かっていないという。同研究所は、発症率を高める遺伝子の一つとされながら、その働きが不明だったたんぱく質「ディスビンディン―1」に着目した。

 ラットから取り出した脳の神経細胞にあるディスビンディン―1を除去すると、神経細胞同士のつなぎ目(シナプス)の形に異常が生じた。このため、研究所では、ディスビンディン―1がシナプスを形成する働きがあり、シナプスが正しく形成されないと統合失調症が発症する可能性があるとしている。

(2010年7月10日 読売新聞)


2010.7.9共同通信
統合失調症発症の働き解明 タンパク質が神経発達促進

 統合失調症発症にかかわる脳内のタンパク質の働きを解明したと、愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所(同県春日井市)が9日発表した。米専門誌の電子版にも掲載された。新しい治療法の開発に役立つ可能性があるとしている。

 統合失調症は幻覚や妄想を症状とする精神疾患で100人に1人の割合で発症。神経伝達物質の分泌異常や、脳神経の発達障害が原因とされてきたが、詳しい発症メカニズムは分かっていない。

 同研究所は、脳の神経細胞間で情報をやりとりする「シナプス」にあるタンパク質「ディスビンディン―1」に着目。

 発症への関与が指摘されながら詳しい働きは未解明だったが、マウスの神経細胞を使った実験で、このタンパク質の量を減らすと、シナプスで情報を受け取る組織が、正常に発達しないことが判明。逆にこのタンパク質を補充すると、組織の機能が回復することも分かったという。

2010/07/09 19:26 【共同通信】


2010.7.6東海日日新聞
障害者へのイメージ打破したい
障害者理解促進を目指す「ゆいフィールコンサート」

 
 障害者の自立支援を行う豊橋市のNPO法人・福祉住環境センター(加藤政実代表)は8月7日、障害者が参加するコンサート「第3回ゆいフィールコンサート」を豊橋市民文化会館で開く。
 
 市民に障害者への理解を深めてもらうことを目指し、セミプロのミュージシャンと障害者が一緒にステージに立つ同コンサート。今回は、夏をテーマにサザンオールスターズ・桑田佳祐の曲を中心に約20曲を演奏する。
 
 出演は音楽療法を通じて障害者と音楽活動を続ける山口理恵さんら20人。豊川市の筋ジストロフィー患者・白井宏之さんが作曲した3曲を新城大谷大の教員グループが演奏、同法人で職業訓練などを行う精神障害者8人からなる「WAC合唱団」も初めてステージに立つ。
 
 同コンサートの運営にかかわる精神保健福祉士・加藤雅子さんは「障害者も当たり前にコンサートに出演することで、障害者に対するイメージを打破したい」と話していた。
 
 入場料は800円で午後2時30分開演。問い合わせは、同実行委員会=電話0532(52)4315=まで。(松井俊満)

2010.7.2毎日新聞
こころを救う:薬だけに頼らぬ英国 自殺予防、チーム医療で成果

 医療機関から処方された向精神薬で自殺を図る人が増えている問題で、海外では精神保健医療改革が有効な自殺対策として注目されている。英国では薬だけに頼らない精神医療を推進し、自殺予防に大きな効果をあげた。専門家は「日本は薬に頼りすぎている。薬を適度に使いながら患者を総合的に支えるチーム医療へ転換すべきだ」と指摘する。【堀智行】
 
 英国の精神保健医療制度などに詳しい東京都精神医学総合研究所の西田淳志研究員によると、英国が取り組んだ自殺対策の一つは認知行動療法の普及。ものの見方(認知)のゆがみを修正し、不快な感情が起きないようにするという心理療法で、うつ病治療に効果があるとされる。
 
 英国では、同療法を精神科治療の中心に据え、重症度に応じたケアの仕組みを導入。薬物療法は、極めて症状が重い場合のみ認知行動療法と併用できるようにした。軽症者は医師が診ずに国が開設したインターネットサイトで同療法を受けるため、精神科医がかかわるのは中等度以上の患者からになっている。
 
 もう一つは地域ケアの充実だ。精神科での治療を中断した直後に自殺している人が多いことに着目し、かかわりが切れないように医師のほか、心理や福祉などの専門家がチームを組み、地域に出て患者をサポートする制度を取り入れた。
 
 また市販の睡眠薬や鎮痛薬を大量に飲んで自殺を図る若者が相次いだことを受け、1箱当たりの薬の錠数を減らすなど入手の規制にも取り組んだ。処方薬についても、国の研究機関で医療機関向けのガイドラインを作り、単剤少量での治療を順守させた。
 
 こうした取り組みにより、ブレア政権下の97〜07年の10年間で、人口10万人あたりの自殺者数(自殺率)は9・2人(95〜97年の平均値)から7・8人(05〜07年の平均値)となり、15・2%減少させた。一方、日本の自殺率は07年が24・4人で先進国ではロシアに次いで2番目に高い。
 
 西田研究員は「日本では医師が薬物療法だけで短時間で診察することに患者は不満を持っている」と指摘。「チーム医療の推進が薬だけに頼らない医療の実現につながる。自殺予防にも効果があるはずだ」と話す。
 
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毎日新聞 2010年7月2日 東京朝刊

2010/06/27 読売大阪 朝刊 「行路病院」
頻繁な転院 かさむ医療費 

 
 

 住まいのない生活保護の患者を多く受け入れる病院が、大阪市とその周辺に数十か所ある。まじめに努力する病院もある一方で、奈良県大和郡山市の山本病院(廃院)のように、不必要・不適切な診療行為や医療費の不正が発覚することもある。問題はどこにあるのだろうか。(原昌平)

 

 路上から救急搬送
 「大してどこも悪うない。行く所がないから」。堺市の民間病院に入院中の男性(68)はそう言った。仕事と住まいを失い、自分で救急車を呼んで大阪市内の病院へ運ばれてから5年余り。いくつもの病院を転々と移ったという。
 大阪ではホームレス状態の患者を「行路(こうろ)患者」、そうした患者の多い病院を「行路病院」と呼ぶ。正式の用語ではなく、明確な線引きもないが、行政も使う。病院はいずれも民間だ。
 医療費は全額、生活保護(医療扶助)で賄われ、本人には月2万円余りの日用品代が出る。
 スタートは路上からの救急搬送が多い。大阪市内で受け入れが特に多い救急病院は都島区、東成区、西成区の計4か所。そこから通常、1か月足らずで別の病院へ移され、さらに2か月前後ごとに転院を重ねる。ぐるぐる何年も回され、また同じ病院へ戻ることもある。
 路上から福祉事務所を通じて入院した人、長期入院中に住居を引き払った人、
居宅保護を受けていて入院した人も、このパターンになることがある。
 転院は、もっぱら各病院の事務長や渉外担当者の人脈で行われる。福祉事務所の了解を得るわけではなく、たいていは転院の日か数日後の事後報告だ。

 

 背景に診療報酬制度
 頻繁な転院が行われる理由は、診療報酬制度にある。
 まず、1日の入院基本料には看護職員の配置数に応じたランクがあり、病棟全体で計算する「平均在院日数」の上限がそれぞれ決まっている。
 「うちの病院は15対1の看護体制(患者15人につき看護職員1人)だから、平均在院日数が60日を超えたら全患者の入院基本料が大幅に下がってしまう。いちばん神経を使う」と、ある病院の事務長。
 もう一つは、個々の患者の入院基本料が、入院が長引くにつれて段階的に下がる「逓減(ていげん)制」だ。90日を超すと投薬や検査をいくらやっても定額になる。
 どちらも医療費抑制のために入院の短縮を促す制度だが、転院すれば日数はリセットされ、元に戻る。そして転院のたびにX線や血液、心電図などの検査が行われる。病院にとって生活保護は医療費の取りはぐれがない。1か月の医療費は救急病院で80万〜100万円程度、それ以外でも50万円前後かかる。
 市域や府県境を超えた転院も多い。山本病院(80床)では2008年度の入院患者の半数以上が生活保護。そのうち奈良県内の患者は14%にすぎず、60%が大阪市の生活保護だった。

 

 医療内容に踏み込めず
 山本病院では、生活保護の患者の大半に心臓カテーテルを使った検査や治療が十分な説明なしに行われ、一部は架空請求だった。病名や検査結果の捏造(ねつぞう)も多かったと県はみている。患者が死亡した肝臓手術は、不要な手術だった疑いがある。
 こうした問題は初めてではない。1997年に巨額の不正と劣悪医療が発覚して廃院処分を受けた安田病院(大阪市住吉区)など3病院も、行路患者をターゲットの一つにしていた。ほかにも複数の病院で看護職員数水増しなどの不正が発覚した。
 行政の対処はどうなのか。
 大阪市の場合、敷金の支給で居宅保護への移行を進めた結果、行路患者がかなり減った。市は2004年度から救急ルートで入院した住居のない患者を緊急入院保護業務センター(西区)で一括して扱っており、その平均入院患者数は04年度の約2100人から09年度は約1300人、入院医療費は124億円から08年度で90億円になった。
 しかし医療内容には、ろくに踏み込めていない。
 診療報酬のレセプト(明細書)は社会保険診療報酬支払基金の審査の後、市に回り、業者の点検を経て福祉事務所に届く。病院からは定期的に医療要否意見書が提出され、嘱託医が見る。
 だが書類をいくらチェックしても、診断名の妥当性や実際に医療が行われたかは、わからない。ケースワーカーの病院訪問は半年に1回ほどだ。「担当する数が多すぎるし、専門的なことはわからない。仮に訪問した時に意見を言っても『素人が何を言うてる』でおしまい」と大阪市のワーカー経験者は明かす。
 市は「個別指導」として医師と一緒に病院へ出向き、カルテの一部をレセプトと照合したりするが、病院あたりの頻度は約3年に1回程度だ。

  患者への支援が重要
 低水準の医療や不正を防ぐにはどうすればよいのか。
 抜本的には、この分野に公的な病院が取り組むようにすることだ。東京都や川崎市は救急医療に協力金制度を設けている。
 より早くできるのは、行政が医師を雇い、病院へ出向いて個々の患者の治療方針を協議すること。また病棟まで巡回して相談に乗る「患者サポーター」的な仕組みもほしい。生活保護の患者が食い物にされる場合の最大の原因は、何が起きても身寄りが乏しく、訴える力も弱い点にある。患者への支援が、不適切な医療に歯止めをかけ、社会的入院を減らすことにもなる。


基準の3〜8倍の向精神薬入手 大阪市の生活保護18人
2010年6月30日朝日新聞

 大阪市で1月に精神疾患で医療機関を受診した生活保護受給者322人のうち80人が大人1人に処方される基準を超える向精神薬を受け取っていた問題で、18人が基準の3〜8倍超の量を処方されていたことが、市の調査でわかった。18人はいずれも複数の医療機関で受診。調査で転売は確認できなかったという。
 
 受給者の薬の処方は医療扶助によって全額公費負担。市によると、ある受給者は他の医療機関を受診していることを隠して7カ所を回り、1日2錠が最大量とされるハルシオンを1カ月分の8倍超の504錠、1日1錠が限度とされるエリミンを4.5倍の140錠入手していた。
 
 市の調査に18人は「不眠の状態が続いて薬の量が足りなかった」などと説明し、転売は否定したという。
 
 
 
 
 
2010.6.30読売新聞
生活保護者へ向精神薬過剰処方、大阪市が医療機関を調査へ

 大阪市の医療機関を精神疾患で受診した生活保護受給者のうち、今年1月だけで80人が過剰な量の向精神薬を入手していた問題で、市は29日、基準を大幅に超える向精神薬を処方した医療機関や薬局の調査に乗り出す方針を決めた。市のその後の調査で80人のうち、基準の3倍以上も受け取っていたのが18人に上ることが新たに判明。全額公費の受給者の医療費を狙って過剰に処方した疑いもあり、調査が必要と判断した。
 
 市が、市内の医療機関で1月に診察を受けた322人のレセプト(診療報酬明細書)を調べて分かった。不眠治療用として7か所の医療機関から、合計すると基準量の約8倍にも上る504錠を受け取った受給者もいた。
 
 4月に受給者が入手した向精神薬が大量に転売された事件が発覚し、調査していた。向精神薬を基準以上に入手していた受給者への市の聞き取り調査では、転売は確認されなかった。
 
 市は、医療機関などの処方の経緯を調べ、不適切なケースが確認されれば診療報酬の返還を求める。
 
(2010年6月30日  読売新聞)
 
 
 
 
 

向精神薬:生活保護受給者、催眠鎮静剤を限度量の16倍入手も−−大阪 /大阪
 ◇7医療機関処方

 精神疾患で医療機関を受診した生活保護受給者の一部に限度量を上回る向精神薬が処方されていた問題で、大阪市は29日、入手量が突出する18人の調査結果を明らかにした。転売は確認できなかったが、1カ月で限度量の16倍を超える催眠鎮静剤を手にした例もあった。市は医療機関の調査も実施する方針。
 
 今年1月に受診した80人が限度量を超える向精神薬を得ており、調べていた。うち18人は2〜7医療機関を利用し、同じ向精神薬を複数の医療機関から入手。催眠鎮静剤「ハルシオン」を処方されたある受給者は、1カ月の限度量の16・8倍にあたる504錠(126ミリグラム)を7医療機関から入手していた。
 
 医療機関や薬局は、他所で患者が処方した情報を共有できない。受給者の1人は「薬が効かないので、複数の医療機関で大量に入手した」と話しているという。【平川哲也】
 
毎日新聞 2010年6月30日 地方版

2010.6.29共同通信
障害者制度改革で閣議決定 基本法改正案、11年に提出

 政府は29日、障害者制度改革の基本方針を閣議決定した。障害者が健常者と同じ権利を有するとの規定を現行法より強く打ち出す障害者基本法改正案について、11年の通常国会に提出することを盛り込んだ。障害者権利条約の批准に向け差別の禁止を強調し、改革の工程を明示したのが特徴。
 
 基本方針ではこのほか、廃止を決めている障害者自立支援法に代わる障害者総合福祉法案を12年に国会提出し、13年8月までの施行を目指すと明記。人権被害の救済を目的とした障害者差別禁止法案は、13年の国会提出を目指すとした。
 
 精神障害者の「社会的入院」解消や障害児支援など、具体策については「11年内に結論を得るべく検討」との表現にとどまった。
 
2010/06/29 09:30   【共同通信】

2010.6.29毎日新聞
向精神薬:過量服薬対策、厚労相が表明 省内にPT

 医療機関で処方された向精神薬を飲んで自殺を図る人が増えている問題で、長妻昭厚生労働相は29日、向精神薬の過量服薬による自殺や自殺未遂を防ぐ対策づくりに乗り出すことを表明した。省内のプロジェクトチーム(PT)で来月から検討を始め、8月中に具体策をまとめる。
 
 長妻厚労相はこの日の閣議後会見で「われわれもうつ病などに対する薬漬け医療に問題意識を持っている」と述べた。省内に設置されている「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」で、過量服薬と自殺・自殺未遂の問題に詳しい専門家の意見を聞き、医療機関の安易な大量処方や、患者の過量服薬を防ぐ方法を検討する。
 
 具体的には、1回の処方量を14日分までに限定していた向精神薬の一部が08年度の診療報酬改定で30日分に緩和されたことについて、患者が薬をため込みやすくなったとの指摘があり、この措置の見直しなどが課題となりそうだ。
 
 この問題を巡っては、医療機関が向精神薬を処方する際に自殺の可能性のある患者には長期、多量となる投与を避けるよう、厚労省が日本医師会などの関係団体や自治体に24日付で通知している。【江刺正嘉】
 
毎日新聞 2010年6月29日 12時32分

自殺:「薬の処方、注意して」患者の通院先に書面
2010年6月27日 14時29分毎日新聞
 
 「薬の処方を考え直してもらえませんか」。横浜市立大付属市民総合医療センター(同市南区)は、向精神薬の過量服薬で自殺を図って救急搬送された患者の通院先に対し、書面で注意を促している。同じ処方を繰り返せば自殺の既遂につながるおそれが強まるためで、まれに「処方の中止」を依頼することもある。こうした自殺予防策は全国でも珍しいが、同センターの精神科医は「過量服薬した場合の副作用を知らない医師が大半だ」と警告している。【江刺正嘉】
 
 同センターは重症者専門の3次救急病院。外科医や内科医のほか、精神科医が常駐し、救命後の治療やケアに当たる。精神科医を救急の現場に置いている救命救急センターは全国でも数カ所しかない。精神科医による迅速な未遂者ケアが自殺防止に有効だと考えているためだ。精神科医は患者の回復後、飲んだ薬の種類や量、過去に自殺を図ったことがあるかなどを聞き取る。こうした情報を患者が通っていた医療機関に文書で知らせ、その後の治療に役立ててもらっている。
 
 この際、安全性が比較的低い薬を処方されていたり、再び過量服薬で自殺を図る可能性が高いと判断した場合は、通院先の主治医に「同じ薬をまた飲み過ぎると命に危険が及ぶ可能性が高い。処方の再考をお願いできませんか」と連絡。処方薬の種類や量に注意を払うよう求める。それでも同じ薬の処方が繰り返され、患者が搬送されると、「この薬の処方は中止していただけませんか」と依頼することもまれにあるという。
 
 センターの山田朋樹医師は「精神科医は用法、用量を守って薬を飲んだ場合の副作用については勉強している。しかし、過量服薬した時の危険性は大学でもほとんど教えられていないので、知識があまりない」と指摘。「まず医学部でもっときちんと教えるべきだ」と提言している。
 
 同センターが03年から05年にかけ、自殺を図って搬送された患者の中で、医師の聞き取り調査に応じた320人について手段別にまとめたところ、男女とも過量服薬(男36%、女57%)が最も多かった。

2010.6.25毎日新聞
過量服薬:4都市の救急出動、10年間で2倍 厚労省、実態調査へ

 自殺や自傷目的で向精神薬などの薬物を大量に飲んだとして消防が救急出動した件数が東京都と3政令市で08年までの10年間で約2倍に増えたことが毎日新聞の調べで分かった。向精神薬を主に処方する精神科や心療内科の診療所が同時期に1・5倍に急増し、受診の機会が増えたことが背景にあるとみられる。厚生労働省研究班も向精神薬乱用の実態調査に乗り出した。(29面に「こころを救う」)
 
 本紙調査は東京都と政令市、県庁所在地の計52自治体の消防局と消防本部に実施。自殺や自傷目的で向精神薬や市販薬を過量服薬したとして救急出動した件数(一部は搬送件数。農薬など毒物もわずかに含む)を尋ね、7割にあたる37都市から回答を得た。うち99〜08年の10年間のデータを回答した札幌市、東京都、大阪市、北九州市の4都市について出動件数の推移をまとめた。
 
 調査結果によると4都市の救急出動総数は05年の96万9517件をピークに減少、08年は05年比で約1割減った。一方、過量服薬による出動は99年は2217件だったが、05年に4000件を超え08年に過去最多の4213件となった。08年の36都市(09年分のみ回答した山口市を除く)の過量服薬による出動は計8424件だった。【堀智行、奥山智己】
 

毎日新聞 2010年6月25日 東京朝刊
 
 
 

2010.6.24毎日新聞
こころを救う:過量服薬、救命現場が警鐘 治療薬、自殺手助け

  自殺者が12年連続で3万人を超えた。心を病んだ人が治療を受ける機会は増えているのに歯止めがかからない。命を絶つ前に精神科や心療内科を受診していたのは半数に上るという調査もある。救えない命だったのか。医療現場から自殺対策の課題を探る。
 
 ◇精神科乱立、安易な処方も
 「お薬飲んじゃったんですか」。「どこでもらったんですか」。6月初旬、東京都武蔵野市の武蔵野赤十字病院救命救急センター。救急医の呼びかけに、運び込まれた女性(37)はうつろな目でわずかにうなずく。医師3人とともに処置に追われる須崎紳一郎センター長(55)に、救急隊員が空の菓子袋を差し出す。中にあった向精神薬約200錠はすべて女性が飲んでいた。
 
 重症者が年間1400人搬送される都内有数の救急病院。向精神薬を大量に飲んで自殺や自傷を図る患者は増え続ける。若い世代を中心に年150〜160人。全体の1割を超えた。搬送前に死亡が確認された人は、ここには運ばれてこない。
 
 
過量服薬して自殺を図った女性を治療する救急医ら。患者は一命をとりとめた=東京都武蔵野市の武蔵野赤十字病院で6月初旬、堀撮影 生死にかかわる過量服薬があまりに多いため、患者の回復後に病院が聞き取りしたところ大半が市販薬ではなく、精神科診療所などの医師が処方した薬と判明した。一度に飲んだ量は平均100錠になる。「これほど大量なのに処方はわずか数日分。治療薬が逆に自殺行為を手助けしている」と須崎医師は憤る。
 
 患者の一人が飲んでいた薬のリストがある。1回分が7種類。「これもこれも、名前は違うがすべて睡眠薬。1種類でいいのに。こんな処方は薬理学上あり得ない」。最も多い人は抗うつ薬4種類、睡眠薬4種類、抗不安薬2種類など一度に14種類を出されていた。複数の精神科専門医は「常軌を逸している。副作用に苦しんだり薬物依存に陥る可能性も高くなる」と指摘する。
 
 搬送患者の通院先を調べると、いくつかの医療機関に絞られた。便利な「駅前」が目立つ。須崎医師は「薬物治療の知識が足りないのか、患者の要求通りに出しているのか……」と不信を募らせる。
 
 08年の全国の精神科・心療内科の診療所は3193。10年間で5割増えた。向精神薬の市場も成長し、調査会社「富士経済」によると、08年の売り上げは10年前の2倍以上にあたる約2976億円。国は自殺対策基本法で「自殺のおそれのある人へ必要な医療を適切に提供する」とうたっているが、受診が広がる中、医療機関の質のばらつきが際立つ。
 
 過量服薬した後のケアも自殺対策の大きな柱だ。未遂者は、その後既遂に至る割合が格段に高いとされるためだ。ところが、入院させて心身両面から治療できる総合病院の精神科は診療報酬が低く、病院経営を圧迫して減少の一途。一方、勤務医は診療所を開業する。武蔵野赤十字病院にも精神科の入院病棟はない。体が回復すれば退院せざるを得ないため、心の継続的なケアは難しい。
 
 須崎医師らは患者の家族を交えて相談し、元の医療機関へ通院するしかない場合は、主治医あての紹介状を持たせて送り出す。「自殺予防に十分配慮をお願いします」。しかし、再び大量に処方された薬を飲んで運ばれてくる患者は少なくない。「救急で命を救っても、これではむなしすぎませんか」【江刺正嘉、奥山智己、堀智行】
 
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 ■ことば
 
 ◇向精神薬
 中枢神経系に働いて精神機能に影響を与える物質。作用によって▽睡眠薬▽抗不安薬▽抗うつ薬−−などに分類され、治療での適正な使用が求められている。物質によっては、依存性と乱用で心身に障害を引き起こす危険性がある。
 
毎日新聞 2010年6月24日 東京朝刊
 
 
 

2010.6.24毎日新聞
こころを救う:さまよい12年 国立精神・神経医療研究センター、松本俊彦氏の話

  ◇医療の質向上を−−国の自殺対策を担う国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦・自殺予防総合対策副センター長の話
 精神科での治療機会が増えた半面、治療薬が誤用されればかえって自殺の危険性を高める可能性がある。私たちの研究では、精神科治療中に自殺既遂に至った人の約6割が、飛び降りなどの致死的な行動の際に向精神薬を過量摂取していた。意識がもうろうとする中、衝動的に行動した可能性が否定できない。海外の研究には過量服薬の経験のある人が10年後に既遂に至るリスクは、経験のない人に比べ数百倍高いという報告もあり、自殺の重要な危険因子として無視できない。自殺予防には医師の安易な処方の規制や薬の管理、未遂や自傷を繰り返す人の支援はもちろん、精神医療の質の向上が急務だ。
 
毎日新聞 2010年6月24日 東京朝刊
 
 
 
 
 
2010.6.24毎日新聞
こころを救う:さまよい12年 うつ病男性、処方200錠で自殺未遂
  ◇「いつまで薬を飲み続ければいいのか」
 「もう消えたいんですけど」。誰かが書き込むと知らない誰かが応える。「起きてると辛(つら)くなるからゆっくり休んでね」。心を病む人が集い、病状や処方薬の情報を交換するインターネットの「メンタル系サイト」。ハンドルネーム・ロボ(41)のサイトもその一つだ。うつ病と診断されて12年、診療所を転々とした。「いつまで薬を飲み続ければいいのか」。ロボの書き込みに目が留まり、取材を申し込んだ。
 
 東京都内の心療内科にかかったのは、企業のシステムエンジニアをしていた98年。不況のさなか、自殺者が3万人を初めて突破した年だ。深夜勤務が続き、不眠に悩んだ。医師は抗不安薬3種を処方した。不調を訴えると効き目の強い薬を次々に出され、7種類に増えた。緊張や不安は治まらない。持ち帰る薬の袋だけが膨らんだ。
 
 03年に千葉県へ引っ越し、診療所も転院した。待合室はいつも満席で2時間待ち。「調子はどう」「薬出しときます」。診察は1分で終わる。相談したいことがあっても医師は「大変だね」としか口にしない。
 
 欠勤が続き会社を解雇された。再就職活動でうつ病と打ち明けたことがある。「君、廃人だな」。不採用通知が届いた。2年後に就職できたシステム会社でもたびたび欠勤した。父は「ぜいたく病だ。明日から仕事に行け」と言う。行きたくても体が動かない。ため込んだ処方薬200錠を口に放り込んだ。目が覚めたのは、集中治療室から病棟に移った2日後だった。
 
 退院後、かかりつけの診療所の医師は「自殺を図るような患者はもう診ない」と告げた。医者なんて頼れない。処方せんさえもらえればいい。そう割り切り、診察を続けてもらえるよう頭を下げた。同じ病のネット仲間だけが支えだった。
 
  ◇   ◇
 
 04年春、関西に住む一つ年下の介護士の女性がサイトを訪ねてきた。ロボが自殺を図った日、同じことをして入院したという。うつ病になってからも激務が続き、一人病と闘っていた。「ここに来て友だちがいっぱいできたよ」。そう喜ぶ彼女と付き合い始め、東京で2回デートした。1年後、突然目の前から消えた。向精神薬を大量に飲んで意識が戻らなかった。
 
 女性が懸命に生きてきたことを知っていた。だから彼女の分まで生きようと思った。近所にできたクリニックを受診した。これまでと違う医師の助言を聞きたかった。女医は処方薬の多さに驚いた。長年服用した薬を急に切ると心身の負担が大きい。「少しずつ減薬していきましょう」。医師が話に耳を傾けてくれたのは初めてだった。4年たち、初めて薬を1錠だけ減らせた。
 
 私はロボが住む街を歩いた。駅前のあちこちに精神科診療所がある。処方薬を大量に飲んで救急搬送される患者が絶えない診療所があると聞いた。院長は取材に答えた。「他の病院で私の評判が悪いのは知っている。でもそれは、過量服薬するような患者をやっかい払いしないで、すべて受け入れているからだ。医者の哲学として。だから(治療に)失敗しても試行錯誤しながらやっている」
 
 この日診療所には200人以上が訪れた。その手に処方せんを握り、再び街に消えていく。医者も患者も出口の見えないあい路をさまよっているようだった。
 
 病んだ心を誰が救うのか。自殺者3万人時代。ロボもその一人になっていたかもしれない。
 
  ◇   ◇
 
 ロボのハローワーク通いは続く。気持ちが落ち込み、しばらくネットの更新を休んだ。目が覚めてカーテンを開けるとマンションの間に朝焼けが広がる。もう一度、元気に働きたい。
 
 「ロボ、大丈夫?」。久しぶりに開いたサイトに誰かの書き込みが並んでいた。【堀智行】
 
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 情報やご意見をメール(t.shakaibu@mainichi.co.jp)、ファクス(03・3212・0635)、手紙(〒100−8051毎日新聞社会部「こころを救う」係)でお寄せください。
 
毎日新聞 2010年6月24日 東京朝刊
 
 
 
 
 
2010.6.25毎日新聞
こころを救う:患者の力、信じ見守る 処方薬依存、事実伝え治療の道示す
  「私が診た患者も何人も命を絶った。失敗を繰り返してここまで来た」。医療機関で大量に処方された向精神薬で自殺や自傷する人が増えている問題で、京都市の精神科診療所院長が毎日新聞に体験を語った。多くの精神科医が患者の自殺に直面してきたが、その「教訓」を伝える人は少ない。一人の患者が立ち直ったことが医師の今を支えている。【堀智行】
 
 ◇精神科医師が見つけた答え
 奥井滋彦院長(50)が京都市内の精神科病院に勤務していた駆け出しのころのことだ。自殺をほのめかす電話があれば、深夜でも自宅まで駆け付けた。だが深くかかわり過ぎると患者は医師に寄りかかり、つながりを求めて自傷を繰り返す。薬を大量に出せば、薬に依存し症状は悪化する。重篤な患者の何人かが過量服薬などで命を絶った。自分を責め、悩んだ。
 
 見つけた答えが「薬を減らし、患者の力を信じ見守る」こと。向精神薬を長年処方され、薬物依存症になっている患者にはその事実を伝え、治療の道筋を説明した。
 
 そのころ出会ったのが患者の加藤武士さん(45)。加藤さんは薬物依存症のため精神科病院の入退院を繰り返していた。奥井医師は、こうした人を支えるNPO「ダルク」に通うよう勧めた。加藤さんは薬を断った。だがこころの穴は埋まらない。失望し大量の処方薬を飲んで自殺を図った。一命を取りとめ、頼ったのも奥井医師だった。
 
 奥井医師は当直の晩になると、部屋に呼んだ。毎回2時間、生い立ちに耳を傾けた。実母と育ての母の2人がいたこと。育ての母に感謝する一方、生い立ちから学校でいじめられ、非行に走ったこと。寂しさを紛らわしたのが覚せい剤や処方薬だった。2カ月かけ、話し終えた時に奥井医師は言った。「よう今日まで生きてきたな」。理解してくれる人がそばにいる。それが回復への第一歩だった。
 
 自殺を図る患者の対応が難しいと多くの精神科医は口をそろえる。奥井医師は後輩から相談を受けるたび「いっぺん患者に巻き込まれてみろ」と助言する。遠くから見ていても分からない。巻き込まれて見えるものがあると思うからだ。
 
  ◇  ◇
 
 加藤さんは今「京都ダルク」の施設長として、薬物を断とうと格闘する仲間の支援を続ける。奥井医師と出会って18年。患者を亡くし、苦しむ姿も見てきた。加藤さんは言う。「医者は患者の前では無力になれない。だから薬に頼ってしまう。だけど、無力な時もあると受け入れれば、本当の医者と患者の距離が見えてくるんじゃないでしょうか」
 
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 情報やご意見をメール(t.shakaibu@mainichi.co.jp)、ファクス(03・3212・0635)、手紙(〒100−8051毎日新聞社会部「こころを救う」係)でお寄せください。
 
毎日新聞 2010年6月25日 東京朝刊
 
 
 

2010.6.26毎日新聞
こころを救う:向精神薬、過量投与に注意促す 防衛医大防衛医学研究センター教授の話

 ◇自殺問題に詳しい防衛医大防衛医学研究センターの高橋祥友教授(行動科学)の話
 「過量服薬は勝手にやることだからやむを得ない」という話ではない。医師は「命を絶つために薬を渡しているのではない」というメッセージを伝えなければならない。また、前回の診察で出した薬を持ってきてもらい、ためていないかチェックしたり、通院期間を短くして薬を多く出さない工夫も必要だ。
 
毎日新聞 2010年6月26日 東京朝刊
 

2010.6.25毎日新聞
向精神薬:過量投与に注意促す…厚労省が日医などに初通知
 医療機関で処方された向精神薬を飲んで自殺を図る人が増えている問題で、厚生労働省は、処方する際に長期、多量となるのを避けるなど細心の注意を払うよう日本医師会(日医)などの関係団体や自治体に通知した。厚労省によると、国が自殺予防の観点から医療機関に向精神薬の過量投与に注意を促すのは初めて。
 
 通知は24日付で、都道府県や政令市のほか、精神医療にかかわる日本医師会、日本精神科病院協会、日本精神神経科診療所協会など8団体の責任者にあてて出された。
 
 厚労省研究班が遺族との面接を通じて自殺者76人について調査したところ、半数が死亡前の1年間に精神科か心療内科を受診。このうちの約6割が、直接の死因でない場合も含め、処方された向精神薬を自殺時に過量服薬していた。
 
 通知はこうした調査を基に、患者が自殺する可能性を考慮して向精神薬の投与日数や投与量に一層の配慮をするよう求めている。
 
 向精神薬を巡っては自殺や自傷目的で大量に飲んだとして消防が救急出動した件数が、データのある札幌市、東京都、大阪市、北九州市の4都市で08年までの10年間で約2倍に増えていたことが毎日新聞の調べで判明している。【江刺正嘉、奥山智己】
 
毎日新聞 2010年6月25日 19時26分(最終更新 6月25日 21時15分)

2010.6.22読売新聞富山
患者が重体、首に圧迫の跡 殺人未遂事件か

精神科入院中の男性
 21日午前5時頃、富山市大町の医療法人社団・重仁「佐々木病院」から、精神科に入院している男性(66)が意識不明の重体となり、富山市民病院に搬送されたと、富山中央署に通報があった。男性には、首を圧迫された跡があり、ほかの患者とトラブルを抱えていたといい、同署は殺人未遂事件の可能性もあるとみて調べている。
 
 発表によると、同3時頃、同階の別室に入院している30歳代男性患者から「男性の様子がおかしい」と連絡を受けた病院職員が、病室のベッドで意識不明になっている男性を見つけた。男性の首には、何かで圧迫された跡があった。
 
 男性は昨年12月から、定員4人の病室に入院しており、搬送時、同室の患者は2人いた。同署は、ほかの入院患者や病院の職員から事情を聞いている。同病院は夜間、5人の当直職員がいて、1時間おきに見回りがあり、午前2時頃の見回りのときには、変わった様子はなかった。外からの出入りはできないが、各病室にカギなどはなく、院内は自由に移動できるという。
 
 県健康課によると、同病院は、精神科や内科などがあり、病床数は143床。
 
 同病院は取材に対し、「患者のプライバシーもあり、事件についてはコメントできない」としている。
 
(2010年6月22日  読売新聞)
  
 
 
入院中の男性患者不審死 殺人容疑で捜査 富山の精神科病院
2010.6.22 21:55産経新聞

 富山市の精神科病院で意識不明となり搬送先で死亡した男性患者(66)の首に絞められたあとがあったとして、富山中央署は22日、殺人容疑で捜査を始めた。
 
 同署によると、男性は閉鎖病棟の4人部屋で入院。21日午前2時50分ごろ、別室の入院患者が介護士に男性の異常を連絡、意識不明の状態で見つかった。搬送先で22日、低酸素脳症で死亡した。首を絞められた可能性があるという。
 
 閉鎖病棟は外部から出入りできないが、部屋間は移動できる。同署は関係者から事情を聴いている。

2010.6.22キャリアブレイン
途中退席「極めて遺憾」、山井政務官に委員ら反発―障がい者総合福祉部会
 
 内閣府の「障がい者制度改革推進会議」は6月22日、「障がい者総合福祉法」(仮称)のあり方を議論する「総合福祉部会」の第4回会合を開催した。この中で、民主党などの議員立法で前国会での成立が目指された「障害者自立支援法改正案」をめぐり委員らが、冒頭のあいさつ後に途中退席しようとした山井和則厚生労働政務官に、「極めて遺憾」などと反発する一幕があった。
 
 同改正案をめぐっては、委員から「何の連絡もなく議員立法が進められた」「(国と障害者自立支援法違憲訴訟団の)基本合意書に反する」「ここでの議論は何のためなのか」などの批判が相次いでいた。同改正案は、鳩山由紀夫前首相の退陣に伴い、前国会での成立間際で廃案となった。
 
 同改正案について、山井政務官は冒頭のあいさつで、「政策調査会がスタートしたので、そこの障害福祉担当と情報交換してもらいたい」とし、公務を理由に途中退席しようとした。しかし、委員らは「あいさつだけで帰るのは心外。今後、何の連絡もなく議員立法が進められるようなことがないと明言すべき」と反発。これに対し山井政務官は、「政務官という立場上、議員立法については何も言えない。越権行為になる」とし、続いて質問した委員の発言途中で退席した。
 
 山井政務官の退席後も、国と障害者自立支援法違憲訴訟団の基本合意書の解釈をめぐり、委員と厚労省の担当課長が反発し合う場面があった。
 
■法案化へ本格的な議論開始
 
 この日の会合では、障がい者総合福祉法についての本格的な議論に入り、▽法の理念・目的・範囲▽障害の範囲▽支給決定▽サービス体系▽地域移行▽地域生活の資源整備▽利用者負担▽報酬や人材確保―などの論点が示された。今後、これら論点の内容について議論し、来夏をめどに法案の大筋を固める。
 
( 2010年06月22日 21:37 キャリアブレイン )

2010.6.22毎日新聞
障がい者福祉法:たたき台を公表 総合福祉部会

 障害者自立支援法に代わる「障がい者総合福祉法」(仮称)を議論する政府の障がい者制度改革推進会議総合福祉部会は22日、論点のたたき台を公表した。(1)法の目的、理念(2)障害の範囲(3)サービスや支援の選択と決定のあり方−−など9分野で約80項目。部会で議論したうえで、9月からは分科会でも討議し、12年の通常国会への法案提出を目指す。
 
 (1)は「すべての障害者が自ら選択した地域で生活する権利」と明記し、その実現のため制度をどうするかなどを議論する。(2)は障害をどう定義するかや、発達障害や難病をどう規定するかが課題。(3)は現行の障害程度区分を廃止後、どう決定するかの問題だ。
 
 また法案実現のための環境整備については、サービスの地域差拡大が懸念されることから、「国と地方の役割」も論点に加える。【野倉恵】
 
毎日新聞 2010年6月22日 23時46分

2010.06.22共同通信
「届ける医療」実現を  
提言の発表
 
 「患者や家族が出向く」から「当事者に届ける」医療やサービスへ―。精神疾患を経験した人や家族、医療関係者らでつくる「こころの健康政策構想会議 」が5月、精神医療・精神保健の改革に向けた提言をまとめた。委員90人のうち当事者側が3割を占め、ニーズが強く反映されているのが特徴だ。
 座長の岡崎祐士・東京都立松沢病院 長によると、国内で精神科の受診者は300万人に上り、精神疾患は「国民病」と言える状況。だが精神科の医師数は政策的に抑えられ、現場では人手不足が恒常化。重症の患者に対する入院治療が主で、早期発見と早期治療を推進できる態勢になっていないという。
 提言は、市町村が人口10万人で区切った地域ごとに医師や薬剤師、作業療法士、精神保健福祉士など多職種の専門家10人から成るチームを置き、患者や家族の元に出向く「アウトリーチ」を実現するべきだとしている。
 心の健康をめぐっては、不調を抱えた人や家族が問題に気付きにくい上、気付いても情報不足でどこに相談していいか分からない、周囲の目を気にして医療機関に行くのをためらう、といったケースが多く、医療やサービスが必要な人に迅速に届きにくいことが課題になっている。
 構想会議が提唱する多職種チームは地域で相談の窓口になり、必要に応じて相談者を訪問したり、適切な医療機関への橋渡しをしたりして、こうした課題に対処する。さらに、地域の中で療養を進められるよう、薬による治療だけでなく心理的なサポートも行い、行政と連携して就学、就労支援まで含んだ生活支援の計画をつくることも求められる。
 提言は、患者の介護などで身体的、精神的に負担のかかる家族を支援する専門員制度を創設し、多職種チームに加えることや、チームによる学校などでの啓発活動も必要だとしている。
 提言は5月下旬、長妻昭厚生労働相に提出された。厚労省内に設置された自殺・うつ病等対策プロジェクトチームがまとめた対策にもアウトリーチの推進が盛り込まれるなど、改革案の具体化に向けた議論が始まっている。

精神疾患患者への訪問支援、導入合意 厚労省検討チーム
2010年6月17日22時15分朝日新聞
 地域精神保健医療の体制を話し合う厚生労働省の検討チームは17日、医療や福祉の専門家チームが精神疾患患者の自宅を訪ね、治療や生活の相談に乗る訪問支援を本格導入することで合意した。重症患者の治療が長期入院に偏っている現状を改め、地域で患者を支える体制に大きく転換することになる。
 
 検討チームは、人材を育てて医師や看護師らによる多職種チームが担う▽医療機関はベッド削減に取り組む▽住まいの整備を併せて行う、などの方向で一致した。厚労省は来年度予算の概算要求に関連の費用を盛り込む方針。
 
 在宅の精神疾患患者を専門家らが支える活動は欧米で「アウトリーチ」と呼ばれ、日本にもすでに12チームある。そのうちの一つは検討チーム委員の精神科医、高木俊介さんが6年前に全国に先駆け京都市を拠点にして始めた。医師や看護師、精神保健福祉士ら15人が24時間態勢で患者約120人を回る。
 
 統合失調症で20年以上入退院を繰り返した男性(47)は3年前に一人暮らしを始め、高木さんらの支援を受ける。週4回、看護師らが訪ね、生活上の悩みや服薬の相談に乗る。スタッフは携帯電話の番号を伝え、緊急時に出動することも。男性は「家で勉強できてうれしい」と話す。
 
 高木さんによると、チームの経費は年間約1億円。公的医療保険の診療報酬でまかなえる。「入院治療だと3倍はかかる」と指摘する。
 
 日本では精神科に33万人が入院し、入院患者の4分の1を占める。平均在院日数は313日、約4割の人が5年以上入院している。欧米では入院治療は人権上の問題もあるとして訪問支援を積極的に導入している。
 
 厚労省は6年前に「入院から地域への移行」を宣言したが、実現は遅れている。検討チームの会合に招かれた元患者は入退院を繰り返した体験について、「自尊心を100%失った」と訴えた。鉄格子がはめられた部屋に閉じこめられ、売店にも行けなかったという。(岡崎明子)

2010.6.16共同通信
障害者支援法改正案は廃案 成立直前の首相退陣で

 障害福祉サービスの利用者負担を量に応じた「応益負担」から、所得に応じた「応能負担」に変更する障害者自立支援法改正案は国会閉幕の16日、参院本会議が流会となったため、廃案になった。
 
 法案は参院本会議での採決を残すだけで、いったんは今月2日に可決、成立する日程が決まっていたが、同日に鳩山由紀夫前首相が退陣を表明。本会議は開かれず、その後採決されないままになっていた。
 
 障害者団体からは「当事者の意見を聞かずに、国会運営の駆け引きで突然、改正案が持ち出された」との反発が出ていたが、「サービス向上につながる」と成立を期待する声もあった。
 
 政府は2013年8月までに自立支援法を廃止し、新法を制定する方針。改正案はそれまでの「つなぎ」との位置付けで、自公両党が議員立法で提案したのに対し、民主など3党が対案を出し、衆院厚生労働委員長提案の形でまとめた。
 
2010/06/16 20:19   【共同通信】

2010.6.15毎日新聞
労災申請:精神疾患、初の1000件超 認定は減少傾向−−09年度厚労省まとめ
 
仕事上のストレスが原因によるうつ病など精神疾患に関する09年度の労災請求件数が、前年度比209人増の1136人(うち自殺157人、前年度比9人増)と過去最多となったことが14日、厚生労働省のまとめで分かった。精神疾患の労災認定は前年度比35人減の234人(うち自殺63人、同3人減)だった。申請が急増する中、認定は減少しており、認定のあり方に疑問の声も出ている。
 
 厚労省のまとめによると、精神疾患の請求で労災が認定された率は年度をまたぐケースを含め27・5%(前年度比3・7ポイント低下)。認定の年代別では、30代が75人(前年度比1人増)で最多、次いで40代(57人)、20代(55人)だった。このうち自殺での認定は、40代が最多の20人(前年度比5人増)だった。
 
 請求は全年代で前年度を大きく上回ったが、特に30代(364人)、40代(316人)の働き盛りで増加した。20代、30代は自殺の請求が増えた。決定内容に不服がある場合に行う審査請求は281人(同28人増)で、05年度の倍近くあり、決定への不満が目立った。
 
 厚労省職業病認定対策室は「精神疾患の請求が増えたのは、認定基準を緩和したので、請求しようとする人が増えたのではないか。増加の社会的背景は分析できていない」と話している。
 
 一方、残業など長時間労働による脳・心疾患は請求767人(うち死亡237人、前年度比122人減)、認定293人(同106人、同52人減)で、申請、認定ともに前年度を下回った。【東海林智】
 
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 ■解説
 
 ◇厚労省は積極認定を
 厚生労働省が14日公表した過労死・過労自殺の09年度まとめは、精神疾患での労災請求が1000件を大きく上回る結果となった。うつ病など心の病に対する認識が社会的に広まっていることを差し引いても、職場の異常事態を警告していると言って過言ではない。
 
 「ストレスの雨が降る」。カウンセラーや精神科医がよく使う言葉だ。職場で一人でも、うつ病など心を病む事態になった場合、同じ職場で働く多くの人が同様のストレスを感じているとの意味だ。
 
 原因は、長時間労働の横行やパワーハラスメント(パワハラ)、過大なノルマなどで、認定理由でも多くを占める。こうしたストレスに多くの労働者が日々さらされている。
 
 一方、精神疾患の労災認定率は下がる傾向にある。過労死問題に取り組む弁護士らは、理由の一つに発症時期との関係を挙げ、「ハードルが高い」という。
 
 発症が仕事の失敗といった小さな出来事がきっかけだと、パワハラなどで症状が悪化しても、発症時点が重視され、仕事との関係が薄いと労災を認められないケースが多い。症状が悪化しているのに救済対象とならない。
 
 労災とされないことで、職場がチェックされず長時間労働などが放置され、ストレスの雨の中で新たな被災者が出るという悪循環だ。過労死弁護団の川人博幹事長は厚労省に「職場の実態をきちんと把握して認定すべきは認定する立場に立つべきだ」と求める。
 
 精神疾患は回復に時間がかかり、社会への影響も大きい。厚労省は積極的に労災を認定して、過労死、過労自殺の背景にメスを入れるべきだ。【東海林智】
 
毎日新聞 2010年6月15日 東京朝刊
 
 
 
2010.6.14毎日新聞
労災請求:精神疾患の件数1136人 過去最多 09年度

 仕事上のストレスが原因によるうつ病など精神疾患に関する09年度の労災請求件数が、前年度比209人増の1136人(うち自殺157人、前年度比9人増)と過去最多となったことが14日、厚生労働省のまとめで分かった。精神疾患の労災認定は前年度比35人減の234人(うち自殺63人、同3人減)だった。申請が急増する中、認定は減少しており、認定のあり方に疑問の声も出ている。
 
 厚労省のまとめによると、精神疾患の請求で労災が認定された率は年度をまたぐケースを含め27.5%(前年度比3.7ポイント低下)だった。認定の年代別では、30代が75人(前年度比1人増)で最多、次いで40代(57人)、20代(55人)だった。このうち自殺での認定は、40代が最多の20人(前年度比5人増)だった。
 
 請求は全年代で前年度を大きく上回ったが、特に30代(364人)、40代(316人)の働き盛りで増加した。20代、30代は自殺の請求が増えた。決定内容に不服がある場合に行う審査請求は281人(同28人増)で、05年度の倍近くあり、決定への不満が目立った。
 
 厚労省職業病認定対策室は「精神疾患の請求が増えたのは、認定基準の見直しなどの影響があるのではないか。増加の社会的背景は分析できていない」と話している。
 
 一方、残業など長時間労働による脳・心疾患は請求767人(うち死亡237人、前年度比122人減)、認定293人(同106人、同52人減)で、申請、認定ともに前年度を下回った。
 
 過労死弁護団の川人博幹事長は「精神疾患の請求が1000人を超えたことはパワハラや長時間労働がまん延する職場状況の反映だが、厚労省は認定に高いハードルを設定している。職場の実態をきちんと把握して認定すべきは認定する立場に立つべきだ」と認定に疑問を示した。【東海林智】
 
毎日新聞 2010年6月14日 20時57分

障害者差別の事例集作成
2010年06月16日朝日新聞熊本
 
  障害者差別って、なに?――。障害者でも意識しにくいという差別の事例集を、NPO法人ヒューマンネットワーク熊本(熊本市)がまとめた。障害者が感じた「嫌な体験」802件を国連の障害者権利条約の規定に基づき、教育や労働など11分野に整理した。同NPO法人は「事例集は障害者が一般の人に一方的に示すものではなく、住みやすい街を一緒に作るものさしにして欲しい」と話している。(磯部佳孝)
   事例集は、同NPO法人が2009年4月〜10年3月、県社会福祉振興基金助成事業を活用し、23の障害者団体で構成する障害者差別禁止条例をつくる会と協力して作成。障害者を招いたワークショップで「嫌な体験」を話し合い、802件が集まったという。
 
  08年に発効した障害者権利条約は、障害を社会的な問題と位置づけた。その上で、「障害を理由に一般の人と異なった結果」を障害者差別と定義。直接的な差別だけでなく、表面的には中立な基準でも障害者だけが不利益を被る場合は間接差別、機会均等を理由に必要な配慮をしないことも差別にあたるとした。 

  条約に基づき、802件を教育や労働、公共交通など生活の11の場面に分けて「何が差別か」を具体的に提示。労働では「精神障害を理由に就職を断られた」、公共交通機関では「バスの運転手に障害者は乗れませんと言われた」などの事例が挙がった。 

  同NPO法人は「障害者は差別を受ける前に、社会参加をあきらめる人が圧倒的に多い。今回浮かび上がったのはわずかな事例」と分析している。 

  県は、同NPO法人などと障害者への差別をなくす条例づくりを始めている。8月の条例検討委員会でたたき台を示し、来年の県議会2月定例会に条例案を出したい考えだ。事例集の問い合わせはヒューマンネットワーク熊本(096・366・3329)へ。

若者3千万人に精神疾患 留守児童の罹患率上昇 中国
2010.6.10 12:13産経新聞
 
 10日付の中国英字紙、チャイナ・デーリーなどによると、中国の精神医療の専門家は17歳以下の約3千万人が情緒障害など何らかの精神疾患を患っていると明らかにした。約10人に1人の割合にあたるという。7日に開かれた精神医療に関する国際会議で語った。
 
 北京安定病院の小児科専門医によると、中国の青少年の精神疾患罹患(りかん)率は国際的にも高く、特に親が出稼ぎのために自宅にいない「留守児童」らの罹患率が上がっているという。(共同)

2010.6.11キャリアブレイン
地域支援ベースにしたアウトリーチが重要―厚労省検討チーム
 
 厚生労働省の「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」(主担当=足立信也政務官)は6月10日、4回目の会合を開いた。会合では、地域の精神保健医療を進めるためのアウトリーチ(訪問支援)の在り方を検討するため、事務局側が論点を提示し、それに沿って議論が行われた。
 
 この日は、冒頭に長妻昭厚労相があいさつし、「地域の精神保健医療体制の構築に向けては、アウトリーチによる日本型の体制を考えている。きめ細かなチームとして、また在宅としての対応について、これから力を入れていこうと思っているので、皆さんの指導を仰ぎたい」と述べた。
 
 続いて事務局側が論点を提示。具体的には、▽精神障害者の地域生活支援のために必要な機能▽サービスの提供体制の在り方▽マンパワー確保・財政負担について―の3点で、それぞれの現状と検討すべきポイントを整理した。
 議論では、地域生活支援とそのサービスの提供体制の在り方に意見が集中した。
 高木俊介構成員(たかぎクリニック院長)が、「アウトリーチを行う上での大前提として、まず精神医療に対する不安を取り除く体制が必要」と訴えた。これを受けて、野村忠良構成員(東京都精神障害者家族会連合会会長)が「家族会の患者も、サービスを受けて自尊心を傷つけられた経験がある。患者の自尊心を大事にし、家族の信頼を得られるようなスタッフの養成も必要」と指摘し、サービス提供者側にもイメージ転換が必要と述べた。
 また、約10年前からアウトリーチに取り組んでいる長野敏宏構成員(NPO法人ハートinハートなんぐん市場理事)は、アウトリーチを進める一方、地域の人たちに対して地道に理解を呼び掛けてきた経験を踏まえ、「患者を地域で支えるというベースを皆で共有した上で(アウトリーチを)進めるべき。形だけの拙速な取り組みでは意味がない」と述べた。
 
 同検討チームは、17日の5回目の会合で一通りの議論を終え、これまでの意見を集約した上で、今後の精神保健医療に係る予算や施策に反映させていく考えだ。
 
( 2010年06月11日 21:26 キャリアブレイン )

平成226月掲載

 

政府公報

事業主の皆さんへ
障害者の雇用に関する制度が変わります!


障害のある人も障害のない人と同様、自分の能力や適性に応じて就労したいという希望をもっています。企業全体で障害者の雇用を促進するため、国は、企業に対して、雇用する労働者数の1.8%に相当する障害者を雇用することを義務づけています。また、これを満たさない企業からは「障害者雇用納付金」を徴収し、障害者を多く雇用している企業に障害者雇用調整金や各種助成金を支給しています。平成227月から、これらの制度が変わります。

 

「改正障害者雇用促進法」が平成214月から段階的に施行されています

平成21年度にハローワークに新規で求職の申し込みをした障害者の数は125,888人。過去10年間で2倍近くに増えています。一方、就職件数は45,257件で、就職率は36.0%にとどまっています。障害のある人の就労意欲が高まっている中で、企業の障害者の雇用機会をさらに増やしていくことが求められています。

障害者の雇用については、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)に基づいて、民間企業は、その常用労働者数の1.8%以上の障害者を雇用することが義務づけられています。この1.8%を「障害者雇用率(法定雇用率)」といいます。

平成2161日現在、全体の実雇用率は1.63%となっており、法定雇用率を下回っています。また、法定雇用率を達成している企業の割合は45.5%で、半数以上の企業が法定雇用率を達成していない状況です。実雇用率が特に低いのは100人〜299人規模の企業で、その実雇用率は1.35%となっています。

企業における障害者の雇用を増やすため、障害者雇用促進法が改正され、平成214月から段階的に施行されています。平成227月からは、企業の障害者雇用に関する制度が変わります。

 

平成227月から短時間労働者にも障害者雇用率が適用されます

まず、短時間労働への雇用ニーズに対応するため、平成227月から、企業における雇用障害者数の算定方法が変わり、短時間労働の障害者も雇用障害者数としてカウントすることになりました。

企業が雇用しなければならない障害者の数は、企業全体の労働者数に障害者雇用率(1.8%)をかけて算出されますが、その算定の基礎となる労働者は、週所定労働時間が30時間以上の常時雇用労働者でした。そのため、週30時間未満の短時間労働者については、重度障害者や精神障害者をのぞき、雇用障害者数としてカウントすることができませんでした。

しかし、一方では、障害者によっては、障害者の特性や程度、加齢に伴う体力の低下などにより、長時間労働が厳しい場合もあります。また、短時間労働は、障害者が福祉的就労から一般雇用へ移行していくための段階的な就労形態として有効です。このように障害者の短時間労働に対する一定のニーズがあることを踏まえ、今回の法改正により、短時間労働にも障害者雇用率が適用されることになりました。

 

算定方法が変わり、雇用しなければならない障害者の数が変わります

平成227月からは、実雇用障害者数や実雇用率のカウントの際に、身体障害者・知的障害者の短時間労働者(週所定労働時間20時間以上30時間未満)もカウントされます。なお、この場合、下表のとおり、常時雇用労働者1人は1人分としてカウントされますが、短時間労働者1人は0.5人分としてカウントされます。


また、これと併せて、実雇用率や法定雇用障害者数を算定する際の基礎となる「企業全体の常時雇用労働者の数」にも、週所定労働時間
20時間以上30時間未満の短期労働者を加えて計算することになりました。この場合も、短時間労働者1人は0.5人分として計算されます。


この算定方法の改正によって、各企業の法定雇用障害者数は改正前よりも多くなり、実雇用率は改正前よりも低くなる場合がありますので、ご注意ください。

また、この改正は、短時間労働に対する障害者のニーズを踏まえ、障害者雇用の促進のために行うものです。社会保険料を免れる目的など事業主の都合で、雇用する障害者の勤務形態を一方的に短時間労働に変更することはできません。本人の希望や能力を踏まえ、適切な待遇をしてください。

 

障害者の雇用促進を図るための「障害者雇用納付金制度」

実際に雇用している障害者数が法定雇用障害者数に満たない企業は、「障害者雇用納付金制度」の納付金が徴収されます。この制度は、雇用障害者数が1人不足するごとに月額5万円を納付金として徴収し、それを財源として、障害者を多く雇用している企業に対して、障害者雇用調整金や報奨金、各種助成金を支給するものです。

企業が障害者を雇用する場合には、障害のある人が働きやすいようにするため、作業設備や職場環境を改善したり、特別の雇用管理や能力開発を行ったりするなど、経済的な負担がかかります。障害者雇用納付金制度は、このようにして障害者を多く雇用している企業の経済的負担を軽減し、事業者間の経済的な負担を調整しつつ、全体として障害者雇用の水準を高めることを目的とした制度です。

 

平成227月から障害者雇用納付金制度の対象事業主が中小企業に拡大されます

障害者雇用納付金制度では、これまで、納付金の申告や調整金の支給について、「常用雇用労働者数301人以上の事業主」のみを対象としてきました。しかし、近年、障害者の就労意欲が高まり、企業における障害者雇用も着実に進んできている一方、中小企業での障害者の雇用は低い水準にとどまっています。そこで、障害者にとって身近な雇用の場である中小企業において、障害者の雇用をさらに促進していくため、平成227月から、障害者雇用納付金制度の対象事業主が「常時雇用労働者数が200人を超える事業主」に拡大されます。

今回の改正で新たに障害者雇用納付金制度の対象となる中小企業(常用雇用労働者数が200人を超え300人以下の事業主)には、納付金の減額特例が適用され、平成227月から平成276月までの5年間は、不足する障害者1人あたり月額5万円の納付金が1人月額4万円になります。

なお、障害者雇用納付金は罰金ではなく、納付金を支払っても障害者の雇用義務を免れるものではありません。事業主が障害者雇用率を達成し、雇用した障害者が職場で能力を発揮できるようにするため、厚生労働省ではさまざまな支援・援助を行っています。詳しくは、最寄りのハローワーク、または独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構納付金部にお問い合わせください。

 

<取材協力:厚生労働省  文責:政府広報オンライン>

 


精神疾患の防止にストレス測定導入 県職員
2010年06月10日日本海新聞
 
 鳥取県は本年度、職場でのストレスを原因としたうつ病など精神性疾患の広がりに対処するため、「生活習慣・ストレス測定」を知事部局の全職員対象に実施する。心の健康を守るため個々のストレス状況や原因を究明し、処方箋(せん)として対処法を提示。上司の指導力やサポート体制の強化に向けたアドバイスを行い、職場の環境改善を図る。
 
 県福利厚生課によると、2009年度にうつ病などの精神性疾患で30日以上休んだ職員は42人。うち新規休業者は21人で、病気の未然防止が急務となっている。
 
 県職員の精神性疾患者は1999年以降、全国平均を上回るペースで増加しており、ピーク時の06年度には47人が長期休業。職員10万人当たりに換算すると、疾患者は1414・4人(全国平均964・6人)で深刻な状況となっている。
 
 「生活習慣・ストレス測定」は7月から実施。ストレス良好指数やメンタルヘルス良好度などを測定し、8月には個人に処方箋を付けて結果を返す。9月には県職員全体の測定結果が出る予定で、環境改善が必要な職場には福利厚生課の担当保健師が出向いて講座を実施する。
 
 一方、すでに全教職員を対象にしたストレス診断を導入している県教委。教職員の精神性疾患による長期休職者は09年度が39人で、うち新規休職者は18人。教職員全体に占める出現率は0・63%(前年度0・60%)で微増した。90日間の病気休業を終えて休職に入り、復職後に再び発症する人もいるという。
 
 県教委福利室は「教職員間のコミュニケーションの問題だけでなく、子どもや保護者への対応で心身とも疲れてしまう人が増えた。ストレスをチェックし、早めの支援が必要だ」と話している。

2010.6.8読売新聞
統合失調症示す血中物質、突き止めた
予防や早期治療に期待

 統合失調症の患者の約4割で、血液中の「ペントシジン」という物質の濃度が高くなっていることを、東京都精神医学総合研究所と東北大学の研究チームが突き止めた。
 
 この病気は原因不明で、発症を示す物質の発見は世界初。関連するビタミンの低下も患者の約2割で確かめており、血液検査による診断や発症予防、早期の治療開始が可能になりそうだ。8日、米国精神医学専門誌に発表する。
 
 統合失調症は、幻覚や妄想が生じて思考が混乱したり、感情が不安定になったりする病気。国内には100万人弱の患者がいて、10〜30歳ごろに発症する。発症は症状が出るまでわからない。原因は脳内の神経伝達物質ドーパミンの過剰放出とする説もあるが、ドーパミンを抑える抗精神病薬が効かない患者もいる。
 
 同研究所の糸川昌成・参事研究員らは、統合失調症の患者45人の血液を解析。うち21人でアミノ酸の仲間であるペントシジンの血中濃度が、健康な人より平均1・7倍高く、高い患者ほど抗精神病薬が効きにくいことを発見した。
 
 このうち11人は、ペントシジンなどを体外に排出するビタミンB6化合物の血中濃度が5分の1に下がっていた。ビタミンB6化合物は現在、米国で糖尿病合併症の治療薬として臨床試験中で、糸川さんは「統合失調症の新薬としても期待できる」と話している。
 
(2010年6月8日 読売新聞)
(2010年6月8日14時40分  読売新聞)

2010.6.7共同通信
差別禁止法案を13年に提出 政府の障害者改革会議
 政府の「障がい者制度改革推進会議」は7日、今後の改革の工程を定めた第1次意見をまとめ、人権被害の救済を目的とした障害者差別禁止法案を2013年の通常国会に提出することなどを盛り込んだ。意見書に基づいた基本方針の今月中の閣議決定を目指す。
 
 意見書では、障害者基本法改正案と、改革の推進態勢などを定めるプログラム法案を11年の通常国会に提出する方針も明記。廃止を決めている障害者自立支援法に代わる障害者総合福祉法については、12年の通常国会に法案提出、13年8月までの施行を目指す。
 
 障害年金など所得保障の在り方に関しては、政府が13年の法案提出を予定している年金制度全体の改革に合わせ、12年末までに検討する。
 
 一方、障害のある児童、生徒への特別支援教育では「障害のない子どもとともに教育を受けるという理念」を挙げたが、制度改革の方向性については「本年度内に結論を得るべく検討」との表現にとどめた。
 
 「障害」の表記をめぐり、「障碍(がい)」の碍の字を常用漢字に追加するかどうか、文化審議会から検討を求められていたが、結論を持ち越した。
 
2010/06/07 19:30   【共同通信】

児童精神科病床新設へ 県内2カ所目、天竜病院に
2010/06/08 07:56 静岡新聞

 浜松市浜北区の天竜病院は、うつ病や発達障害を患う子どもを受け入れる児童精神科病床を備えた新病棟を建設する。病室を施錠できる閉鎖病棟もあり、暴力や自傷行為を繰り返すなど衝動性の高い重度の患者にも安全な治療が可能になる。8月下旬に着工し、来年10月の完成予定。県内の児童精神科病床は静岡市の県立こども病院に続いて2カ所目。
 新設する児童精神科病床のベッド数は50床で、そのうち閉鎖病床が29床。看護師らスタッフを手厚く配置するほか、衝動的に暴れたりする子どもを一時的に保護する個室も用意するなど、重度の患者に対しても安全な治療を行う環境を整える。また、児童精神科医の第一人者として知られるあいち小児保健医療総合センターの杉山登志郎医師が定期的に回診を行うほか、浜松医科大の若手医師が学ぶ研修の場としても活用する予定。
 同病院は現在、小児科と精神科による一般病床で児童精神科の患者を受け入れているが、病室を施錠できないために病院を抜け出したり暴れたりする子どもについては原則的に転院や退院を依頼していた。そのため、保護者には子どもを大人の患者もいる一般の精神科病床に入院させることへの不安や、「症状が重くなることで病院を出されるのは困る」との声があり、子どもを安全に受け入れられる閉鎖病床の設置を検討していた。
 浜松医科大精神神経科の森則夫教授によると、閉鎖病棟の目的は「隔離ではなく保護」。病院から抜け出した後に起こる事故を防ぐほか、病室の壁を柔らかい素材にすれば、頭を打ち付けたりする自傷行為から子どもを守ることにもなるという。森教授は「精神科治療の基本は安全な環境。閉鎖病棟にすることで医師や看護師と子どもの関係も深くなり、より手厚い治療ができる」と期待を寄せる。
 同病院の藤田梓医師は「診療の幅も広がるし、精神科医療の教育の場としても大きな意味を持つ」と語る。

障害者の7割「差別受けた」 6割超「今も」 政府白書
2010年6月11日19時6分朝日新聞
 
 障害がある人の約7割が差別や偏見を受けた経験があることが、政府が11日に閣議決定した「2010年障害者白書」で明らかになった。6割超が「今も感じる」と回答しており、差別がなくならない実態が浮き彫りになった。
 
 09年12月〜10年1月に実施した障害者の意識調査結果を白書に掲載した。全国の障害者4455人を対象に郵送でアンケートして、2178人(49%)が回答した。
 
 障害を理由とする差別や偏見を受けた経験について、「ある」が68%で「ない」が28%。現在も差別や偏見を受けているかについては、「常に感じる」が11%、「ときどき」が51%。「あまり感じない」は28%だった。
 
 白書は、障害がある人が参加し、制度の抜本改革を目指す「障がい者制度改革推進会議」の取り組みも紹介。同会議は、13年の通常国会で障害者差別禁止法の成立を目指す方針を決めている。

新手貧困ビジネスか 生活保護受給者が向精神薬大量入手
2010年6月4日朝日新聞

 全国の市町村で最多の約14万人の生活保護受給者が暮らす大阪市が、1月に精神疾患で医療機関の診療を受けた受給者322人を調べたところ、ほぼ4分の1の80人が大人1人に処方される基準を超える向精神薬を受け取っていたことがわかった。
 
 市は転売目的のケースが多くあるとみて、受給者から聞き取り調査をする方針。受給者が医療扶助によって診療や薬の処方を無料で受けられることを悪用した新手の「貧困ビジネス」の可能性もある。
 
 市によると、80人すべてが複数の医療機関を受診していた。基準の数倍の向精神薬を入手したり、1枚の薬の処方箋(せん)を大量にコピーして数カ所の薬局に提出したりしたケースもあったという。2008年度の市の医療扶助は1129億円で、保護費全体(2382億円)の半分近くを占める。
 

2010.6.4読売新聞
貧困ビジネス 生活保護者、向精神薬過剰入手80人

 大阪市内の医療機関を精神疾患で受診した生活保護受給者のうち、1月だけで80人が過剰な量の向精神薬を入手していたことが、市の調査でわかった。約10か所の医療機関を〈はしご受診〉し、合計すると致死量に近い薬を受け取っていたケースもあった。同市内では4月、受給者が入手した大量の向精神薬が転売される事件が発覚。市は生活保護制度を悪用した薬の貧困ビジネスが広がっているとみて防止策を検討する。
 
 4日の生活保護行政特別調査プロジェクトチームの会合で、市が明らかにした。
 
 調査は、生活保護受給者の受診が多い病院や診療所について、1月に診療を受けた322人の受給者のレセプト(診療報酬明細書)を確認した。その結果、160人が複数の医療機関を受診していたことが判明。うち80人は1か月間の処方基準量を超える向精神薬を受け取り、処方せんをコピーして複数の薬局に提出し、多量の薬を受け取っていた人もいた。
 
 同市西成区のあいりん地区では、神奈川県の男ら2人が受給者数十人から安く買い取った薬を昨年末にネット上で全国に転売したとして同県警に逮捕された。
 
 一方、受給者の診療報酬詐取事件があった「山本病院」(奈良県大和郡山市、廃院)で、昨年3月までの1年間に入院した6割にあたる264人が、大阪市内から受け入れた受給者だったことも明らかにした。
 
 受給者は自己負担なしで診療や投薬を受けられ、費用は生活保護の「医療扶助」として支払われる。大阪市では、医療扶助費が生活保護費全体の約5割にあたる約1129億円(2008年度)に上っている。
 
(2010年6月4日  読売新聞)
 

【貧困ビジネス】転売?受診の生活保護受給者、4人に1人が基準量超の向精神薬入手 大阪
2010.6.4 22:52

  大阪市内の医療機関を今年1月に精神疾患で受診した生活保護受給者のうち、約4分の1の80人が、基準量以上の向精神薬を受け取っていたことが4日、市の調査で分かった。市は、無料で薬が処方される生活保護制度を悪用し、入手した向精神薬を転売する「薬の貧困ビジネス」の可能性があるとみて、大阪府警と連携して調査を進める。
 
 全国30市の生活保護担当者が集まり、大阪市役所で4日に開かれた会合で報告された。市が受給者322人分の診療報酬明細書(レセプト)などを調べたところ、80人が「ハルシオン」などの向精神薬を基準以上に入手。全体のほぼ半数にあたる160人が、1つの疾病で複数の医療機関にかかる「重複受診」をしていたことも判明した。医療機関から受け取った処方箋(しょほうせん)を大量にコピーし、複数の薬局で使用したとみられる手口もあったという。
 
 受給者に処方される向精神薬をめぐっては、神奈川県警が4月、大阪市西成区の受給者から向精神薬を買い取り転売したとして、神奈川県横須賀市の男を麻薬取締法違反(営利目的譲渡)容疑などで立件する事件があり、厚生労働省が全国の自治体に調査を求めていた。
【貧困ビジネス】保護費入金は複数回 自称NPO管理の業者口座、架空請求か
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2010.6.4河北新報
自殺未遂の再発防止策充実を 福島県が救急医療機関調査

 自殺を図って救急搬送された人の心のケアをどうすべきか、福島県内の病院に聞いた調査の結果が3日までにまとまった。救急医療の現場での精神的ケアについては、約8割が「不十分だ」と回答。精神科などとの連携を求める意見が多く、自殺未遂者対策の充実が課題になっている現状を裏付けた。
 
 自殺に至るまでには未遂を繰り返すケースも多いことが知られている。未遂者対策は自殺防止につながると期待されていることから、福島県は昨年、県内の全救急医療機関を対象に調査を実施し、84病院のうち83病院から回答があった。
 けがなどの治療と並行して、ほぼ9割の病院で精神的ケアも行っていたが、担当したのは看護師が約4割で最も多く、精神科医は1割以下にとどまる。精神的ケアの体制については64病院が「不十分」「どちらかというと不十分」と回答し、「十分」はわずか2病院だった。
 未遂者が再び自殺を図ろうとする危険性を推測できれば、対策を考える上で有効だが、66病院が「その評価は難しい」と答えている。
 全体の9割の病院が未遂者に対して精神科の受診を勧めたり、紹介状を出したりしているが、精神科医などと連絡会議などの組織を設けているのは6病院のみ。43病院は「紹介はできるが、それ以上の交流はない」と答え、「紹介先の精神科がない」も3病院あった。
 これからの対応策としては、「精神科との連携を支援するシステム」「地域での継続的な支援」「精神的ケアを担当する専門職員の設置」などを望む意見が多かった。
 各病院に自由に意見を求めたところ、「夜間に対応してくれる精神科医がいない」「身体的治療だけでは無意味だという感覚を持つことがある」との声が出された。
 また、「一般の医師に精神科の講習を、精神科医に救命医療の講習を受けさせるべきだ」「精神的苦痛についても、119番で対応できるようにした方がいい」といった意見も寄せられた。
 アンケートを実施した畑哲信・県精神保健福祉センター所長は「医療機関が自殺未遂者にどう対応したのかを示すデータはこれまでになかった。精神的ケアを十分にすることが、再発の防止につながる」と、救急医療と精神科との連携の大切さを訴えている。
 

2010年06月04日金曜日

2010.6.3キャリアブレイン

精神医療の在り方で議論厚労省検討チーム

 厚生労働省の「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」は63日、2回目の会合を開いた。この日は、528日に長妻昭厚労相あてに提出された精神医療の在り方についての提言書を議題のテーマに、構成員らがそれぞれの意見を述べた。

 提言書は、精神医療を受けた当事者やその家族、学識経験者の有志など90人でつくる「こころの健康政策構想会議」(座長=岡崎祐士・東京都立松沢病院院長)が、4月から5月にかけて会合を開き、今後の精神医療の在り方や政府に求める施策をまとめたもの。構想会議の座長や委員を務めたメンバーが同検討チームの構成員として出席しており、この日の議論のテーマにしたいという申し出があった。  
 会合にはさらに、構想会議に参加した当事者2人がゲストとして招かれ発言した。統合失調症で精神医療を受けている堀澄清さんは、「これまで自分が受けてきた精神医療は、およそ医療とは懸け離れており、自尊心を完全に奪うものだった」と告白。「今後の精神医療を考えていくのであれば、根本から医療制度をつくり直す、まさに革命を起こす気概が必要」と訴えた。また野村義子さんは、「患者が入院で世の中から切り離される期間が長くなるほど、社会復帰が難しくなる」と語り、精神疾患を早い段階で発見・治療できる体制づくりを訴えた。

 続いて、提言書について構成員が意見を交わした。提言書では、今後の精神医療の在り方について「国民のニーズを主軸に据えた改革」を打ち出し、アウトリーチ(訪問支援)医療や専門医療の充実を図る精神医療改革家族や介護者の地域支援などの重要性を盛り込んでいる。




 田尾有樹子構成員(社会福祉法人巣立ち会理事)は、「自立が無理と思われた人が、どんどん自立していくのを何人も見てきた」と述べ、「医療政策も重要だが、住居や生活支援対策を中心にしてはどうか」と提案した。これに対して複数の構成員が同調したが、「病床数を削減する議論が先行しないよう、住居や生活支援がきちんと確保されるべきでは」(日本精神科病院協会副会長の河崎建人構成員)などの指摘もあった。また野澤和弘構成員(毎日新聞社論説委員)は、「医師は患者に対して医療はできるが、住居や生活支援の問題は専門外。復帰に向けた支援は、専門家をきちんと育て、任せる体制づくりが必要では」と述べた。

20100603 23:24 キャリアブレイン

 


2010.6.1キャリアブレイン
「わたしたち抜きに決めないで!」自立支援法改正案可決に怒りー総合福祉部会

   
 内閣府の「障がい者制度改革推進会議」は6月1日、障害者自立支援法に代わる新法「障がい者総合福祉法」(仮称)のあり方を議論する「総合福祉部会」の第3回会合を開催した。会合では、障害者自立支援法改正案が衆院厚生労働委員会で可決されたことについて、「わたしたちのことをわたしたち抜きで決めないで!」などと出席した委員らの怒りが爆発した。
 
■障がい者制度改革推進会議に要望書提出へ
 
 議員立法で提出された障害者自立支援法改正案は、5月28日に衆院厚労委で民主、自民両党などの賛成多数で可決された。これについて、部会の委員からは「政府から依頼されて議論しているのに、われわれに何の連絡もなかった。部会の議論の中身が十分に反映されていない改正法案を拙速に議員立法することは、(国と障害者自立支援法違憲訴訟団の)基本合意書に反する、われわれを愚弄する行為だ」などの声が多数上がった。
 
 委員多数の要望で、同部会は同日付で推進会議あてに、強い遺憾の意を表す要望書を提出することを決めた。
 
■緊急対策案、重点項目必要
 
 会合では、当面の課題として新法の制定までに必要な緊急対策案の決議が主要な議題だった。これについては、「重点項目を絞り込まないと来年度予算案に反映されない」などと批判する声が多数上がったため、部会の三役と数名の委員らで重点項目を決めて7日開催の推進会議に提出することを決めた。
 
 次回会合は22日で、新法制定に向けた本格的な議論に入る方針。
 
( 2010年06月01日 19:03 キャリアブレイン )

2010.5.31キャリアブレイン
「精神医療に推進力ある枠組みを」―厚労省検討チームが初会合
 
 地域の精神保健医療や福祉をめぐる実情を把握し、今後の医療政策に盛り込む提言をまとめるため、厚生労働省は5月31日、「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」を立ち上げ、初会合を開いた。会合では初回から活発な議論が交わされ、過去からさまざまな形で検討が重ねられてきた精神保健医療のあり方が、医療現場や患者側の受け止めとしていまだこう着状態にあることや、抜本的な地域医療体制の変革の必要性などを指摘する声が相次いだ。
 
 初めに検討チームの主担当を務める足立信也政務官があいさつし、「気分障害・うつ病はもはや国民病といっても過言ではない。また障害者をめぐる状況についても、全体の見直しをする必要があり、『アウトリーチ(訪問支援)』が重要と考える。地域には今どのようなことが必要かという観点で、忌憚(きたん)のない意見を交わしたい」と述べた。
 
 続いて厚労省側の事務局が、精神保健医療の現状について説明。2004年に同省がまとめ、10年計画で行う施策が盛り込まれた「精神保健医療福祉の改革ビジョン」に基づき、計画の中盤を過ぎた現時点での進ちょく状況が報告された。その後引き続き、報告について構成員が意見交換を行った。
 
 高木俊介構成員(たかぎクリニック院長)は、「今必要なのは、今後の精神医療が向かう方向性や将来像をきちんと示すことではないか」と提起。これに対し、「国としての方向性、精神医療に推進力ある枠組みを(作るべき)」など、各構成員から同調する声が相次いだ。
 また、精神医療を受けた側の代表として出席した広田和子構成員(精神医療サバイバー)は、「20年近く、サバイバーとして厚労省のさまざまな検討会に出てきたが、精神医療を取り巻く状況はいまだに何ら変わっていない」と厳しく断じた。福田正人構成員(群馬大医学部准教授)も、「精神保健医療の全体像を見直さない限り、アウトリーチ体制だけを整えても変わらないのでは」と述べ、会合では、現状の把握とともに将来的なビジョンを打ち出す必要性が確認された。
 
( 2010年05月31日 22:45 キャリアブレイン )

.ホームレス支援、「縁」を「居場所」に
2010年5月24日神奈川新聞

 
 路上生活者を医療の分野から支援する動きが都内で始まっている。NPO法人「世界の医療団 日本」による東京プロジェクトには、国内の精神科医や臨床心理士ら専門家が参加する。スタッフの一人、社会福祉士の中村あずささん(29)はかつてボランティアとして横浜・寿町に通った経験を持つ。やはり生活に困窮し、行き場を失った人たちが集う街で感じた「縁」の大切さを中村さんは忘れない。
 
 夜の東京・池袋。駅前で老女が一人、布団にくるまっている。夜回りを続ける中村さんによると、知的障害があり、統合失調症でもある。路上暮らしの現実を理解できず、自力では支援を求めることができない。こうした精神疾患を抱えるケースは珍しいことではないという。
 
 それでも以前は、働きながらアパートで一人暮らしをしていたらしい。「ところがある日、鍵をなくしてしまう。動転し、アパートを出ていってしまった。そのまま路上生活です。一声掛けられる存在が一人いるだけで、結果は違ったはず」。浮かび上がる社会的弱者の孤影と生きづらさ。安易に転落し得る酷薄な社会が、そこにぽっかり口を開けていた。
 
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 人と人のつながり。あらためてその大切さに気付かされたのは、寿町に出入りするようになってからだ。
 
 「あんたもここへ流れてきたのか。おれと同じだな」。振り向くと、かつて池袋で知り合った路上生活者の男性が笑っていた。
 
 中村さんは学生時代からホームレス支援団体を立ち上げ、池袋で活動してきた。やがて行き詰まりを感じ、視野を広げたいと向かったのが全国に知られる簡易宿泊所街、寿町だった。「社会からはじき出され、路上からも排除され、それでもまだ人として付き合おうとしてくれている」。孤独を知るがゆえの温かさに触れた気がしてうれしかった。
 
 事実、寿町は「包容力のある街だった」。炊き出しなどで顔見知りになった住人たちから次々に「あずさちゃん」と声が掛かる。2006年からの3年間、カラオケに興じたり、部屋を訪ねておしゃべりしたり、思い出は尽きない。
 
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 池袋に戻った後、この春から東京プロジェクトのメンバーに加わった。
 
 それにしてもなぜ、ホームレス問題なのか。
 
 「路上で起きていることが、自分たちにつながる大事なことだと思えているから」。自分たちは「希望から出発することができなかった世代」。華やかなバブルの記憶はなく、就職は超氷河期。不況で派遣切りに遭った世代でもある。将来を見通す目は切実だ。
 
 2年前、引っ越した先のアパートで隣人が自殺した。あいさつに行こうとした矢先だった。「もう真っ暗な未来のまま、歩いていくのが耐えられない。頼られ、役に立つことで自分の居場所が見つかる。いまの社会では得られにくくなった、そんな実感を取り戻す活動でもあると思う」
 
 プロジェクトの当面の目標は、アパート1棟を買い上げ、精神疾患を抱える路上生活者がケアを受けながら住むことができる場所を確保することだという。それはきっと、自分たちの居場所でもあって―。

障害者差別禁止の新法制定検討 政府会議が基本方針素案
2010年5月25日8時0分朝日新聞

    
 障害者の当事者も参加する政府の「障がい者制度改革推進会議」は24日、制度改革の基本方針素案をまとめた。2011年の通常国会で障害者基本法の抜本改正を目指す。障害者差別禁止法(仮称)の制定も検討していく。関係省庁と調整した後、6月中にも基本方針を閣議決定する予定だ。
 
 今回の素案は、今年1月に始まった同会議で障害者らが出した意見をまとめた。障害者基本法の改正時期を明記するほか、障害者団体などが強く求めている差別禁止法は、制定に向けて検討し、12年度末までに結論を出す。
 
 障害児は現在、特別支援学校に通っているが、障害の有無にかかわらず、すべての子どもが地域の小中学校の通常学級に通うことを原則とする。文部科学省が慎重な姿勢を示しているが、年内をめどに結論を得る。
 
 障害者雇用の義務対象に精神障害を加えるほか、バリアフリーの整備の遅れなどを改善するため、11年に提出が検討される交通基本法案(仮称)に移動の権利を明文化することも盛り込まれる。
 
 また、障害者の定義の範囲も広げる。障害の原因となる疾患や症状など主に医学的に決められているが、これを日常生活で行動が制限されている状況などを踏まえて社会的側面からも判断するように変える。
 
 6月7日の同会議で、基本方針に反映させる意見書を取りまとめる。年内にも、第2次意見書を示す予定だ。

2010.5.29時事通信
自殺者の6割、薬過剰摂取=目立つ若い世代−厚労省研究班

 精神科治療を受けながら自殺に至った人の6割近くが、処方された薬を過剰に服用していたことが、厚生労働省研究班の調査で分かった。過剰摂取自体の致死性は比較的低いものの、自殺行動を促す恐れがあり、国立精神・神経センター精神保健研究所の松本俊彦室長は「特に若い人に目立つ。乱用を防ぐ方策や、精神科医療の質の向上が必要だ」としている。研究班は自殺の実態把握と原因分析を目的に、2007年12月〜09年12月、自殺既遂者76人の遺族への面接調査を実施。精神科受診の有無など精神医学的な観点から分析した。
 自殺直前に何らかの精神疾患にかかっていたと推測される人は66人(86.8%)で、罹患(りかん)率は国内外の先行研究とほぼ一致していた。
 死亡前の1年間に精神科・心療内科の受診があった人(受診群)は半数の38人。30代以下が3分の2を占め、平均年齢は36.8歳で、受診していない人(平均46.3歳)より低かった。
 受診群の約8割が薬物療法を受けており、自己判断で治療・服薬をやめた人は約2割にとどまる。自殺時に、処方された睡眠薬や抗うつ薬などの過剰摂取があったのは、はっきり分からない5人を除き33人中19人(57.6%)だった。(2010/05/29-15:29)

職場の健診、精神疾患も対象 政府「自殺・うつ対策」
2010年5月29日1時20分朝日新聞

    
 年間3万人を超える自殺を防ぐため、厚生労働省は28日「自殺・うつ病等対策」をまとめた。職場での健康診断で精神疾患も対象とし、企業に取り組みの強化を求める。精神保健医療の充実も含め、法制化を目指す。
 
 国が職場の対策に踏み込むのは異例だ。具体的には、精神疾患がある労働者を把握するため、企業が実施する定期健康診断に項目を加える。一方、企業側が従業員の精神疾患を把握することによるプライバシー侵害や、人事への影響を懸念する声があり、労働者が不利益を受けない方策も検討課題だ。
 
 31日には専門家や労使代表でつくる「職場におけるメンタルヘルス対策検討会」を立ち上げ、法制化を含めた方針づくりを進める。
 
 精神科医や患者、家族ら90人が集まる民間組織「こころの健康政策構想会議」も28日、国を挙げてこころの問題に取り組むための政策提言書と「精神疾患対策基本法案」を長妻昭厚労相に提出した。同省はこれを受け、31日に「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」を立ち上げ、政策の実現や法案の早期成立を目指す。
 
 構想会議は「多職種チームによる医療の提供とアウトリーチ(訪問活動)」を提言書の目玉とした。自治体が人口10万人あたりに一つ、医師や精神保健福祉士、臨床心理士らによるチームを設置。いつでも電話相談に応じて相談者のもとに出向き、必要な医療や福祉サービスに結びつける。こうした活動で「3分診療から30分医療へ」「患者を病院・施設から地域へ」の実現を目指す。(中村靖三郎、横田千里、岡崎明子)
 
 
 
 
 
2010.5.29毎日新聞
自殺予防策:健診で精神疾患検査−−厚労省PT

 厚生労働省の自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム(PT)は28日、職場におけるメンタルヘルス(精神衛生)対策の充実や、精神疾患の患者に対する訪問支援などを柱とした自殺防止策をまとめた。今後、自殺対策を推進する内閣府とも連携し、政府の総合的な対策として具体的な検討作業に入り、11年度からの実施を目指す。
 
 メンタルヘルス対策では、職場での健康診断の検査項目に精神疾患を発見するための項目を加え、このための労働安全衛生法改正も検討している。不調者を把握した場合は、労働時間の短縮や休業、職場復帰などの対応が適切に行われるよう、精神科医らが産業医などを対象に研修を実施する。だが、人事面などで不調者が不利益を受けないための配慮も必要だとしている。
 
 精神疾患がありながら治療をしていなかったり、治療を中断している患者に対し、保健所や民間の専門職員らが訪問支援を行う。
 
 1人暮らしの無職者や離婚した人、生活保護受給者の自殺率が高いことも統計から分かっており、都道府県が行う心の健康相談をハローワークで実施したり、福祉事務所に精神保健福祉士などの配置も検討。精神保健医療改革も推進し、うつ病に有効とされる認知行動療法の普及に向け、専門家を養成するための研修を実施する。
 
 厚労省によると、09年の自殺者数は3万2845人で12年連続で3万人を超えた。08年の約3万2000人のうち、うつ病が原因とみられる人は約6400人。【佐々木洋】
 
毎日新聞 2010年5月29日 東京朝刊
 
 
 
 
 
 
 
2010.5.28共同通信
厚労省、自殺防止対策を強化へ 11年度にも実

 厚生労働省の「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」は28日、企業が実施する職場の定期健康診断でうつ病などの精神疾患に関する検査項目を盛り込んだり、失業者へのメール相談事業を強化したりすることを柱とした自殺防止対策をまとめた。
 
 職場でのストレスなどに起因する精神疾患や失業による生活苦から自殺するケースも多く、早期発見で症状の悪化や自殺を減らすのが狙い。
 
 厚労省は対策の実現に順次取り組み、健康診断の検査項目追加については、労働安全衛生法を改正、2011年度中の実施を目指す。
 
 健康診断での検査方法は厚労省が既に作成している56の質問項目からなる「簡易調査票」などを使い、メンタルヘルス不調者を把握。不調者への対応が適切に行われるよう、都道府県の「メンタルヘルス対策支援センター」などの臨床心理士や精神科の医師が、産業医や中小企業の管理職を対象とした研修を実施する。
 
 ただ、不調者の把握はプライバシーの問題などで労働者が不利益を被る可能性もあるため、そうした問題に配慮しつつ効果的な方法を慎重に検討するとしている。
 
2010/05/28 19:33   【共同通信】
 
 
 
 
 
2010.5.28キャリアブレイン
自殺・うつ病対策の5本柱まとまる―厚労省PT
 
 厳しい雇用情勢や生活苦などを背景に、うつ病やそれが原因とみられる自殺が増え続ける中、国として本格的な対策を講じるために今年1月、厚生労働省に設けられた「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」が5月28日、これまでの4回にわたる会合で検討してきた内容を取りまとめた。今後の同省の対策として5本柱を掲げており、同省では職場のメンタルヘルスや地域の精神保健医療の整備などに注力していく方針だ。
 
 プロジェクトチームがまとめた対策の5本柱は、(1)普及啓発の重点的実施(2)ゲートキーパー機能の充実と地域連携体制の構築(3)職場におけるメンタルヘルス対策・職場復帰支援の充実(4)アウトリーチ(訪問支援)の充実(5)精神保健医療改革の推進―。
 
 このうち(2)は、自殺原因などを調べた警察庁の統計データや、生活保護受給者や雇用保険受給者の自殺者数について同省が調べた結果の分析から、▽うつ病などの精神疾患に罹患▽休職中▽一人暮らし▽生活保護受給者―の4つのカテゴリーに分けて、それぞれの支援や相談に対応するための体制づくりを進める。
 (3)については、管理職に対するメンタルヘルス教育の促進や、職場におけるメンタルヘルス不調者の把握や対応を図ると同時に、不調者に適切に対応できる産業保健スタッフの養成を進める。
 
 同省ではこれら5本柱を推進していくため、地域の精神保健医療体制の構築と職場におけるメンタルヘルス対策について協議する2つの検討チームを31日に新たに設置する。
 
( 2010年05月28日 22:57 キャリアブレイン )
 
 
 

2010.5.28時事通信
自殺・うつ病対策で企業評価向上=厚労省PTが報告書公表

 厚生労働省の「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム(PT)」は28日、職場におけるメンタルヘルス対策などを盛り込んだ報告書をまとめた。長時間労働の抑制やうつ病休職者の職場復帰支援などを提言。これらに取り組むことで、企業の社会的評価も高まるとしている。
 報告書は、無職男性の自殺死亡率が極めて高いなど、自殺やうつ病に関する実態分析を踏まえ、そうしたリスクが高い人が適切に支援を受けられるよう配慮した。自殺未遂をした人へのケアといった精神保健医療改革や、リスクが高いとされる生活保護受給者への相談支援体制の強化なども提言した。(2010/05/28-19:43)

2010.5.29毎日新聞地方
自殺:対応、精神科との連携課題 医療機関、8割がケア体制不十分−−県調査 /福島

 県は、病院に搬送された自殺者と未遂者に対する救急医療機関の対応について、初の実態調査をまとめた。約8割の機関が精神的ケアの体制が不十分と回答。紹介できる精神科がないとの回答が4割近くあり、精神科との連携が課題として浮かび上がった。これを受け、県は休日と夜間に医療機関から相談を受け付ける「精神科救急情報センター(仮称)」の開設を計画している。
 
 調査は昨年6月と11月の2カ月実施。県内の全救急医療機関84カ所にアンケートを送り、83から回答を得た。期間中に自殺を図り、搬送されたのは138人で、1割に当たる14人が死亡した。
 
 精神科があるのは24機関で、常勤医がいるのは11しかなかった。院内の精神的ケア体制は64が不十分と答え、精神科に相談できる体制があるのは32にとどまった。処置後に精神科への紹介を必ず行うとの回答は28だけだった。
 
 「対応でどのような困難があるか」の質問には、「興奮していて治療が難しい」や「精神症状の評価」、「ケアを行う人的・時間的余裕がない」などの回答が多かった。県などに望むのは、「紹介先の精神科との連携を支援するシステム」が38で最も多く、次いで37が「家庭訪問など地域で継続的に支援する制度」と回答した。
 
 警察庁によると、県内の09年の自殺者数は626人で、前年より31人増。人口に対する割合は全国でワースト10位だった。【関雄輔】
 

毎日新聞 2010年5月29日 地方版

医学書院週間医学界新聞

第2880号 2010524

【座談会】

精神疾患の早期発見と
治療への道筋を探る

水野雅文氏(東邦大学医学部教授 精神神経医学)=司会
鈴木道雄氏
(富山大学大学院 医学薬学研究部教授 神経精神医学)
岩田仲生氏
(藤田保健衛生大学医学部教授 精神医学)

 Early Intervention(早期介入)とは,非特異的な精神・身体症状から,精神病状態に発展しかねない症候をいち早く発見し,適切な治療を行って早期精神病の重症化・慢性化を防ぐという一連の方針を指す。近年精神科領域においてこの早期介入への機運が高まっており,日本でも体系立った議論が始まろうとしている。

 そこで本紙では,このほど医学書院より発刊された『早期精神病の診断と治療』の監訳を担当され,日本の本領域を牽引している三氏に,早期介入の意義と重要性について語っていただいた。

大きな流れが生まれつつある,精神疾患への早期介入

水野 この数年,国際学会,特に統合失調症を対象とした学会に行くと,発表演題の3分の1ほどを早期介入に関連するテーマが占めており,その盛り上がりを感じます。この分野におけるわが国の研究の立ち遅れが非常に心配されていましたが,ようやく日本精神保健・予防学会や精神科早期治療研究会など専門の研究会も活発になってきました。

 身体疾患では早期介入はもはや当然のことですが,精神科においても,クレペリン(Emil Kraepelin)やブロイラー(Eugen Bleuler)の時代から,病気の徴候は早く見つけ治療したほうがより予後が良いと書かれており,必ずしも新しい概念というわけではありません。それが今,あらためて注目されている背景として,私は以下の3点を考えています。

 第一に,精神科治療の中心が病院から地域へ移行したことが挙げられるでしょう。地域での生活と治療を効率よく両立していくために,疾患が慢性化する前にできるだけ早く発見・治療を行うという考え方が,諸外国では当たり前になりつつあります。

 第二の背景として,非定型抗精神病薬が広く行き渡り,副作用の少ない治療が早期から行えるようになってきたこと。第三に,心理教育・認知行動療法など心理社会的側面からのアプローチが普及し,早期からフォローする体制が整ってきたことが考えられます。

 生物学的な見地からは,早期介入への機運の高まりについてはどのようにとらえられているのでしょうか。

岩田 最近では研究の発達により,かつてのクレペリンらによるカテゴリー分類を超えて,疾患の共通点が見えてくるようになりました。例えば統合失調症と双極性障害は,神経の発達の段階で何かが起きるという点で原因の根幹は共通しており,初発症状もある程度重なることが確実視されつつあります。精神疾患を包括的に考えることができれば,臨床家もより早く,一貫した治療の方策を講じやすくなります。さらに,早期の精神病症状が神経系に対し何らかの不可逆的な障害を及ぼす可能性も指摘されはじめていますから,そうしたことも,早期介入を推し進める原動力の一つになっていると思われます。

水野 治療の可能性と必要性がともに強まっているということですね。今回の座談会では,こうした生物学的側面と社会的な側面の両方から,早期介入の重要性を導き出したいと思います。

早期介入の実際的概念――「早期精神病」とは何か

水野 早期介入の実践のためまずおさえておきたいのが,“Early Psychosis”, つまり「早期精神病」という言葉です。お二人はこの概念について,どのように理解しておられますか。

鈴木 私は,初回エピソードが発症して間もない時期のPsychosis(精神病状態)に加え,少し遡った前駆期も包含する概念ととらえています。初回エピソード精神病は統合失調症が中心ですが,精神病症状を伴う気分障害なども含まれ,初期に診断を確定するのは困難なことが少なくありません。前駆期にあることが疑われる場合も,その後の経過は一様ではありません。「もう少しフォローを続ければ病名がわかりそうだけれど,今はとりあえず早期精神病としてまとめておこう」というような,特異的な診断がまだはっきりとつかない状態像を包含しており,診断学的にはあいまいな概念だと感じます。

 ただ,従来しばしば行われていたように,特異的な診断の絞り込みができるまで治療を待っていては遅きに失する場合もあります。その点では,臨床に則した前向きな視点から生まれた実際的な用語だと思います。

岩田 臨床現場にいると,初診の段階で,もう何年も前から何らかの症状があったと明かされる患者さんが非常に多いと感じます。病気の発症そのものは,診断がつくかなり前にまで遡れるということです。そうした,漠然としているけれど「一風変わった精神状態を呈する」状態を理解し,できるだけ早いうちに手を差し伸べることが現在の精神医学にあらためて問われています。そしてそのためのツールとして,早期精神病という言葉を有効に使えるのではないかと考えています。

水野 では,早期精神病治療に関する新しい知見やその臨床応用の可能性について伺いたいと思います。まず,脳画像研究の分野ではいかがですか。

鈴木 前駆期・初回エピソードといった病初期に脳に何らかの変化が起こることについては,脳構造画像の研究でもエビデンスができつつあります。

 統合失調症では,脳室の拡大や脳灰白質の減少など軽度の脳構造変化が認められますが,こうした変化は出生前や生後早期の発達障害に起因しており,進行するものではないと従来は考えられていました。しかし近年,初回エピソードの時期に前頭葉や側頭葉を中心に,特に上側頭回などでは年間5%程度の,かなり劇的ともいえる灰白質の減少が生じることがわかってきました。これは,臨床的にさまざまなことが起こって進行する病初期に一致して,脳の変化も進行していくことを示唆しています。

水野 前駆期や精神病発症リスクの高い状態を対象とした研究も盛んですね。

鈴木 はい。そのような状態にある人たちをフォローすると,一部は実際にPsychosisを発症するのですが,発症した人は発症しなかった人に比して,同じような症状を呈している発症前の時期から,より多くの脳部位で灰白質が減少していることが報告されています。また発症の前後に進行性の変化が起きており,上側頭回などでは初回エピソードのころと同程度の変化が生じていることも報告されています。このように,脳の進行性変化が明らかなPsychosis発症の前から起こり,病態の進行に関与している可能性が高くなっていると言えます。さらに,そのような脳画像所見から,将来のPsychosisの顕在発症を予測しようという研究も少しずつ始まってきています。

水野 そのような脳の変化を抑制するための研究は進んでいるのでしょうか。

鈴木 最近では,早期に使用することで,脳の進行性変化をある程度抑制・改善できる可能性のある抗精神病薬についての知見も出てきています。また,まだほとんどエビデンスはありませんが,神経保護作用や抗酸化作用のある薬,あるいは免疫を安定させる薬による脳の進行性変化の抑制,または発症自体の予防が可能か,といった研究も行われています。必ずしも悲観的になる必要はなく,今後の発展に注目すべきだと思います。

■遺伝要因解析のベースが作られつつある

水野 遺伝研究はどのように進んできていますか。

岩田 統合失調症においても双極性障害においても,ようやく研究が深まってきたと実感しています。はたから見ていると,遺伝研究はあまり進んでいないように見えるかもしれないのですが,実際には,まだ解釈されていないデータが大量に集まってきており,それを読み解くのに時間がかかっている状況と言ったほうがよいと思います

水野 統合失調症や双極性障害の原因の8割を遺伝要因が占めるといわれますが,その実態が次第に明らかになってきているということですね。

岩田 はい。少し詳しくお話しすると,統合失調症の場合,300800個ほどの疾患感受性に関連するSNP1塩基多型)が存在することが予測されており,その組み合わせは個々人によってまったく違います。それぞれのSNPの影響の程度は1.1倍,1.2倍などと非常に小さいのですが,数百個がさまざまなバリエーションで存在することにより,それが遺伝要因解析のベースとなります。

 もう1つわかってきたのは,数千−数百万塩基の単位で,ヒトゲノムの複写数の異なる部分(コピー数多型:CNVs)があることです。だいたい1人あたり,非常に大きなサイズ(百万塩基)のものだけ見ても,1個はあります。CNVsが人間の形質に与える影響はかなり大きく,場合によっては10倍以上の確率で発症しやすくなることが明らかになってきています。数百個のSNPと数個のCNVによって,その人自身の疾患が理解される。それが今,遺伝研究が到達している精神疾患への考え方です。

 さらに,SNPCNVから成る基礎データは生まれてから死ぬまで変わらない上,完璧に測定できます。ですからこのデータをベースに,環境要因との関連や効果的な介入方法を突き詰めていけば,場合によっては生まれたときから,その人にとって最も健康的でいきいきと人生を送れるプログラムを作ることができるのではないか,と思っています。

水野 従来の遺伝子治療のイメージとは,まったく異なるものになりそうですね。

岩田 そうですね。数十年後には,例えるならフェニルケトン尿症へのアプローチのように,ある栄養素が足りなくなることがわかればそれを食べる,あるいはビタミン剤を飲むといったかたちで,患者さんへの早期介入を考えていけるかもしれません。

DUP短縮に向けた課題

水野 早期介入を進める上で解決しなければならない大きな問題が,陽性症状発現後の治療開始の遅れです。その客観的指標がDUPDuration of Untreated Psychosis:精神病未治療期間)という概念で,DUPが長いほど予後が悪いことは多くの報告で示されています。今,日本におけるDUPは平均しておよそ20か月と言われており,精神病状態の始まりから受診まで,かなり長い期間放置されていることがわかります。また,発症から25年間がCritical Period(治療臨界期)と呼ばれ(図),長期の予後改善をめざすリミットとされていますから,この期間内に効果的な治療を行うためにも,DUPの短縮は重要です。DUP12年に及んでは,残る治療チャンスはあと23年,すなわち初回エピソードでの治療を徹底的に行い再発を防がないと,予後の改善には至らないのです。

図 統合失調症の経過と介入

 DUPが長引く背景には,患者さんが発症してもすぐに精神科を受診しなかったり,あるいは身体症状を訴えて他科に行ってしまったり,といった現状があります。

岩田 本来,患者が受診しないならば医師が地域に出て行けばよいのですが,そのためには,現在の日本ではたくさんの時間とコストがかかります。コストが重視される市中病院やクリニックに勤める医師は,その施設から一歩も出なくなってしまう。結局,患者さんが自ら病院まで出向いてくれることを待つしかなく,治療の遅れにつながっているのではないかと思っています。

鈴木 私たちが最近少しずつ始めているのが「精神保健福祉センター」など医療機関以外の精神保健関連施設に医師や心理士が出張することです。医師による治療が必要な状態にある方も,精神科医療機関をいきなり受診するのはやはり敷居が高く感じるでしょうし,実際に受診が進んでいない現状があります。しかし精神保健福祉センターのような中間的な施設には,治療を受けるべき人から健康な人までいろいろな状態の人が訪れますから,あまり抵抗なく相談に来ることができます。コストの面から考えても,そうした現行制度の拡大も方法の1つではないでしょうか。

水野 医師が自ら施設から出て,介入のチャンスを増やすということにはまったく同感です。しかし一方で,すべての人が医師による治療を受けるまでに「機が熟している」わけではなく,そこに,精神科医療サービスをどこまで届けるか,どう届けるかというセンシティブな問題があります。専門家以外の方々とも役割を分担して,より適切な治療を提供していかなくてはならないと思うのですが,いかがでしょう。

岩田 普段は教師やカウンセラーなどが本人や家族の相談を受け,場合によっては医師が出向いて話をするという,振り分けシステムを地域ごとに展開できればよいですね。高齢者の介護などでも同様ですが,必ずしもいつも医師が往診していなくても,いざというときにすぐ医療にアクセスできるシステムが今後必要になると思います。英国などでは,既にそうしたシステムが稼動していると聞いています。

いつでも安心して相談できる

岩田 若いうちに精神病を発症すると,社会性の喪失という点で人生に非常に大きな影を落とすことになります。異性と付き合うとか就職活動するといった,社会性を学ぶための多くの機会を,病気ですべて失ってしまう。ある程度落ち着いたときに人生をやり直そうとしてもたいていは困難で,取り返しがつきません。

 そうした子どもたちに接するたびに,できるだけ早期のサポートが大切であることを痛感しています。

水野 若い方々への予防的介入に関して,どのような手段が有効でしょうか。

岩田 中学生の娘やその友達を見ていると,子どもたちにとっては「いつでも,安心して」相談できること,つまり友達のように,時間を気にせず悩みを話せることが第一だと感じます。先ほど鈴木先生もおっしゃっていましたが,抵抗なく相談できることはとても大切なのです。

 そうしたことから,24時間対応のコールセンターの設置が最も効果的だと私は思っています。メールや携帯サイトでもよいのですが,まず地域で,医療機関をベースにそうした窓口を設置し,やがては全国に広げていけたらと考えているところです。

鈴木 そうしたシステムを構築するためには,どこから動いていけばよいと思われますか。

岩田 システムを普及させる上で教育者の方々の協力は欠かせませんから,まずは地域の教育委員会としっかり議論する必要がありますね。教育委員会を通して,教師,養護教諭,スクールカウンセラーなど現場の方々にきちんと精神病に関する認識を持っていただくことが必要だと思います。

鈴木 実際に病気になっても,周囲の親や教師がなかなか病気を見抜くことができないのが現状ですよね。発症から何年も経って悪化しきってから,誰かに助けを求めるというケースはまだまだあります。ここで大きく関与してくるのは,専門家以外の一般の人に精神病に関する知識が乏しいという現状だと思います。知識があれば,より早く「これは病気の兆候かもしれない」と気付くことができ,それがDUPの短縮にかなり寄与することになるはずです。

水野 教育現場側のニーズの高まりは実感されますか。

鈴木 メンタルヘルスの問題そのものには,今非常に関心が集まっていると思います。ただ,教育現場ではどちらかというと発達障害の話題が多く,早期精神病については関心が乏しいという印象を受けています。

 現在の日本では,精神医学,特に統合失調症などの精神病性障害に関して教育を受ける機会は,子どものころにはほとんどありませんよね。

岩田 ええ。海外には小学校から統合失調症のことを教えている国が多数あります。日本においては,中学校の保健体育の教科書にストレスやうつは載っていますが,統合失調症に関してはおそらく一切記載がないでしょう。しかしどちらかといえば統合失調症のほうが本人へのダメージも大きいし,好発年齢も低く,中学生くらいでPsychosisを経験する子どもは必ずいるのが実態です。精神病というといまだに一歩退いて接している感もありますが,そこはぜひ,手を差し伸べてあげてほしいと思います。

水野 日本の精神保健のシステムをもう少し均てん化する,というとスケールが大きい話になりますが,医師に限らず,教育現場で働くさまざまな職種の人がもう少し精神保健や精神医療についての知識を深めた状態で,子どもたちの話を受け止められるようになれば理想的ですね。

 お話を進めてきて,バイオロジカルな障害を最小限にする上でも,そうした研究の進展のみならず,社会資源やシステムの整備がいかに重要であるかが実感されました。

■医師にもさらに認識を深めてほしい

水野 これまで,治療する側と治療を受ける側のかかわり方について議論してきましたが,われわれ医師の中でも,早期介入の重要性について認識を高める必要がまだまだあると感じています。この座談会の出席者は皆,臨床家であると同時に大学の教員でもありますが,今後,若い医師にどのように教育を行っていけばよいでしょうか。

 一つ例を挙げますと,私たちのところではユースクリニックと称してARMSAt-Risk Mental State:精神病発生危険状態)の患者さんの専門外来を開いています。そこで若手が診察に陪席したり,「イル ボスコ」という早期の患者さんを対象とするデイケアでさまざまなプログラムに一緒に参加する体験をしています。成書では伝えきれない,患者さんの苦痛や不全感にいち早く気付く訓練が必要だと思います。

鈴木 先ほどお話しした精神保健福祉センターと共同での「こころのリスク相談」と,ARMSに特化した専門外来である「こころのリスク外来」を,水野先生の東邦大学や東北大学精神科などに倣って,数年前から実施しています。早期介入というのは,まず精神疾患の長期予後改善のための臨床実践ですが,臨床研究の場としても重要であると位置付けています。大学の若い医師に,診療とともに研究にも取り組んでもらい,そこから新しいエビデンスを出していくことができれば,はずみがつくだろうと思っています。

岩田 私のところでも,ARMS外来を設置しようと今準備を進めているところです。このような取り組みは,発症リスクの高い状態にある方のお話をじっくり聞き,必要に応じて検査も行うという,ある意味不採算なので大学でしか行えないものですよね。しかしこうした診療がきちんと行われていて,結果に結びついていることを学生や若い医師が一度認識すれば,その後単科の精神病院や総合病院で働いたり開業したときにも,施設にこもってしまうことなく,自分から何かしようと動くきっかけになるかもしれないと思っています。

鈴木 同感です。まずは若手医師に早期介入の重要性を認識してもらい,一人前になった後,それぞれの立場で少しずつ実践してもらえるように,これから流れをつくっていくことが大切ですね。

水野 早期介入への流れを盛り上げるという意味では,学会のさらなる活発化も期待していきたいところです。本年の第14回日本精神・保健予防学会[2010121112日 於:灘尾ホール(東京都千代田区)]では,鈴木先生が会長をお務めになりますね。

鈴木 はい。テーマを「早期介入――多様な視点からのアプローチ」とし,早期介入の実践について議論し知識を修得する機会として,医師だけでなく多職種の方に参加していただける会にしたいと思っています。早期精神病については,心理社会的な視点と生物学的な視点の双方から理解を深められればと思います。また,従来この学会があまり取り扱ってこなかった領域である認知症や,高齢者の精神的な問題に対する早期介入についても検討してみることが,若者に対する介入にも役立つのではないかと思い,関連プログラムも検討しています。

水野 確かに精神科の早期介入というと,今までは統合失調症あるいはPsychosisをモデルとして考えられてきましたが,その枠にとらわれることなく柔軟に考えていくことで,よりよい解決が導けるかもしれません。精神保健全般で,スティグマに臆せず,早期に受診・治療する機会が広がっていくよう,今後も取り組みを進めていきたいと思います。本日はありがとうございました。

(了)

※「介入」という日本語には侵襲感があるとして,実際の意味をとり「早期発見・早期治療」と解題すべきという視点もあるが,今回は議論をスムーズに進めるため「介入」を使用した。

(本紙編集室)

水野雅文氏
1986
年慶大医学部卒。同大大学院修了後,イタリア政府給費留学生,パドヴァ大心理学科客員教授。帰国後,慶大医学部精神神経科講師,助教授を経て,2006年より現職。東邦大大森病院精神神経科「イル ボスコ」などを通じ,統合失調症患者への早期介入,早期治療に取り組む。International Early Psychosis AssociationIEPABoard Member,日本精神保健・予防学会理事長。編著に『統合失調症の早期診断と早期介入』(中山書店)など。

 

鈴木道雄氏
1984
年金沢大医学部卒,88年同大大学院修了。91年富山医科薬科大医学部精神神経医学講座。9495年スウェーデン・カロリンスカ研究所への留学を経て,95年富山医科薬科大講師,98年同大医学部精神神経医学講座助教授。2007年より現職。統合失調症の脳画像による病態生理解明を主な研究テーマとしている。富山における早期介入サービス(CAST)に取り組む。

 

岩田仲生氏
1989
年名大医学部卒。93年同大大学院修了,医学博士。93年北医療生協北病院,94年名大医学部精神科を経て,96年には米国国立衛生研究所にvisiting fellowとして留学。98年,藤田保衛大医学部精神科講師。2003年より現職。分子精神医学,遺伝精神医学,薬理遺伝学を専門とする。LoveLibertyPsychiatry(愛,自由そして精神科)を教室の基本理念に掲げている。

 


2010.5.25共同通信

新しい不眠症治療 
精神療法で薬依存軽減 
人材不足、普及に課題も

 不眠症治療に新しい考え方が登場している。現在の主流は睡眠薬の処方だが、使い方や依存の問題には気を付ける必要がある。薬の量を減らすため、精神療法の一種「認知行動療法」が役立つと最近考えられるようになった。ただ、人材不足もあって普及には課題が多いのが現状だ。
 ▽不安抱え
 「慢性の不眠症患者には、昼間から『今夜は眠れないんじゃないか』と不安を抱いて過ごす人が少なくない」と話すのは、日本大医学部 の内山真教授(精神医学)。
 不安を抱えたまま寝床に入ると感情が高まって目がさえ、余計に眠れない悪循環が起きる。「眠れない不安を持つ人に『明日から規則正しい生活をしなさい』とだけ言っても逆効果。ただ以前は患者にそうした助言をする例が少なくなかった」という。
臨床心理士で日本大医学部助手の宗沢岳史さん(人間科学)は「苦し紛れに寝床でテレビを見たり本を読んだりすると、さらに事態を悪くすることがある」と話す。

 本来は「眠る場所」だった寝床が、気持ちの中で「眠れない苦痛を伴う場所」「起きて活動する場所」と条件付けられるため、入眠障害や中途覚醒の原因になり得る。
 ▽ほどほどが一番
 こうした悪循環への対処法について、内山教授は「無理に眠ろうとしないことだ」と指摘する。
 いったん寝床から抜け出し、落ち着いた照明で趣味などを楽しんで過ごす。「眠くなったら寝床に就く」という気持ちなら、不安にさいなまれることも少ない。
 毎日決まった時刻に寝床に入ろうというこだわりから抜け出すことも重要。睡眠時間が足りないと感じても、朝は決まった時間に起き、太陽の光をたっぷり浴びる。
 「不眠を訴える人は、睡眠へのこだわりから長く眠ろうとしすぎる場合が多い」と、内山教授。睡眠時間と糖尿病、高血圧、高脂血症などとの関係を調べた各種の疫学研究では、7時間前後が最も病気のリスクが低いとの報告が出た。「健康維持に寝過ぎは逆効果。ほどほどの睡眠時間が一番だ」
 ▽対処法を学ぶ
 「眠れなければ寝床から離れる」といった対処法は、強い不安やこだわりによって誤って学習された行動を修正する認知行動療法の考え方に基づいている。治療者との話し合いを通じて、患者が自分の考え方の問題点を直視し、適切な考え方に基づいて対処法を学んでいく手法。欧米ではここ10年ほどで不眠症や不眠不安に有効との見方が主流になった。
 宗沢さんは国内では数少ない不眠症の認知行動療法の研究者。これまで数百人にカウンセリングを実施した経験を持つ。

 ▽集団療法
 宗沢さんらは睡眠薬への依存に悩む患者約120人に、段階的に薬を減らすためのカウンセリングを実施。その結果、41・5%が服用をやめることに成功し、薬の量を半分以下に減らすことができた20・3%と合わせると、61・8%が依存から脱することができた。
 不眠症への認知行動療法は新しい分野のため、専門知識を持つ人材が少ない。1人の患者に要するカウンセリング時間が1回に数十分から1時間と長く、大勢には対応できない。保険も適用外で、正規の治療プログラムを設けている医療機関は今のところ国内にない。
 「今後の普及に役立ちそうなのは集団療法だ」と、宗沢さん。20人ほどの患者が互いに討論しながらカウンセリングする手法を試みたところ、十分な効果が期待できることが分かった。宗沢さんは「少しでも薬に頼らない不眠症治療の可能性を広げたい」と話す。(共同通信 吉村敬介)(2010/5/25) 


患者らが精神医療のあり方について提言
< 2010年5月29日 0:46 >日テレニュース
 統合失調症やうつ病など精神疾患で病院を受診する人は、年間で300万人に上り、精神疾患はがんや心臓疾患と並ぶ国民病だとして、患者と家族、医師が精神医療のあり方などについて国への提言をまとめた。
 
 提言をまとめたのは、都立松沢病院・岡崎祐司院長を座長とする「こころの健康政策構想会議」。患者や家族、医師ら計90人が2か月間かけてまとめた「精神保健医療改革への提言」を28日夕方、長妻厚労相に提出した。
 
 提言では、統合失調症やうつ病の患者を適切に支援、治療しないと、経済的な損失にもつながるとして、国に「精神医療中期戦略」を早急に策定し、精神疾患対策基本法を制定するよう求めている。具体策としては、地域の保健所に「こころの健康推進チーム」を作って病院に来られない状態の患者や家族を訪問する制度を作るよう求めている。また、精神科の医療体制についても医師に看護師やカウンセラーも加えた「チーム医療」を進めることで薬に頼るのではなく、カウンセリングなども含めた総合的な支援に変えるべきだなどと提言している。
 
 厚労省は、この提言も参考にして、患者や医師らによる検討会議を正式に発足させ、来週から議論を始めることにしている。
 
 
医学書院週間医学界新聞
第2880号 2010年5月24日
こころの健康政策構想会議が発足
 
 年間の自殺者が3万人を超えるなど国民のこころの健康の危機が懸念される今,精神保健医療改革を実現すべく,当事者やその家族,臨床家や研究者らが集い,ビジョンと具体案を検討するこころの健康政策構想会議(座長=都立松沢病院・岡崎祐士氏)が 4月3日に発足した。全8回の会議を経て,5月末には最終起草案が厚生労働大臣に提出される予定となっている。本紙では,都立松沢病院(東京都世田谷区)で4月10日に行われた第2回会議のもようを取材した。
 第2回の会議では主にうつ・自殺対策が話し合われた。まず自殺未遂の当事者から,早期のサポート・カウンセリングの必要性が訴えられた。次に河西千秋氏(横市大)が,同大救命救急センターにおける自殺未遂者への全例介入について報告し,良質な精神保健・福祉モデルの導入が,自殺予防に効果的であると話した。勝又陽太郎氏(国立精神・神経医療研究センター)は,自殺既遂者の事例から年齢別にその特徴・問題点を分析。中高年の自殺の背景としてアルコール依存による借金等の社会的問題などを指摘した。日本司法書士会連合会からは木下浩氏が,多重債務・過払いなど経済苦による自殺の予防・遺族救済について報告。うつ病に関しては,社会復帰をめざす当事者から「ちょっとした作業に取り組めたり日中を過ごせる場所があれば」との声が聞かれた。最後に大野裕氏(慶大)がセッションを総括し,自殺予防について死亡診断書の活用などデータ面での環境整備と地域での精神障害者支援の必要性を提言し,うつ病の対策としては治療ガイドラインの策定と薬物療法のアドヒアランスの充実,そして認知行動療法の均てん化を喫緊の課題とした。

障害者支援:つなぎ法案、議員立法で今国会成立へ
2010年5月26日 2時30分 更新:5月26日 2時30分毎日新聞
 
 福祉サービス利用の原則1割を自己負担する障害者自立支援法の廃止を巡り、新制度開始までの暫定的な現行法改正法案が、超党派による議員立法で今国会に提出され、成立する可能性が強まった。障害が重いほど負担も重くなる「応益負担」から、支払い能力に応じた「応能負担」にし、発達障害を同法の対象と明記するなどの内容。
 
 現政権は13年8月までに自立支援法を廃止し、新たな障害者福祉法制度を開始させる予定だが、障害者団体から「それまでの間どうするのか」との懸念の声が上がっていた。
 
 改正法案は「障がい者総合福祉法ができるまでの間の障害者自立支援法改正案」(仮称)。障害程度区分によるサービス内容の決定前に、本人の希望を反映させる「セルフケアマネジメント」(仮称)の仕組みを導入するほか、仕事などをしながら少人数で暮らすグループホームの障害者に対する家賃助成なども盛り込まれる見込み。【野倉恵】

毎日新聞 2010年5月21日 地方版
 

差別条項:「賃貸借契約書に」 障害者団体、業者に撤廃要望 /愛知

 県内の障害者と家族らの26団体でつくる「愛知障害フォーラム」(事務局・名古屋市昭和区)が20日、賃貸借契約書に精神障害者、知的障害者の人権侵害にあたる条項があったとして、市内の総合建設会社に条項撤廃を求める要望書を提出した。
 
 要望書などによると、住居を探していたのは、大阪府の精神障害を持つ夫と、身体障害のある妻。契約を解除し、明け渡しを請求できるとした条項「禁止事項と無催告解除」の一つに、「契約者や同居人、関係者で精神障害者、またはそれに類似する行為が発生し、他の入居者、または関係者に対して財産的、精神的迷惑をかけた時」とあるのが差別と指摘している。
 
 フォーラムは、条項が精神障害者らに対する偏見や誤解、無理解に起因するものとして、速やかな撤廃などを求めた。
 
 要望書を渡した名古屋市精神障害者家族会連合会の堀場洋二会長は「入院から地域生活へという流れになっているのに、これでは入り口で精神障害者がはねられてしまう」と話し、地域で安心して暮らせる場の必要性を訴えていた。【岡村恵子】
 
毎日新聞 2010年5月21日 地方版
 

2010.5.22共同通信
精神疾患4学会の共同宣言要旨 
 精神疾患4学会の共同宣言要旨は次の通り。
 
 一、うつ病をはじめとする精神疾患は、先進諸国ではがんや心臓疾患と並ぶ三大疾患で、その対策は国家政策の最優先課題。わが国でもがんに次いで重大な社会的損失をもたらしており、国民病というべき疾病である。
 
 一、うつ病に対する正しい知識が普及していないため、国民の多くが適切な治療を受けられず、発見・治療が遅れている。国家的課題として啓発に取り組むべきだ。
 
 一、自殺や長期休務など重大な問題が生じている職域でのメンタルヘルス対策、うつ病発症が若年化している学校におけるメンタルヘルス教育の導入が必要だ。
 
 一、診療報酬体系の見直しや精神療法、職場復帰プログラムなど薬物療法以外も保険診療に組み込めば、質の高い医療が提供できるようになる。うつ病センターを設置すれば、専門的治療と臨床研究が推進される。対うつ病10カ年計画を国家レベルで策定すべきだ。
 
 一、うつ病研究が進展し、早期発見や治療法が確立すれば、偏見も解消され、自殺者も大幅に減らすことができる。
 
2010/05/22 19:57   【共同通信】
 

2010.5.22共同通信
うつ病、国家的課題として啓発必要 精神医療4学会、初の提言
 日本精神神経学会など4学会の理事長らは22日、広島市で記者会見し「うつ病について国家的課題として啓発に取り組むべきだ」とする提言をまとめた。同日まで開かれていた日本精神神経学会総会で共同宣言として採択した。うつ病問題について、精神医療にかかわる学会が公式見解を出すのは初めて。
 
 4学会は、うつ病などの精神疾患が、がんや心臓疾患と並ぶ三大疾患として、先進諸国で最優先課題となっている点を重視。国内でも早急な対策を講じるべきだとの認識で一致した。
 
 共同宣言は、うつ病ががんに次いで重大な社会的損失をもたらす「国民病」と指摘。「国家的課題として啓発に取り組むべきだ」と訴えている。
 
 自殺や長期休務が社会問題化している職域に対し「発症予防や早期発見、再発を予防した上での職場復帰が必要」と主張。職場に応じたメンタルヘルス体制や教育を行うべきだとしている。
 
 若年化傾向にある発症の現状を踏まえ、学校でのメンタルヘルス教育の導入や児童精神科医の増員も求めている。
 

2010/05/22 22:43   【共同通信】
 
2010.5.22毎日新聞
うつ病:「国レベルで対策を」学会が共同宣言

 日本精神神経学会など、うつ病の診療・研究にかかわる関連4学会は22日、広島市で会見し、「対うつ病10カ年計画」の策定など国家レベルでの対策を求める共同宣言を発表した。年間3万人を超える自殺者の背景に大きく関与するうつ病を「がんに次ぐ重大な社会的損失をもたらす疾病」と位置付け、治療と研究、啓発に緊急に取り組むよう求めている。うつ病問題で医療を担う学会側が公式見解をまとめたのは初めて。
 
 他の3学会は、日本生物学的精神医学会、日本うつ病学会、日本心身医学会。同日まで広島市で開かれた日本精神神経学会の総会後、発表した。
 
 共同宣言は、うつ病を含む精神疾患で働き盛りの貴重な人材を失う結果になっていることを重視。うつ病をがん、心臓病と並ぶ「3大疾患」と位置づけ、「国民病」として啓発活動に力を入れるよう求めた。
 
 そのうえで、専門的治療と臨床研究を進める「うつ病センター」の設置や、診療報酬体系の見直しによる人的資源の充実などを図るよう提言。産業精神衛生の専門家の育成や、若年層からの対策として児童精神科医の養成にも力を入れることも盛り込んだ。数万人規模を対象とした大規模なプロジェクト研究などを「10カ年計画」として国家レベルで取り組む必要性を強調した。
 
 学会は、共同宣言の関係省庁への提出を検討している。日本生物学的精神医学会の武田雅俊理事長は「うつ病の専門家がレベルを上げるのはもちろん、世に広く知ってもらい、政策を動かしたい」と話した。【井上梢】
 
 
 
 
 
 
 

「うつ病は国民病、対策を」 関連4学会が共同宣言
2010年5月22日20時21分朝日新聞
    
 日本精神神経学会など、うつ病の治療・研究にかかわる4学会は22日、広島市で総会を開き、自殺者が年間3万人を超す現状を改善するため、職場や学校でのうつ病対策や、うつ病10カ年計画の策定を国などに求める共同宣言を採択した。厚生労働省など関係省庁にも送付する。
 
 宣言は、自殺者と関係が深いうつ病を国民病ととらえ、正しい啓発活動と啓発組織の設立を提案。職場や学校でのメンタルヘルス教育の普及や、それを担う産業精神衛生の専門家や児童精神科医らの養成、医療機関での職場復帰プログラムの普及など、対策を進めるよう求めた。
 
 
 
 
 
2010.5.22読売新聞
「脳バンク」宣言…「うつ病」手探り診療脱却を

 日本精神神経学会など4学会は22日、うつ病に国を挙げた対策を求める共同宣言をまとめた。広島市で開かれた総会で公表した。
 

 うつ病をがんや心臓病と並ぶ3大疾患と位置づけ、自殺につながるなど「重大な社会的損失をもたらす病気」と指摘している。
 
 うつ病患者の脳を死後に提供してもらう脳バンクの拡充により、患者の脳で起きていることや抗うつ薬の効果を分析し、科学的な診断や治療法を確立するよう求めている。
 
 ◆脳バンク=うつ病など精神疾患の患者の生前の同意に基づき、死後に脳を提供してもらって科学研究に生かす仕組み。国内では福島県立医大が1997年から生前登録を受け付けており、これまでに約30人分の脳の提供を受けた。脳は半分を冷凍保存、もう半分をホルマリンで保存し、遺伝子検査や顕微鏡観察に用いる。脳提供後の遺体は見た目が不自然にならないように戻して、遺族に返す。
 
(2010年5月22日20時26分  読売新聞)
 
 
 
 
 

うつ病対策、国の最優先課題 '10/5/23 中国新聞
 
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 日本精神神経学会など精神医療関連の4学会は22日、広島市中区の広島国際会議場で記者会見し、国にうつ病対策の推進を求める共同宣言を発表した。うつ病が主要因の自殺が増加して社会問題となる中、学会が初めて対策を提言した。
 
 共同宣言は、うつ病をがんに次ぐ重大な「国民病」と定義する。毎年3万人を超える自殺は、うつ病の対策推進で大幅に減らすことが可能だとして、「国家政策の最優先課題」と位置付ける。
 
 専門医の不足で医療現場や学校、職場で手厚いメンタルヘルスが実施できていない実情を訴え、大学で専門課程を増設する必要性を指摘。他の診療科に比べ診療報酬が低い問題点を挙げた。
 
 国家レベルで治療法の研究を高める「対うつ病10カ年計画」の策定を国に求めている。より専門的な治療を進めるため、うつ病に特化した専門医療機関の設置も提言する。
 
 
 
 
 
 
精神神経学会が広島市で開幕 '10/5/21 中国新聞
 
 日本精神神経学会の学術総会が20日、広島市中区の広島国際会議場とアステールプラザの2会場で始まった。22日まで、全国の約5千人の医師や看護師が、研究成果を発表し合い、討議を重ねる。
 
 初日は、総会会長で広島大大学院の山脇成人(しげと)教授(精神神経医科学)が講演した。警察庁の統計を基に、自殺者数の推移について「昨年まで12年連続で年間3万人を超え、動機の半数以上をうつ病などの健康問題が占めている」と指摘。精神医学の役割の重さを強調した。
 
 この日は、認知症や大学院教育をテーマにしたシンポジウムもあった。
 
【写真説明】講演などで精神医学のあり方を探る学術総会

2010.5.20共同通信
障害者支援法改正案成立へ 所得に応じた負担に
 障害福祉サービスの利用を原則1割負担とした障害者自立支援法をめぐり、与野党は20日、サービス量に基づく「応益負担」から、所得に応じた「応能負担」に見直す改正案を今国会で成立させる方向で協議に入った。
 
 改正案は昨年3月に前政権下で政府が国会へ提出したものとほぼ同じ内容。政府案は昨年の衆院解散で廃案になったが、今年4月に自民、公明両党が議員立法で提出。今後、民主党が対案を提出し、与野党が修正協議。衆院厚生労働委員会の委員長提案として来週にも成立を図る方向。
 
 鳩山政権は2013年8月までに自立支援法を廃止し、新たな「障がい者総合福祉法」(仮称)を施行させる方針だが、政府、与党は今回の改正案を「つなぎ」として理解を得たい考え。
 
 改正案は、成立すれば公布日から順次施行し、12年4月に完全実施となる。仕事などをしながら少人数で暮らすグループホームやケアホームの障害者に対する家賃助成を新設。判断能力が不十分な知的障害者らの権利を守る成年後見の利用支援を市町村の必須事業に格上げする。
 
2010/05/20 11:42   【共同通信】

引きこもり「精神障害に合わせ支援を」 厚労省研究班
2010年5月19日23時4分朝日新聞

    
 半年以上にわたって家にとどまる「引きこもり」への対応を定めたガイドライン(指針)を厚生労働省の研究班が19日に公表した。引きこもりの人の大半が、統合失調症などの精神障害を患っていることを指摘。診断を踏まえて当事者に合った支援の必要性を強調している。
  指針は、引きこもりを「社会的参加を避け、原則6カ月以上、家庭にとどまり続ける状態」と定義。4134世帯を対象に調査した結果、23世帯に10〜40代の引きこもりを確認。全体では約26万世帯にいると推計した。
 
 研究班が184人の引きこもりの人を分析した結果、149人は精神障害と診断されていたことが判明。そのうち統合失調症などで投薬治療を必要としたり、発達障害などで福祉サービスを必要としたりする人がいずれも3分の1程度を占めた。診断にもとづく精神障害の実態を明らかにしたのは初めてという。
  引きこもりの長期化を防ぐため、早期の相談・受診を促し、行政に対して家庭訪問するなど踏み込んだ支援を求めている。
 
 
読売新聞
「引きこもり」の8割、うつ病などの精神疾患

 厚労省研究班 半年以上、就学や就労を行わないなどの理由で、相談を受けた自治体の担当者が「引きこもり」と判断した人たちのうち、少なくとも約8割が精神疾患を抱えていることが19日、厚生労働省研究班の調査で分かった。
 
 調査は、2007年4月〜09年9月に、山梨県やさいたま市など4県1市の相談窓口で「引きこもり」と判断された16歳〜35歳の男女184人が対象。相談を受けた担当者の報告などから、精神科医が149人を統合失調症やうつ病などと診断した。
 
(2010年5月20日17時20分  読売新聞)
 

2010.5.20毎日新聞
ひきこもり:相談者8割、精神疾患 「早期の受診が必要」−−厚労省調査

 ひきこもりに関する厚生労働省研究班は、自治体の相談窓口を訪れた人の約8割が、統合失調症などの精神疾患があると診断されたとの調査結果をまとめた。この結果を受け厚労省は19日、01年度作成の専門機関職員向け指針を改訂。「確定診断前の統合失調症が含まれている可能性は低くないことに留意すべきだ」とし、長期的な関与と精神疾患の有無の判断が必要としている。
 
 調査は07〜09年度に岩手、埼玉、山梨、石川、和歌山県の精神保健福祉センターなどを訪れた16〜37歳の184人を対象に実施。精神科医や精神保健福祉の専門職員が複数で診断し149人(80・9%)に精神疾患が確認された。診断結果は、人格障害や適応障害など51人(34・2%)▽統合失調症など薬物療法が必要な人49人(32・9%)−−などだった。
 
 過去の調査から、研究班は全国のひきこもりを26万人と推計。研究代表者の斉藤万比古・国立国際医療研究センター国府台病院精神科部門診療部長は「ひきこもりの長期化を防ぐためには、早期の受診や相談が重要。就労機会の提供など社会的支援に加え、精神疾患がある場合は特性に合わせた指導プログラムも不可欠だ」と話している。【佐々木洋】
 
毎日新聞 2010年5月20日 東京朝刊
 

2010.5.20共同通信
4人に1人「治療必要」 引きこもり184人を調査

 「引きこもり」に悩み精神保健福祉センターに相談に訪れた人のうち、16〜35歳の184人について厚生労働省研究班が原因を調べたところ、ほぼ4分の1に当たる49人が統合失調症などの精神疾患と認められ「薬物療法などの治療が必要」と診断されたことが19日、分かった。
 
 厚労省は「『引きこもり』とされる人の中には精神疾患と診断されず、具体的な治療に結び付いていない人がいる恐れがある」と指摘。こうしたケースを見落とさず、適切な医療支援につなげるため、相談機関や家族に向けた新たなガイドラインを同日までに策定した。
 
 調査対象となった184人は社会参加を避けて6カ月以上、自宅などにとどまっている人で、岩手、埼玉、山梨、石川、和歌山の各県にある精神保健福祉センターを訪れた。薬物療法などの治療が必要と診断された49人以外の135人の内訳は、「広汎性発達障害で精神療法的なアプローチが必要」48人、「適応障害などで心理、社会的支援が必要」51人、「特定不能な精神障害」1人、「情報不足で確定診断できず」35人だった。
 
 新ガイドラインは、引きこもり者への支援について、当初は個人的に心を開いてもらうことからスタートし、集団療法、就労、就学へと段階的につなげていくことが大切としている。
 
2010/05/20 00:29   【共同通信】
 
広汎性発達障害(2008年4月7日)読み書きや計算など特定分野の習得が著しく困難な学習障害(LD)や、注意力や多動性をコントロールできない注意欠陥多動性障害(ADHD)、他人とコミュニケーションがうまく取れない高機能自閉症などの総称。脳機能の障害が原因と考えられ、2002年の文部科学省調査では、全小中学校の児童生徒1086万人のうち6・3%程度が該当し、クラスに少なくとも1人はいてもおかしくないと推計された。大半は知的障害など重い症状を伴わないため日常の言動からは判断が難しく、障害があると認識されないまま通常学級で学習しているケー...
精神疾患(2004年9月5日)統合失調症やうつ病、アルコール依存症、不安障害など、幅広い病気・精神障害の総称。近年はうつ、ストレス疾患、痴呆なども増えており、誰でもかかる可能性のある疾患になってきた。適切な治療を続ければ症状が安定し、改善・治癒が可能なものが多い。精神科救急を受診するのは、自分や他人を傷付ける恐れのある人、覚せい剤乱用のケースなどさまざま。「自傷他害」の恐れがある場合は、精神保健福祉法に基づき、入院治療を強制する措置入院の制度もある。
 

「ひきこもり」多くが精神疾患 3分の1は「薬物治療必要」 厚労省調査
2010.5.19 23:55産経新聞

 
このニュースのトピックス:病気・医療
 就学・就労などを避け、家から出てこない「ひきこもり」の若者を厚生労働省の研究班が調査したところ、専門施設に相談してきた「ひきこもり」に悩む人の3分の1が、統合失調症など薬物治療を必要とする精神疾患を抱えていたことが19日、分かった。他の相談者も何らかの精神疾患を抱えていた。
 
 また、研究班は同日、ひきこもりの長期化を防ぐためには、できるだけ早く当事者が専門機関に相談・受診することが重要などとする「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」を公表した。
 
 調査は平成19〜21年度に行われ、精神科医ら専門家が在籍する全国5カ所の精神保健福祉センターに、16〜35歳までのひきこもり本人が直接相談にきた184件を検討した。
 
 その結果、診断が確定した149件のうち、49件が統合失調症や不安障害、気分障害など薬物治療が必要とされる精神疾患だったことが判明。さらに48件が広汎性発達障害や精神遅滞と診断され、51件は専門家のカウンセリングなどが治療の中心となるパーソナリティ障害や適応障害などだった。残る1件は前記3分類にあてはまらなかった。
 
 今回の調査結果を受け、厚労省は「診断や治療を受けないまま、症状を悪化させる恐れがある」として、ひきこもりの背景に精神疾患があるケースが多いことを明確化。ガイドラインでは現在全国の約26万世帯でひきこもりの子供がいると推計し、ひきこもりの長期化を防ぐため、できるだけ早く当事者が専門機関に赴いて受診をすることが重要とした。専門機関は長期的な関与を続け、精神疾患の有無を判断すべきだとしている。
 
 
昔は不登校、今は仕事の挫折で…ひきこもりの高齢化
2010.4.14 12:38産経新聞
 
このニュースのトピックス:家族・少子高齢化
 ひきこもりは、昭和50年ごろから顕在化し、平成に入って増加したとされる。当初は18歳以下が多く、中学校や高校の不登校の延長と、とらえる傾向もあったが、最近は仕事の挫折などを契機にひきこもる30〜40代の存在も一般化しつつある。
 
 だが、詳細な調査は行われておらず、全国的な状況把握は進んでいない。東京都が平成19年度に行った実態調査(有効回答1388)では、ひきこもりの年齢は30〜34歳(44%)が最多で、20〜24歳(19%)、25〜29歳(16%)の順だったが、調査対象が15〜34歳だったこともあり、高齢層の実態は分かっていない。
 
 ひきこもり支援をめぐっては、全国約20の自治体が支援センターなどを設置。今年1月に設置されたばかりの広島市では、18歳以上のひきこもりを対象にしているが、市の担当者は「40代や50代の人から相談がきており、反響の大きさに驚いている」と話している。

うつ病患者の自殺者ゼロに、米医療機関の取り組みに注目
2010年05月19日 15:03 AFP BBニュース発信地:ワシントンD.C./米国
 
クリッピングする拡大写真を見る写真をブログに利用する米ワシントンD.C.(Washington D.C.)にある小児病院の外観(2009年9月16日撮影、本文とは関係ありません)。(c)AFP/Jewel SAMAD
   
 【5月19日 AFP】うつ患者の自殺をゼロに抑えることに成功した米医療機関による取り組みが、米医学誌「米国医師会雑誌(Journal of the American Medical Association、JAMA)」の精神医療特集号で18日、紹介された。
 
 この取り組みは米ミシガン(Michigan)州を拠点とする医療機関ヘンリー・フォード病院(Henry Ford Health System、HFHS)の行動医療科で実施されたもので、ここでは直近の2年間、1人も自殺者を出していない。
 
 うつ病のケアに特化した取り組み「Perfect Depression Care initiative」が始まった2001年当時の同院では、平均でうつ患者10万人中89人、うつ病以外の患者も含めると230人の自殺者が出ていた。
 
 HFHSは、米医学研究所(Institute of Medicine)が呼びかけている、医療改革のための6つのステップを応用することで劇的な効果をあげた。これは医療行為において、より安全であることやより効果的であること、より患者主体であること、適切なタイミングを図ること、効率的であること、公平であることなどを目指すもの。
 
 その結果、一つ一つの目的達成が波及効果となり、総合的にケアの質が大幅に向上。入院患者、通院患者を合わせて自殺者をゼロに抑えることに成功した。
 
「うつ病の患者に対して完璧に適切なケアが提供されれば、誰も死にたいとは思わなくなる」と、HFHSの行動医療科の精神神経科医、C・エドワード・コフィー(C. Edward Coffey)氏は話す。
 
 米疾病対策センター(US Centers for Disease Control and Prevention、CDC)によると、米国の自殺者は毎年3万3000人以上に達しており、自殺が死因の11位となっている。(c)AFP
 

2010.5.18共同通信
障害者の新法、12年に提出 自立支援法廃止で厚労省

 厚生労働省は18日、障害福祉サービスの利用料を原則1割自己負担とした現行の障害者自立支援法に代わる新しい「障がい者総合福祉法案」(仮称)を、2012年の通常国会に提出する方針を明らかにした。同日開かれた障がい者制度改革推進会議の総合福祉部会で報告した。
 
 長妻昭厚労相は自立支援法を廃止し、新法を制定する方針は既に表明していたが、法案の提出時期は公表していなかった。
 
 総合福祉部会で来年夏をめどに、法案の内容に関し報告書をまとめる予定。法律は13年8月までに施行する。法案の検討のため、障害者の生活実態やニーズを調べる全国調査を11年度に実施することも決めた。
 
2010/05/18 19:57   【共同通信】

2010.5.17キャリアブレイン
うつ病が回復しない原因、「自分の性格」と考える患者が7割超
 
 うつ病を治療中の患者の7割以上が、回復しない原因を「自分の考え方や性格のため」と考えていることが、病院検索サイトを運営する「QLife(キューライフ)」(本社=東京都世田谷区)の調べで分かった。
 
 調査は、医療機関に通院または入院してうつ病の治療を受けた患者・元患者を対象に、4月14日から19日にかけてインターネット上で行い、1000人(回復群、未回復群各500人)から回答を得た。
  
 現在治療中のうつ病の患者(未回復群500人)に対して、回復しない原因が何だと思うか尋ねたところ(複数回答)、「自分の考え方や性格のため」が72.6%で最も多かった。次いで、「抱えている問題や悩みが深刻なため」が54.2%と、心理的な要因を挙げる人が上位を占めた。一方、「薬の効果が出ないため」や「主治医の処方や治療方針が不完全なため」と、回復しない原因を医療現場に対して感じている人は、それぞれ11.0%、6.4%と少なかった。
 
 
 また、治療後既に回復した元患者(回復群500人)に、うつ病から回復したきっかけが何だったと考えているか尋ねたところ(複数回答)、「時間と共になんとなく回復してきた」が43%で最も多く、次いで「休養で楽になった」の41%。以下は、「薬が効いた」が38%、「抱えている問題や悩みを、違う視点/次元で見るようになった」が34%。「家族や友人との会話」が32%と続いた。
 
 
 回復したきっかけを年齢別に見ると、20歳代から40歳代までは「時間と共になんとなく回復してきた」がそれぞれ51%、46%、40%で、いずれも最多となった。また、20歳代では「家族や友人との会話」も同様に51%だった。50歳代では「主治医や医療者との会話やアドバイス」が42%、60歳代では「薬が効いた」が47%で最も多かった。
  

( 2010年05月17日 18:07 キャリアブレイン )

2010.5.17共同通信
障害者基本法改正で骨子案 監視機関の設置も検討
 政府の「障がい者制度改革推進会議」は17日、障害者権利条約の批准に向けた障害者基本法の抜本改正などの制度改革関連法案の骨子案をまとめた。来年の通常国会の法案提出を目指す。
 
 障害者基本法は障害者法制全般の基本となる法律。骨子案では、現行法が規定する身体や精神など障害を医学的な側面からとらえるだけでなく、段差やスロープの未設置など、社会環境の不備が障害を助長していることを強調。障害者が健常者と同じ権利を有するとの規定を現行法より強く打ち出し、障害者への配慮の欠如が差別に当たることも盛り込んだ。
 
 また、障がい者制度改革推進会議と、障害者の意見を政策づくりに反映させるため05年に設置した「中央障害者施策推進協議会」を発展的に解消。障害者施策推進の実施状況を監視し、関係閣僚への勧告権限もある委員会を、内閣府に新たに設置することも検討する。
 
2010/05/17 18:19   【共同通信】

2010.5.15読売新聞

[解説]うつ病の薬物治療

「何でも投薬」指針で見直し

 


 精神科診療所の7割が、わが国のうつ病治療が薬物治療に偏っていると考えていることが、読売新聞のアンケート調査で分かった。

 【要約】
・重要な手法だが、精神科診療所の7割が「偏重」認識
・製薬会社の働きかけで医師の抵抗感が減った
・英国では対話で治療する「認知行動療法」体制が確立

 国内のうつ病患者は、新しい抗うつ薬SSRIが発売された約10年前から急増し、100万人を超えた。

 SSRIは、従来の抗うつ薬より重い副作用が少ないとされ、一気に処方が増えた。「うつ病は心の風邪」という言葉も広がり、精神科を受診しやすくなったことも患者増の背景にある。

 抗うつ薬を適切に飲み、うつ病から解放された患者は多い。特に重症患者の場合、薬物治療は重要だ。

 その一方で、薬が安易に処方されているとの指摘もあがっている。

 読売新聞が、全国119の精神科診療所から回答を得た調査では、薬物偏重の傾向があると「強く思う」が19%、「ややそう思う」が54%に上った。

 抗うつ薬の処方は1種類が原則。しかし、複数の抗うつ薬や抗不安薬など10〜20種類処方される患者も目立つ。調査では、過半数の患者に複数の抗うつ薬を処方する医師が14%いた。

 東京都内の精神科医は「製薬会社のうつ病キャンペーンで、医師も患者も薬への抵抗感が減った。軽いうつや、自然回復するうつにも抗うつ薬が処方されるようになった」と話す。

 全国自死遺族連絡会の田中幸子さん(61)は、自殺者の遺族から様々な電話相談を受ける。うつ病の娘を10日前に自殺で亡くした母親は「眠れないので精神科を受診したら、今度は私が抗うつ薬をもらった。飲んでいいのか」と心配した。

 家族を失い、一時的に落ち込むことが病気なのか。長男を自殺で亡くした経験がある田中さんは、「今のうつ状態は立ち直るために必要。悲しみ、泣いていいんです」と助言した。

 抗うつ薬の効果を調べる試験では、有効成分を含まない偽薬との比較が行われる。軽症から中等症の患者では、抗うつ薬と偽薬は効果にあまり差がなく、偽薬で改善する人も多い。

 こうした薬物偏重を改めるため、国は4月から、マイナス思考に陥りがちな患者の考え方を、対話を通して修正する「認知行動療法」を、健康保険で受けられるようにした。

 だが、医師が30分以上行うという条件付きのため、実施可能な施設は少ない。今回の調査では、診療所の医師1人が1日に診る患者は平均44人。これでは1人の診療に十分な時間はかけられない。医師の多くが、認知行動療法の専門知識や技術を持っていないのも問題だ。

 慶応大保健管理センターの大野裕教授は「精神科医がすべてを抱え込む現状を改め、認知行動療法は技術を習得した心理士に任せるなど、チーム医療を早急に実現するべきだ」と訴える。

 英国では10年ほど前から、多額の国費を投じて、認知行動療法の治療者を1万人養成する計画を進めるなど、精神医療改革を続けてきた。精神疾患を、がん、循環器疾患と並ぶ重大疾患に位置づけているのだ。

 その結果、うつ病患者が認知行動療法を受けやすい体制ができ、医師も診療に余裕を持てるなど、医療の質が向上。自殺率が10年間で約15%減少した。

 国内でも新たな動きが始まっている。千葉大は先月から、医師、心理士ら医療従事者を対象とした認知行動療法の養成講座を開始。大野教授らは医師を対象に、認知行動療法の様子を録音、第三者が評価する仕組み作りを急いでいる。

 国は、英国の取り組みを参考にして、うつ病対策に本腰を入れてほしい。関連学会も、うつ病の治療指針作りを急ぎ、原因や症状の軽重を問わずに投薬する現状を早急に改めるべきだ。(医療情報部・佐藤光展)

2010515 読売新聞)

 


2010.5.13河北新報
脳神経細胞の新生に関与 東北大、物質特定

 東北大大学院医学系研究科の大隅典子教授(神経発生学)の研究グループは、タンパク質の一種「エフリンA5」が、脳の神経細胞の新生や、脳内血管のサイズの調節などに関与していることを突き止めた。うつ病や統合失調症などの患者は脳の神経系で細胞を生み出す働きが鈍ることが指摘されており、新たな治療法の開発につながる可能性が高いという。
 研究グループは、エフリンA5を欠損させたマウスと正常なマウスを用いた実験で、脳の神経細胞の新生状況を比較。欠損させたマウスは徐々に新生する細胞数が減少し、4週間後には正常なマウスを約30%下回る数となった。
 さらに、神経細胞が生み出される脳の部位「海馬歯状回」内の毛細血管が、正常なマウスと比べて四分の三程度、細くなったことも明らかになった。血管のサイズで血流量を調節し、細胞新生を制御している可能性も考えられるという。
 大隅教授は「エフリンA5の働きに加え、血管のサイズと神経細胞の新生との相関が明らかになれば、血流の改善による新たな精神疾患の治療法を開発できる可能性がある」と説明。血流改善のための既存の薬を活用できるメリットも期待できるという。
 研究成果は米科学誌「ステム・セルズ」(電子版)に掲載された。
 
2010年05月13日木曜日
 
 
2010.5.6日経プレリリース
 東北大学、Eph/ephrinシグナルが海馬ニューロン新生と微小血管形成に関わることを発見
生体内でのニューロン新生の制御機構の一端を解明
 
―Eph/ephrinシグナルが海馬ニューロン新生と微小血管形成に関わるー
 

 東北大学大学院医学系研究科の大隅典子教授の研究グループは、軸索の伸長などに関わるEphrin−A5(エフリンA5)(*1)という分子の遺伝子を欠損した成体マウスにおいて、海馬歯状回におけるニューロン新生が有意に低下していることを発見、生体内でのニューロン新生の制御の一端の解明に成功しました。
 かつて大人になってからは増えないと信じられてきた脳の神経細胞(ニューロン)は、ほ乳類の成体脳でも、脳室下帯や海馬歯状回など一部の場所で活発に新生されていることが明らかになっています。特に海馬歯状回でのニューロン新生は記憶や学習行動に関係していること、またニューロン新生の異常と行動異常に相関があることが明らかとなっており、その制御機構の解明が待たれています。
 今回、研究グループは、細胞外膜分子の一つであるEphrin−A5に着目し、Ephrin−A5遺伝子を欠損した成体マウス(Ephrin−A5−/− マウス)の海馬歯状回におけるニューロン新生を解析し、ニューロン新生が減少していることを明らかにしました。Ephrin−A5は血管のサイズを調節することによってニューロン新生を制御していることが示唆されています。
 本研究成果は、米国科学誌STEM CELLSのウェブ版に先行公開され、間もなく5月号の表紙を飾ります。
 

【研究の背景】
 我々の脳はばく大な数の神経細胞(ニューロン)とその10倍はあると考えられているグリア細胞(アストロサイト(*2)、オリゴデンドロサイトなど)から構成されています。これらの細胞の多くは胎生期に生み出されたものですが、成体でもその数は減少するものの、新しいニューロンは絶えず生み出され続けています(ニューロン新生)。哺乳類の成体脳では、ニューロン新生が起こる部位として、側脳室に面した脳室下帯と、記憶の中枢である海馬歯状回の顆粒細胞下帯が知られています(図1)。これらの場所で生み出された新生ニューロンは、多くは細胞死を起こしますが、一部は生存し続けて成熟ニューロンへと分化します。
 近年、生後脳海馬歯状回におけるニューロン新生が記憶や学習行動に関係していること、またニューロン新生の異常と行動異常に相関があることが明らかとなっていることから、生体内においてニューロンがどのような機構により制御されているのかを明らかにすることが求められています。
 研究グループは今回、細胞外膜分子の一つであるEphrin−A5に着目し、EphrinA5遺伝子を欠損した成体マウス(Ephrin−A5−/− マウス)の海馬歯状回におけるニューロン新生を解析したところ、野生型マウスと比較して有意にニューロン新生が低下していることを見出しました。
 

【研究内容】
 本研究では、まず始めに正常な成体マウスを用いてin situ hybridization(*3)による発現解析を行いました。その結果、Ephrin−A5遺伝子が海馬歯状回において成熟したニューロンの他、神経幹細胞や星状膠細胞(アストロサイト)にも発現していることを見出しました。次に、免疫組織化学(*4)によりEphrin−A5 タンパク質の局在を調べたところ、海馬歯状回を走行する毛細血管を包むアストロサイトの仮足部分に多く局在していることが明らかとなりました(図2)。野生型マウス及びEphrin−A5−/− マウスで、海馬歯状回を走行する毛細血管の形態を調べたところ、Ephrin−A5−/− マウスでは野生型マウスと比較して、有意に細い血管が増加していることが明らかになりました(図3)。毛細血管を構成する血管内皮細胞では、Ephrin−A5の受容体であるEphA4(*5)が発現していることから、アストロサイトのEphrin−A5は血管内皮細胞に発現しているEphA4との相互作用により毛細血管のサイズを制御している可能性が考えられます。次に、このような表現型を示すEphrin−A5−/− マウスを用いてニューロン新生を調べました。野生型マウス及びEphrin−A5−/− マウスにBrdU(*6)を投与し、投与一日後と一ヵ月後におけるBrdU を取り込んだ細胞の数を比較したところ、Ephrin−A5−/− マウスでは、投与後一日では約10%の低下が、また一ヵ月後では約30%の低下が見られました(図4)。また、新生ニューロンの生存率をBrdU 投与後1、2、3、4週目で比較すると3週目から4週目にかけてEphrin−A5−/− マウスで有意に低下していることが明らかになりました。このことからEphrin−A5は神経幹細胞の増殖および新生ニューロンの生存に重要な役割を担っていることがわかります。
 近年、ニューロンの新生および維持には、毛細血管やアストロサイトからなる微小環境が重要であると考えられています。Ephrin−A5−/− マウスでは、海馬歯状回においてニューロン新生の異常のほか毛細血管のサイズの低下が見られたことから、Ephrin−A5は血管のサイズを調節することによってニューロン新生を制御していることが考えられます。
 

【今後の展開】
 生体内においてニューロン新生がどのように制御されているのかを明らかにすることは、さまざまな精神神経疾患の分子基盤を考える上で極めて重要な意義を持っており、今回明らかになったEphrin−A5の機能は、ニューロン新生と毛細血管やアストロサイトからなる微小環境との関係を考える上で一石を投じるものと考えられます。
 今後は、脳循環系を薬理的に操作することなどによってニューロン新生がどのように影響をうけるか、またそれと行動との関連を調べることにより、脳血管の制御とニューロン新生の関係が明らかになると期待されます。
 

※本成果は、独立行政法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)研究領域:「脳の機能発達と学習メカニズムの解明」(研究総括:津本 忠治(独)理化学研究所脳科学総合研究センター グループデイレクター)の、「ニューロン新生の分子基盤と精神機能への影響の解明」(研究代表者:大隅 典子(東北大学 大学院医学系研究科 教授))、および、文部科学省グローバルCOE プログラム(脳神経科学を社会へ還流する教育研究拠点、代表者:大隅典子 東北大学大学院医学系研究科教授)の支援によって得られました。
 

【図及び説明】
 ※添付の関連資料を参照
 

【用語説明】
*1 Ephrin−A5:細胞外膜分子の一つ。胎生期では軸索の伸長などに関わる。
 
*2 星状膠細胞(アストロサイト):神経細胞の一つ。脳では最も多く存在する細胞と考えられている。
 その機能は多岐にわたり、ニューロンの支持や脳血液関門の構築、脳血管径の制御などを行っていると考えられている。
 
*3 in situ hybridization:タンパク質の鋳型となるメッセンジャーRNA(mRNA)の発現している細胞、組織を調べる方法。
 
*4 免疫組織化学:あるタンパク質を特異的に認識する抗体を用いて、タンパク質の細胞内、組織内局在を調べる方法。
 
*5 EphA4:細胞膜分子の一つであるA型Eph受容体の一つ。A型Ephrinと結合する事により、細胞内へシグナルを伝える。
 
*6 BrdU(5−ブロモ−2−デオキシウリジン):DNAを合成するチミジンの類似体。細胞が分裂する際に染色体に取り込まれるため、増殖した細胞を標識できる。現在では広く細胞増殖のマーカとして用いられている。
 

【論文題目】
 Impaired Hippocampal Neurogenesis and Vascular Formation in Ephrin−A5−Deficient Mice
 (翻訳: Ephrin−A5欠損マウスでは海馬でのニューロン新生と血管形成が阻害される)

2010.5.11共同通信
自殺未遂でも健康保険適用 厚労省、精神疾患の場合

 厚生労働省は11日、自殺未遂をした人が医療を受けた際の健康保険適用について、精神疾患がある場合には保険適用を認めるよう、大企業の健康保険組合や市町村の国民健康保険などに通知することを決めた。
 
 健康保険法は、原則として故意の負傷の場合には保険給付を認めていないが、厚労省は精神疾患による自殺未遂は例外とする解釈を過去にも示している。ただ、「自殺未遂の場合は一切、保険は適用されない」と誤解している健保組合などもあることから、あらためて周知することにした。
 
 この問題をめぐっては、昨年7月、東京都内で自殺を図り意識不明となった長男=当時(40)=の治療費に保険が適用されず、負担を苦にした母親(67)が長男を刺殺する事件があった。
 
2010/05/11 19:01   【共同通信】 
 
 
健康保険組合(2009年9月11日)従業員700人以上の企業や、3千人以上となる同業種の複数企業などによって設立され、従業員と扶養家族の計約3千万人が加入する公的医療保険。高齢者医療への支援負担などで財政が悪化し、解散する組合も相次いでいる。中小企業の従業員らは協会けんぽに、自営業者らは市町村が運営する国民健康保険にそれぞれ加入。
国民健康保険(2009年8月19日)自営業者や農林水産業の従事者、退職した高齢者らが加入する公的医療保険。主に市町村が運営している。2008年度の加入者は約3970万人。最近は雇用環境の悪化で無職者が増加している。もともと低所得者が多く保険料収入が少ない上に、高齢化で医療費が膨らみ財政を圧迫。07年度は市町村国保の7割が赤字に陥った。地域によって保険料の格差が最大約5倍に上るほか、会社員が加入する健康保険組合などに比べ負担が重いという問題も生じている。
精神疾患(2004年9月5日)統合失調症やうつ病、アルコール依存症、不安障害など、幅広い病気・精神障害の総称。近年はうつ、ストレス疾患、痴呆なども増えており、誰でもかかる可能性のある疾患になってきた。適切な治療を続ければ症状が安定し、改善・治癒が可能なものが多い。精神科救急を受診するのは、自分や他人を傷付ける恐れのある人、覚せい剤乱用のケースなどさまざま。「自傷他害」の恐れがある場合は、精神保健福祉法に基づき、入院治療を強制する措置入院の制度もある。

不登校や引きこもり経験者の親たちが起業
2010年05月12日朝日新聞
 
 
下洗いをするメンバーたち。ゴミを減らし環境に役立つ仕事に、若者たちも誇りを感じているという=佐倉市稲荷台で
 
 我が子の不登校や引きこもりを経験した親たちが、食器の貸出業を立ち上げた。大人になった子どもたちもそこで働く。本格的に稼働して1年、売り上げ目標を倍増させるなど健闘中だ。食器を衛生的に繰り返し使う「エコ」な仕事に、若者たちも「もっと働きたい」と意欲を見せる。
 

 佐倉市稲荷台2丁目の「ワーカーズコレクティブ風車」。20〜30代の男女7人と親世代8人の職場だ。食べ終わった弁当箱が届くと、頭髪カバーとエプロンをつけて作業が始まる。汚れをボロ布でふき取り、下洗いする人、食器洗浄機にかけていく人、滅菌・乾燥機に出し入れする人、1個1個きれいかどうかを確認する検品、と分担する。
 

 「カレーの皿洗いは大変だけれど、きれいにするのは気持ちいい。もっと仕事したい」と、不登校を経験した女性(23)は話す。
 

 10年勤めた団体職員をうつ病と強迫性障害で辞めた男性(31)は、何度も確認しないと不安になる検品が苦手。パソコン作業や手洗いにいそしむ。「ここは出来ることをやればいいよ、と言ってもらえる。『痛み』の分かる人が集まっているので、何でも相談できるし、自分でも役立てて自信を取り戻せた」
 

 「風車」は不登校・ひきこもりの親の会で知り合った親たちが、2008年10月に設立した。訓練を受けて就職しても、疲れ果ててしまう若者が多いことに疑問を感じ、「みんなでイス取りゲームをするよりも、誰でも座れるイスを社会の中に作り出す方がいいのではないか」と考えたからだ。昨年5月から本格的に営業活動に入り、どんぶりや皿は25円、はしやスプーンは6円といった料金で食器類を貸し出し、汚れたまま返却してもらって洗浄、保管する。
 

 環境問題に関心をもつ市民や自治体職員の見学が相次ぎ、昨年は目標にしていた売り上げ100万円を達成した。自治体のイベントや学園祭などが多い秋は週4日ほどフル稼働できたという。今年は県内で国体が開催され、食器の利用が見込まれることから、目標も150万〜200万円に設定している。
 

 「人生でつまずいた人ほど深く考え、挑戦もできる」と代表の中村早和子さん(58)。一緒に代表を務める下村小夜子さん(57)も「私は病気で手が不自由だけれど、ここは助け合って働けるので、困らずに済む」と話す。
 

 働く全員が経営者でもある「ワーカーズ・コレクティブ」の働き方で、若者たちも1万円以上を出資する。パンフレットを手作りし、イベントなどでチラシまきも始めた。「紙コップの方が安い」と言われることもあるが、「汚れたまま専用コンテナで送り返すだけでゴミを減らせて手間もかからない」とアピールする。
 

 まだ就労日も限られ、手取りは多い人でも月1万円。メンバーも慣れてきたので、もっと大口の仕事を増やし、いずれは自立できる仕事にしたい、と期待している。
 

 風車の連絡先は043・461・5616。

2010.5.13紀伊民報
退院なく転院十数人 こころの医療センター、再度協力依頼
  
 公立精神科病院の紀南こころの医療センター(田辺市たきない町)が長期入院患者125人の家族に転院か退院を促したところ、承諾したのは1割程度の十数人にとどまったことが分かった。承諾者は全員転院希望で、退院はいなかった。医療センターは、1回目の要請で承諾を得られなかった患者家族に再度、協力を求める通知を近く発送する。
 
 医療センターの常勤医師は、病院長を含めて8人だが、6月末に2人、9月末に1人が退職する予定。新たな医師確保ができなければ10月から5人体制になる。
 
 医療センターは医師の負担を軽減するため、約190人に上る入院患者を来年3月末までに60〜70人減らし、120〜130人にする計画を立てた。
 
 3月末には1年以上の長期入院患者125人の家族に、転院か退院を求める通知を発送した。約110人の家族から回答があったが、退院の承諾はゼロ、三十数人が転院を承諾した。しかし、4月25日に医療センターで家族向けの説明会を開いた後、承諾していた18人から辞退や保留に切り替える連絡が相次いだ。
 
 このため、現時点で転院の承諾を得ているのは十数人になっている。医療センターは転院の手続きを始め、患者には17日以降から順次、県内外の精神科病院に転院してもらうことになっている。
 
 しかし、60〜70人減らす計画を実現するにはほど遠いため、医療センターは今後、患者家族に対する退院の要請をあきらめ、転院の承諾を求める方針に切り替えた。
 
 医療センターは再度要請する患者家族のリストを作り、転院のお願いをするという。医療センターの小野紀夫病院長(61)は「限りなく入院病棟の閉鎖に近づいている。計画通りにいかないと現在勤務している医師も残ってくれるかどうか厳しい。病院閉鎖という最悪の状況を避けるため、患者家族には厳しい現状を通知せざるを得ない」と話す。
 
 医療センターでは入院患者のほか、1日当たり平均175人の外来患者を診察している。県内の公立精神科で最も多く、県平均110人を大幅に上回っている。
 
 

【医師不足のため入院患者を減らす取り組みをしている紀南こころの医療センター(田辺市たきない町で)】
 
(2010年05月13日更新)

2010.5.14毎日新聞

クローズアップ2010:自殺者、12年連続3万人超 若者、死に追いやる不況




 ◇リストラや過酷労働

 警察庁が13日発表した09年の自殺統計。自殺者総数は3万2845人で08年より1・8%増加、12年連続で3万人を超えた。なかでも20代と30代の自殺率(10万人あたりの自殺者の数)は08年に続いて過去最悪を更新し、若年層の自殺の深刻ぶりが浮かんだ。原因・動機に「失業」が含まれる自殺者は08年比で7割近く増加した。不況が若年層にも暗い影を落とす。一方、支援関係者らは、職場にとどまる人々にもリスクは広がっていると指摘する。【鮎川耕史、合田月美】

 NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」(東京都千代田区)が自殺者の遺族を対象に実施する「自殺実態1000人調査」では、若年層が死に追い込まれる実態や遺族の苦悩が浮かぶ。

 愛知県に住む元会社員の30代男性が自ら死を選んだのは昨年秋。母親はその8カ月前、IT(情報技術)関連会社を辞めて実家に戻った際の息子のことを鮮明に覚えている。ほおがやせこけ、疲れ果てた様子だった。職探しはうまくいかず、会社の設立にも失敗。明るく振る舞っていたが、遺書には何カ月も前から自殺を考えていたと記されていた。

 母親は「家族の誰かが後を追うのでは。そんな恐怖におびえながら生きてきた。家族を自殺で失うなんて思わなかった。だからこそ、一人一人が身近な問題として自殺を考えてほしい」と訴える。

 NPO法人「労働相談センター」(葛飾区)には、年間5000件規模の相談が電話やメールで寄せられる。最も多い相談は賃金関係だったが、景気が後退した08年秋以降はずっと解雇がトップだ。

 スタッフの須田光照さんは、相談を受けた30代男性を気にかける。自動車メーカーの下請け会社を解雇された後、仕事が見つからず、うつ病と診断されてから連絡がつきにくくなった。「精神的な打撃を受けやすい人にとっては、解雇が重大なつまずきになるケースが少なくない。若い人にとって、自殺との距離は近くなってきている」と感じている。

 ライフリンクの清水康之代表は「自殺は主に中高年の問題だと言われてきたが、20、30代にも広がっている。経済問題が原因になるケースが目立つが、失業だけではない。過酷な労働条件にさらされている人が追いつめられている実態もある」と分析する。

 過労死の問題に詳しい川人博弁護士は「入社1〜2年の若者の自殺が増えている」と実感するという。40〜50代の社員がリストラで減り、以前より若い層が職場で責任を負うようになった。過酷な負担やノルマが、新入社員にものしかかる。「若い社員を取り巻く環境が変わり、ストレスはますます強まっているのに、サポート体制は弱い。そこに問題の一端がある」。川人弁護士は警鐘を鳴らす。

 警察庁の09年の自殺統計で、原因・動機を7区分に分類すると、「経済・生活問題」を含む人は8377人で08年より13・1%増加し、最も増加率が高かった。さらに多かったのが「健康問題」。1万5867人と最も多く、このうち「うつ病の影響・悩み」を含む人が6949人に上った。他の区分は▽家庭問題4117人▽勤務問題2528人▽男女問題1121人、など。

 日本いのちの電話連盟が毎月10日に実施する「自殺予防いのちの電話」には09年、自殺志向者からの相談が9731件あった。原因はさまざまだが、相談者の8割前後は精神科などで治療を受けたことがある人だという。

 連盟の斎藤友紀雄常務理事は「医療につながっていながら、『死にたい気持ち』へのケアが受けられていない実態がある」と分析。「生活不安を訴える若年層は多いが、それだけが自殺の理由ではない。自殺を志向する人へのケアのシステムをつくることが理想だ」と訴える。

 ◇予防効果、見極め難しく

 98年の統計で自殺者が3万人を超えたことをきっかけに、国は対策に乗り出した。厚生省(現厚生労働省)は00年に策定した「健康日本21」で、自殺予防への取り組みを初めて掲げた。06年施行の自殺対策基本法には、自殺を「個人の問題」のみとせず、「社会的な要因」に目を向けて対策を講じるべきだという内容が盛り込まれた。同法に基づいて政府が策定した「自殺総合対策大綱」が、現在の国の対策の指針となっている。

 09年には地域自殺対策緊急強化基金を予算化。市町村や民間団体による相談事業や支援者の養成、啓発活動などに補助金を出す制度で、3年間で計100億円を計上する。今年2月には「いのちを守る自殺対策緊急プラン」を打ち出した。

 しかし、一連の政策が自殺予防にどれほどの効果をもたらしているかの見極めは難しい。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の竹島正・自殺予防総合対策センター長は「キャンペーン型の事業だけでは真の対策にならない。自殺リスクの高い人は、それぞれの人生で生きにくさを抱え、そこに目を向けた本質的な支援を検討することが必要だ」と指摘する。

 自殺者数は、今年に入り小幅ながら減少傾向となっている。警察庁が発表した暫定値によると、4月末までの自殺者は1万309人で、09年同期比で9・0%減。景気の回復基調などを背景とした変化の兆しとの見方もあるが、自殺対策の支援関係者は「短期間のデータで判断するのは危険」と話している。

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 ◇自殺防止のための主な電話相談窓口

▽多重債務による自死をなくす会 コアセンター・コスモス相談窓口

 080・6159・4730

          4733

 ※午前9時〜午後8時

▽自殺予防いのちの電話(日本いのちの電話連盟)

 0120・738・556

 ※毎月10日。24時間

 

毎日新聞 2010514日 東京朝刊


思春期の心のケアを、県立精神医療センターに専門病棟設置へ/神奈川
2010年5月10日神奈川新聞
 
 2014年度に総合整備される県立精神医療センター(横浜市港南区芹が谷)に、思春期の心の病気を専門とする病棟ができる。16歳から20歳前後までの患者が対象で、うつ病や摂食障害、虐待による精神疾患などの治療にあたる。思春期の心の病気は増加傾向にあるとされ、専門的な治療の必要性が指摘されている。
 
 嫌な考えが頭から離れなかったり、手洗いを一日に何度も繰り返したりする強迫症状や、自分の体を傷つける自傷行為―。思春期の精神疾患はとりわけ対応が難しいとされる。
 
 県立精神医療センター芹香病院・岩間久行院長によると、思春期は性的な発達を遂げる時期で、衝動性が非常に高く、大人の病棟で一緒に治療することで悪影響を受ける可能性があるという。加えて、うつ病が低年齢化し、思春期に精神的な問題を抱えるケースが増えているという。
 
 だが、県内に思春期を専門とする医療機関はほとんどなかった。
 
 県立こども医療センター(横浜市南区六ツ川)では、15歳以下の児童らの心のケアに取り組んでいるが、16歳以上から20歳前後までを対象とする、診療報酬上の加算対象施設となる基準を満たす専門病棟は民間を含めてない。
 
 理由は採算性にある。専門病棟には精神保健福祉士らが必要で、人件費などが負担となる。
 
 また、両親がなかなか子どもの精神的な疾患を理解できないため、両親にも医療的なアプローチが必要になり、時間と労力がかかるという。
 
 計画によると、専門の病棟は、精神医療センター芹香病院・せりがや病院の一体化を含めた精神医療センターの総合整備に合わせて設けられる。10年度に設計に着手し、14年度の開設を目指す。
 
 病床は個室中心の30床程度。外来も設け、大人の診療の時間帯と分けるなどして専門性を高める。また学習室も用意し、教育現場とも連携していくという。
 
 ただ、岩間院長は若者の薬物依存などが増えている現状も挙げて「今の時代は、少しでもすきを見せると蹴(け)落とされてしまうような気の抜けない毎日。親は忙しく、子どもの不安は受け止められていない面もある」と指摘。「精神疾患は、病気だけに対応すればいいわけではない。社会の問題として取り組まなければならない」と述べ、児童相談所や教育現場、NPOなどとの連携の重要性も訴えている。 

「自殺語れる世の中に」 遺族自助の会が新たな歩み
2010年05月10日日本海新聞
 
 家族や身近な人を自殺で亡くした鳥取県の自死遺族自助グループ「コスモスの会」が、鳥取市内で活動を始めて1年以上が過ぎた。今月下旬には同市内で家族の思い出の品や自殺予防に関する資料を集めたパネル展と、自死遺族が語るミニシンポジウムを初めて開催する。悲しみを乗り越え、新たな歩みを始めようとしている。
 
 
自殺をなくす世の中にしたいと話し合うコスモスの会のメンバーら=4月、鳥取市内 
 
 「コスモスの会」は、会社員の夫を亡くした市内の女性と家族が、2008年12月に発足させた。偶数月の第2土曜日の午後、一緒に昼食をとりながら交流会を開き、遺族の立ち直りのきっかけにつなげている。
 
 交流会には毎回、配偶者や親、子どもを亡くした遺族5、6人が集う。「思いを分かち合い、気持ちを共有し合うことでほんの少し気持ちが楽になる」「仲間がいることでほっとする」と参加者。代表の女性は「遺族が何かを話してみたい気になった時、話せる場所があることが大事」と、居場所の大切さを訴える。
 
 自死遺族の立場での支援活動を決意した女性は、自身の体験を語る。地元の大手企業に勤務していた夫は、職場の配置転換でうつ病になり04年12月、56歳で自ら命を絶った。
 
 夫がうつ病になっていたことに気付いていなかった女性は「警察からの知らせに『車を置いてどこに行ったのだろう?』と、最初は考えたほど(自殺は)信じられなかった」という。突き付けられた現実に、2週間で体重が7キロ減り「心身ともにボロボロに疲れた」と振り返る。
 
 夫の死後、人目を避けて自宅に引きこもった生活がしばらく続いた。「自殺をしてしまう人は、まじめで責任感の強い性格の人。自殺を隠すことは、その人の人生を否定してしまうことではないか」と自問する日々。
 
 夫を守れなかったという自責の念に苦しみながらも「こんなにつらい思いをする人を増やしてはならない」との思いに至った。
 
 全国の自殺者は98年以降毎年3万人を超え、県内でも08年には過去最多の212人を記録。県は前年度から自殺対策を本格化し、遺族支援も始めている。
 
 会の世話人を務める厨子麗子さんは、今回の企画を「大切な家族を失った遺族が自分の気持ちを整理する上でも大きな一歩になる」と位置付け、「自殺は個人の問題ではなく社会全体の問題。自殺を語れる世の中にしたい」と話している。
 

 パネル展「私の中で今、生きているあなた」は21〜23日まで、とりぎん文化会館フリースペースで。23日午後1時半からミニシンポジウム「自死遺族は語る」。県内で取り組まれている自殺予防のための高齢者サロンや県の自死遺族支援、島根県で活動する「しまね分かち合いの会・虹」の活動報告もある。新日本海新聞社後援。問い合わせは携帯電話090(3172)2111、または電話0857(53)5705、厨子さんへ。

2010.5.8毎日新聞
障害者世帯:年収300万円未満、55% 過半数が低い水準−−県調査 /奈良

 ◇就労支援、バリアフリー化を
 県内に住む身体、知的、精神など障害を持つ人の世帯のうち、年収300万円未満が約55%に上ることが7日、県が初めて実施した実態調査で分かった。全国消費実態調査(04年)によると、県内の世帯収入は平均約702万円。障害者世帯の過半数が低い水準にあることが浮き彫りになった。県障害福祉課は「障害者の介護などで家族が十分に働けないのではないか」とみている。【阿部亮介】
 
 調査は昨年8〜9月に、身体、知的、精神、発達、高次脳機能の障害を持つ約3万300人を対象に実施。加齢に伴う障害認定が比較的多い身体障害者以外は、県が把握する全数に近く、このうち約1万2200人から回答を得た。
 
 世帯収入では、100万円未満が20・9%▽100万〜200万円が16・8%▽200万〜300万円が17・5%と、300万円未満が過半数を占め、500万〜600万円は5・1%だった。障害区分別でみると、100万円未満の世帯は、知的障害の32%、精神障害の30・3%を占め、平均(20・9%)より高かった。
 
 暮らし向きについては、「それほど余裕はない」が37%と最も多く、「生活にぎりぎり」(33・8%)▽「不足しがち」(13・9%)と続き、「余裕がある」は6・7%。約85%が家計にゆとりがないとした。
 
 就労意欲では、「好きな仕事ができるなら働きたい」(32・7%)が最も多かった。就労を進めるためには、「職場の上司や同僚に理解がある」(43・3%)▽「勤務場所に障害のある人のことを考慮した設備が整っている」(35・6%)と、職場の理解や環境整備を求めた人が多かった。
 
 将来については、「生活に必要な収入が将来も得られるか」が53%に上った。「自分を支えてくれる人が病気になったり、いなくなったりするのでは」(47・1%)という不安も抱えていた。
 
 また、障害福祉サービス事業所(608カ所)を対象にしたアンケートも実施。273事業所が回答した。それによると、「継続的な赤字」は27・8%。職員は「不足している」が58・7%に上り、慢性的な人手不足の状況が明らかになった。
 
 県は調査結果を基に、就労支援やバリアフリー化、企業に対する研修などを進める。
 
毎日新聞 2010年5月8日 地方版

河北新報
声なき声響くとき
仙台発自死遺族の集いから
 
 仙台市で自死遺族の集いを催す「藍(あい)の会」が、発足から5年目を迎える。自殺者が12年続けて3万人を超える中、遺族に相談や分かち合いの場をつくり、人を孤立と死に追い込むものを問い、予防や支援に生かせと訴える。「自助」に始まった運動は東北など全国の遺族をつなぎ、NPO法人化の実現も間近だ。
 
(編集委員・寺島英弥)
 
 (1)「分かち合い」広がる/孤独から救い求めて
 
お茶菓子の袋を手に、JR石巻駅に降り立った田中さん。石巻市と一緒に催す遺族の集いに仙台から通う=4月17日
 
 
 遅い春の雪が積もった4月17日の昼すぎ、藍の会代表の田中幸子さん(61)はJR石巻駅に降り立った。隔月の第3土曜日、石巻市の「分かち合いの集い」が開かれる。
 会場は駅近くの市保健相談センター。3階の会議室で机を出し、買ってきたお茶や菓子を並べたころ、なじみの顔、新しい顔が7人集まった。
 参加できるのは遺族だけ。家族や愛する人を自殺で失った人が悲しみ、痛みを語り、聞く。当事者同士、互いの経験を受け止め、分かち合うことで、孤立から人を救い出す。田中さんはお手伝い役だ。
 「語る場所もなかったし、語っちゃいけないと思っていた」。2回目の参加という集いを前に、配偶者を亡くした中年男性が言った。「いろんな苦しさを抱えた人がいると分かりました」
 
 石巻市では自殺者が年50人を超える。市は昨春から宮城県の緊急自殺対策強化事業を受け、電話や面談による「心の相談」、メンタルヘルスの講演会開催やパンフレット配布などに乗り出した。
 分かち合いの集いを始めたのは6月。「当事者である遺族は忘れられがち。最も傷ついた人たちが思いを語れる場をつくってください」。藍の会からの提案がきっかけだった。それは田中さん自身の経験でもあった。
 2005年11月、警察官だった34歳の長男を自殺で亡くした。仕事の疲れや人間関係の悩みなどが残された携帯電話のメールに、わが子を助けられなかった自責の念を募らせた。怒りとうつ状態の中で自殺未遂もした。
 自殺対策基本法の制定(06年)以前で、「自殺は個人の問題」との空気が行政にもあった。どこの役所にも相談の窓口はなく、相手にもされなかった。
 「遺族自らが救いの場をつくらなくては」。孤独な模索から、田中さんはそう決意し、翌06年7月に藍の会を発足させた。以来、遺族が運営する集いを重ねている。
 
 仙台での集いに、石巻市の90代の男性は第1回から参加していた。息子を自殺で失い、同じ高齢の妻を介護し、語り切れぬ思いを抱えて通ってきた。そのことも石巻市に提案する動機の一つだった。「いつでもつながれる場所が身近にこそ必要」と田中さんは訴える。
 窓口の市健康推進課は集いの会場を提供し、開催日を市報で知らせ、チラシも作る。自殺予防講演会と併せ昨年11月に開いた職員研修では、田中さんを講師に招いた。
 市の担当者は「生きたくても死に追い込まれる。自殺への認識も、対策も、遺族の声を聞くことから始まるのだと教えられた。こちらは後方支援に徹したい」と話す。
 17日の集いは分かち合いの後、参加者の話が盛り上がった。「集いはもうすぐ1年。自分たちの会をつくろう」との相談だった。浮かんだ名前が「石巻たんぽぽの会」。踏まれても花を咲かせる強い花のように、と。
 藍の会と自治体が連携して開く分かち合いの集いは県内で大崎市、栗原市にも広がっている。
 
<メモ> 藍の会が仙台市で開く「分かち合いの集い」は毎月末の土曜日か日曜日の午後2〜5時、JR仙台駅前のエル・ソーラ仙台(アエル28階)で。連絡先は田中さん022(717)5066=ファクスも=。
 

2010年05月03日月曜日
 
 
 
 
2010.5.4河北新報
(2)地域を超えた仲間/心語り合う場 全国に

 
田中さん(左から2人目)ら藍の会の仲間と語り合う桑原さん(右から2人目)=2月、仙台市内
 
 
 「久しぶり。遠来の参加、大変だったね」「うちの方でも早く会をつくりたいから。この雰囲気を持ち帰れたらいい」
 仙台市の自死遺族会「藍(あい)の会」の集いがある毎月末の週末の夕方。JR仙台駅前のビル5階にある居酒屋で恒例の交流会が開かれる。3時間にわたる分かち合いの後、泣いて胸の思いを語った人たちが、笑顔で出会いの縁をはぐくむ。
 藍の会は発足した2006年7月以来、47回の集いを重ねた。参加した遺族は延べ1000人を超え、毎回のように遠方からやって来る人もいる。
 会のホームページで連絡先を公表する代表の田中幸子さん(61)に、多くが手紙や電話でつながった。遺族が運営する遺族だけの分かち合いの場は、それまで全国にもなかった。
 
 「はるばる仙台まで旅して救われました」と桑原正好(しょうこ)さん(59)は語る。島根県出雲市の自死遺族。06年12月、24歳の次男が亡くなった。友人の借金の保証人を引き受けていた。その友人が姿を消した。「代わりに払い続けてきたが、もう限界です。普通の生活をしたかった」。遺書には、そうしたためてあった。
 悔恨と苦痛で何も手に付かない日々が続いた。仕事をやめ、体重は12キロも減った。苦しさを打ち明けられる場を求め、仙台市であった子どもを亡くした親の会に参加した折のこと。偶然手にした河北新報の記事で藍の会を知り、田中さんに涙ながらに電話をした。
 機会を見つけては仙台での分かち合いの場を訪れた。「初めて会う人ばかりなのに、目と目が合うだけで親しくなれる。分かち合いで、そんな温かさに包まれました」と桑原さん。生きる力を仲間からもらったという。
 
 茨城県ひたちなか市の大森郁子さん(65)も、初めて遺族としての訴えを発した場が仙台だった。08年5月の「全国自死遺族フォーラム」。文字通り遺族が企画、運営した初の全国集会で、東北や関東、西日本の約150人が会し、壇上でマイクを握った。
 藍の会の分かち合いや手紙、電話の相談を機縁につながった30の都道府県、約250人の遺族が「全国自死遺族連絡会」を結成。田中さんを世話人に、フォーラムは旗揚げの場となった。
 大森さんは03年、33歳の息子を失った。山で遺体が発見されるまで、4カ月かかった。警察の「捜索願は山ほどあり、順番待ち」との対応に深く傷ついた。民間の自殺予防の電話相談に「機械音声の案内が分からず、これでは誰も救われない」と絶望した。
 海での自殺を思い立ったが、死にきれなかった。インターネットで知った藍の会に思いを書きつづった。1年で48通もの手紙が返ってきた。
 参加を誘われたフォーラムで、大森さんは「人を助ける言葉を皆で伝えよう」と訴え、昨年春、水戸市で「さざれの会」を立ち上げた。隔月で分かち合いの集いを催す。
 桑原さんは、島根の地元新聞に自らの体験を公表して仲間を募り、08年8月に「しまね分かち合いの会・虹」を始めた。行政の支援も得て、出雲市をはじめ五つの市に集いを広げている。
 連絡会の仲間は現在、44都道府県に約900人。遺族の自助グループは26地域で活動する。フォーラムも昨年、第2回が東京で開かれ、今年は「9月に京都に集おう」と固く約束している。
 

2010年05月04日火曜日
 
 
 

2010.5.5河北新報
(3)「相談」がつなぐ/一人の闘い助けたい

 
山形地裁での2度目の傍聴後、渋谷さん夫婦を励ます田中さん(右から2人目)。山形県内の自死遺族も駆け付けた=4月20日
 
 
 「遺書に書かれたつらく苦しい日々を過ごした娘の心に近づき、寄り添い、きょうまで生きてきた。ただ真実を知りたいだけです」。山形市の山形地裁。1月26日、渋谷真理子さん(49)の震える声が法廷に響いた。
 山形県立高畠高(高畠町)で2006年11月、2年生だった一人娘の美穂さんが飛び降り自殺をした。夫の登喜男さん(58)とともに「いじめはなかったのか」を問い、県を訴えた裁判の第1回口頭弁論。同じ自死遺族が傍聴席で見守った。
 仙台市の藍(あい)の会と郡山市の「えんの会」の3人。高速バスや新幹線で駆け付けた。渋谷さん夫婦が昨年春、仙台の分かち合いの集いに初めて参加して以来の仲間だ。
 「いじめ自殺の親の会を訪ねたが、関西などで遠く、地元では語れぬことも…。どん底の時に藍の会を知って相談の電話をかけ、思いを受け止めてもらった」と登喜男さんは振り返る。
 いじめ自殺をめぐり、行政を相手にした裁判は弁護の引き受け手を探すのが難しく、地域の人間関係もあり、遺族は孤立を深める。「声を出して動く仲間から勇気をもらいました」。夫婦は分かち合いから、大きな支えも得た。
 
 多くの遺族がつながった藍の会の相談は「24時間、365日」。自殺への不安や未遂体験に悩む人が相談できる場「心サロン」も設けている。
 「夜中も携帯電話を枕元に置き、いつでも何時間でも話を聞きます。人の命にかかわる相談は常に『今』しかないのです」と代表の田中幸子さん(61)。06年7月の会発足以来、手紙や電話、メールで交わしたやりとりは約4万件に上るという。
 青森市の近藤貴彦さん(44)が田中さんに相談したのは今年2月だった。ホームページを見て電話をかけ、「青森に遺族の会をつくりたい」と切り出した。
 近藤さんは地元の銀行員だった父を1988年に自殺で失った。きまじめな父の「理由の分からない死」が重くのしかかったためか、01年に母が胃がんで、その4カ月後に弟が自殺で逝った。
 東京の大手電機メーカーに勤めていた近藤さんも気力が衰え、遅刻、欠勤を重ねて退社。戻った青森でも母の入院後、症状がぶり返した。弟も同様だったという。
 うつと診断され、父の縁で得た職場も休みがちになって辞めた。たった一人の苦闘が始まった。
 
 「医師の処方薬が強い眠気を誘い、食事もできず寝る生活になりました。おかしいと訴えると薬が増えた。生きる目標は飼い猫への餌やりだけ」と近藤さん。2年して治療先を変えると、薬が適量よりずっと多いと教えられ、あのままでは死んでいたと思った。
 東京や大阪、青森市での遺族の集いに足を運んだ。そこで「自分の経験を生かし、うつや薬の問題も含め、一人で悩む人を助けたい。自殺への偏見が根強い青森に、誰でも何でも話せる会をつくりたい」と希望を温めた。
 地元で出会った遺族4人が賛同していた。青森が古里の田中さんも準備の会合に出席。名称は「ひまわりの会」と決まった。
 4月17日、第1回の集い開催にこぎ着け、新たに青森市内の遺族2人が参加した。会場には藍の会、えんの会だけでなく、全国自死遺族連絡会でつながる東京の自助グループから応援に来た遺族の姿もあった。
 

2010年05月05日水曜日
 

2010.5.7河北新報
(4)新たな担い手/命の希望、つなぎ止め

 
自助の運動をテーマに開かれた第2回「全国自死遺族フォーラム」。連絡会に加わる遺族は44都道府県に広がった=昨年9月、東京・日本財団ビル
 
 
 「綱が切れて死ねなかった、農薬を飲んだ…。自殺未遂の経験の多さに驚きます。仕事、家族、友人と、つながりが負の連鎖で失われる時、誰もが死の危険に陥る」と立岡学さん(36)は話す。
 理事長を務めるNPO法人ワンファミリー仙台は、仙台市内でホームレスの自立支援やシェルター運営に取り組んでいる。昨秋、路上生活の人たちに聞き取り調査をしたところ、「リストラで失業」とともに「自殺を考えた」との声が相次いだ。
 以来、弁護士、臨床心理士らと組んで自殺の問題と向き合う。「連鎖を逆戻しし、心を落ち着けられる所で寝て食べ、それから借金整理や生活保護申請、職探しなど、暮らしと人の関係を再建してもらう。その支援をして初めて自殺予防です」
 自殺は「選ぶ死」「特殊な死」「個人の問題」ではなく、社会の誰もが陥る孤立の死。その認識が少しずつ広がってきた。
 
 4月24日に開かれた宮城県社会福祉士会の総会会場に、仙台市の自死遺族会「藍(あい)の会」代表の田中幸子さん(61)がいた。
 社会福祉士は幅広い福祉の現場での相談や調整役を仕事とする。田中さんは全国自死遺族連絡会の世話人として、社会福祉士が自殺予防、遺族支援の担い手となってくれるよう要請した。
 生活苦や失業、多重債務、職場のパワーハラスメントや過労、学校のいじめ、家族の不和や虐待、アルコール依存症―。遺族や自殺未遂経験者らが相談で訴えるものの一部だ。自殺のあらゆる要因を、当事者は身を切るような痛みとともに知る。
 総会で田中さんは「自殺は問題がいくつも絡んで起こり、遺族も死を悲しむ暇もない状況に追い込まれます」と訴えた。
 自治体の窓口の大半は精神保健の担当課。心の相談やうつ対策が自殺問題の主施策だ。国も3月からうつ早期受診キャンペーンを始めたが、連絡会が行った遺族1000人余りの聞き取り調査では「自殺者の7割が精神科を受診、治療中だった」との実情も分かった。
 「うつになる原因の方を具体的に解決する総合支援が大切。なのに、助けを求める多くの遺族らが『担当が違う』と役所をたらい回しにされる。対処の道筋を助言し、窓口につないでくれる人が必要です」と田中さん。
 県社会福祉士会は要請に全面協力を決めた。高齢者の虐待問題では仙台弁護士会と専門職チームを組み、中学校区単位の「地域包括支援センター」を窓口に実践を重ねる。新たに遺族の総合相談などの活動で藍の会と連携したいという。
 「自殺の問題で何ができるか、議論していました。縦割りを超え、相談者の問題解決のつなぎ役になるのが社会福祉士。希望ある生活への支援こそ福祉であり、自殺予防につながる」。高橋達男事務局長(仙台市児童相談所長)はこう応じた。
 
 全国自死遺族連絡会は各地の自助グループの在り方と同様、個々の遺族がゆるやかにつながる「場」だ。悲しみさえ語れなかった声なき声が集い、当事者の運動として地域と社会に響き始めた。
 昨年9月に東京であった第2回の全国自死遺族フォーラムには内閣府、宮城県、仙台市などの自殺対策担当者も参加。「支援する側だけで決めるのでなく、当事者の意見を総合対策に生かして」との訴えに聞き入った。
 新たなつながりを広げようと、連絡会はNPO法人化を国に申請している。
 

2010年05月07日金曜日
 
 
 
2010.5.8河北新報
(5完)自助運動の意味・岡知史上智大教授/自分らしさ導く力に


 
藍の会の講演会に招かれ、自助の運動について語る岡教授(右奥)=3月14日、仙台市内
 
 
 昨年11月、内閣府が催した「自死遺族支援スタッフ養成講習会」に、全国自死遺族連絡会が初めて参画した。仙台市や東京の遺族が講師を務め、全国の行政や社会福祉協議会の関係者と支援の在り方を議論した。障害者らの自助グループの運動に長くかかわる上智大総合人間科学部の岡知史教授(51)=社会福祉学=も講師の一人となった。
 「2006年に自殺対策基本法ができて以来、国が遺族と連携した画期的な機会でした。当事者の声にまず耳を傾けることが、遺族支援に当たって一番大事だからです」
 自助グループは、ある体験を共有する当事者たちが運営主体となり、相互支援の「場」づくりなどの活動をしている。遺族同士の「分かち合いの集い」を開く仙台市の藍(あい)の会が一例。その役割とは何だろうか。
 「社会や行政に訴える力があることです。個人の力には限界があり、自助グループは社会と個人をつなぐ『橋』のような役割を果たす。それまで見えなかった問題を伝えるなど、社会の考え方を変える力にもなります」
 自殺者が年間3万人を超える状況が続く中、自死遺族は一般に「悲しみを抱えた弱者」とされ、行政や専門家から助けられる側とみられてきた。当事者が自らの思いを社会に訴え、問題解決の運動に立つことはそれ故に強い力を生み、一方で他者である支援者側との意識の溝も生じやすい。
 「支援する側は遺族の『弱さ』『できないこと』に注目し、悲しみを『癒やすべきもの』と考えやすい。当事者の多くは自分にある『強さ』や『できること』に力を見つけ、悲しみも『私自身のかけがえのない一部』とし、癒やされぬ悲しみとともに生きようとする」
 大切だった人が自ら命を絶った状況や理由、残された遺族の感情や抱える問題、求める支援の在り方も一人一人違う。「悲しみの中に愛する人が生き続けている」という思いを語る人も多い。
 「心のケアを―というそれだけの言葉に、亡き人への思いや自分の人生を否定されたような気持ちになる人もいます。大事なのは、どんなに善意であっても、ケアを無理に押し付けず、当事者の力を信頼することです」
 互いの悲しみを「つながる力」に変えて広がる自死遺族の運動は、がん患者や障害のある人々の当事者運動の歩みにも通じる。精神障害者の自助グループが全国に広がった二十数年前の状況は、自死遺族たちの運動の今に重なるという。
 「当時、医師や保健師から『精神障害者の自助なんて無理。危険だ』『そんなの、できるわけがない』と言われました。40年ほど前には身体障害者の人々も、専門家からの懸念や圧力をはねのけて自助グループを発展させた歴史があります」
 昨年12月、厚生労働省が開いた「自死遺族ケアシンポジウム」。厚労省が全国の相談担当者向けに作成した遺族支援指針の見直しに、当事者の意見を取り入れようと、自死遺族連絡会世話人で藍の会代表の田中幸子さん(61)を招いた。有識者中心だった議論の場に遺族の参加は初めてだった。
 「自助グループとは『自分の力で自分らしく、人間らしく生きたい』という願いを実現させる運動です。もちろん、人によって生き方の選択があります。それを助ける多様な場を形にし、地域の支援者や行政をつないでいく上でも、当事者の声と視点はもっともっと新しい可能性を開きます」
(編集委員・寺島英弥)
 

2010年05月08日土曜日

GW明けはご用心「職場のうつ病」 国、本格対策に乗り出す 

2010.5.6 23:30 産経新聞

 



 仕事のストレスなどで起きる鬱病(うつびょう)などの精神疾患に対し、国が本格的な対策に乗り出している。
長妻昭厚生労働相は労働者の健康診断項目に鬱病を加えることが可能か法改正を含め検討を指示。同省の「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」も、5月中にもまとめる提案に対策を盛り込み、本格的な論議を始める。

 職場の鬱病は増加の一途をたどっている。厚労省によると、平成20年度に仕事などのストレスが原因で鬱病などにかかり労災認定を受けた人は、過去最多となる269人を記録。これは5年前(15年度)に認定を受けた108人の約2・5倍にのぼる。

 長期休暇明けは特に自殺者が多いとされ、17年はゴールデンウイーク明けの5月9日に132人が自殺した。

 こうしたなか、厚労省は今年1月、「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」を設置。悩む人たちにメッセージを出すことの重要性や、相談・支援ができる態勢作りなどについて話し合っている。

 長妻厚労相が鬱病のチェック機能を健康診断に加えられるか検討するよう指示したのは、ここ10年で専門・技術職や管理職の自殺率が急激に上昇していることも背景にあるようだ。

 労働安全衛生法で企業に実施が義務づけられた健康診断は、実施項目も労働安全衛生規則で規定。鬱病チェックを盛り込むためには今後、法改正を検討する必要がある。

 

 ただ、健康診断で企業が社員の心の病を把握することに、不安感を訴える声も強いという。同省は「本人には分かりにくい鬱病などを周囲が知ることが不利益に働かないよう、考えていかなければならない」と指摘する。

 また、厚労省のホームページ内に働く人のためのメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」(http://kokoro.mhlw.go.jp/)を開設。心の健康度や疲労の蓄積度を診断するセルフチェックリストや、本人や家族のための相談機関の案内などをしている。同省では「心の健康確保に役立ててもらえれば」と話している。


豊橋に“募金型”自販機 地元NPO法人が設置
2010年5月4日中日新聞
 
飲み物を買うと、1本に付き10円を障害者支援に寄付できる自動販売機=豊橋市向草間町のくくむガーデンで
 
 
 飲み物で障害者の自立支援を助けて−。障害者の就労支援をする豊橋市南瓦町のNPO法人「福祉住環境地域センター」が、飲み物を購入すると法人に募金ができる自動販売機を、同市向草間町の農産物直売店「くくむガーデン」入り口に設置した。同センターによると、同種の自販機設置は三河地方では初めて。加藤政実代表(60)は「障害者を地域のみんなで支えてほしい。1本から協力を」と呼び掛けている。
 
 同センターによると、自販機でジュースやコーヒーなどを購入すると、1本分の代金のうち10円が寄付に充てられる。福祉に興味のある市民が気軽に募金できるほか、設置する企業も社会貢献をアピールできるなどの利点がある。
 
 精神障害者が集うクラブハウスの運営費など、同センターの活動資金がなかなか集まらないため、現状を改善しようと加藤代表らが昨年10月、思い付いた。
 
 同市上野町の自販機販売・管理会社「サン・カンパニー」に協力を依頼した。同センターは今年2月から市内の企業を相次いで訪問。趣旨を説明した結果、市内の製造会社や病院など計4カ所で設置が決まった。くくむガーデン以外の3カ所は5月中旬までに取り付けられる。
 
 「当面の目標は50台。多くの企業・団体、個人に利用してほしい」と加藤代表。自販機には3カ所に設置に協力した企業・団体名が入る。正面左下の広告スペースでは、法人が募金の活用報告もしていく予定。(問)福祉住環境地域センター=電0532(52)4315
 
 (世古紘子)

2010.5.3読売新聞
うつ治療を見直す(1)1日17錠…症状が悪化

 
 
田島治さん(奥)の診察を受ける主婦(東京都内の診療所で) うつ病の治療を続けていた神奈川県の主婦(36)は、一昨年に出産した直後から、処方される薬の種類や量がどんどん増えた。
 
 精神科診療所で「イライラする。夜寝つけない」と訴えると、もともと飲んでいた抗うつ薬、睡眠薬、抗不安薬に、別の睡眠薬と抗不安薬が加えられた。
 
 イライラしたのは、産後痛がつらい時に「寝てばかりいる」と夫に責められたから。しかし、診察で話そうとしても「それは家庭の問題」と打ち切られ、聞いてもらえなかった。
 
 次の診察で再びイライラと不眠を告げると、さらに薬が増えた。半年後には、統合失調症にも使われる抗精神病薬も加わって1日17錠に。症状は悪化した。
 
 体がだるく、頭がボーッとした。寝つきは悪く、眠ると夕方まで起きられない。子どもの世話も出来なくなった。夫との口論でも反論できず、携帯電話や植木鉢を壊したりした。
 
 昨春、治療に疑問を持った母に連れられ、東京都内の診療所で杏林大保健学部教授の田島治さんの診察を受けた。問診などの結果、「うつ病の症状ではありませんよ」と言われた。
 
 だるさ、日中の眠気、イライラなどは、大量に飲む薬の副作用と考えられるという。「病気の悪化と思っていたので驚いた」と主婦。薬の減量が始まった。
 
 ただ、急にやめると、めまいなどが出る場合もあり、徐々に減量した。約1年かけ、今では睡眠薬を1日半錠飲むだけ。「薬が減るに従って頭もすっきりし、育児もできるようになった。元の自分に戻った気がする」と喜ぶ。
 
 田島さんによると、多くの種類の薬を併せ飲むと、副作用で状態が悪化し、治療が長引くことがある。どの薬が効いて、どの副作用が出ているか、判別も難しくなる。主婦のようなケースは珍しくないという。
 
 読売新聞が、全国の119精神科診療所から回答を得た調査では、「過半数のうつ病患者に複数の抗うつ薬を処方する」施設が14%に上った。
 
 田島さんは「精神科の薬の処方は1種類が原則。組み合わせが合理的な場合もないとはいえないが、次々と薬剤が増えるのは危険。依存性のある薬もあり、安易な処方は慎むべきだ」と警告する。
 
 うつ病患者は、昨年発表の厚生労働省調査で100万人を超えた。治療が長引く患者も少なくない。見直されつつある診断と治療の現場を報告する。
 
(2010年5月3日 読売新聞)
 
 

2010.5.4読売新聞
うつ治療を見直す(2)自殺の陰に過剰な投薬

 
 
記録書類を前に、自殺遺族からの電話相談を受ける田中幸子さん(仙台市の自宅で) 「その瞬間は記憶がなく、気づいたら病院でした」
 
 東海地方の女性(24)は昨年、自宅2階のベランダから飛び降り、全治3か月の打撲傷を負った。
 
 気分の落ち込みが続き、精神科を受診したのは19歳の時。抑うつ状態と診断され、抗不安薬と睡眠薬を飲んだが改善しない。抗うつ薬が追加され、他の薬の数も増えていった。
 
 生理が止まり、乳汁が出た。衝動的になり、自宅で物を投げるなど暴れた。幻聴や被害妄想も表れた。パーソナリティー障害、不安障害、統合失調症……。病名が次々と増え、入退院を繰り返した。「死にたい」が口癖になり、ベランダから飛び降りた頃は、1日20種類前後の薬を飲んでいた。
 
 抗うつ薬の使用説明書には「24歳以下の患者で、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加するとの報告がある」と記されている。だが女性は「医師から説明を受けたことはない」と振り返る。
 
 女性は医療機関を替え、薬を減らして回復。今は、ごく少量の抗不安薬と漢方薬の服用で元気に暮らす。
 
 主治医の牛久東洋医学クリニック(茨城県牛久市)院長、内海聡さんは「最初の抑うつ状態は家庭内の不和が原因。そこに全く手をつけず、過剰な投薬で様々な精神症状を生み出した医師の責任は重い」と語る。
 
 自殺者は昨年も3万人を超えた。国の調査では、亡くなる1年以内に精神科を訪れた自殺者は、調査対象の半数に上る。早めに精神科を受診し、適切な治療で死を思いとどまる人も少なくないが、必ず救われるとは言えないのが現状だ。
 
 さらに、治療の不適切さもある。全国自死遺族連絡会が会員約1000人に行った調査では、最も衝動性が高い「自宅からの飛び降り」で死亡した72人は、全員が精神科に通院中で、1日15〜20錠前後の薬を処方されていた。
 
 同会の田中幸子さん(61)も5年前、薬の怖さを実感した。警察官の長男が過労の果てに自殺し、「眠ったら息子に悪い」と、葬儀後も自分を責めて不眠に陥った。精神科を受診し、睡眠薬を処方された。
 
 「寝ない!」と抵抗する心身を、睡眠薬でねじ伏せようとした。すると、眠くなる前に感情が高ぶり、記憶が途切れた。後から聞くと、大きなソファを放り投げてしまっていた。
 
 内海さんによると、睡眠薬で酒酔いに似た状態になり、感情が抑え切れず爆発してしまう人もいる。「不眠の原因を探り、癒やす治療をしなければ、睡眠薬ですら、思わぬ行動の引き金になる」と警告する。
 
(2010年5月4日 読売新聞)
 
 

2010.5.5読売新聞
うつ治療を見直す(3)考えの偏り 改める療法

 
 
日々の行動を記したノートを見ながら、女性にアドバイスする茅野分さん(右)(東京都千代田区の銀座泰明クリニックで) 3年前、東京都の文具店で派遣社員として働いていた女性(32)は、リストラで社員が減り、商品の発注から万引き対応まで、数人分の仕事を1人でこなした。
 
 大きなストレスがのしかかり、やがて頭痛や吐き気など体の不調が起こった。仕事中、突然涙が止まらなくなったりもした。
 
 銀座泰明クリニック(中央区)で、軽いうつ病と診断された。抗うつ薬を飲みながら、一時休んだ仕事を再開。しかし周囲の状況は変わらなかった。
 
 仕事中、気力がなえて立っていられず、店の隅で何度も座り込んだ。客と話すのもつらくなり、ついに仕事を辞めた。働けない自分を責め、うつ症状は悪化、家に引きこもった。
 
 そこで、同クリニック院長の茅野分さんから、考え方の偏りを治す「認知行動療法」を勧められた。軽度から中等度のうつ病で薬物治療と同等の効果があり、かつ再発しにくい。薬と併用すると、より治療効果が高いという研究もある。
 
 根拠もないのに思い込む、短絡的に結論づける、すぐに自分を責める――などの傾向がある人は、特に効果が期待できる。
 
 女性はまず、家で過ごす時や外出した時などに、日々の行動、その時の気分、頭に浮かんだ考えをノートに詳しく書き留めた。月2回の認知行動療法で心理士にノートを見せ、話をする。
 
 マイナス思考になっていると、心理士が「別の見方、考え方はできませんか」と問い、一緒に考えていく。
 
 たとえば、女性は仕事を辞めてからも毎朝8時に起きていたが、「遅すぎて恥ずかしい」と感じていた。その理由を聞かれると、「社会人は6時に起きて働くべき。できない私はダメ人間」と答えた。
 
 「毎朝決まった時間に起きているのだから、むしろ褒められてもいい」。心理士の助言に、女性はハッとした。「私は悪くないんだ。思い込みだったんだ」
 
 治療を続けて次第に気力が戻り、1年もすると抗うつ薬がいらなくなった。「うつ病は、自分の考え方のクセを知り、向き合うことで治ると実感した。薬でごまかしていたら、回復できなかったかもしれない」
 
 認知行動療法は先月から、医師が行う場合は健康保険が使えるようになった。しかし、専門知識のある医師は少なく、治療を受けられる施設は限られる。
 
 慶応大保健管理センター教授の大野裕さんは「心理士や看護師らも取得できる認知行動療法の公的資格を作り、薬以外の治療の選択肢を早急に広げる必要がある」と訴える。
 
(2010年5月5日 読売新聞)
 

2010.5.7読売新聞
うつ治療を見直す(4)軽い運動で戻った笑顔



 千葉県柏市の女性(36)は昨年夏、市の広報誌に書かれた案内に目を留めた。「薬を使わずに治す!」。内容を読むと、運動で「うつ」の改善を目指すという。参加してみよう、と思った。
 
 3年前に抑うつ状態と診断されて以来、抗うつ薬などを飲み続けてきたが、なかなか回復せず、休職が続いていた。「薬以外に良い方法はないのかな?」。そう思い始めたころだった。
 
 このプログラムは、千葉大予防医学センターと東大生涯スポーツ健康科学研究センター(柏市)の共同研究。昨年9月から半年間、うつ病患者らに運動を続けてもらい、うつの改善効果を調べた。
 
 
参加者が取り組んだ自転車こぎ運動。ハンドルが動き、ストレッチの要素も含まれている(東大生涯スポーツ健康科学研究センターで) 参加者は毎週水曜日、東大のセンターで1時間、ペダルをこぐウオーキングや、ハンドルをひねりながら行う自転車こぎなど、器具を用いた運動に取り組んだ。どれも筋トレというより、ストレッチのように、ゆっくり体を伸ばす動作を重視した運動だ。
 
 そして毎回、「憂うつか」「自分に失望しているか」「満足か」など21項目の自覚症状を、0〜3点の4段階の評価で記録した。
 
 女性は、気分の落ち込みなどの点数が、当初は「問題あり」のレベルだったが、半年後には「問題なし」まで下がった。以前は家事も全くできない状態だったが、今は炊事や掃除をこなし、外出する機会も増えた。復職に向けたリハビリにも取り組み始めた。
 
 「家の中でじっとしていた時は、この先ずっと良くならないのか、と不安になった。体を動かした方が気分転換になり、落ち込むことが減りました」と女性。プログラム終了後も週3回程度、30〜40分のウオーキングをしたり、毎晩ストレッチをしたりと、運動の習慣を続けている。
 
 20人が参加したが、出席率50%以上は16人。そのうち9人で評価尺度の点数が改善。中等症以上の9人中3人で、ほぼ自覚症状がなくなる効果が確認された。
 
 千葉大教授の清水栄司さん(精神科医)は「運動には、脳を刺激し、沈んだ気分を持ち上げ、意欲を呼ぶ可能性がある」と解説する。
 
 軽い運動でも効果が期待できるといい、「運動嫌いな人でなければ、ぜひ試してほしい」と話す。
 
 日本でのうつ病治療は、多くが薬物療法から始まるが、英国の治療指針では、軽症者には運動やカウンセリングなどを勧めている。
 
 運動指導に当たった東大特任教授の小林寛道さん(運動生理学)も「回を重ねるごと、参加者の笑顔が増えた」と実感している。
 
(2010年5月7日 読売新聞)

2010年05月02日わかやま新報
障害者雇用の一役、古着を海外で再利用

 
倉庫内で古着を整理する従業員 
 
着なくなった服はありませんか?。 運送・リサイクル業の(有)高雄運輸 (田辺市上秋津、 山方一夫社長) はこのほど、 捨てられることの多い古着を発展途上国でリユース (再利用) しようと、 和歌山市西浜の倉庫で無料回収を始めた。 回収作業には一般就労を目指す障害者を雇用。 障害者雇用にも一役買っている。 山方社長は 「ごみとして捨てる古着があれば、 ぜひ持ってきてください」 と呼び掛けている。
 

山方社長によると、 国内で発生する古着は年間約200万トン。 そのほとんどは廃棄され、 リユースされているのはわずか1割程度という。 その現状を改善したいと昨年12月に田辺市に倉庫を開設、 ことし3月には西浜にも倉庫を借り、 古着リユースの推進へ取り組んでいる。 回収した古着は主に東南アジアやアフリカに届けるという。
 
現在、 知的または精神障害のある南健司さん (41)、 藤井孝則さん (33)、 福田健一さん (37) の3人が働いており、 倉庫内で集まった古着を整理したり、 回収を呼び掛けるために地域でポスティングしたりと日々、 仕事に励んでいる。 倉庫開設から約1カ月、 最近では土日に古着を持って来てくれる人が増えてきたといい、 3人は 「お客さんとのコミュニケーションが楽しい」 「ありがとうと言ってもらえたときが一番うれしいです」 とにっこり。 山方社長は 「和歌山の状況を見て倉庫を増やすことも検討し、 障害者雇用にもつなげていければ」 と話している。
 
回収できるものは、 まだ着ることができる衣類全般、 肌着、 着物のほか、 靴、 靴下、 手袋 (ペアでそろっているものをひもで束ねる)、 カーテン(金具は外す)、かばん(ファスナーなどが壊れていないもの) など。 濡れているもの、破れたもの、 汚れのひどいもの、 ペット用に使用したものなどは回収できない。
 
また、 一部家電製品も土日祝は倉庫で、 平日は倉庫近くの坂井マリン(株)で回収している。 回収期間は6月30日まで。 回収時間は午前10時から午後5時 (正午から1時は休憩)。詳しい問い合わせは、 古着が高雄運輸 (090・8237・3949) 、 家電が坂井マリン(株) (090・5016・0433) へ。

2010.5.3読売新聞
うつ治療「薬物偏重」は7割…精神科診療所アンケート
「過半数に複数処方」1割

 国内の患者数が100万人を超えたうつ病の治療について、読売新聞が3〜4月、全国の精神科診療所にアンケート調査を行ったところ、7割が「日本のうつ病治療は薬物に偏っている」との認識を示した。
 
 多すぎる薬の服用による副作用や、薬だけでは治りにくい患者の増加など、近年指摘されている課題が反映された形だ。
 
 調査は日本精神神経科診療所協会加盟の1477施設に行い、119施設から回答を得た。日本のうつ病治療の多くは薬物治療中心だが、調査では、薬物偏重の傾向があると「強く思う」が19%、「ややそう思う」が54%と、7割が懸念を示した。
 
 最近増えたとされる軽症患者に行う最初の治療は、「薬物治療だとは思わない」が41%。優先すべき治療として、患者の話を聞いて問題解決を図る精神療法や、仕事を減らしたりする「環境調整」も多く挙がった。英国の診療指針では、軽症者の最初の治療は、カウンセリングなどを勧めている。
 
 一方、抗うつ薬を何種類も服用すると、無気力やイライラなどの副作用が強くなる恐れがあり、処方は1種類が基本。しかし、「患者の過半数に複数の抗うつ薬を処方している」との回答が14%に上った。
 
 大野裕・慶応大保健管理センター教授(精神科医)は「悲観的になりがちな患者の考え方や行動を変える認知行動療法など、治療の選択肢を増やすことが重要だ」と話す。
 
(2010年5月3日 読売新聞)

共生の花が咲く 病院と学校の思いが合致
[ 09:16]大分合同新聞
 
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慣れた手つきで花壇の手入れに励む「森の学校」の通所者
 「わたしたちも社会にかかわっていきたい」―。精神疾患のある障害者たちが、自立を目指して笑顔で仕事に励む場所が中津市内にある。
 
 市内永添の中津胃腸病院で、福岡県豊前市のNPO法人「森の学校」(舟橋慎一郎理事長)の通所者が花の手入れに励んでいた。額に浮かぶ汗をぬぐいながら、慣れた手つきで雑草を摘み取り、土をならしていく。通所者の女性(59)は「自分たちが育てた花が咲くのはもちろん、患者さんや来院者に喜んでもらえると思うとうれしいですね」と笑みを浮かべる。
 医療の隣接分野との連携を深めたい病院、雇用の場を確保したい学校の思いが合致し、両者は2007年、病院敷地内の除草作業や花壇管理などの委託契約を締結した。以来、学校の通所者が毎月3、4日病院を訪れて作業に従事している。
 病院によると、患者からも「手入れがよく、心が和む」「美しい花に癒やされる」と、好評という。こうした取り組みもあって、病院は障害者雇用に積極的に取り組む企業を県が認証する「県障がい者雇用応援団企業」にも登録された。
 近年、経済情勢の悪化で福祉分野を含めた社会貢献に積極的な企業・団体が減っており、「働いて社会とかかわりを持ちたい」と思う障害者にとっては厳しい状況だという。「森の学校」運営メンバーの舟橋次郎さんは「(一方的な補助ではなく)しっかりと働いて、その対価をもらうことが自立への第一歩になる。中津胃腸病院のような取り組みが波及していってほしい」と話した。

夜おしっこに起きる高齢者、回数多いほど高い死亡率

20105241分朝日新聞

 
 


 夜、おしっこに起きる回数が多い高齢者ほど死亡率が高い。そんな調査結果を東北大の研究チームがまとめた。2回以上の人の死亡率は1回以下の人の約2倍で、回数が増えると死亡率も高くなる。チームは死因を詳しく調べていないが、持病が悪化したケースのほか、トイレに起きて転んで骨折し、寝たきりになって死につながった場合が含まれているとみている。

 東北大の中川晴夫講師(泌尿器科)らが2003年から5年間、仙台市内のある地域に住む70歳以上の高齢者784人を追跡調査した。

 まず、1カ月間の平均的な夜間の排尿回数を聞いたところ、1回以下の人は425人だった。そのうち18人が調査期間中に死亡、2回以上の359人のうち35人が亡くなった。年齢や持病などの影響を考慮して分析したところ、2回以上の人の死亡率は1回以下の人の1.93倍だった。回数別では2回の人は1.59倍、3回2.34倍、4回以上3.60倍だった。

 中川さんによると、夜間の排尿回数が増える原因としては心不全や糖尿病、高血圧などが考えられ、そうした病気が死亡につながった可能性がある。夜間の排尿が2回以上の人の中には、死亡の直前に骨折で入院した人が数人いたことから、骨折が原因で寝たきりになり、全身状態が悪化して死亡に至ったケースもあったとみている。

 夜間の排尿回数が多いと骨折の危険が高まることは一部の専門家の間で知られている。夜間の排尿回数が多いと死亡率が上がることはスウェーデンの研究でも示されているという。

 中川さんは「夜間の排尿回数が多い人はかかりつけ医に相談してほしい」と話す。(野瀬輝彦)

 


2010.4.30共同通信
障害年金の案内せず 428自治体、手帳交付時
 全国の市区町村のうち24%に当たる428自治体が、身体、知的、精神障害者に障害者手帳を交付する際、障害年金の存在を案内していなかったことが30日までの厚生労働省の調査で分かった。
 
 障害年金をめぐっては「制度の存在や対象になることを知らずに申請せず、受給漏れの人が相当数いるのではないか」との指摘がある。
 
 旧社会保険庁(現・日本年金機構)はこれまで障害年金のパンフレットを自治体に送っておらず、要望を受け昨年7月にようやく428市区町村に配布。国と地方の連携の悪さが浮き彫りになった。
 
 調査は昨年6月、全1798市区町村(当時)を対象に実施。1689自治体から回答を得た。
 
 手帳交付時に障害年金の周知をしていない市区町村は、職員数が少ない小規模町村が大半を占めるが、宇都宮市、津市といった県庁所在地、東京都新宿区や立川市などの大都市も含まれている。都道府県別では北海道が66と最多で、長野の32、沖縄の23と続く。
 
2010/04/30 16:53   【共同通信】

【衝撃事件の核心】「白衣の天使」の悪意は寝たきり患者に向けられた
2010.4.30 18:00産経新聞

 
 入院患者の肋骨を折り、逮捕・起訴された羽室沙百理被告が勤務していた佐用共立病院=兵庫県佐用町 兵庫県佐用町の佐用共立病院の看護師が、入院患者の肋骨(ろっこつ)を折っていたとして兵庫県警に傷害容疑で逮捕、起訴された。狙ったのは寝たきりで意思疎通ができない高齢者。周囲から「まじめ」「おとなしい」とみられていた看護師は「職場での人間関係がうまくいかず、イライラしていた」という身勝手な理由で、助けを求めることのできない高齢者ばかりを狙い続けた。「白衣の天使」ともいわれる看護師が重ねた悪質な犯行は、多くの患者と、その家族に不安と衝撃を与えた。看護師が犯行に手を染めたきっかけとは…。
 
不自然な骨折
 
 佐用共立病院で患者の異常が発覚したのは平成20年12月8日。女性患者=当時(85)=に呼吸の異常があり、検査をしたところ肋骨4本が折れているのが分かった。その後も同年12月末までに、75歳女性の肋骨5本、99歳男性の肋骨7本の骨折が判明した。
 
 患者は全員が肺炎を患っており、骨粗しょう症などで骨がもろくなっていたため、せきをしたり体位を変えただけでも骨折する可能性があった。このため病院は当初「病気による骨折」と判断。事件性について疑わず、この時点では警察にも届けなかった。
 
 しかし、その後も患者の肋骨骨折は相次いだ。4件目となる78歳の女性の骨折が判明したのは翌21年1月5日。事態を重く見た病院側は、故意に折られた可能性もあるとみて看護師ら20人を聞き取り調査したが、外部からの不審者は浮上しなかった。このため内部犯行の可能性も視野に入れ、専門部会を設置。1月15日になって県警佐用署に届け出た。
 
 ところが、4日後の19日にも85歳女性、88歳女性の2人が肋骨を骨折していることが分かり、わずか1カ月あまりの間に6人の患者が不自然に骨折する異常事態となった。
 
第一発見者
 
 原因不明のなか、病院は夜勤の看護師を2人から3人に増員。骨折患者が病棟3階に集中していることから、3階廊下に防犯カメラを8台設置、骨折患者が出た4つの部屋にも1台ずつカメラを取り付けるなどの対策を取った。すると、患者の骨折は収まり、内部犯行の可能性が高まってきた。
 
 目撃者がいないことから県警の捜査も難航したが、当時の看護師の勤務状況などから、1人の看護師が浮上した。骨折した6人の患者を担当していた羽室沙百理被告(26)=傷害罪で起訴=だった。
 
 県警は今年3月11日、羽室被告について、85歳の女性患者の胸部を両手で押さえるなどして肋骨を12本折ったとして逮捕。その後も88歳の女性患者の肋骨を折った容疑で再逮捕した。
 
 羽室被告は、被害患者6人のうち3人の異常を報告した第一発見者だった。しかし病院が羽室被告に聞き取り調査を実施した際、「第一発見者なので私が疑われるのですか」と涙を流して否定していたという。
 
 羽室被告は調べに対し「職場の人間関係にイライラしてやった」と6人全員を骨折させたことを認めたうえで「体重をかけて胸を押すと『ボキッ』という音がした」と供述したという。患者は胸が陥没するほどで、強く圧迫されたことがうかがえる。
 
 人間関係のトラブルが背景にあったとみられるが、羽室被告は「患者のたんの吸引をしようとしたが、手で振り払われた。感謝してくれない」「自分が周囲から評価されていない」などとも感じていたといい、「異常を発見して自分をよく見せたかった」とも供述しているという。羽室被告は看護師の仕事に過度のストレスを募らせており、それが弱い立場の高齢患者へと向かっていったとみられている。
 
 羽室被告の逮捕を受け、病院は羽室被告を3月11日付で懲戒免職としたが、職場では「まじめで熱心」と評されていた。
 
 逮捕後に記者会見した穀内隆院長らも「本人はおとなしく明るい子。仕事も熱心だったので非常に驚いている。患者やスタッフとのトラブルもなく、信じられない」などと話している。
 
 骨折した6人は、昨年7月までに全員が死亡した。県警は司法解剖の結果、死因は肺炎などとし、骨折と死亡の直接的な因果関係がないとして、傷害致死容疑ではなく傷害容疑を適用した。
 
 しかし、6人のうち3人は、骨折が発覚してから1週間以内に死亡しており、穀内院長は「呼吸状態が悪くなったのは、骨折の影響もあると思う。司法解剖では死因との因果関係がないといっても患者は痛みを感じ、呼吸に悪影響を及ぼした。個人的には死期を早めてしまったのではないかと思っている」という見解を示している。
 
 
ストレスが引き金?
 
 同病院や県警によると、羽室被告は、佐用町内のマンションに住み、昨年10月に長女を出産して育児休暇中だった。長女と病院を訪れて母親らしくほほ笑む姿もみせていたという。
 
 出身は佐用町に隣接する宍粟市。尼崎市の看護専門学校を卒業後、平成18年に正看護師免許を取得し、尼崎市内のクリニックで働くことなった。その後、同年9月から佐用共立病院にパート職員として勤めることになったが、わずか7カ月で退職した。
 
 翌年4月には宍粟総合病院に移ったが、同病院も1年で辞め、20年4月から正職員として佐用共立病院に戻っていた。短期間での退職には人間関係のトラブルなどがあったとみられるが、以前勤務していた病院では患者を骨折させるケースはなかった。
 
 医療関係者が病院内で患者に暴行するなどして逮捕された事件としては、北九州市の北九州八幡東病院で平成19年6月、元看護課長が高齢の女性入院患者の足のつめを剥離(はくり)させていた事件のほか、今年3月には京都大学付属病院(京都市左京区)で入院中の女性患者の血中から高濃度のインスリンが検出され、不必要なインスリンを多量に投与したとして、殺人未遂容疑で看護師が逮捕された事件などがある。
 
 今回の事件は、重労働の看護師がストレスをためないようにするには、病院はどのような対策を行えばよいのか、病院の人事管理についても多くの課題を浮かび上がらせたと言える。
 
 事件後の記者会見で穀内院長は「彼女のストレスをフォローアップできなかったことを反省したい。今後このようなことが起きないよう、職員の精神的なケアをしていきたい」と述べ、再発防止と信頼回復に向けての取り組みを進めている。
 
 傷害罪に問われる羽室被告の刑事裁判は5月末、神戸地裁姫路支部で始まる。起訴内容については認めるとみられており、量刑が争点となる見通しだ。
 
 仕事へのストレスがなぜ弱い立場の高齢患者に向けられたのか。同様の事件の再発防止のためにも、動機の解明が求められる。
  

「患者が感謝してくれない」 肋骨折った看護師が動機供述 
2010.3.13 00:11産経新聞

 
 兵庫県佐用町の佐用共立病院で看護師が入院中の高齢患者の肋骨(ろつこつ)を折っていたとされる事件で、羽室沙百理(さおり)容疑者(26)=傷害容疑で逮捕=が動機について「患者が感謝してくれない」などと供述していることが12日、捜査関係者への取材でわかった。これまでに同僚との人間関係も理由にあげており、県警は、羽室容疑者が看護師の仕事にストレスを募らせていたとみている。
 
 県警や病院によると、羽室容疑者は平成18年9月から勤務。病院には20代の看護師は数人しかおらず、その他は40〜50代のベテラン看護師が多いといい、「相談する人がいない」と話すなど、悩みを抱えていたとみられる。調べに対し、羽室容疑者は6人の肋骨を折ったことを認めた上で患者への不満を訴え、「看護師の仕事は自分に向いていないと思っていた」などと供述しているという。
 
 また、20年12月以降、患者骨折が相次ぎ、同病院が看護師らの聞き取り調査を実施。その際、羽室容疑者は第一発見者を装って報告していたためか、「第一発見者だから疑われるのですか」などと涙を見せながら話したが、関与は否定していたという。
 
 羽室容疑者の逮捕を受け、同病院は12日午後、殻内隆院長らが会見。懲戒解雇処分にしたことを明らかにし、「彼女に強いストレスがあったようで、フォローできなかったことについて反省したい」と話した。
 

【インスリン投与事件】看護師の離職者、年10万人超
2010.4.30 23:15産経新聞

  日本看護協会(東京)が平成19年、全国約9千の医療機関を対象に行った実態調査によると、17〜18年の1年間で推計約10万2千人の看護師が離職していた。16〜20年の看護師の離職率は11〜12%台で、ほぼ横ばい状態という。
 
 また、協会が看護職を離職した約4100人に行ったアンケート(18年)では、理由として「上司・同僚・医師との関係」が約870人▽「責任の重さ・医療事故への不安」が約540人▽「自分の適性・能力への不安」が約390人−などとなり、「勤務時間が長い・超過勤務が多い」と回答した人も目立った。
 
 しかし、18年に看護管理者約2千人に対して尋ねた「考えられる看護師の退職理由」では、「長時間勤務」という回答はほとんどなく、協会は「離職者と管理者の認識に違いがある」と分析。「『医療事故を起こさないか』という不安から逃れられず、ストレスがたまる看護師も多い」と指摘している。
 
 
 
【インスリン投与事件】看護師の現場に渦巻くストレス ネットに生々しい書き込みも
2010.4.30 23:10産経新聞
  京都大学付属病院(京都市左京区)の元看護師が入院患者に必要のないインスリンを投与したとされる事件は、カルテ偽造に絡む最初の逮捕から2日で2カ月。捜査では元看護師が職場で大きなストレスを感じていたことが明らかになった。兵庫県で3月、高齢患者を骨折させたとして元看護師が逮捕された事件でも、背後にストレスが浮上。身勝手な行動の一方で、医療現場の看護師にかかる多大な負担は社会問題化しているが、心のケアへの“特効薬”はなく、看護師たちの悲鳴が聞こえる。
 
 「仕事中に吐き気をもよおし、何も食べられなくなった」「病棟にいるだけで死にたくなる」…
 
 看護師が集うインターネット上の掲示板。ストレスに苦しむ書き込みが、日々記されている。人間関係に悩む内容が目立ち、「先輩が恐ろしくて勤務前日は一睡もできない」という記述も。精神疾患や睡眠薬の使用を告白する人も多い。
 
 インスリン投与事件の元看護師も、京都府警の調べに「病院内の人間関係に疎外感を感じていた。友人も少なく発散場所がなかった」と供述しているといい、精神鑑定が行われる。
 
 「(ネットの)書き込みは増加しており、中身も深刻になっている」。約80人のカウンセラーが所属する「東京メンタルヘルス」役員の武藤収氏(35)は、そう分析する。
 
 同社では、「新しい医療技術の習得が間に合わないと思うか」など、看護師の意見を参考に計60の設問で構成する「ストレスチェックシート」を作製。昨年9月から配布を始めたところ、すでに数百人の看護師が利用したという。武藤氏は「シートを使う病院は増えているが、ストレス対策に自主的に取り組む病院は少ない」と指摘する。
 
 一方、病院関係者からは、メンタルヘルスに対するさまざまな“壁”に悩む声が聞かれる。
 
 京都府立医大付属病院(京都市上京区)は平成19年から、精神的問題などで長期休暇をとった職員を、産業医が支えながら現場復帰させるプログラムを実施。年間約10人が利用しているが、職員は「長期休暇など、目に見える行動があった看護師しかサポートできず、それ以外の個人のストレス改善には踏み込めない」と話す。
 
 京大病院では、ネットで精神状態をセルフチェックしたり、病院職員が務める相談員に面会できる制度もあるが、利用者は少ないという。人事職員は「身内に相談すると、職場に知られると恐れているのでは」と分析する。
 
 困難さがつきまとう看護師の心のケア。武藤氏は「看護学校でストレス対応策を学ぶ授業を充実させることも必要だ」と指摘している。

生活保護受給者への向精神薬処方、厚労省が緊急調査
2010年4月27日10時50分朝日新聞

    
 大阪市の生活保護受給者にうその症状で大量の向精神薬を入手させて転売したとされる事件をめぐり、厚生労働省は27日、受給者に対する向精神薬の処方内容について、緊急調査を始めた。自治体に調査実施を通知し、5月末までの報告を求めている。長妻昭厚労相は同日の閣議後会見で、「不正受給は国民の信頼を揺るがす問題で、厳正な対処が必要だ」と述べた。
 
 調査は、生活保護受給者のうち、精神科に通院している約4万人を対象に実施。今年1月分のレセプト(診療報酬明細書)を確認し、複数の医療機関で同様の向精神薬を処方されるなど不正が疑われるケースがないかを点検する。事件性が疑われるものは、警察に通報するよう指導していく

2010.4.27河北新報
自殺者の7割が精神科受診 抗うつ剤副作用疑う声も

 
 自殺で亡くなった人の7割は精神科を受診し治療中だったことが、全国自死遺族連絡会(田中幸子世話人)の遺族への聞き取り調査で分かった。12年連続で自殺者が3万人を超える事態に、政府はうつの早期受診キャンペーンに乗り出している。予防効果を上げる治療の在り方などが問われそうだ。
 連絡会は2008年、仙台市の藍(あい)の会など自死遺族の集いを開く自助グループや、遺族らが発足させた。現在は26グループ、約900人が参加している。
 調査は06年7月、藍の会が独自に始め、連絡会発足後は各グループも実施。遺族から寄せられた電話や手紙、対面での相談をきっかけに、自殺者が精神科を受診していた例が多いことに着目した。
 今年3月までの調査では対象となった1016人の自殺者のうち、精神科を受診、治療中だった人は701人で、69.0%を占めた。
 藍の会が単独で調査していた07年末までの「受診率」は51.9%だったが、連絡会発足後の08年1月以降は883人のうち632人と、71.6%に上った。
 連絡会によると、自殺者のうち飛び降り、飛び込みは197人。自宅のあるマンションから飛び降り自殺を図った場合は、全員が受診していた。
 その多くは抗うつ剤などを1回5〜7錠、1日3回(一部はほかに就寝時も)服用し、女性の割合が高いことも特徴。「もうろうとした状態での衝動的な行動だったのでは」などと、副作用への疑いを口にする遺族も多いという。
 調査とは別に、自殺への不安などで悩む人の藍の会への相談では「うつの薬が効かないと受診先で種類を増やされ、1日に40錠服用している」との実例もあった。
 藍の会代表も務める田中さんは「受診は増えても、自殺は減っていないのが実情。自殺予防はうつ対策からとキャンペーンを展開する前に、国はしっかりと調査をやってほしい」と訴えている。
 

2010年04月27日火曜日

2010.4.27共同通信
委員55人で障害者新法議論 政府の部会、異例の大所帯
 政府の「障がい者制度改革推進会議」の下で、障害者自立支援法に代わる新しい法制度について議論する部会の初会合が27日、厚生労働省で開かれた。委員数は障害者団体代表ら55人にも上る異例の“大所帯”で、新法の議論が始まった。
 
 この日は委員23人が意見を述べ、時間が足りず会議を1時間以上延長した。厚労省からは「報告書に全員の意見を盛り込むのは難しい。『私の意見が入っていない』と不満が生まれるのでは」と心配する声も出ている。
 
 障害者政策全般について議論する政府の推進会議は1月に始まり、障害者自身や家族など当事者14人を含め有識者や首長ら24人を委員に選出。だが委員に選ばれなかった障害者団体から「私たちの意見も取り入れてほしい」と要望が相次いだ。
 
 そのため今回設けた部会に多くの委員を迎えることになり、当事者22人、団体関係者17人が参加。「障害者制度を扱う会議では、これまで多くても30人ほど」(事務局)の規模を大きく超える55人となった。
 
2010/04/27 19:19   【共同通信】
 

障害者自立支援法(2008年12月8日)身体、知的、精神と障害ごとに分かれていた従来の障害福祉サービスの一元化や、サービスの利用量に応じて原則1割を負担する「応益負担」の導入が柱。市町村民税の課税の有無や所得水準などにより負担上限額が設定されている。2006年の施行後、負担軽減策も取られたが、負担が重いとの声は根強い。現在、来年の通常国会に同法改正案を提出するため、厚生労働省が制度の見直しについて検討中。

第2877号 2010年4月26日医学書院週間医学界新聞
 
統合失調症のよりよい姿を模索する
第5回日本統合失調症学会開催
 
 第5回日本統合失調症学会が,3月26−27日,九大医学部百年講堂(福岡市)にて神庭重信会長(九大)のもと開催された。「統合失調症の多面的理解とケア」をテーマに掲げた今回は,医師のみならずコメディカルからも多数参加があり,会場は活況を呈していた。本紙では,27日のシンポジウムの模様を報告する。
 
共通点から考える2つの疾患
 
神庭重信会長
 シンポジウム「統合失調症と双極性障害――共通点と差異から見えてくるもの」(コーディネーター=岩手医大・酒井明夫氏,理研脳科学総合研究センター・加藤忠史氏)では,近年特にクローズアップされてきた2疾患の共通点について,各方面から考察がなされた。
 まず酒井氏が医学史における両疾患の足跡をたどった。氏は紀元前425年以降約1千年間の文献を研究し,「マニア」と「メランコリー」という言葉が,現代における双極性障害の概念を表していたと紹介。しかし一方で,この2語は幅広い「狂気」の概念も含有していたという。その理由として氏は,明確な病像を持つ特殊な病の存在と,それと関連しつつ錯綜した異種的全体像の認識が共有されていた可能性を示唆。統合失調症もそうした全体像の中に埋没していた可能性を述べ,いまだ定まらない現在の疾患分類にも共通する状況があることを指摘した。
 
 続いて精神病理学の見地から,加藤敏氏(自治医大)が発言。DSM-V改定で発足した「精神病を脱構築する」作業委員会では,統合失調症・双極性障害などを包括した「全般的精神病症候群」の概念が提唱されているという。ここから氏は,単一精神病論の再評価の必要性を主張。疾患単位の病態把握から脱し,まず生命力動(感情障害),次いで人格構造(人格障害)の視座から診断がなされるべきとした。また,統合失調症と双極性障害は生命力動の視座では連続し,人格構造においては段差が見られることを解説した。
 
 岩田仲生氏(藤田保衛大)は,遺伝研究の側面から発表。近年のゲノム解析の進展により,感受性座位や原因遺伝子の面で2疾患には遺伝的近似が多く認められてきている。一方,従来から自閉症などとの関連が示されてきたコピーナンバーバリエーション(CNVs)は,統合失調症の一部への関与も判明しているが,双極性障害との関連は認められていない。岩田氏は,既に精神疾患への影響が明らかになっている一塩基多型(SNPs)により精神病症状や気分症状が説明されることに加え,SNPsとCNVs両方の分析により認知機能や陰性症状も説明できると提起。将来的にはそのデータをもとに,患者の個別性に応じた精神病理認識論を構築できる可能性があると述べた。
 
異なる視点をつなぎ病因の根本をとらえる
 病態生理からこの2疾患をとらえた福田正人氏(群馬大)は,共通点として,統合失調症における脳構造・脳機能画像,神経生理画像,認知機能といった指標のいずれでも認められる所見が,より軽度な形で双極性障害にも認められることを挙げた。一方で,側脳室拡大の左右比,前頭葉血流反応低下の依存性,事象関連電位P300成分異常の表出などは両疾患で異なっている。これらのことから氏は,病態生理指標に基づいて疾患の概念を再構成し,症状に基づく精神疾患診断を行うことを今後の課題として示した。
 
 認知機能障害の観点からは中込和幸氏(鳥取大)による考察がなされた。認知機能障害は,統合失調症はもとより近年では双極性障害においても社会機能との関連や転帰予測指標として注目を集めつつあり,両疾患の連続性を考える上でも重要視されている。氏は,双極性障害における認知機能障害は比較的長期間続き,特に遂行機能や言語記憶の面では寛解時まで機能低下が持続することを提示。今後,さまざまな疾患について同じアプローチをとり,より早期に研究を行うことで,認知機能障害の根本原因となる神経メカニズムが明かされるのではないかと話した。
 
 最後に指定討論として,加藤氏が,神経細胞の環境適応の阻害が両疾患に共通のリスクファクターとなるが,一方で変性を来すのは脳の別々の部位であるとし,認知にかかわる脳構造の発達が障害され,発症初期に急激な変性を来すのが統合失調症であり,辺縁系など皮質下の神経回路の動態異常や,情動神経系の変性から生じたのが双極性障害ではないかと発言。また,江口重幸氏(東京武蔵野病院)は,1998年にカナダの哲学者イアン・ハッキングが述べた「今後20年間で,統合失調症の実態は疾患原因を含め,遺伝的・環境的もしくはさらに複雑に,まったく別の実態に分岐するだろう」という言葉を引用。今回のシンポジウムは,複雑化する統合失調症研究における自然科学的視点,社会科学的視点の橋渡しをするものだったと総括した。

うつ、発達障害の若者の仕事創出へ 県内支援団体がスクラム
(2010年4月26日 05:00)下野新聞

 うつ病や発達障害などで一般就労の難しい若者のために、短期間で簡単にできる仕事をつくり出そうと、県内で若者支援に取り組む14団体が28日、「栃木県若年者支援機構」を設立する。新しい事業を立ち上げたり、企業を訪問して仕事の開拓などを行う。呼び掛け人となったとちぎ若者サポートステーション(サポステ)の中野謙作さん(50)は「困難を抱える若者が、働くことの喜びを感じることのできる仕組みをつくりたい」としている。
 
 サポステが2007年5月にオープンして以降、就労相談などのために利用した若者は09年4月までの2年間で360人。このうちサポステの臨床心理士らが、うつ病などの疾病や障害が疑われる若者は208人で約6割に上る。
 
 ただ、医師から正式に診断を受けているのは、半分の107人にとどまり、「グレーゾーンの多くの若者が、教育や福祉などの支援からこぼれ落ちている実態がある」(中野さん)という。さらに不況下で就労環境はより厳しくなっている。
 
 こうした状況を受け、困難を抱える若者でも働くことのできるような仕事を生み出す必要があると、中野さんが県内の若者支援団体に賛同を呼び掛けた。これに、就労支援に取り組む若者自立塾・栃木、引きこもりの当事者や家族でつくるKHJとちぎベリー会などが応じた。
 
 サポステでは、宇都宮市のオリオン通り曲師町商業協同組合などの協力を得て、サポステ利用者が週2回、農産物販売を手伝うなどの取り組みが始まっている。
 
 中野さんは「1人1人の適正に合った仕事を提供していくとともに、仕事が終わるまでの指導や教育も同時に行っていきたい」と話している。

■ホームレスの障害者 福祉制度利用へ 行政の支援必要(解説)
 2010/04/20 読売新聞大阪・西部 朝刊解説面
 
 ◇大阪本社科学部・原昌平
 〈要約〉
 ・知的障害や精神障害の人が路上などにかなりいる
 ・生活保護などの福祉制度を理解できない人もいる
 ・制度利用の手助け、専門的な支援が必要だ
 
 ホームレス状態の人々に対しては「怠けている」「好きでやっている」といった見方がある。就労やアパート生活、人間関係がうまくいかない場合、本人の努力不足や性格の問題とみられることも多い。
 だが、障害が見過ごされていたなら、どうだろうか。深く考えさせられる調査結果が相次いで出た。
 北九州市の委託で自立支援センターを運営するNPO法人北九州ホームレス支援機構によると、センター開設から昨年6月まで約5年の間に利用を終えた492人のうち、約3割にあたる140人が市の判定を受けて療育手帳(知的障害者手帳)を取得した。最近の入所者では4割を占める。
 多くは軽度の障害。以前は住み込みや日雇いなどで働いていた人が多く、日常の会話は問題ないが、文章作成を頼むと、つたない文章しか書けない人が目立つという。「何回も就職先で失敗して怒られた。障害のせいだとわかって逆にホッとした」と語った人もいた。
 こうしたハンデを持つ人が、労働市場の競争を自力で勝ち抜いて職を得るのは難しい。生活保護を受けてアパートに移った場合もゴミの出し方、金銭管理などで戸惑うことが多い。
 支援機構のセンター担当部長、山田耕司さんは「本人の気持ちが大切だが、手帳があれば年金、障害者雇用枠、ホームヘルプ、交通機関や携帯電話の割引など様々な制度を活用できる。支援を続けると大半の人は生活が安定した」と話す。
 東京・池袋では昨年末、精神科医や臨床心理士らのグループ「ぼとむあっぷ」が、路上生活をしている男性164人の同意を得て各種のテストをした。
 知能指数(IQ)で見た障害程度は中度(40〜49)が6%、軽度(50〜69)が28%で、障害認定に相当するレベルの人が計3割余りにのぼる。境界域(70〜79)の19%を合わせると半数を超えた。中にはIQ130という人もいたが、半面、意思疎通ができずに調査対象外になった人もいた。うつ病、統合失調症など精神障害も少なくなかった。
 メンバーの臨床心理士、奥田浩二さんは「調査時期や地域によって割合は違うだろう。事故による脳機能障害や認知症など後天的な原因もある」と説明する。
 精神障害の場合は、ホームレスになる過程で受けた心理的打撃や過酷な生活の影響も大きいとみられる。
 大阪のNPO釜ヶ崎支援機構でも、若い相談者の約3割が知的障害や精神障害の疑いで受診している。一方、主に高齢のホームレスの人々を支える東京のNPO「ふるさとの会」では、施設利用者の4割に認知症があるという。
 「本人のせいでも障害のせいでもなく、必要な支援が足りないからホームレスになってしまう」と、岡部卓・首都大学東京教授(社会福祉)は指摘する。
 ぼとむあっぷの奥田さんは「たとえば生活保護を受けようにも仕組みや手続きを理解できない人がいる。制度利用の権利を第三者が助けるシステムを行政が講じるべきだ」と訴える。
 生活保護の受給に以前のような締め付けが減る中、声を出せない人が路上に残る傾向もあるようだ。
 山井(やまのい)和則・厚生労働政務官は3月末の衆院委員会で「実態調査を行い、医療や障害者福祉の観点からもホームレス問題の政策を見直す必要がある」と答弁した。
 障害に着目した取り組みは各地の民間支援団体でも弱かった。専門職も加え、積極的に手を差し伸べる援助の方策を、早急に具体化しなくてはいけない。
 
◆北九州市の自立支援センター入所者の1人が書いた抱負の文
 (50代男性。のち軽度の知的障害と認定)
 「私くしは、はやく仕事に付き自立して兄姉たちともとの生活を取りもどしたい又公園では、多くの人たちがおうえんしてくれました。その人たちに合うためにも自分自身がかわったことをみてもらいたい」
 (雑誌「ホームレスと社会」1号から。誤字は原文)
 
 
■グラフ=ホームレスの人々の知的障害に関する調査
◆北九州市自立支援センター利用者の療育手帳取得状況
 (2009年6月までに利用終えた492人)
 北九州ホームレス支援機構調査)
 障害程度    人数
 重度       1
 中度      26
 軽度      92
 退所後に取得  21(障害程度不明)
 取得なし   352
 
◆東京・池袋で路上生活をする男性164人
 (2009年末、ぼとむあっぷ調査)
 障害程度   人数
 中度     10
 軽度     46
 境界域    31
 標準範囲   77

【ゆうゆうLife】障害年金 受給後の結婚・出産にも加算
2010.4.22 08:20産経新聞

 
 障害年金を受け取っている人が結婚したり、子供を持ったりした場合、現行制度では障害年金に配偶者や子供への加算はつかない。加算対象になるのは、障害年金受給前の結婚や出産のみだ。障害者から「障害があっても子供を産んで育てていこうという気持ちは同じなのに」と不満が上がっているが、受給後の結婚や出産にも加算がつくよう法律が改正された。年金制度では受給後に発生した条件変更には対応しないのが一般的だが、例外的に加算が認められる。(佐藤好美)
 
 大阪府に住む無職、吉川清子さん(43)=仮名=は10年前、交通事故で乗っていた車が大破した。助かったものの、以来、いろいろなことがうまく回らなくなった。夫の助けが得られず、独力で小学生の娘を育てていたが、仕事が続けられなくなった。パニック障害になって何回も救急車で運ばれ、病院で精神疾患と診断された。それからは精神安定剤やけいれん止めを飲む日々だ。
 
 何もかもいやになっていたとき、市役所で生活保護を受けるよう勧められた。生活保護を受けることに抵抗があった吉川さんは「体が動かないわけではないから、がんばる」と言ったものの、生活が立ちゆかない。市の職員から「じゃあ、障害年金の手続きをしてみる?」と聞かれ、受給申請した。
 
 結局、年金の障害等級で2級が認められ、障害基礎年金を受け取れるようになった。娘を扶養していたので加算もついた。「仕事もあまりできなかったし、ありがたかったです」と振り返る。
 
 2年前、次女が生まれた。しかし、窓口で次女への加算について聞いたところ、「年金をもらい始めた後に生まれた子については、年金制度では面倒を見られない」と説明された。吉川さんは釈然としない気持ちだ。
 
 昨春、長女は高校を卒業し、働き始めた。長女が対象だった加算は昨年3月でなくなった。吉川さんはそれまで、2級の障害基礎年金約79万円と子供の加算約23万円と合わせて102万円の年金を受け取っていたが、加算がなくなり、障害年金は約79万円になった。次女(2)の加算はつかないままだ。
 
 吉川さんは言う。「障害者になる前に生まれた子も障害者になった後に生まれた子も、がんばって育てていこうと思っている。同じ気持ちで育てていて同じようにお金もかかるのに、障害者になった後に生まれた子には加算がつかないなんて、まるで『障害者は子供を持ってはいけない』と言われている感じがします」
 
                   ◇
 
 ■来年4月の施行へ 数万人が加算対象
 
 現行制度では障害年金に「子の加算」がつくのは、障害基礎年金を受ける前から子供がいたケースだけだ。同様に「配偶者加給年金」がつくのは、障害厚生年金を受け取り始める前に結婚していたケースだけ。いずれも事後の出産や結婚に加算はつかない。
 
 このため、例えば生まれつき障害があった人が20歳で障害基礎年金を受け取り始めた場合、受給後に結婚して子供を産んでも子供は「子の加算」の対象にならず、障害者らから「不公平」との声が上がっていた。
 
 しかし、今国会で、結婚や誕生のタイミングを問わず、扶養する配偶者や子供がいる点に着目し、障害年金に加算をつけようという「国民年金法等改正案」が可決、成立した。
 
 厚生労働省は「年金制度は保険事故が起きたときの所得保障をするもので、受給後の状態変更については対応していない。これについて、受給権発生後の生活状況の変化にも所得保障を行ってほしいというご意見があり、議員立法で提案されたようだ」と解説する。
 
 一般に、年金制度では受給後に生じた条件変更による増額や加算は認められていない。例えば、老齢厚生年金の受給者には一定要件の配偶者がいると、“年金版扶養手当”として「加給年金」と「特別加算」が支給される。だが、老齢厚生年金を受け始めた後で結婚しても、「加給年金」と「特別加算」は支給されない。今回の法改正でもこの点に変更はない。改正になるのはあくまでも障害年金の加算のみだ。
 
 障害年金の受給者は平成20年度末に約182万3000人。厚労省は来年4月の施行を目指しており、法案成立で新たに数万人が加算対象になると見込んでいる。
 
                   ◇
 
【用語解説】障害年金
 
 障害年金は病気やけがで障害を負ったとき、障害の状態が一定程度に該当すると支給される。国民年金に加入していた人や20歳前に障害を負った人に支給されるのが障害基礎年金。厚生年金に加入していた人には障害厚生年金が上乗せされる。年金受給年齢になった後で生じた障害には障害年金は支給されない。
 
 障害年金を受けるには条件があり、(1)初診日に国民年金か厚生年金の被保険者であること(2)初診日の前々月までの被保険者期間のうち、3分の2以上の保険料納付済み期間がある(免除期間も含む)か、初診日の属する月の前々月までの直近1年間に保険料の未納期間がない(3)障害認定日に年金の障害等級表の1級または2級の障害の状態になっていること−などとなっている。

http://www.jst.go.jp/pr/announce/20100420/

 

平成22年4月20日

科学技術振興機構(JST)
Tel:03-5214-8404(広報ポータル部)

日本医科大学
Tel:03-5814-6739(庶務課)

 

抗うつ薬が成熟脳神経細胞を成熟前の状態に戻すことを発見

(抗うつ薬の作用メカニズム解明に前進)

JST 課題解決型基礎研究の一環として、日本医科大学の小林 克典 講師らは、抗うつ薬の長期投与によって、成体マウスの脳の成熟脳神経細胞が、幼若型の神経細胞に変化することを発見しました。抗うつ薬の治療効果や副作用のメカニズム解明を前進させ、より安全なうつ病治療法開発に貢献する成果です。

抗うつ薬は、うつ病だけでなく不安障害などさまざまな精神疾患の治療にも用いられています。抗うつ薬の作用には、成体脳でも神経細胞が生まれ続ける特殊な部位として知られる海馬の「歯状回注1)」が重要であると分かっていましたが、その作用メカニズムの詳細は明らかになっていませんでした。

本研究グループは今回、成体マウスに抗うつ薬・抗不安薬として用いられる選択的セロトニン再取込阻害薬(SSRI)注2)を1ヵ月間投与し、歯状回の神経細胞の生化学的変化、電気生理学的変化を詳細に検討しました。その結果、SSRI投与によって、それまで成熟細胞として働いていた神経細胞が成熟マーカー分子の発現を停止し、幼若細胞と同様に機能するようになることを発見しました。これは通常の神経細胞の発達・成熟と逆方向の変化です。このことから、SSRIは一度成熟した脳神経細胞を成熟前の状態に戻す作用を持つことが明らかになりました。

本研究の成果は、SSRIの持つ多様な効果の神経基盤の解明を大きく前進させるとともに、神経細胞の若さをコントロールする技術の基盤にもなり、神経発達障害や加齢に伴う神経機能不全の治療法開発にもつながることが期待されます。

本研究成果は、米国科学雑誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」のオンライン速報版で2010年4月19日の週(米国東部時間)に公開されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)

研究領域

「精神・神経疾患の分子病態理解に基づく診断・治療へ向けた新技術の創出」
(研究総括:樋口 輝彦 国立精神・神経医療研究センター 理事長)

研究課題名

「マウスを活用した精神疾患の中間表現型の解明」

研究代表者

宮川 剛(藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 教授)

共同研究者

小林 克典(日本医科大学 医学部 薬理学講座 講師)

研究期間

平成19年10月〜平成25年3月

JSTはこの領域で、少子化・高齢化・ストレス社会を迎えた日本において社会的要請の強い認知・情動などをはじめとする高次脳機能の障害による精神・神経疾患に対して、脳科学の基礎的な知見を活用し、予防・診断・治療法などで新技術の創出を目標にしています。

上記研究課題では、精神疾患モデルマウスの脳について各種先端技術を活用した網羅的・多角的な解析を行い、生理学的、生化学的、形態学的特徴の抽出を進め、さらに、これらのデータを人間の解析に応用することによって、精神疾患における本質的な脳内中間表現型の解明を目指します。

<研究の背景と経緯>

うつ病治療の第一選択薬として用いられるSSRIは、不安障害の治療にも用いられるなど、さまざまな精神疾患に対する有効性が示されています。一方で、SSRIには患者が不安や焦燥を持つなどの副作用もあり、若年者への使用には特に注意が喚起されています。このようにSSRIには多様な作用がありますが、そのメカニズムの詳細については、これまで明らかにされていません。

抗うつ薬は一般に海馬の歯状回での神経新生を促進し、抗うつ薬が実験動物の行動に及ぼす効果に、この神経新生が必要であることが分かっています。歯状回は海馬の神経回路の入り口にあり(図1)、海馬に入力する情報を制御する重要な部位です。新しく生まれた神経細胞の大部分は歯状回の主要細胞である顆粒細胞になりますが、生まれてから数週間の間は成熟した顆粒細胞(成熟顆粒細胞)とは非常に異なる性質を持っています(図2)。この幼若顆粒細胞の存在割合の増加による海馬機能の変化が、抗うつ薬の治療効果に関与する可能性があります。しかし、幼若顆粒細胞の割合は歯状回の全顆粒細胞の1〜数%で、そのような少数の細胞群がそれ単独で海馬機能に大きな影響を及ぼし得るかどうかは不明です。また、神経新生の関与が示唆されているのは抗うつ薬の効果の一部であり、神経新生には全く影響を及ぼさない場合もあります。

神経新生の関与の有無に関わらず、抗うつ薬が歯状回の機能をどのように変化させるかについては詳細な解析が行われていません。本研究グループの小林講師らは2004年から2008年に、顆粒細胞の軸索、苔状線維(たいじょうせんい)図1)が形成するシナプス注3)が海馬神経回路の伝達効率を左右する可塑性注4)にとって重要であり、苔状線維シナプスに対するセロトニンの修飾作用がSSRIの長期投与によって安定化することを示しました。他の研究者からも、SSRIが歯状回神経機能に及ぼす効果についての散発的な報告がありますが、一定の条件における包括的な解析は、これまで行われていませんでした。

<研究の内容>

本研究グループは今回、SSRIの一種フルオキセチンを成体マウスに約1ヵ月間投与し、その後に電気生理学、生化学、組織学的解析を行い、歯状回に生じる細胞レベルの変化について詳細な解析を行いました。

まず幼若顆粒細胞の割合を確認する目的で、神経細胞の成熟ステージを特異的マーカー分子の発現によって検討したところ、予想に反してフルオキセチン投与後は成熟マーカーを発現する細胞が極端に減り、逆に幼若マーカーを発現する細胞が増えていました(図3)。この結果から、SSRIによって神経新生が活発になり、新しく生まれた幼若顆粒細胞が成熟顆粒細胞に置き換わった可能性が考えられます。この可能性を直接的に検討するため、生後発達の初期(生後1〜3日齢)マウスにその時点で生まれた細胞をラベルする手法を適用し、ラベルされた細胞の成熟マーカー発現を追跡しました。その結果、フルオキセチン投与前に成熟マーカーを発現していた細胞が、フルオキセチン投与によって発現を停止することが明らかになりました(図4)。

次に、上記の成熟マーカー発現の低下が本当に細胞の幼若化を反映するかどうかを確認するために、成熟・発達とともに変化する神経細胞機能に対するフルオキセチンの効果を詳細に解析しました。その結果、フルオキセチン投与マウスでは以下のような、通常の発達・成熟(図2)とは逆方向の変化が観察されました。

(1) 顆粒細胞が活動電位を発生しやすくなっていました(興奮性注5)の上昇)。さらに、活動電位に、幼若顆粒細胞に特徴的な成分が含まれていました。

(2) 歯状回において、刺激誘導性の最初期遺伝子注6)の発現が低下していました(図5A)。

(3) 歯状回に入力するシナプスにおいて、長期可塑性の一種である長期抑圧が亢進していました。

(4) 歯状回の出力である苔状線維シナプスでは、連続刺激によって短期可塑性の一種であるシナプス促通が生じます。成体の苔状線維シナプスは例外的に顕著な促通を示すことで知られていますが、フルオキセチン投与マウスではこのシナプス促通が幼若レベルに低下していました(図5B)。

これらの結果は全て、フルオキセチン投与によって顆粒細胞が機能的にも幼若化したことを示しています。

さらに、神経毒によってセロトニン神経を損傷させたマウスと遺伝子改変操作によってセロトニン5−HT4受容体を欠損させたマウスでは、フルオキセチンによる成熟マーカー発現の低下と機能的幼若化がともに抑制されていました。

今回の解析結果によって、SSRIが一度成熟状態に達した脳神経細胞を成熟前の状態に戻す作用を持つことが明らかになりました。

なお、本研究は藤田保健衛生大学と共同で行われ、本成果の一部は私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(事業名:中枢神経系疾患の診断・治療技術の創出を指向した基礎・臨床融合型研究の基盤形成)の支援で行われました。

<今後の展開>

神経幼若化は、成熟とともに失われた機能を回復させることにより、神経系に対して有益に働く可能性があります。一方、成熟とともに獲得した機能を失わせるため、機能不全を引き起こすことも考えられます。従って、今回の発見によって、SSRIの持つ多様な効果の神経基盤が明らかになり、抗うつ薬の治療効果のみならず、有害反応(副作用)のメカニズムの解明が大きく前進すると考えられます。ひいては、より安全なうつ病治療法の開発に貢献することが期待されます。

また今回の発見は、神経細胞の成熟の状態、つまり見かけ上の若さが比較的容易に変化することを示しています。さらに解析が進み、その制御が可能になれば、神経発達障害や加齢に伴う神経機能不全をはじめとする多様な精神・神経疾患の治療法の開発にもつながるものと期待されます。

<参考図>



図1 海馬の神経回路

海馬に入る情報は歯状回→CA3→CA1の順にシナプスを介して伝達される。歯状回の主要神経細胞である顆粒細胞の軸索は苔状線維と呼ばれ、隣接するCA3領域の錐体細胞とシナプスを形成する。


図2 顆粒細胞の機能の発達・成熟変化

海馬の顆粒細胞のさまざまな機能が、成熟に伴ってどの様に変化するかをイメージで表した図。横軸は幼若期から成熟期への時間軸、縦軸は各機能の活動の程度(上にいくほど、機能が活発になる)を示す。

成熟とともに低下する機能(細胞体の興奮性、入力シナプスの長期抑圧)と、成熟とともに出現もしくは増加する機能(刺激誘発性の最初期遺伝子発現、出力シナプスのシナプス促通)がある。入力シナプスにおける長期増強は成熟前の一時期(臨界期)に顕著に見られる。


図3 フルオキセチン投与による歯状回の成熟マーカー発現低下

免疫組織化学的に解析した顆粒細胞の成熟ステージマーカー発現変化。

図中の白く見える部分がマーカーの存在を示す。各写真中央部の>型に見える部分が歯状回顆粒細胞層で、その中の白く見える点がそれぞれのマーカーを発現する顆粒細胞を示す。フルオキセチン投与マウスでは、成熟顆粒細胞で発現するカルビンジンの発現が顕著に低下し、幼若マーカーであるカルレチニンの発現が増加していた。


図4 成熟顆粒細胞の幼若化の証明実験

生後1〜3日齢のマウスに分裂細胞のマーカーであるBrdUを投与し、その時点で生まれた細胞をラベルする。神経分化後は細胞が分裂しないためBrdUは細胞内に保持される。9週間後に免疫組織化学実験を行うと、BrdUでラベルされた細胞はほぼ全て成熟マーカーを発現していた。その後にフルオキセチン投与を行うとBrdUでラベルされた細胞が幼若型に変化していた。


図5 フルオキセチン投与による顆粒細胞機能の幼若化

(A) マウスの足底に電気刺激を与えると、コントロールマウスの歯状回では最初期遺伝子c-Fosたんぱくの顕著な発現が見られる。このc-Fos発現がフルオキセチン投与マウスでは大きく低下していた。

(B) 成体マウスの苔状線維シナプスでは、1Hzの頻回刺激によってシナプス伝達効率の顕著な促通が見られる。フルオキセチン投与マウスではこの促通が10日齢のマウスと同程度まで低下していた。

<用語解説>

注1) 歯状回

記憶などの認知機能に重要な海馬の一領域で、近年は精神疾患との関連で注目されている。

注2) 選択的セロトニン再取込阻害薬(SSRI:Selective serotonin reuptake inhibitor)

セロトニン神経終末から放出されたセロトニンが神経末端に再取込されるのを防ぎ、細胞外のセロトニン濃度を上昇させる薬物。

注3) シナプス

神経細胞間の情報伝達部位。

注4) 可塑性

外的な力などが加わって状態が変化した場合に、その状態が持続する性質。シナプス伝達効率の可塑性には短期的なものと長期的なものがある。短期的に伝達効率が上昇する現象をシナプス促通と呼び、長期的に上昇・低下する現象をそれぞれ長期増強・長期抑圧と呼ぶ。

注5) 興奮性

神経細胞の情報はONとOFF、2種類の状態しか存在しない活動電位によって担われ、活動電位の発生(ONの状態)を興奮と呼ぶ。ここでは興奮性を少なくとも1つの活動電位を発生できる性質として定義する。

注6) 最初期遺伝子

細胞に刺激が与えられた際に、急速かつ一過性に発現する遺伝子。

<論文名>

Reversal of hippocampal neuronal maturation by serotonergic antidepressants
(セロトニン系抗うつ薬による海馬神経成熟の逆転)

<お問い合わせ先>

<研究に関すること>

小林 克典(コバヤシ カツノリ)
日本医科大学 医学部 薬理学講座 講師
113-8602 東京都文京区千駄木1−1−5
Tel
03-3822-2131(内線:5272) Fax03-5814-1684
E-mail

<JSTの事業に関すること>

長田 直樹(ナガタ ナオキ)
科学技術振興機構 イノベーション推進本部 研究領域総合運営部
102-0075 東京都千代田区三番町5番地 三番町ビル
Tel
03-3512-3524 Fax03-3222-2064
E-mail


2010.4.19毎日新聞
精神医学用語集:裁判員向けに、学会が初出版 心神「喪失」「耗弱」差など500語
 裁判員裁判で被告の責任能力が争われた場合などに使われる難解な精神医学用語を易しく解説しようと、日本司法精神医学会(中島豊爾理事長、約530人)は「だれでもわかる精神医学用語集 裁判員制度のために」(1000円)を出版した。裁判員向けの精神医学解説書の出版は初の試みという。【伊藤直孝】
 
 編集グループの代表は裁判員裁判での証言経験もある五十嵐禎人(よしと)千葉大教授(46)。07年、裁判員制度導入に向けた同大と千葉地裁の研究会で、裁判官から「精神鑑定の用語が分かりにくい」と指摘されたのがきっかけ。裁判官や検察官に意見を聞いて基本的な用語や分かりにくい用語を選び、「うつ病」「統合失調症」など約500の専門用語を解説した。
 
 刑事裁判では被告が「心神喪失」なら無罪になり、「心神耗弱」なら刑が減軽される。用語集では心神喪失を「自分の行為が善いか悪いか分からない人。あるいは分かっているが行為をやめることができない人」、心神耗弱は「その判断能力が著しく低下した人」と説明している。
 
 「薬物依存」と「薬物中毒」の違いについては「依存は体内に薬物があるかないかにかかわらず、やめられなくなっている状態。中毒は薬物が体内にあって害を及ぼしている状態」と紹介した。
 
 五十嵐教授は「病気の違いを一般市民に理解してもらうのは難しく、どうしても専門用語が多くなる。用語集で多少の予備知識を持ってもらえれば、一般市民から選ばれる裁判員の理解も進むはず。法律家には専門用語の言い換えの実例として参考にしてほしい」と話している。
 
 問い合わせは民事法研究会(03・5798・7277)。
 
毎日新聞 2010年4月19日 東京夕刊

2010.4.19共同通信
厚労相、健診にうつ病追加を検討 労基署などを初視察

 長妻昭厚生労働相は19日、労働者の健康診断の項目にうつ病を加えることが可能かどうか、来年度の法改正も含めて検討していく考えを示した。東京都渋谷区でビル新築工事現場の視察を終えた後、記者団に語った。
 
 長妻厚労相は労働者のうつ病、精神疾患の事例が増えているとしたうえで、「うつ病はなかなか本人に分かりにくい。(健診項目に入れれば)自殺対策にもつながる」と話した。
 
 これに先立ち、長妻厚労相や細川律夫副大臣らは、渋谷区の渋谷労働基準監督署を初視察。労働相談コーナーなどを見て回り、最近の相談内容などについて職員に質問した。
 
2010/04/19 12:23   【共同通信】
 

2010.4.19時事通信
うつ病対策、法改正含め検討=厚労相
渋谷労働基準監督署を視察する(左から)細川律夫厚生労働副大臣、長妻昭厚労相、山井和則厚労政務官(19日)。うつ病が全国的に増えていることを踏まえ、長妻厚労相は健康診断を通じた対策強化の意義を強調した 【時事通信社】
 
2010.4.19時事通信
うつ病対策、法改正含め検討=全国的増加に対応−長妻厚労相
 長妻昭厚生労働相は19日、都内の渋谷労働基準監督署を視察した。視察後、うつ病が全国的に増えていることを踏まえ「健康診断の時に一定期間、眠れなくなっているなど(の症状)を聞いて、チェックできないかどうか。法律改正が必要であれば、それも含めて検討したい」と述べた。
 さらに同相は、健康診断を通じた対策強化の意義に関して、「自殺対策にもつながる。本人はうつ病と分かりにくい」と強調した。(2010/04/19-12:48)

第2876号 2010年4月19日医学書院週間医学界新聞
教科書から学ぶ精神科看護

質問に答える演者ら
 日本精神科看護技術協会による「系統看護学講座『精神看護の基礎』『精神看護の展開』を学ぶ――精神科臨床と教育の手がかりとしての教科書」が,3月7日,日赤看護大広尾ホール(東京都渋谷区)にて開催された。定員300名のところ全国から約350名が来場。満員の会場を熱気が包んだ。
 まず2冊の代表著者である武井麻子氏(日赤看護大)が,患者,家族,看護師それぞれの「ナラティヴ」を紡ぎ出すことを目的に教科書を編纂したと語った。氏は,急性期治療に傾きがちな医療の現場においては,感情を核とした患者とのかかわりが大切であると主張。ただし,患者への共感を強調しすぎることは看護師の「共感疲労」を惹起する可能性があるとし,あくまでも等身大の自分らしく,患者のそばにいることが大切であるとした。
 
 続いて,執筆者の1人である小宮敬子氏(日赤看護大)は,患者との関係評価のためにプロセスレコードを利用して学習者の気付きを促すことや,精神科看護においても身体のケアは重要視されるべきことなどを『精神看護の展開』からピックアップして述べ,精神疾患からの回復が可能な社会をめざす教育の一助として教科書を活用してほしいと語った。同じく執筆者である末安民生氏(慶大)は,社会における精神科医療のあり方を教える重要性について発言。貧困など発症リスクになりうる環境から患者を救い,患者と情報を共有して回復のための共通基盤を築いていくためにも,精神障害者の権利を保障したり,一方で一時的な制限を加えたりする法制度の知識を備えておく必要があると述べた。
 
 末安氏と式守晴子氏(静岡県立大)の司会による質疑応答では,武井氏・小宮氏のほか5名の執筆者が登壇。「プロセスレコードの内容で学生を評価してよいか?」という質問には,「評価の道具にするのではなく,記録を見て感じた学生個々に対する印象を教育に生かしていくことが大切。学生は正答を求めることにとらわれているが,まずは『腑に落ちる』ことを重視して指導すべき」と回答がなされた。臨床教育に携わる看護師からの「共感疲労に陥った看護師への対応は?」との問いには,「ケアの現場には必ず矛盾や利害の対立はあり,その際患者に対して『看護師としてふさわしくない』思いが生じることもありうるもの。それがすなわち自己否定につながらないよう,本音で語ってよい場所を作ることも必要。患者と看護師の尊厳を共に大切にしてこそ,看護が成り立つ」との発言があった。

命つなぐ『文通』 浜松市の自殺者対策事業
2010年4月18日中日新聞
 
手書きで悩み整理、抑止へ
「いのちをつなぐ手紙」の小冊子を手にする二宮貴至所長(左)ら=浜松市精神保健福祉センターで
 
 
 12年連続で年間3万人を超える自殺者。浜松市が自殺者対策として、文通による相談に力を入れている。昨年9月に「いのちをつなぐ手紙」事業を開始すると、手書きならではの赤裸々な告白が寄せられた。市によると、文通での悩み相談は自治体では珍しく「多くの市民に知ってほしい」と、相談内容をまとめた小冊子を発行した。 (報道部・原田遼)
 
 仕事につけずに明日の食料にも困る男性、うつから宗教や占いにはまり、自殺未遂を繰り返す女性−。文字に込められた叫びは、時にA4サイズの指定用紙をびっしり埋めてしまうこともある。「久しぶりにリスカ(リストカット)しました」「助けて、助けて」。
 
 「いのちをつなぐ手紙」では、市民が公共施設やショッピングセンターに置かれた専用の用紙に悩みをつづり、添えてある封筒に入れて投函(とうかん)する。手紙は市精神保健福祉センターに届き、臨床心理士や精神保健福祉士などの専門相談員が、記載された連絡先に電話や手紙でアドバイスを送る。
 
 3月までに寄せられた悩みは38件。手紙のやりとりを繰り返す例もある。
 
 携帯電話やメールなど手軽なコミュニケーションの手段が全盛期。担当する職員は「一見、面倒にも思える手紙だが、心に響く相談ばかりだった」とアナログな手法の長所を振り返る。
 
 医学博士で同センターの二宮貴至所長(40)は「電話やメールでは表面的なやりとりになりがち。手紙は書く人の感情が伝わる」と分析。「時間を使って文字を書き、文章を直す過程で、相談者自らも悩みを整理できる」と、自殺の抑止効果として期待する。
 
 小冊子には公開の了承を得た7件の手紙を掲載。合わせて市内の小学生から「命」をテーマに募集した作文34編を載せ、家族や友人を亡くした子どもたちの思いを読むことができる。2000部を作り、4月末から手紙の用紙が置かれているショッピングセンターなどに置く。
 
 静岡県警によると、2009年の浜松市の自殺者数は暫定値で、前年から30人増の167人。確定されれば、01年の156人を超えて、過去最多となる。
 
 センターに届くうつや引きこもりの相談は、電話と面談を合わせて年間約1200件。担当者は「電話で話せない人もまだたくさんいるはず。手紙の存在を広めることが今後の課題」と、小冊子を通じて周知を図る。
 
3月の全国自殺者数6.6%減の2898人
 3月の全国の自殺者数は昨年より6・6%減少し2898人だったことが、警察庁の暫定集計で分かった。自殺が増える傾向がある年度末を対策強化月間と位置付け、うつ病の兆候である睡眠不足の自覚を呼び掛けるなどのキャンペーンを展開した政府は「支援を求めやすい雰囲気をつくった効果が出た可能性がある」としている。
 
 前年同月より自殺者数が減ったのは昨年9月以降、7カ月連続。自殺者の内訳は男性2134人、女性764人。
 
 1〜3月の累計自殺者は7815人で前年同期間より5・4%減った。

障がい」「障碍」表記どうなる? 県内市町村模様眺め
  2010/4/17 11:33 徳島新聞
 障害の「害」には否定的なイメージがあるとして、政府が初めて「障がい」を使った「障がい者制度改革推進本部」が昨年12月に発足し、一気に進むとみられた平仮名化。ところが、障害者団体などから「平仮名にしても障害者の厳しい現実は変わらない」「『わざわい』の意味を含まない『障碍(がい)』が望ましい」といった意見が沸き起こり、徳島県内市町村でも「障がい」の表記を使用しているのは一部にとどまる。漢字表記のままの県も「当面、経緯を見守りたい」(障害福祉課)と静観の構えだ。
 
 徳島新聞の調べでは、県内市町村で障害者の担当係を「障がい」と表記しているのは、鳴門と小松島の両市。これに阿南市を加えた3市が、啓発パンフレットや広報誌で「障がい」を使用することにした。鳴門市は昨年4月、県内で唯一、条例や予算書などを除く公文書に「障がい」を使用することを決めた。
 
 鳴門市福祉事務所の林裕二所長は「人権尊重の観点から少しでもマイナスイメージを和らげるよう配慮した」と話す。
 
 しかし、平仮名表記をめぐっては県内でも意見が分かれる。障害者の共同作業所でつくる「きょうされん徳島支部」の横田弘一支部長は「障害者自立支援法の廃止に伴う新法づくりや国連の障害者権利条約の批准に議論が尽くされるべきで、表記の問題は二の次だと思う」と主張する。
 
 一方、昨年から機関誌や案内文に「障がい」を使用している知的障害者通所授産施設かのん(鳴門市)の十川智恵美施設長は「保護者から『私たちの子どもは害悪ではないので平仮名にしてほしい』との切実な声がある」と訴える。
 
 常用漢字の改定を議論している文化審議会は試案への追加を見送ったが、「碍」を常用漢字化し「障碍」とするべきだとの意見も根強い。障害者が働くリサイクルショップを運営するNPO法人・太陽と緑の会(徳島市)の杉浦良理事長は「『碍』には『さまたげ』の意味はあるが、『わざわい』は含まれない。本来は『碍』が望ましいのではないか」と指摘する。
 
 「障がい」の表記を使う地方自治体は2004年ごろから増え始め、内閣府の08年度の調査では大阪、三重、熊本など10道府県が法令などを除いて平仮名化している。
 

【写真説明】「障がい」の表記を使用している阿南市のパンフレットや小松島市の広報誌

宇都宮の老人施設で虐待疑い 入所者の上半身裸を撮影
2010年4月17日0時55分朝日新聞

    
 宇都宮市平出町の介護老人保健施設「宇都宮シルバーホーム」で、介護福祉士ら職員が80〜90歳代の認知症の入所者の上半身の裸の写真を撮るなどしたとして、施設を運営する医療法人北斗会(本部・宇都宮市)が内部で処分していたことがわかった。宇都宮市は16日、職員らの行為が高齢者虐待にあたらないか調査を始めた。
 
 同会が不適切な行為として処分の対象としたのは、入所者が夜間、ベッドから床に下りて上半身の衣服を脱いだところを、女性職員が携帯電話のカメラで撮影した▽3人の職員が自分の顔に顔料で落書きして入所者に見せていたところ、私にも描いてと言われて入所者の顔に描き、携帯電話で写真撮影した▽男性職員が入所者を車いすからベッドに移す際に不必要に高く体を持ち上げたり、剣道のまねをして別の入所者の後頭部を手で打ったりした――の3件としている。一昨年から昨年にかけ、4人の入所者に対し20〜30歳代の職員5人が行為に及んだという。依願退職した1人を除く4人の職員と副施設長を今年2月末に訓戒処分にしたが、「行為は継続的なものではなかった」として宇都宮市に報告していなかった。
 
 職員は行為を認め「姿がかわいかったから」「みんなで盛り上がったから」などと説明しているという。ただし、認知症の入所者側に事実関係を確認するのは難しい状況だという。

2010.4.16共同通信
障害者施設、利用再開は6割 負担軽減後の退所者調査

 厚生労働省は16日、障害者自立支援法の施行に伴い、利用者負担増を理由に障害者福祉施設を退所した902人のうち、その後の負担軽減措置を受け、再び施設に入所するなどサービス利用を再開できたのは63%の569人にとどまったとの追跡調査結果を発表した。
 
 2006年4月施行の同法ではサービス利用が原則1割負担となり、障害者団体から「負担が重い」と批判が続出。厚労省は段階的に利用料を引き下げる軽減措置を講じたが、今回調査は障害者が元の生活に戻ることの難しさを裏付けた形だ。
 
 調査は、06年3〜10月に施設を退所した1172人を対象に昨年12月実施。死亡者らを除く902人の現状を分析した。
 
 調査結果によると、法施行前と同じ施設を再び利用できるようになった人はわずか13%。50%はほかのサービスに変更していた。また「現在は何も利用していない」と答えた人のうち79%が在宅で生活していた。
 
 長妻昭厚労相は16日の記者会見で「(低所得層を対象に)4月から利用者負担を無料化したことを踏まえ、サービスの利用を再開する人が増えてきているのではないか」と指摘。4月以降の利用状況を調査する方針を明らかにした。
 
2010/04/16 09:53   【共同通信】
 
 
2010.4.16時事通信
障害者施設、6割が利用再開=自己負担義務化で調査−厚労省

 厚生労働省は16日、2006年の障害者自立支援法施行で自己負担を求められ福祉サービスの利用を中断した人に関する追跡調査結果をまとめた。06年3月から10月にかけて負担増を理由に障害者施設(入所・通所)の利用をやめた人は1172人だったが、昨年末にはこのうち63%に当たる569人がサービス利用を再開した。
 同省は調査結果について「当初原則1割としていた自己負担を2度軽減した影響でサービス利用を再開できたのでは」とみている。
 一方、障害者施設の利用を再開せず自宅で生活している人は236人。このうち35人が利用再開を希望し、市区町村と相談しているという。
 鳩山政権は、低所得者の福祉サービス利用費を今年4月から無料にしている。また、長妻昭厚労相は障害者自立支援法を「利用者の意見を十分踏まえていない」と批判、13年8月までに廃止して新たな仕組みに移行する意向を表明している。(2010/04/16-11:44)
 
 
自立支援法負担増で退所 63%が福祉施設利用再開 道内は88%
(04/16 16:01)北海道新聞

 2006年の障害者自立支援法の施行で、利用者負担増を理由に福祉施設を退所した人のうち、昨年末までに63%が施設の利用を再開したことが16日、厚生労働省の追跡調査で分かった。その後の負担軽減措置などに伴うもので、道内では88%が再開した。
 
 調査対象は、06年3月から10月までに入所施設と通所施設を退所した1625人で、このうち、902人の施設利用状況が確認できた。利用を再開した人のうち、13%は以前と同じ施設だったが、50%は別の施設に変更していた。
 
 道内では退所した42人のうち、入所施設では22人中20人、通所施設では20人中17人が利用を再開していた。

2010.4.14毎日新聞
医療ナビ:特定看護師 より広範囲の医療行為を行う看護師…

 ◆特定看護師 より広範囲の医療行為を行う看護師。一部大学院で養成が始まっている。
 
 ◇医師不足、現場は期待 法改正も視野、対象業務を明確化へ
 今月、東京都目黒区の国立病院機構敷地内に、東京医療保健大の大学院が誕生した。5年以上の臨床経験を持つ看護師21人が入学した。患者の状態に応じて総合的に判断・診断できる▽医療行為に踏み込んだ検査や治療を実践▽医師と協力してチーム医療を推進−−などの能力を持つ看護師を育てる。
 
 病気のなりたちから薬理学、診察・診断学までを学ぶ。隣接する同機構東京医療センターなどで医師の指導のもと実践教育を積む。
 
 自身の診療経験から必要性を感じてきた矢崎義雄・同機構理事長は「看護師は医師より患者に目線が近く、患者をよく見て判断できる。高齢化が進む中、看護師が診療に入った方が医療の質が上がる」と強調。医師の卒後臨床研修並みの態勢で臨むという。
 
   □  □
 
 厚生労働省の検討会は先月、看護師の役割を拡大する新資格「特定看護師」(仮称)の導入を提言する報告書をまとめた。導入されれば、簡単な傷の縫合や患者の状態に応じた薬の選択や使用など、これまでより広範囲の医療行為ができるようになる。厚労省は保健師助産師看護師法(保助看法)の改正も視野に入れる。しかし導入については、「特定看護師の業務独占になり、チーム医療を行う地域医療の現場が混乱する」(日本医師会)など反対意見もある。
 
   □  □
 
 医師不足が深刻な現場からは、医師と看護師らが協力する中で、看護師らの役割が広がることへの期待感が高い。日本周産期・新生児医学会(名取道也理事長)は、新生児仮死などの緊急時には医師の管理のもと、訓練を受けた看護師や助産師が気管内吸引などの蘇生を行えることや、医療施設に限定し助産師が定期検査の発注、出産時に膣(ちつ)の出入り口を切る会陰(えいん)切開や縫合などをできるよう求める要望書を検討会に提出した。
 
 同学会では質の高い新生児蘇生技術を普及させようと、全国で医師や看護師、助産師らを対象に講習会を開催し認定もしている。しかし、医療現場では医師以外は行えないのが実情だという。副幹事長の久保隆彦・国立成育医療研究センター産科医長は「分娩(ぶんべん)施設は減少しているのに、リスクの高いお産は増えている。新生児仮死は重い後遺症の原因となるが、医師が到着するまで蘇生を行えないのでは貴重な時間を失うことになる」と訴える。
 
 このほか、日本外科学会など11学会は連名で、「米国では日本より外科系医師数が少ないのに手術件数は多い。日本のような過重労働も問題になっていない。最大の要因は医師と看護師の中間レベルの職種の充実にある」などとし、特定看護師の早期導入を求めている。
 
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 厚労省は10年度からモデル校を指定し養成を試行するほか、特定看護師ができる医療行為を明確にする方針。こうした動きに先行し、東京医療保健大を含む一部の大学院が養成を始めた。
 
 昨年度から糖尿病など慢性疾患管理ができる看護師を養成する国際医療福祉大大学院の湯沢八江教授(看護管理)は「日本の看護師の基礎教育は米国などと比べて医学がきちんと教えられていない。養成大学は今後増えると予想されるが、そこを考慮しないと、名前だけの特定看護師が出てくる可能性がある」と指摘する。【下桐実雅子】
 
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 ◇看護師の業務
 保助看法では「療養上の世話または診療の補助」であり、「医師の指示がある場合には医療行為ができる」とされている。しかし、高度な医学的判断や技術が必要な医療行為は「診療の補助」の範囲を超えるため、医師が自ら行うべきで、看護師は行えないと解釈されている。
 
 両者の役割分担は過去にもたびたび議論になり、厚労省は02年に静脈注射、07年に薬の投与量調節などについて、看護師ができる「診療の補助」に含まれるとする通知を出した。しかし、それ以外の医療行為については明確にしておらず、現場の判断に任されてきた。
 
 海外では診療ができる看護師資格の導入が広がっている。医師不足の議論と相まって日本でも、能力のある看護師を活用しようと、業務拡大の検討が始まった。
 
毎日新聞 2010年4月14日 東京朝刊
 
 
 
 
 
2010.3.20毎日新聞
特定看護師:導入へ より広い医療行為可能に

 経験豊富な看護師を活用し、医師不足解消や医療の質向上につなげようと、厚生労働省の有識者検討会(座長、永井良三・東京大教授)は19日、従来より広範囲の医療行為ができる「特定看護師」の導入を求める提言をまとめた。10年度に試行を始め、11年度にも第1号が誕生の見通し。資格を得た看護師は医師の指示下で、簡単な傷の縫合などが可能になる。
 
 提言によると、特定看護師の資格は、一定の実務経験があり、養成カリキュラムを組む大学院を修了後、第三者機関の評価を受けた人に与える。
 
 認めるのは合併症などのリスクが低い医療行為。例えば、在宅療養中の患者に、医師が処方した薬の中から実際に使う薬を選ぶことができる。
 
 厚労省は来年度、養成モデル校を指定し、第三者機関の設立を進める。業務の実態調査を基に、特定看護師やそれ以外の看護師ができる医療行為を明確化する予定だ。当初は通知で対応し、実施状況を踏まえ数年後の保健師助産師看護師法改正を目指す。【清水健二】
 
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 ■特定看護師ができる行為例
 
・患者の重症度判定(トリアージ)のための検査
 
・エコー(超音波検査)の実施
 
・X線検査、CT、MRIなどの実施時期の判断
 
・人工呼吸器を装着する患者への気管内挿管と抜管
 
・患者の状態に応じた薬剤の選択・使用
 
・副作用が出たときなどの薬の変更や中止
 
毎日新聞 2010年3月20日 東京朝刊
 
 
 
 
 

2010.3.19毎日新聞
特定看護師:広範囲の医療行為可能に 厚労省検討会が提言

 経験豊富な看護師を活用し、医師不足解消や医療の質向上につなげようと、厚生労働省の有識者検討会(座長、永井良三・東京大教授)は19日、従来より広範囲の医療行為ができる「特定看護師」の導入を求める提言をまとめた。10年度に試行を始め、11年度にも第1号が誕生の見通し。資格を得た看護師は医師の指示下で、簡単な傷の縫合などが可能になる。
 
 提言によると、特定看護師の資格は、一定の実務経験があり、養成カリキュラムを組む大学院を修了後、第三者機関の評価を受けた人に与える。認めるのは合併症などのリスクが低い医療行為。例えば、在宅療養中の患者に、医師が処方した薬の中から実際に使う薬を選ぶことができる。
 
 厚労省は来年度、養成モデル校を指定し、第三者機関の設立を進める。業務の実態調査を基に、特定看護師やそれ以外の看護師ができる医療行為を明確化する予定だ。当初は通知で対応し、実施状況を踏まえ数年後の保健師助産師看護師法改正を目指す。【清水健二】
 
 ■特定看護師ができる行為例
 
・患者の重症度判定(トリアージ)のための検査
 
・エコー(超音波検査)の実施
 
・X線撮影、CT、MRIなどの実施時期の判断
 
・人工呼吸器を装着する患者への気管内挿管と抜管
 
・縫合など傷口の処置
 
・患者の状態に応じた薬剤の選択・使用
 
・副作用が出た時などの薬の変更や中止
 
毎日新聞 2010年3月19日 20時14分(最終更新 3月20日 0時50分)

2010.4.13読売新聞

障害者参加の会議 情報どう伝達

 障害のある人が参加した「障がい者制度改革推進会議」が開かれているけれど、どのように、情報のバリアを乗り越えているの?

点字、映像配信工夫様々

 障害の定義や自立支援など、障害者政策の青写真を探るため、今年初め、内閣府に設置された推進会議。26人のメンバーのうち15人が障害者かその家族で、障害を持つ人が自分たちにかかわる政策を決める点も画期的とされる。

 視覚、聴覚障害がある人、その両方を併せ持つ「盲ろう」の人のほか、車いすの人や精神、知的障害を持つ人らがいる。コミュニケーションに困難を持つ人たちが、一つのテーブルを囲んで話し合うことから、会議では多くの工夫が凝らされている。

 例えば、手話通訳者は3人おり、耳の不自由な委員の前に座る。さらに、要約筆記者が発言を瞬時にパソコンに打ち込み、スクリーンに字幕を映す。盲ろうの人の脇には、指点字通訳者が控え、手の甲を指でたたき情報を伝える。


作図・デザイン課 三厨加代子

 会議資料も知的障害のメンバーへの「ふりがな付き資料」と、視覚障害のメンバー向けの「点字資料」など様々。難聴の人の要望で、雑音を少なくする放送設備も取り入れた。

 情報公開にも新機軸を打ち出した。インターネットでの映像配信は、会議の映像、手話の映像、字幕を同じ画面で見ることができる。国が開く会議では初めての試みだ。

 しかし、最新機器を取り入れるだけでは、障害のある人たちのコミュニケーションを支えることはできない。同会議担当室長の東俊裕さんは、「専門用語や外来語が多いと、知的障害があってもなくても分かりにくい。なるだけ日本語で、分かりやすく話すことが大切」と言う。分かりにくい表現があったときには、知的障害の人が「イエローカード」を提示できるルールも3月に設けられた。

 4時間の会議は身体への負担も大きい。このため、休み時間を長めにとる。指点字を利用する盲ろうの人の場合、手の甲を長い時間たたかれると、感覚がなくなって通訳の内容を読み取れなくなることから、代理人を設け交代で会議に参加することも認めた。

 障害がある人の十分なコミュニケーションを可能にするには、道具だけでは足りない。お互いが思いやりと理解を持っていることが大前提だ。このことは、職場や学校、地域など一般社会にも、そのまま通じるだろう。(梅崎正直)

2010413  読売新聞)


2010.4.13紀伊民報
紀南こころの医療センター 精神医療の灯、絶やさないで
 公立紀南病院組合(管理者=真砂充敏田辺市長)が運営する精神科病院「紀南こころの医療センター」(田辺市たきない町)が、深刻な医師不足に悩まされている。
 
 常勤医師は病院長を含めて8人だが、9月末までに3人の退職が決まっている。新たな医師を補充できなければ、10月からの診療は5人体制になりそうだ。
 
 医療センターの外来患者は1日平均約175人。県内の公立精神科で最も多い。入院患者は190人に上る。診療時間外の救急患者も年間700人近い。当然、医師にかかる負担は大きい。
 
 病院はその負担軽減策を立てたが、それも実らず、昨秋には閉鎖の危機に見舞われた。退職を表明する医師が相次いだためだ。
 
 そのときは、退職の意向が撤回されて危機は回避されたが、病院は現状を打開するため、入院患者190人を1年後に120〜130人に減らす計画を打ち出した。外来患者削減の手だても講じるという。この方針に沿って3月末、比較的症状が安定している115人の長期入院患者の家族に転院か退院を求める文書を送った。
 
 しかし、さまざまな事情で医療センターに頼らざるを得ない患者も少なくない。介護者がいないなどの理由による社会的入院患者も多い。転院か退院と迫っても、すぐに答えの出ない人もいる。
 
 現在、転院先が紹介できそうなのは40人前後。目標の60〜70人を削減するには、さらに転院先を確保しなければならない。退院後の受け入れ先を探す難しさもある。
 
 国は2004年に策定した「精神保健医療福祉の改革ビジョン」で、入院から地域生活への移行をうたった。それに伴った取り組みで、新たな入院患者の在院期間は短くなりつつある。ここ数年、入院後1年以内に退院する率は約95%だ。一方で長期入院患者についての手だては進まない。
 
 問題解決の鍵はこの地の精神医療の将来像をどう描くかにある。地域での受け入れ態勢が整備されない限り、常に医師は不足し、病院閉鎖の心配がつきまとう。
 
 医療センターは紀南地方で唯一の公立精神科病院である。1956年、紀南病院の新庄別館として開設されて以来、心の病を抱える人のよりどころとなってきた。
 
 小野紀夫病院長(61)は「骨身を削り、献身されてきた歴代の医師が今の窮状を知られるとどう思われるか。当地域の精神医療を守っていくためにも、決断したことを実行したい」と話す。
 
 「心の病」に苦しむ人が増える時代。病院の窮状は人ごとでは済まされない。医療センターと入院患者の家族だけに対応策を押しつけて済ませられることでもない。
 
 行政の出番である。まずは、この問題に対する地域の理解を深めるための手だてを講じること。さらに医師の待遇改善について、国に手助けを求める必要もある。
 
 医療センターに限らず、地方の医師不足は慢性化している。精神科だけでなく産婦人科や小児科の医師も足りないままだ。 
 
 問題に対処するためには、行政を中心に地域全体で危機感を共有することだ。そこから国を動かす力も生まれてくるだろう。(N)
 
 
 

(2010年04月13日更新)

広がる「認知行動療法」薬だけに頼らないうつ病治療 考え方・クセ改め気分変える

2010/4/9 付日本経済新聞

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 うつ病などの治療で薬だけに頼らない「認知行動療法」が注目されている。これまで効果を疑問視する意見もあったが、薬物療法と併用すると効果的というエビデンス(科学的な証拠)も出そろってきた。4月から一部で健康保険も適用になった。ただ、診察に時間がかかる割に診療報酬が低く、医師の教育が行き届かないなど、医療現場に浸透するには課題も多い。


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医師が面談して治療方針を決め、臨床心理士が認知行動療法にあたることも(東京都中央区の銀座泰明クリニック)


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 都内在住の斉藤亜紀さん(仮名、32)は約4年前に過労や友人関係のストレスなどでうつ状態になり、心療内科でうつ病と診断された。薬物療法を2年ほど続け、徐々によくなったが、気分にムラがあり、約1年前から認知行動療法を始めた。

 2〜3週間に1度、診療所へ通う。毎日の行動や気分の状態をノートにつけ、この記録をもとに臨床心理士と話し合う。ある時、朝8時の起床について「生活が整ってきている。それでいいですよ」と褒められた。もっと早起きすべきだと自分を否定していたが「これまでだめだと思っていたことがよいことなんだと気づいた」と斉藤さん。徐々にうつ病の落ち込みも減ってきたという。

面談をしながら

 認知行動療法は精神療法のひとつで、考え方や行動のクセを改めて、落ち込みやすいといった気分を変えていく。主に軽症から中等症のうつ病患者が対象で、精神科医や心療内科医、臨床心理士らが面談をしながら進める。本やウェブサイトを参考にして自分ひとりで試してみることもできる。

 例えば、銀座泰明クリニック(東京・中央)の場合、軽症患者にはまずウェブサイトを紹介する。「幼少時から不安やうつ、引きこもりを繰り返す人には臨床心理士と一緒にやってもらう」(茅野分院長)という。

 治療には向き不向きがあり、秋葉原ガーデンクリニック(東京・千代田)の山田康院長は「まじめできちょうめん、責任感が強いといった、一般的にうつ病になりやすいとされた性格の人にはぴったりと合う」と話す。自宅で取り組む課題も出るため、こうした“宿題”が苦手な人は続けるのが難しいようだ。

 基本的な治療は、週1回、3060分間の面談を計十数回実施する。まず「上司と会うのが怖い」といったテーマを決め、「上司は自分のことが嫌いなのでは?」「会うのが怖いので上司を避けている」といった行動パターンを見つけ出す。「ある出来事が起こったときに、どう認識して、どう感じ、どのような行動を取るかを明らかにしていく」(千葉大学の清水栄司教授)

こうした行動は患者自身は良いと思っていることが多く、悪循環を明らかにして良いクセをつけるトレーニングをする。「上司は本当に自分を嫌っているか?」と疑ってみたり、上司と顔を合わせる練習をしたりする。

 認知行動療法の治療効果は科学的にも明らかになってきた。慶応義塾大学などの研究チームは、2カ月以上薬物治療をしてもよくならなかったうつ病患者32人を対象に、半数には通常の治療に加えて、認知行動療法を受けてもらった。残り半数は従来通りの治療を続けた。併用したグループのほうが治療効果が著しくよくなっていた。

 パニック障害の治療では、治療効果が長い間続くことも確認されている。名古屋市立大学の古川壽亮教授らは、患者178人に2カ月間認知行動療法のプログラムに参加してもらったあと、3カ月後と12カ月後に経過を観察した。薬を飲まなくても治療効果が持続していたという。

 海外には認知行動療法が精神医療の現場に欠かせない存在になっているところもある。例えば、英国では軽症うつ病には薬を使わず、認知行動療法が第一選択肢だ。

今月から健保適用

 国内ではこれまで診療の統一ルールやマニュアルがなく、各医療機関が独自の手法で取り組んでいた。健康保険が利かない自由診療/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3E5EBE0E5E2E3E4E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NXで、「都心では1時間あたり1万〜1万5千円が相場」(清水教授)。患者にとって経済的な負担も大きい。

 こうしたなか、4月からうつ病の認知行動療法が健康保険の適用になった。厚生労働省研究班が作成したマニュアルに従って医師が治療を実施した場合、30分以上で4200円の診療報酬がつく。3割負担なら1260円を患者は窓口で払えばすむようになった。

 ただ、清水教授は「実際に保険診療する医療機関はほとんどないだろう」と指摘する。医師の研修コースなどが未整備で、マニュアルに従って治療をできる医師がほとんどいないためだ。

 また診療報酬が低く、「医師側にとっても経済的に割が合わない」(山田院長)との声も聞こえてくる。

 千葉大学は4月から医師や臨床心理士らを対象にした認知行動療法の研修コースを新たに開設した。普及へ向けた取り組みがじわりと広がりつつある。

(長倉克枝)

[日本経済新聞朝刊2010年4月9日付]


2010.4.8読売新聞
脳血流で精神疾患判断、全国7施設でほぼ確立

 うつ病や統合失調症などの精神疾患を脳の画像検査で診断する方法が実用段階に入ってきた。
 
 「近赤外光脳計測装置」(NIRS)を用いて脳血流の変化を測定し、それぞれの病気に特有のパターンを判別する検査法が、全国7施設の共同研究でほぼ確立した。東京大病院などは、実際の患者の診断に使い始めている。
 
 精神科では、血液検査や画像のような客観的な診断手法が乏しく、同じ患者でも医師によって違う病名がつくことも少なくない。
 
 NIRSによる画像検査は、ヘルメット型の装置を頭にはめてもらい、「あ」で始まる言葉を声に出してもらうなど簡単なテストをしながら、前頭葉の血流変化を調べる。
 
 東大や国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)など7施設が、2004年度から共同で研究を開始。健常者約1000人、精神疾患の患者約500人の画像を蓄積した。統合失調症の患者は、健常者より血流量がゆっくりと増えるなど、それぞれの病気で血流の変化に違いがあり、通常の面接だけでは病気の判別がつきにくかった患者もほぼ区別できることがわかったという。
 
 東大病院精神神経科の笠井清登教授は「面接だけでは診断が遅れたり、不適切な薬を処方されて症状が悪化するケースもあったが、診断名がつき、治療方針が明確になることが患者にとって安心につながっている」と話す。東大の検査は6月末まで予約がいっぱい。
 
 以後の申し込み要領はホームページ(http://www.h.u-tokyo.ac.jp/patient/depts/kokoro.html)で確認できる。
 
(2010年4月8日14時55分  読売新聞)

2010.4.8キャリアブレイン
精神科医療の将来ビジョンの検討に向け始動−日精協・山崎新会長
 
 日本精神科病院協会(山崎學会長)は、今後の精神科医療の在り方を検討する「将来ビジョン戦略会議」を設置するための検討を進めている。4月1日付で新会長に就任した山崎氏は8日、キャリアブレインの取材に対し、1年ほど前から同会議の構想を持ち、「自分が会長になったら、これをぜひしたいと思っていた」と語った。
 
 山崎会長によれば、戦略会議は50人程度の規模となる見込みで、半数は協会外で構成する考えだ。初会合は6月を予定しており、月に2回程度のペースで来年の1、2月まで議論し、3月に精神科医療の短期・中期・長期政策ビジョンを報告書としてまとめる方針だ。
 山崎会長は、2012年度の診療報酬改定のツールとして役立つよう、遅くとも来年の4月か5月までには報告書を厚生労働省保険局に提出する考えを示した。
 検討項目としては、▽急性期の精神科医療の在り方▽高齢者の精神科医療の方向性▽精神療養病棟を含めた慢性期の精神科医療の在り方▽地域での精神科医療の展開―などが挙がっており、各項目について10人程度の班をつくって議論する予定。
 
 山崎会長は、短期・中期・長期のビジョンをつくり、将来の医療提供体制のイメージを固めた上で、その実現に向けた段階的な構想を練る必要性を指摘。報告書について、「将来的に精神科医療は動いていくのだという、バイブルのようなものをつくりたい」と話している。
 

( 2010年04月08日 19:25 キャリアブレイン )

2010/4/10 6:00  山陽新聞
精神障害者に「住む場」を 不動産業者向けにハンドブック

 偏見を持たれやすい精神障害者が住居を確保し、地域で生活するのを支援するため、県は不動産業者や賃貸住宅の大家向けに、症状の特徴、各種支援制度を紹介するハンドブックを作製。無料配布している。地域に受け皿がなく退院できない「社会的入院」患者の社会復帰促進事業の一環。
 
 冒頭部分で、精神障害者は集中力低下など薬の副作用や周囲の偏見で苦しんでいる一方、適切な治療や温かい対応で病状が安定することを説明。精神障害者でない人に比べて罪を犯す確率が低いことを表す法務省のデータも示した。
 
 保健所や市町村など関係機関、ソーシャルワーカーら多くの専門家が地域生活を支援する現行の体制をはじめ、家賃保証料や生活用具の購入費などの補助制度も紹介。精神科病院に長期入院後、1人暮らしを始めた元患者の「病院では味わえない自由な感覚で暮らせる」などの声や、「初めは近所トラブルや家賃の支払いを心配したが、周囲の見守りで落ち着いて生活できている」という大家の声も掲載した。
 
 A5判14ページで7000部作製し、県の不動産協会や宅地建物取引業協会、病院に配った。保健所などに置いており、県健康推進課(086―226―7330)のホームページでも読める。

2010.4.10毎日新聞
障害者の「罪と罰」:イギリスからの報告/中 段階踏んで、地域に復帰
 ◇治療・教育から、常時見守りつき自立へ
 冬の日を浴びる広大な敷地に木々が立ち並ぶ。畑の作物を荒らす野ウサギがわなにかかって捕らえられていた。
 
 ロンドンから北へ空路1時間、ニューカッスルのノースゲート病院には約200人の患者が暮らしている。ほとんどに知的障害があり、自閉症の人も30人。重大事件を起こした発達障害者に対する矯正プログラムが日本の刑務所や少年院にはほとんどないが、イギリスにはさまざまなレベルの治療・矯正施設がある。
 
 病院の敷地内を案内しながら精神科医のオブライエン教授が語った。「まずその人にどのような支援が必要なのか、医療やコミュニケーション、身体感覚の面からのアセスメントを12週間かけて行い、個別支援計画を作ります。日常生活を営む基本的な能力が欠けている人が多く、園芸活動、室内作業、運動、認知行動療法などを行っています」
 
 入院患者のほとんどは2〜3年以内に退院するという。病棟の周囲に高いフェンスが張り巡らされ、監視カメラが常時作動しているのを除けば、日本の知的障害者入所施設によく似た雰囲気だ。
 
 イギリスには保安の必要性の程度によって高度保安病院、地域保安ユニット、低度保安ユニットの3段階に分かれた治療施設がある。事件を起こした人は責任能力の有無にかかわらず、精神科のケアが必要だと認められると治療施設に収容される。地域保安ユニットであるノースゲート病院には中度保安病棟、低度保安病棟、自閉症専用病棟などがあり、高度保安病院から症状が改善されたとして移ってくる触法の患者たちもいる。
 
   *
 
 女性12人が暮らしている建物に案内された。全員が何らかの触法行為をして収容されたという。たかぶった感情を鎮めるための個室(クワイエットルーム)で若い白人女性が座り込んでいた。まゆをしかめてうつむいている。「何か特定のことが引き金になって怒りが爆発する。暴力が悪いという意識はあり、暴れた後で涙を流す。分かっているけれど自分で感情をコントロールできないのです」とスタッフは話す。
 
 ここでは軟らかいボールなどの器具を使って適切な身体感覚を身につける「センサリー・ダイエット」、髪をきれいに整えたりつめにネイルアートを施したり、菜食で肥満を解消する「セルフ・エスティーム・プログラム」などの心理療法が行われている。虐待を受けたり劣悪な環境で育ってきた障害者に対して、自分に自信を持ち、コミュニケーションや感情のコントロールができる能力を身につけることを目指している。
 
 発達障害者の中には相手の気持ちに共感することが苦手な人がいる。日本でもそのような人が事件を起こし、警察の取り調べや公判でのとっぴな発言を報道され物議をかもすことがある。「反省していない」「被害者をぼうとくしている」などと糾弾され、厳罰を求める声が高まったりする。
 
 こうした障害者に対する刑事政策や世論の問題は、ノンフィクション「死刑でいいです」(共同通信社)に詳しいが、共感や反省は苦手でも、法を犯さないスキルは身につけられるのではないか。そのための支援を研究し実践している専門家も多くはないがいる。
 
 「ノースゲート病院は認知行動療法を中心に自分のやったことを見つめることを重視している」とオブライエン教授は言う。刑罰ではなく治療や教育によって尊厳や自信を身につけ触法のリスクをなくしていく方針は、どのレベルの保安施設も一貫している。
 
   *
 
 緑が豊かな敷地内には小さな家もあり、家庭的な環境の中で地域社会へ復帰するための支援を受けている自閉症の人たちがいる。「症状が改善されて地域に戻すときには、スタッフが何度も地域に出向き、受け入れ態勢を綿密に整える」と女性職員はいう。
 
 イギリスは60年代から大規模入所施設が解体され、障害者は個々を対象にした福祉サービスによって街での自立生活が保障されてきた。重要事件を起こした障害者も例外ではない。法務省の教育・支援プログラムに基づき、6〜12人がローテーションを組んで地域社会に戻った触法障害者の生活を見守る。
 
 触法リスクが低減したと認められてからも、「後見命令」に基づく24時間体制での見守り支援は続く。障害者の人権と社会の安全や安心感を両立させるためのコストなのである。【野沢和弘】=次回は24日掲載
 
毎日新聞 2010年4月10日 東京朝刊
 
 
障害者の「罪と罰」:イギリスからの報告/上 ケア優先、低い再犯率
 殺人などの重大事件を起こした容疑者が発達障害や人格障害と診断されることがある。いじめ、孤立などが背景にあるが、障害ゆえの言動が「悪質」「猟奇的」と糾弾される。一方、特性に配慮されず刑事手続きが取られ、刑務所では矯正教育が乏しいため、再び罪を犯す人も少なくない。現在の司法は加害者の矯正や社会の安全に役立っているのか。イギリスを訪ね、考えた。【野沢和弘】
 
 ◇「病院」で個別治療 段階的に地域へ復帰
 冬枯れの雑木林が広がるロンドン郊外にブロードモア高度保安病院はある。収容患者は250人。殺人や強姦(ごうかん)容疑などで逮捕されたり、既に服役していた人が7割。統合失調症、人格障害、発達障害などと診断された人々である。
 
 まず受付で指紋と顔写真をとられ、ボディーチェックを受けた。厳重に施錠されたドアを四つ通り抜けて敷地内に入ると、19世紀に建てられた赤いレンガ造りの病棟が並ぶ荘厳な風景が現れた。
 
 不安定な患者を集中ケアする病棟に案内された。リビングで、患者らがテレビを使ったボウリングゲームに興じている。肥満解消などのためという。不自由なことはないかと問うと、太った黒人男性は「特にないね」と笑った。
 
 処遇の難しい患者がいる病棟では、工芸活動や音楽療法が行われていた。日本の障害者施設の雰囲気と似ている。ユニット型居室の中央に広いリビングがあり、数人がくつろいでいた。「コミュニケーションをうまく取れるようにすること、自分のことをポジティブに考えることを学んでいる」と男性患者が落ち着いた口調で話した。
 
 一人の男性の部屋を見せてもらった。整頓された室内に音楽が静かに流れ、窓辺の観葉植物に光が差し込んでいる。知的な笑みを浮かべ大学教授のような雰囲気だが、3人の女性を強姦したとして有罪判決を受けた。普段はおとなしいが、突然激高して暴れることがあるという。
 
 同院では患者の特性や能力に応じて個々の治療プログラムを作成し、認知行動療法や心理療法を行っている。原因となる疾患をコントロールし、自分の病を理解する。なぜ法を犯したのか内省を促し、行動を管理することを目指している。「院内の治療が地域の福祉サービスと統合されていること、本人が治療に積極的に向き合えるようにすることが必要だ」と管理者の男性は言う。
 
 英国では容疑者に精神的な問題が指摘されると治療が優先される。共感や内省が難しい障害のある人を服役させるだけでは矯正につながらないとの考えが根底にある。特に「危険で重度な障害」と判断されると高度保安病院などに送られる。再犯リスクが減ると中度保安病院や刑務所、改善すればさらに開放病棟から地域生活へと移行する。そうして地域に戻った障害者が再び法に触れたりして病院に戻ってくる率は5〜6%という。
 
 「刑罰でなくなぜ病院に入れるのか、と思っている人は英国にも多い」とブロードモア病院の医師は言う。厳重な管理下で多数の医療スタッフが手厚いケアを施す同院では、患者1人に年約4000万円をかける。国の財政悪化で体制の継続が危ぶまれてはいるが、必要なのは刑罰ではなくケアという思想が、厳罰を求める世論の濁流にあらがう岩のように存在している。
 
   *
 
 日本では刑事責任能力が認められると通常の刑事手続きが取られる。人格障害や発達障害で「責任能力なし」とされることはまずない。刑務所では障害特性に合わせた矯正教育はなく、医療刑務所でも再犯防止プログラムはほとんど行われていない。05年には重大事件を起こしながら責任能力がない人を指定医療機関で治療する心神喪失者医療観察法が施行された。イギリスがモデルだが、統合失調症などに限られ、薬物治療での改善が難しい発達障害や人格障害は対象外だ。
 
 イギリスでは犯罪を起こさなくても重度の自傷や他害行為があり専門的なケアが必要な人は保安病院で治療される。「入退院の判断は、精神科医と裁判官と心理士などで構成される裁定機関が緊密にかかわって行うことが精神保健法で定められている」とコリーン・シンガー弁護士は言う。
 
 イギリス自閉症協会にはヘルプラインがあり、発達障害の人がトラブルを起こしたり逮捕されると、すぐに自閉症に詳しい弁護士のネットワークにつながる、と同協会のリチャード・ミルズ氏は語る。=次回は4月10日掲載
 
毎日新聞 2010年3月18日 東京朝刊

2010年4月9日 (金)薬事日報
【厚労省】抗うつ薬治験GL作成へ‐臨床試験の投与期間を限定

  
 厚生労働省は、抗うつ薬開発における臨床試験の計画、実施、評価等の標準的方法と手順を示すガイドラインを作成する。9日からホームページ上で「抗うつ薬の臨床評価方法に関するガイドライン(案)」を公表し、1カ月間のパブリックコメント募集を開始した。
 うつ病の生涯有病率は10%超と推定されるほど高い。原因や病態は明らかになりつつあるものの、未だ十分に解明されたとはいえないのが現状だ。そのため、ガイドライン案では、研究の進展に応じて内容を改訂するほか、合理的な根拠があれば、必ずしもガイドラインに固執せず、柔軟に対応すべきとの考え方を示している。
 
 臨床試験のデザインに関する基本的な考え方については、抗うつ薬の場合、実薬対照非劣性試験や同等性試験により、治験薬の有効用量を検討し、有効性を検証することには限界があるとし、「抗うつ薬の有効性および安全性の検討には、プラセボ対照二重盲検比較試験が必要である」と定めた。
 
 また、急性期のうつ病患者に、プラセボを長期間投与することは倫理的に問題があるため、「臨床試験は投与期間を限定して行う」とし、試験期間中に病状が悪化した場合の対応を、計画段階で検討するよう求めている。探索的試験や検証的試験の投与期間は「6〜8週間」が一般的とし、これを超える場合には、「臨床的意義を考慮して試験成績を踏まえた根拠が必要」とし、逆に、投与期間を6週未満に短縮することについては、「安全性評価が十分に行えない可能性があるため適切ではない」と指摘している。
 
 さらに、うつ病患者を対象とした臨床試験では、プラセボの反応性が高いことに留意するよう求め、臨床試験の計画段階で、プラセボ反応性が高い患者集団を除外することを対応策として挙げている。

2010.4.8読売新聞関西

精神疾患画像で診断うつ病や統合失調症 脳血流の変化から判別


 うつ病や統合失調症などの精神疾患を脳の画像検査で診断する方法が実用段階に入ってきた。「近赤外光脳計測装置」(NIRS)を用いて脳血流の変化を測定し、それぞれの病気に特有のパターンを判別する検査法が、全国7施設の共同研究でほぼ確立した。東京大病院などは「先進医療」として実際の患者の診断に使い始めている。医師の面接に頼っていた精神科の診断に客観的なデータが加わることで、正確な診断に役立ちそうだ。


 精神科では、血液検査や画像のような客観的な診断手法が乏しく、同じ患者でも医師によって違う病名がつくことも少なくない。

 NIRSによる画像検査は、ヘルメット状の装置を頭にはめてもらい、「あ」で始まる言葉を声に出して挙げてもらう課題など簡単なテストをしながら、前頭葉の血流の変化を調べる。人体に害は全くない。

 群馬大、東大、国立精神・神経医療研究センター、鳥取大など7施設が2004年から研究を開始。健常者約1000人、精神疾患患者約500人の画像を蓄積。昨年末までの分析で違いの見分け方がほぼ確立した。

 健常者では血流量が急に増え、課題を終えた後、すぐに下がった。うつ病は反応は速いが、増え方は少なく、課題終了とともに急減した。統合失調症では、ゆっくり増え、課題をやめた後、減るが、一度急増する時点があった。そううつ病でも、うつ病と異なる特徴が見られた。それぞれの疾患の7〜8割程度で、面接による診断と一致する結果になり、面接だけで疾患を判別がつきにくかった患者もほぼ区別できるという。

 東大など3施設は昨年度から保険診療と併用できる「先進医療」の承認を厚生労働省から受け、現場での利用を開始。近畿大病院(大阪府大阪狭山市)も近く先進医療を始める。東大病院は今月から週2人の入院検査プログラム(自己負担約7万円)を導入した。

 東大精神神経科の笠井清登教授は「面接だけでは診断が遅れたり、不適切な薬の処方で症状が悪化するケースもあったが、画像検査に従来の面接法を加えると、ほぼ確実に診断できる。目で見て自分の状態がわかることは、患者にとって安心につながっている」と話す。

 厚労省の調査では、国内のうつ病患者は約100万人、統合失調症は約70万人と推定され、とくにうつ病は年々増加。自殺の大きな原因ともなっている。

 東大の検査は6月末まで予約が埋まっている。以後の申し込み要領はホームページ(http://www.h.utokyo.ac.jp/patient/depts/kokoro.html)で確認できる。

201048  読売新聞)


介護保険10年 大阪府では要支援・要介護は3倍増に
2010.4.10 21:31産経新聞

  平成12年4月の制度開始から10年となった介護保険。65歳以上の被保険者数は、大阪府内だけでも21年11月末時点で190万人を突破し、制度スタート時の約1.5倍に。要介護・要支援の認定者数も当初の約12万人から約35万人と約3倍になっており、増加の理由について府の担当者は「高齢者の増加に加え、制度が周知されたため」と説明する。
 
 市町村ごとに設定されている保険料は3年ごとに見直されているが、おおむね上昇傾向。全国平均の月額保険料は12〜14年度の当初3年間が2911円だったのに対し、現在は4160円と約1.4倍に。全国で最も高額なのは十和田市(青森県)の5770円で、一番安いのは長野原町(群馬県)の2675円。大阪府内で一番高いのは八尾市の4979円という。
 
 今後も高齢者の増加は続くことから、24年4月に改定される保険料はさらに上昇する見通し。大阪府内でも月額5000円を超える自治体が出る可能性が高いとみられている。
 
 ただ、ある自治体の介護保険担当者は「居宅サービスよりも施設サービスの方が利用料が高くなる傾向があるため、施設が充実した市町村ほど、介護保険料が高くなってしまうジレンマもある」と話していた。
 
 
重い介護度の入所者が増加 特養ホームなど介護保険施設
2010.2.25 16:17産経新聞

 
 特別養護老人ホーム(特養)など介護保険3施設で、要介護度が重い人の入所割合が年々高くなっていることが、厚生労働省が25日発表した平成20年介護サービス施設・事業所調査結果で分かった。
 
 3施設は特養と介護老人保健施設(老健)、介護療養病床。16年の同調査に比べ、要介護度が3〜5と重い人が入所者全体に占める割合は、特養が82%から87%、老健が70%から73%、療養病床は92%から95%と、いずれも増加した。高齢化の進行に伴う変化とみられる。
 
 また、65歳以上の人口10万人に対する施設定員は全国平均で2981人。都道府県別にみると、徳島県(4414人)や富山県(4207人)が多く、東京都(2163人)や神奈川県(2382人)は少ない。都市部で整備が遅れている実態を示した。

2010.4.6共同通信
統合失調症、早めに治療 
新手法で前駆期とらえ 
東大病院が試み
 
 統合失調症のわずかな前駆症状をとらえることで、早期の治療を可能にしようという試みを、東京大病院 精神神経科の笠井清登教授らのチームが始めた。治療開始が早ければ薬物療法や認知療法の効果が高く、再発のリスクも少ないと期待される。笠井教授は「将来的には発症予防につなげるのが目標だ」と話す。
 ▽脳組織に変化
 統合失調症は、妄想や幻聴に加え、感情がにぶったり意欲が低下したりする精神疾患。人口の約1%がかかり、大半が思春期から青年期に発症する。原因は不明だが、複数の遺伝子が病気の素地をつくり、ストレスが引き金となって発症することが多いとみられる。
 抗ドーパミン薬などで一部の症状は緩和するが、元通りの生活が送れるようになるまで回復させるのが難しいケースも少なくない。
 脳組織の変化については長く謎だったが1990年代以降、多くのことが分かってきた。
 磁気共鳴画像装置(MRI)で患者の脳を調べると、神経細胞の細胞体が多く集まる大脳の「灰白質」が、健康な人に比べて萎縮していた。特に前頭葉と側頭葉で程度が著しかった。笠井教授らも患者13人の脳を調べ、1年半後に灰白質の体積が数%減少しているのを確認。同じ患者でも症状に伴って萎縮が進行していた。
 ▽不安や知覚過敏
 統合失調症患者の多くは、発症に先立って不安や知覚過敏といったごく弱い症状を示す。こうした段階は「前駆期」と呼ばれ、20%が1年後までに、35%が2年半後までに発症するという。
 2005年には、発症から治療開始までの「未治療期間」が長ければ長いほど、薬が効きにくく、治療が困難になることが欧米の研究で示された。日本の患者の平均的な未治療期間は約1年だが、欧州では地域ぐるみの啓発で3〜4週間に短縮した例もある。
 笠井教授は「前駆期は脳の萎縮が始まる時期と重なっている可能性がある。これをとらえて治療開始時期を早めることができれば、より多くの患者を救うことができる」と話す。
 東大病院精神神経科が08年に開設した「こころのリスク外来」は、こうした前駆期の人を見つけるのが狙いの一つだ。
 自分の精神状態に不安を感じた人から相談を受け、病気の可能性があれば診療を受けてもらう。ホームページには幻聴の有無など11項目のチェックリストを掲載し、相談前に試すことができる。
 ▽光トポグラフィー
 前駆期の症状は時に消えてしまうため、カウンセリングなど従来の手法だけでは、発症リスクを見極めるのが難しい。このため笠井教授らは、脳を傷つけずに神経活動の変化を知ることができる「光トポグラフィー検査」を使った研究を進めている。
 検査では、ヘルメット状の装置から頭部表面に照射した近赤外線の反射の度合いから、脳活動に伴う血流の変化を測定する。東大病院の患者十数人に装置を付けてもらい、簡単な言語テストを実施したところ、テスト時の血流変化が健康な人に比べて鈍いなど、患者には特徴的なパターンがあることが分かってきた。
 これにMRIや血液検査、遺伝子検査などの新手法を組み合わせることで、リスクをより正確に見積もることができるのではないかという。
 笠井教授は「脳の萎縮を防ぐ薬が将来開発されれば、前駆期の人に投与して発症を予防するという、これまで不可能だった治療に道が開けるかもしれない」と話す。(共同通信 吉村敬介)(2010/4/6)

正確な診断に不安8割 県内「認知症相談医」アンケート
2010年4月7日(水)信濃毎日新聞

 
 
 信濃毎日新聞社は認知症の治療現場の実情を探るため、県の研修を受けた「認知症相談医」らを対象にアンケートを行い、6日、結果をまとめた。回答者の3割が正確な診断に不安が「ある」と回答。「少しある」を加えると8割に上った。66・7%は「判断が難しく、診断できなかった経験がある」としている。検査の機器や技術が不十分な中、不安を抱えながら認知症の患者と向き合う地域医療の実態がうかがえる。
 
 回答したのは126人。このうち、正確な診断に不安が「ある」としたのは30・2%、「少しある」が51・6%、「ない」は17・5%だった。
 
 認知症の診断をしているのは106人(84・1%)。診断の根拠は、問診と質問形式の認知機能テストの比重が大きい。「わずかな診療時間では(問診などで)日常生活の様子をつかみにくい」「専門的な習練が不十分」「(初期の認知症と症状が似ている)うつ病と鑑別が難しい」といった声が目立つ。「精神科専門医の受診を勧めている」とする医師もいた。
 
 診断の精度を高める上で不足しているものを2つまで聞いたところ、「検査機器・検査技術」「患者にかかわる介護面、生活面での情報」が最多で全回答者の34・9%。次いで「診断技術を高める講習や研修の機会」「専門的な見地からのアドバイス」(ともに31・0%)などだった。
 
 診断をしている医師のうち、病名を本人や家族に「必ず告げる」としたのは67・0%、「告げないことがある」は32・1%で、告知の相手、方法は医師の考えや患者の状況で異なっている。
 
 薬の処方に悩みや不安が「ある」とした医師は全回答者の68・3%を占める。特に興奮を抑える抗精神病薬の処方に迷う医師が多かった。
 
 かかりつけ医と専門医との連携が「できている」「ある程度できている」とした医師は半数を超えたが、「できていない」「あまりできていない」も計43・6%を占めた。
 
 個々の患者のケアを家族や介護関係者と話し合う「サービス担当者会議」に出席したことのない医師は43・7%。介護側との連携が不十分な様子も見えている。

鬱休職の教員に復帰支援プログラム 今夏スタート
2010.4.8 02:00産経新聞

  東京都の公立学校教職員のうち、精神系疾患で病気休暇や休職している教職員が急増していることに対応するため、都教育委員会が休職者の職場復帰に向けた本格支援プログラムの作成に着手することが7日、分かった。全国教委では初の試み。従来の精神科医任せによる診察や指導だけでなく、臨床心理士や復職アドバイザーらを中心とした復帰訓練を実践する。8月から始める。
 
 都教委によると、平成20年度の教職員の休職者は788人。うち、精神系疾患で休職した人は68・5%にあたる540人に上った。さらに、都教委の推計では、21年度も同程度に上るとみられる。
 
 精神系疾患での休職者に支給される給与は年間で総額約60億円に上っているうえ、教員の長期休職が教育現場に及ぼす影響は大きいため、都教委で休職者に対する支援策の検討を続けていた。
 
 支援プログラムの名称は「リワークプラザ」。精神科医や臨床心理士、復職アドバイザー、校長OBらの復職チームを組織して対応する。具体的には、休職初期に復職アドバイザーが対象者の学校を訪問。休職理由や直前の心理状態を把握し、個人に合わせた復帰プログラムを作成する。
 
 リワークプラザでは、休職者に対し、従来では任意であった復帰に向けた訓練を都教委の訓練命令として出すことが特徴。精神科医による面談終了後に始まる「学校訓練」は原則3カ月間かけて行われ、訓練を3段階に区切るものとした。
 
 最初の段階では、勤務校への週3日の出勤訓練から始める。次は、現役教員が行う授業の参観や校務を確認し、最終段階では授業参観のほか、子供たちへの給食指導、さらには管理職立ち会いのもとで実際の授業を週5日行うとしている。
 
 復帰訓練終了後には、都教委や区教委の幹部、精神科医、復職アドバイザーで職場への復帰の可否を合議する。復帰手続きは、これまで本人が直接行っていたことを改め、リワークプラザが直接、学校に連絡することにした。訓練を途中でやめたり、訓練内容や終了判定に不服がある人は、新たに発足させる休職復職審査会で協議することにしている。
 
 ◇
 
 都教委によると、休職者は特に採用3年目までの小学校教員が目立つ。さらに、21年目以降のベテラン教員の休職率も極めて高い傾向にある。休職理由については、自己申告では「不明」が最多。次いで、「児童・生徒」「保護者」の順。異動を理由に挙げた事例では、多くが「環境不適応」とみられる。
 
 また、精神系疾患で休職した教職員の約70%は病欠するまで医師の診断を受けていなかったことも判明。
 
 都教委では受診が手遅れになった背景に、(1)本人に鬱病(うつびょう)の知識が少ない(2)生活に支障がないと周りも気がつかない(3)内科を受診時に心療内科や精神科を勧められて発見される−ことなどがあるとみている。                                                

生活保護:受給者の自殺率2倍超
2010年4月9日 22時4分 更新:4月9日 23時48分毎日新聞
 
 厚生労働省は9日、初めて実施した生活保護受給者の自殺率調査の結果を公表した。人口10万人当たり62.4人(09年)で、国民全体の自殺率(10万人当たり約25人)の2倍以上に達する。うつ病などの精神疾患を抱える人が多いことが原因とみられ、厚労省は今後も調査を継続し、対策を検討する。
 
 調査は07〜09年、受給者の中で自殺した人や自殺と推定される人を対象に、全国の福祉事務所の報告を基に実施。死亡診断書や死体検案書、職員の記憶などから集計した。自殺者は▽07年577人(人口10万人当たり38.4人)▽08年843人(同54.8人)▽09年1045人(同62.4人)−−だった。【野倉恵】
 
 
生活保護受給者の自殺率、10万人あたり62.4人 全国平均の倍 厚労省調査
2010.4.9 22:32産経新聞

  生活保護受給者の自殺率が、10万人当たり62.4人と全国平均の倍以上となっていることが9日、厚生労働省の調査で分かった。生活保護受給者の自殺率は調査した過去3年で増加し続けており、低迷する経済情勢の中、生活弱者が心身共に追いつめられている実態がうかがえる。
 
 生活保護受給者の生活実態を調べるため厚労省が行った初の調査で、国が国民に保障する最低限度の生活水準について検討している「ナショナルミニマム研究会」に同日、報告した。
 
 調査結果によると、昨年自殺した生活保護受給者は1045人で、自殺率は10万人当たり62.4人だった。20年は同54.8人、19年は同38.4人だった。全国平均の自殺率は同25人前後で推移しており、生活保護受給者の自殺率は2倍以上となっている。
 
 厚労省は、生活保護受給者は精神疾患を持つ人の割合が16.4%と、全国平均(2.5%)よりも高いことが背景にあると分析している。年齢別では50代が23.8%と最多で、77.8%が単身世帯だった。動機別では、「健康問題」が最も多く57.8%。次いで「経済・生活問題」(16.4%)だった。
 
 首都大学東京の岡部卓教授(社会福祉学)は「生活保護受給者は社会とのつながりが希薄になりがち。頼る人もいないため、自殺の出現率は高くなる。国は就労支援と同時に、メンタルのサポートも行うべきだ」と話している。
 
 一方、生活保護を受けられる可能性のある低所得者のうち、推計で67.9%が受給していないことが判明した。現在、生活保護を受給しているのは108万世帯だが、受給の可能性がありながら受けていない世帯は推定で229万世帯あるという。ただ、この割合は調査方法によって12.6%、31.6%とばらつきが大きく、厚労省は「評価は難しい」としている。
 

2010.4.10読売新聞
水準より低収入でも生活保護未受給229万世帯

 厚生労働省は9日、生活保護の対象となる生活水準より収入が少なく、貯蓄など一定の資産もない「低所得世帯」の世帯数などを初めて推計し、結果を公表した。
 

 基になる調査によっては、低所得世帯の約7割が生活保護を受給していないと推計され、厚労省は今後も調査を続ける考え。
 
 2007年の「国民生活基礎調査」から推計した場合、全国に低所得世帯(受給世帯を含む)は337万世帯あり、このうち68%にあたる229万世帯は生活保護を受給できる可能性があるにもかかわらず、していないとみられる。全世帯の5%にあたる。
 
 ただ、総務省が04年に実施した「全国消費実態調査」を基にした場合、低所得世帯は142万世帯と推計され、生活保護を受給していない世帯数も32%の45万世帯にとどまるとされた。
 
 国民生活基礎調査は、厚労省が医療や福祉の基礎資料を得るために世帯構造などを調べているもので、07年は約29万世帯を抽出して調べた。
 
 また、全国消費実態調査は、約5万7000世帯を抽出して家計簿を作成してもらい、世帯ごとの家計の収支などを調査するもの。
 
 厚労省は「正確な実態を把握することは難しいが、生活保護を受給する意思があるのに受給できないということはあってはならず、自治体に適切な対応を求めていく」としている。
 
 ◆生活保護=日常の生活費や住宅費などを合わせた「最低生活費」を、世帯収入が下回る場合、その差額を支給する制度。地域や世帯構成で基準が異なるが、東京23区の3人世帯(33歳、29歳、4歳)で収入がゼロの場合、生活扶助費に限っても月額約16万7000円が支給される。今年1月時点で、約132万世帯が受給し、21か月連続で過去最高を更新している。
 
(2010年4月10日03時03分  読売新聞)

生活保護:未救済の低所得者3割
2010年4月9日 21時23分 更新:4月10日 0時17分毎日新聞
 
 厚生労働省は9日、生活保護水準未満の収入や資産で暮らす世帯のうち、保護を受けている割合の調査結果を公表した。総務省の統計に基づく推計では68.4%で、受給できる可能性のある低所得世帯のうち約3割が保護を受けていないとみられることが判明。厚労省の統計に基づく推計では32.1%だった。「最後の安全網」で救済されていない低所得者が多数いる可能性があることが公的な調査で初めて示された。
 
 調査は、総務省の全国消費実態調査(04年、対象約5万5000世帯)と、厚労省の国民生活基礎調査(07年、同約23万世帯)に基づき推計。収入から税や保険料を差し引いた所得が、生活保護で給付する「最低生活費」を下回る世帯の割合などを算出した。
 
 消費実態調査に基づく推計は、国内の全世帯を約4674万世帯と仮定して実施。最低生活費(生活費、教育費、住宅費の合計)を下回る費用で暮らし、資産もない(貯金が最低生活費1カ月分未満で住宅ローンもなし)のに保護を受けていない家庭は約45万世帯。保護を受けているのは約97万世帯で、保護を受けている割合は68.4%だった。
 
 ◇貯蓄なし229万世帯
 国民生活基礎調査に基づく推計は、国内の全世帯を4802万世帯と仮定して実施。この調査は住宅費を調べていないため、これを最低生活費に含めず計算した。生活費が最低生活費未満の家庭は約337万世帯で、貯金を保有しない家庭は約229万世帯。保護を受けている家庭は約108万世帯で、受給している率は32.1%だった。住宅ローンのある世帯が除外されていないため、総務省調査より割合が低くなった。
 
 厚労省は調査結果を、貧困対策の柱として国が保障する最低限度の生活水準(ナショナルミニマム)を検討する際の資料とする。【野倉恵、東海林智】

2010.4.8読売新聞
障害者歯科治療へ 全身麻酔診療室 
 
 
診療室にはマスクを使った全身麻酔も備えている(中京区で)  府歯科医師会は7日、身体、精神障害者の治療を担っている京都歯科サービスセンター中央診療所(中京区)に、全身麻酔を行える診療室を新設し、完成式を行った。障害者の治療に全身麻酔を利用する動きは全国で広がっており、同会では「より安全な治療を提供したい」としている。
 
 同診療所は1970年に開設され、年間延べ4300人が訪れている。障害のため意識しないまま体が動いたり、恐怖で体を動かしたりする患者も多く、これまではネットなどで体を固定してきた。
 
 治療室は約7200万円をかけて整備。歯科医や麻酔歯科医が勤務し、患者に恐怖感を与えないよう、チョコレートやキャラメルの香りがするマスクを使った麻酔もある。レントゲンを撮ることもできる。
 
 完成式に出席した門川大作・京都市長は「拘束具を使った治療は、行う方、受ける方ともにつらい思いをされてきた。日本で最高レベルの施設だ」とあいさつ。同会の平塚靖規会長は「障害者の方には、最良の治療を受けて健康な人生を送っていただきたい」と話した。
 
(2010年4月8日  読売新聞)

社会復帰へ就労支援施設 2010/4/7 中国新聞
 
 
 
 精神障害者たちが社会復帰を目指し、お好み焼きやパンを製造、販売する就労支援施設「ノイエ」が6日、広島市安芸区中野東に完成した。26日にオープンする。医療法人せのがわ(同区)が、運営する瀬野川病院の敷地内に建てた。
 
 鉄筋3階建てで、延べ約660平方メートル。1階に「お好み焼 のいえ」とパン製造販売の「ベーカリーノイエ」の店舗を置く。お好み焼き店にはカウンターとテーブルの計15席を設置。2、3階には事務室や研修室もある。
 
 ノイエはドイツ語で「新しいこと」「変化すること」を意味する。事業費は約1億5千万円で、一部は国と市の補助を受けた。両店で計13人の障害者が、接客の基礎やマナーを学ぶ。オタフクソース(西区)とパン製造販売会社ベーカリープチ(同)の社員による研修を受け、開店に備えている。
 
 午前10時〜午後3時営業。日曜日と祝日は休み。お好み焼きは500円から、食パンや菓子パンなど約20種類を40〜690円で売る。持ち帰りもできる。
 
 両店で働く人を募集しており、医師の同意書や自治体が発行するサービス受給者証などが必要。身体や知的障害者も受け入れる。パン店は将来的に30〜40人程度受け入れる。

自殺防止へ、うつ病患者支援 厚労省、ビジョン策定へ
2010年4月4日1時23分朝日新聞
    
 
年間3万人を超える自殺者対策として、長妻昭厚生労働相は3日、うつ病など精神疾患がある患者への支援策などを盛り込む「精神保健医療のビジョン」を年内に取りまとめる考えを明らかにした。そのうえで、「来年度予算でも一定のものは反映できるようにしたい」と述べた。都内で記者団に明らかにした。
 
 厚労省の自殺とうつの対策を検討するプロジェクトチームが月内にも中間報告をまとめる予定。それを受けて、精神疾患患者や家族ら当事者の意見を踏まえてビジョンをまとめる方針だ。
 
 長妻氏は同日、精神疾患の患者や家族らが集まった会議に出席し、「どなたも精神疾患になる可能性があるという前提で、取り組んでいく必要がある」と対策を強化していく考えを示した。

読売新聞
『治りませんように』
 
斉藤道雄
出版社:みすず書房
発行:2010年2月
ISBN:9784622075264
価格:¥2100 (本体¥2000+税)
絶望の先にあるもの
 皮肉ではない。心から思っているのだ。「治りませんように」と。「治さない医者」を標榜(ひょうぼう)する精神科医は、この文句を七夕の短冊に書き、患者は「病気は宝だ」と断言し、ケースワーカーは「しあわせにならない」と心に誓う。
 
 本書は北海道浦河にある精神障害やアルコール依存などを抱える人たちの共同住宅「べてるの家」を舞台にしたノンフィクションである。前作『悩む力』から8年の月日が描かれる。
 
 自主性と語り合いと笑いが尊重されるべてるでは、「統合失調症・幻聴さんと私の共依存タイプ」などと病名も好き勝手につけることができるし、「幻覚妄想大会」が開かれ当事者が幻覚や妄想を競ったりもする。だが、美談では終わらない。
 
 ある人は、両親が住宅ローンを払い終わったばかりの自宅に火をつけ、べてるでも共同住宅の自室に放火。それでも仲間は彼と共に暮らそうと決断する。回復したと安心すると病気が再発し、多くの人が亡くなり、殺人事件も起きた。だが、べてるは姿勢を変えなかった。絶望を受け入れた先に見えるものがあるはずだと。
 
 この本を際だたせているのは、著者がひとつひとつの言葉の意味をどこまでも丁寧に考え続ける姿勢だ。ジャーナリストは取材対象に同化してはいけないと言われるが、そんなことは些末(さまつ)で意味をなさないほどに、著者自身もまた悩める人間の一人として彼らの列に加わり、真正面から誠実に対象と向き合っている。
 
 病の苦労と、仕事や子育ての苦労はそんなに違うのか。どちらが混乱し、絆(きずな)を失っているのか。読み進めるうちに、障害者と健常者の輪郭が溶け出していく。主題は精神障害ではなく、人が悩み、苦労し、弱いところをさらけ出し、それでも生き続けるということだ。全編を通じて見えるのは「あなたはそのままでいい」というシンプルだけど力強いメッセージ。前作と併せて障害のない人にこそ読んでもらいたい。
 
 ◇さいとう・みちお=1947年生まれ。ジャーナリスト。主に先端医療や精神障害などをテーマに取材。
 
みすず書房 2000円
 
評・河合香織(ノンフィクション作家)
 
(2010年4月5日  読売新聞)

「障害者」か「障碍者」か 「碍(がい)」を常用漢字に追加求め意見
2010年4月5日11時40分朝日新聞
    
 障害者ではなく障碍(しょうがい)者と書けるように、「碍」を常用漢字にしてほしいという声が高まっている。「改定常用漢字表」に関する試案をまとめた文化審議会国語分科会の漢字小委員会は、6月予定の答申に向けて詰めの作業に入ったが、追加字種の中で碍の扱いは焦点の一つとなりそうだ。
 
 戦前は障害や障碍、障礙(しょうがい)(礙は碍の本字)が妨げの意味で使われた。戦後、碍は当用漢字にも常用漢字にもならず、障害が定着した。ただ、害は負のイメージが強く、最近は「障がい」を使う自治体が増えてきた。政府の「障がい者制度改革推進本部」も表記を見直し始めている。ちなみに日本の障害者に相当する表記は中国が残疾人、台湾が障礙者、韓国が障碍人などだ。
 
 試案では、使用頻度が少ないといった理由から碍の追加は見送られた。しかし文化庁が昨年末、試案への意見を募ると、碍の追加希望は86件に達し、障害者自身からもこんな声が寄せられた。「読み書きする時に、害の字のもつマイナスイメージにいつも不快感がつきまとう」「害という漢字が嫌なのです。私たちは確かに妨げになるものをかかえているかもしれませんが、世の害ではありません」
 
 自治体にも動きがある。大阪府吹田市は昨年末、障害者に替わる呼称を市民らから募集した。障害は人ではなく社会にあり、障害という表現を人に使うのはふさわしくないとの判断からだ。障碍など85件の意見が寄せられ、検討委員会で話し合う予定だった。しかし同市議会が3月末、丁寧な意見集約が必要などとして作業の一時中止を求める決議を行うなど、慎重な判断を求める声も一方にはある。
 
 また佐賀県の古川康知事は2月、文化審議会に碍の追加を要望し、改革推進本部にも障害者に替わる表記として障碍者を候補にと求めた。「障がいというまぜ書きは漢字文化になじまない。害するという意味のない碍を採用すべきです」と古川さん。私的な文章では障碍と表記している。
 
 漢字小委員会ではこれまで意見が分かれている。賛成派は「今の時代を反映した漢字を採用すべきだ。社会的な偏見を引き起こす害を使わずに済むよう碍を加えたい」と主張する。一方、「これは漢字の問題ではなく障害に対する社会の見方の問題であり、改革推進本部の議論を見守るべきだ」とする委員もいる。
 
 いずれの結論を採るにしても、文化審議会はこの問題に対する見識を示すべきだ。害という漢字が嫌なのです、と訴える人たちのためにも。(白石明彦)

 精神障害“治療・支援”考える会議立ち上げ
< 2010年4月3日 18:45 >日テレニュース

 うつ病や自殺の増加を受けて、精神障害の患者や医師らが治療や支援のあり方を考える会議を立ち上げた。
 
 会議では、精神障害で受診する人が国民の40人に1人で、がん、心臓病と並ぶ三大疾患だとの現状報告が行われた。また、精神障害の患者や家族が「誰でもなりうるもので、正しい知識を持ってほしい」と話した。また、会議に出席した長妻厚労相は「国を挙げて取り組まなければならない課題になったと感じています」と述べた。
 
 会議は、来月末に改善策を厚労省に提出する方針。
 

2010.4.3TBSニュース
精神保健医療を改革、政策構想会議発足
 
 精神疾患の患者が増え続ける中、医師や患者、その家族が集まって精神保健医療の改革を考える政策構想会議が発足しました。
 
 「精神疾患というのは、ある意味では国民病と言いますか、本当に国を挙げて取り組まなければならない課題になった」(長妻昭厚労相)
 
 「こころの健康政策構想会議」は、長妻厚労大臣が、都立松沢病院の岡崎祐士院長に精神科医療の充実策の検討を依頼し、発足したものです。
 
 会議には精神科の医師のほか、患者や家族が参加し、早期発見や専門医療の充実、家族の支援など、当事者のニーズに応える精神保健医療の改革を訴えました。
 
 今後は、入院治療が重視されてきた精神科医療を見直し、地域における生活支援の充実を柱に提言をまとめる予定です。(03日23:51)
2010.4.1読売新聞
精神医療の改革へ、医師・患者らが会議発足

 精神科医と患者・家族の有志らが1日、精神保健医療の改革案を協議する「こころの健康政策構想会議」を発足させると発表した。
 
 東京都立松沢病院の岡崎祐士院長が座長を務め、第1回会議が3日、同病院で開かれる。
 
 会議は患者・家族12人と医師、看護師、心理士、保健所職員ら計57人の委員で構成。統合失調症患者への薬の多剤大量投与や、長期入院が患者の社会復帰を妨げている現状を踏まえ、心理士らを加えたチーム医療や、医療チームが患者宅を訪問する体制など、海外で成功した施策の国内導入を検討。5月末までに提言をまとめ、長妻厚生労働相に提出する。
 
(2010年4月1日19時47分  読売新聞)
 
精神科医と患者、政策提言の組織
2010/4/1 20:58 日本経済新聞

 精神科医や患者ら47人が精神科の医療政策を議論する民間組織「こころの健康政策構想会議」(座長・岡崎祐士東京都立松沢病院院長)を1日、発足させた。国内ではうつ病患者が急増しているほか、統合失調症で入院する患者が減らず、精神科の医療政策に問題があると指摘されている。
 
 同会議は医師や看護師、心理士らが協力する「チーム医療」や、患者1人あたり30分の診療時間の実現、精神疾患の早期発見・予防などを目指し、政策案を5月末までにまとめ厚生労働相に提言する。

2010.4.1毎日新聞
読む神奈川:心神喪失者医療観察法 横須賀・専門病棟ルポ(その1) /神奈川
 ◇再犯のリスク絶て 手厚い医療で社会復帰
 裁判員制度が始まり「刑事責任能力」という言葉を耳にする機会が増えた。重大事件を起こしながらも責任能力がないとして不起訴・無罪になった精神障害者は、すぐに社会へ戻るわけではない。社会復帰への道筋を定めた心神喪失者医療観察法(05年7月施行)に基づき、専門施設で治療を受けている。だが、その内容を知る機会はまずない。入院治療を担う閉鎖病棟のベッド数が全国最多の国立病院機構・久里浜アルコール症センター(横須賀市)を訪ねた。法に触れた精神障害者と社会はどう向き合えばよいのか、知られざる扉の中に入り、考える。【吉住遊】
 
 ◆矯正ではなく治療施設
 
 外来病棟から外通路を3〜4分歩くと、高さ約3メートルの白い鉄のフェンスが現れた。二重の鉄柵に囲まれた平屋の建物が専門の閉鎖病棟「なぎさ病棟」だ。
 
 外部との唯一の接点である入り口は二重扉。外側の扉を開けてもらい、警備員が常駐する小部屋に入る。持ち込む物を申請せねばならない。「なるべく最小限にしてください」と真栄里(まえさと)仁医師(38)。<ノート、カメラ、ボールペン2本>とリストに記入した。プライバシー保護のためカメラは禁止。凶器になりうるボールペンも制限される。特別に許可を得て、さらに金属探知機やボディーチェックを受け、中へ進む。
 
 ガラス扉を開けたら、そこは共有スペースだ。テーブルセットが5組、テレビやソファ、ランニングマシンや喫煙所。広さは150〜200平方メートルほどか。脇のナースステーションで全体を一望できる。日当たりもよく開放的な雰囲気は公民館のよう。外出が認められないことや、治療を受けることを除けば、患者は自由だ。
 
 午前9時、患者と全スタッフが集まる「朝の会」。一日の治療予定が伝えられる。9時半には患者が一斉に参加する「OT(作業療法)プログラム」が始まる。診察や臨床心理士との面談が合間にあり、昼前まで続く。
 
 運動や社会適応能力回復を目指すOTプログラムは、休憩を挟んで身体活動と机上活動が50分ずつ。身体活動では、共有スペースのテレビ画面に映し出されたテレビゲームをまねて、ヨガ運動や柔軟体操をしていた。
 
 椅子に座ったままの患者もいるが、強要はしない。斉藤みどり看護師長は「ここは矯正施設でなく治療の場。マイペースな患者さんでも、得意で入り込めることから始め、集団で他者と調和し気遣う心をはぐくんでもらう」と説明した。
 
 ◆平均300日超で退院
 
 ◇入院決定、増加傾向 県外からの入所者も
 空き病室を見せてもらった。「開棟以来満床でしたが、(退院で)昨日1部屋空きました」と真栄里医師。17床に16人が入院中だった。約11平方メートルの病室にはベッド・棚・椅子、奥にはユニットバスもある。庭に面した窓は外出防止のため10センチほどしか開かない。
 
 自殺など自傷行為も防がねばならない。ひもを掛けられるようなものはなく、ドアノブは取り外し式。張った水に顔を突っ込む場合もあるから、シャワールームは鍵付きで、重症患者は使えない。
 
 16人(男性11人、女性5人)は20〜60代。殺人(6人)▽殺人未遂(3人)▽傷害(6人)▽放火未遂(1人)−−といった事件を起こし、多くが統合失調症の治療中だ。大半は関東周辺だが、専門病棟がない北海道から来た入所者もいる。(1)急性期(2)回復期(3)社会復帰期−−の順に重症で、12人は(3)の段階という。これまでに6人が平均300日超で退院した。
 
 センターには、もう一つ医療観察病棟がある。06年4月に運用を始めた「しおさい」で、08年3月に34床の新棟ができた。なぎさは空き病棟を改装し同年10月に使い始めた「暫定施設」で、2棟計51床のベッド数は全国で最も多い。なぎさは新棟が来年5月完成予定という。
 
 司法統計年報によると、08年度に全国の地裁が出した入院決定は257件。制度開始から増える一方だ。厚生労働省は全国で720床を目標にするが、近隣住民の反対などで3月1日現在で484床にとどまる。ただ公立の入院機関が整備され、ベッド不足は解消に向かっているという。
 
 ◆ナビゲーションプログラム
 
 昼過ぎ、担当スタッフと患者が月1回面談して治療方針を決める「ナビゲーションプログラム」に同席した。医師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士・臨床心理士が一堂に会し、患者とテーブルを囲んで、入院生活や治療方針を話し合う。こうした方式は、一般の病院の精神科病棟ではまずない。
 
 治療態勢は手厚い。患者と医師の比率は、一般病棟で48対1、なぎさでは8対1。看護師も患者ごとに専属だ。人手が足りず対応しきれない場合、一般病棟では事故防止のため、患者を隔離・拘束することもあるが、なぎさでは開所以来一度もない。
 
 「自分は統合失調症でないと思う」と60代の男性患者が穏やかな口調で切り出した。幻聴など症状が消えたのは、治療のおかげではない。もともと病気ではなくて、時間がたったから良くなった−−という理屈だ。
 
 男性は統合失調症。身内を殺害し、心神喪失で不起訴に。開所直後に入院し、今は回復期だ。真栄里医師は男性に理解を示しながら「他害行為の際、他人に追われているという被害妄想もあったと思います。症状が良くなったのは薬の効果では」などと語りかけ、服薬の重要性を説いた。
 
 面談後はスタッフだけで医療会議を別室で開き、カルテを記入する。病状▽自殺企画▽生活能力▽衝動コントロール▽共感性−−など17項目の診断基準に沿って、担当スタッフが意見を交わし3段階で評価する。治療段階の変更や退院も議題に上る。男性は回復が認められるが、退院後もきちんと服薬するかどうか疑問が残ることなどから、治療継続を決めた。
 
 会議を終えた真栄里医師に、治療のあり方を尋ねると、こう答えた。
 
 「病気が治れば再犯のリスクはなくなる。治療のためにこの制度は効果があると思う。ただ一般病棟との格差がありすぎるのは疑問に感じることもある。矛盾を抱える制度と思うが、やることは治療することだけです」
 
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 ■ことば
 
 ◇心神喪失者医療観察法
 殺人・放火・傷害致死などの重大事件を起こした精神障害者の処遇を定めた法律。専門的・継続的な治療により、再び事件を起こすことなく、社会復帰を促進する狙い。01年の大阪・池田小児童殺傷事件が制定のきっかけとされる。治療の各段階で裁判所が関与するのが特徴。裁判官と精神科医が合議する審判で(1)入院(2)通院(3)入・通院の必要性なし−−のいずれかを決定。(1)の場合、厚生労働省所管の専門施設に入り、裁判所が6カ月ごとに入院継続の是非を判断する。県内で08年度末までに裁判所が出した入院決定は40件に上る。年間に1人平均約2000万円といわれる治療費は全額国費で賄われる。
 
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 ◇平日の患者の1日
8時前          起床
8時           朝食
9時           朝の会
9時35分〜11時25分 OTプログラム
12時          昼食
午後           個別プログラムなど
18時          夕食
21時          就寝
 
毎日新聞 2010年4月1日 地方版
 
 
 

読む神奈川:心神喪失者医療観察法 横須賀・専門病棟ルポ(その2止) /神奈川
 ◇「成果」一般病棟に還元を
 医療観察法は、刑事責任能力なしとして不起訴・無罪になった精神障害者への対応を大きく変えた。豊富なスタッフを備えた専門病棟での治療は、一般の精神医療の水準を上回る。病状改善による再犯防止を目指す同法は、患者自身を含む「新たな被害者」を出さないため、社会が払うべきコストともいえる。
 
 同法制定前、不起訴・無罪で司法の手を離れた人たちは、精神保健福祉法の措置入院などの対応が取られ、「その後」は病院のみに押し付けられてきた。事件を招くほど重い病状に対応した専門的な治療が、十分施されていたとは言い難い。
 
 真栄里医師は「従来は医療現場が退院を躊躇(ちゅうちょ)し、入院長期化につながった面もあった。司法の関与は正しい判断をする上で評価できる」と話す。医療観察法では、鑑定入院や治療の進展を基に、裁判所が入・通院や退院の是非を判断する=別図。退院後も社会復帰調整官が患者を支える。
 
 これに対し、犯罪とは無縁の患者が治療を受ける一般の精神科病院は、スタッフ不足が深刻だ。また、厚生労働省の08年度全国調査によると、入院患者30・7万人中6・2万人は、地域での受け入れ先がない「社会的入院」とされる。
 
 横浜保護観察所の鶴見隆彦・統括社会復帰調整官は「グループホームなど地域の支援施設の数や症状に応じたバリエーションは、身体・知能など他の障害に比べて格段に少ない。精神疾患への偏見が社会資本整備を遅らせている」と話す。
 
 ショッキングな事件が精神障害者と犯罪を結びつけがちだが、統計上は健常者よりも犯罪率は低い。一般の病院でも適切な治療が受けられ、地域の中に「居場所」があれば、なぎさの患者たちも事件を起こさずに済んだかもしれない。
 
 医療観察法を巡っては、入院治療が「実質的な保安処分」との批判、前提となる精神鑑定の「精度」や専門知識のない裁判員による判断への疑問もある。一方、現場には精神医療体制の整備の遅れに焦りが募っている。医療観察制度で得られた高水準の医療を一般病棟に還元し、精神障害者福祉の底上げにつなげることこそ、事件を減らすために求められる。医療観察法には付則で施行5年後の今年7月以降の見直しが明記されている。【吉住遊】
 
毎日新聞 2010年4月1日 地方版

2010.4.1読売新聞大分
なくせギャンブル依存症 全国初のマニュアル作成
 
 
ギャンブル依存症の回復マニュアル(右)とパンフレット  県は、パチンコや競輪などの「ギャンブル依存症」に関する正しい知識を持ってもらうため、本人や家族向けの回復マニュアル(A4判、27ページ)を作った。県によると、全国初の試みで、依存症かどうかを調べる簡易チェックリスト、症状や家族のかかわり方などを盛り込んだ。
 
 同依存症はギャンブルをしていないとイライラし、不眠や手の震えなどの禁断症状が表れる。世界保健機関(WHO)はアルコールや薬物依存症と同じ精神疾患の一つ「病的賭博」と分類。依存症になると怠業や家庭内暴力、借金、犯罪などの問題を起こす。
 
 マニュアルを作成した県精神保健福祉センターには年間約350件の相談が寄せられ、このうち家族が約7割を占めるという。
 
 マニュアルでは、好奇心や遊び心が、ギャンブルへの「精神依存」に発展し、金や時間をやりくりして通うようになるメカニズムを解説。会社や家族に「残業をしている」「体調不良で休む」などとうそを言う問題点、家族の取り組み、Q&A、相談先を載せた。
 
 同センターは「借金を家族が肩代わりすると、責任を感じないまま再び借金を重ね、悪循環に陥る」と指摘。関係機関に相談することや、同じ経験を持つ人が悩みを聞いたり体験を語ったりする「自助グループ」への参加を呼びかけている。
 
 マニュアルは、家族に相談を呼びかけるパンフレットとともに保健所や医療機関、警察署に置き、希望者に配布する。
 
 同センターは「依存症が病気だと気づくことが大切。マニュアルを使って、回復へのイメージをつかんでほしい」と話している。
 
(2010年4月1日  読売新聞)
ギャンブル依存症治療 回復マニュアル作製
[2010年04月02日 14:37]大分合同新聞
 
ギャンブル依存症の回復マニュアル
 県こころとからだの相談支援センター(大分市玉沢)は、ギャンブル依存症の回復マニュアルを冊子にまとめ、依存症かどうかを確認するチェック表を載せたリーフレットを作製した。依存症からうつ病や自殺につながるケースがあることから、早期治療の足掛かりにしてもらうのが狙い。
 県内の自殺者は1998年以降、年間約300人。自殺の動機にはうつ病などの健康問題のほか、多重債務問題があり、その背景にギャンブル依存症などがある。ギャンブル依存症は家族や周囲の人を巻き込むことが多く、家族がうつ病になるケースもあるという。
 回復マニュアルは、依存症になる背景や回復のイメージを分かりやすく説明することで、治療への第一歩を進めてもらう。▽発症のメカニズム▽依存症かどうかを確認する簡易チェック表▽回復へのプロセス▽同じ体験を持つ人が支え合う自助グループ▽家族が抱えるストレスや依存症の人とのかかわり方―などを紹介している。
 冊子は1千部、リーフレットは1万部を作製。各保健所や医療機関、警察署などに配布し、ギャンブル依存症に関する正しい知識の啓発と普及に役立てる。
 同センターは来所などの相談も受け付けている。相談電話(TEL097・541・6290)は月〜金曜日の午前8時半〜正午、午後1時〜同5時。

2010.3.21毎日新聞
地域で暮らす:精神障害、いま/上 長期入院者
 
急性期治療病棟の共有スペース。患者らが折り紙をしたりチラシに目を通していた=愛知県大府市梶田町の共和病院で、大竹禎之撮影 
 
◇退院困難、進む高齢化
 ナースステーションの前に広がる170平方メートルの空間は、ジュースの自動販売機もある共有スペースだ。患者たちが話をしたり、椅子に腰掛けている。エレベーターホールに向かう通路にある鍵付きの二重のドアさえなければ、ここが精神科の閉鎖病棟とは分からない。
 
 愛知県大府市の共和病院3階にある精神科病棟。「急性期治療病棟」と呼ばれ、同院では44床ある。患者は統合失調症4〜6割、うつ病などの感情障害3〜4割、その他は認知症、依存症など。原則、3カ月で退院する。カーテンで仕切られた4人部屋の病室はテレビも見られ、携帯電話も使用できる。
 
 だが、比較的症状が早く回復する患者が入る急性期病棟に対し、長い入院期間を要する精神療養病棟では、約20人が6年以上の長期入院をしており、中には受け皿が整えば退院できる人もいるという。
 
 榎本和・名誉院長は「急性期病棟は、仕事や学校にすぐ戻っていけるという環境もあり、狭い意味で入院から地域への移行と言える。しかし、既に入院が長期に達し、家族が年をとっていたりで受け入れ先がない人が取り残されている」と指摘する。病状が安定して退院できる状態になっても、住宅やその後の支援態勢が十分整備されていないのだ。
 
 地域で生活しながらの治療を促す国の方針が生まれた背景には、かつて各地の精神科病院の中で起きた人権侵害事件への反省がある。急性期病棟は08年7月現在、全国で1万1983床まで増え、今後も増加が見込まれる。療養病棟は9万382床で、顕著な増減はない。
 
    ■
 
 名古屋市守山区の守山荘病院では、系列医療法人に訓練施設を設置、患者の社会復帰に取り組んできた。現在、新規入院患者が1年後も院内に残る割合は約1割となった。ただ、長期入院者は退院のめどが立つ人が少ない。20年以上入院している患者は全体の約460人中16・8%。10〜20年の患者もほぼ同数いる。
 
 行き先のない患者はそのまま病院で亡くなっていくケースが多いという。河瀬久幸院長は「症状の重くない人は一般の高齢者施設に移ることも可能だが、順番待ちに加え、入所費用の問題もある。施設に移ることは難しい」と話す。
 
    ×
 
 「入院から地域へ」と、国は04年9月、精神科医療の方向性を打ち出し、「精神保健医療福祉の改革ビジョン」では10年間で約7万人の入院患者削減を目標に掲げた。しかし、偏見や無理解に加え、受け皿作りは進んでいない。地域で暮らそうとする精神障害者たちを取り巻く課題を追った。【高橋恵子】
 
==============
 
 ■ことば
 
 ◇精神科急性期治療病棟
 入院長期化を招かないために、96年の診療報酬改定で導入された精神科特定入院料に基づく病棟。入院3カ月以内の患者への点数を高く算定することで病院側に早期退院を促す。専門機能を持たせた入院体系を作るため、以前からある病棟と別に設けられた。急性期治療病棟の他、精神療養病棟や認知症病棟などがある。
 
 ◇戦後日本の精神科医療
 戦後の入院中心医療の支えとなったのは精神衛生法(1950年施行)。「私宅監置」の名称で認めていた自宅への隔離収容を廃止し、都道府県に病院設置を義務付けた。国は患者数に対する医師らの配置基準を下げる「精神科特例」などで病院建設を促進。しかし、院内での人権侵害事件が表面化、精神保健法(88年)が施行され、患者の人権擁護と社会復帰の促進などを盛り込んだ。95年、精神保健福祉法施行。自立と社会参加の流れが作られ、06年施行の障害者自立支援法は、知的・身体障害と一体化した生活・就労支援を進めている。
 
毎日新聞 2010年3月21日 中部朝刊
 
 
 

 地域で暮らす:精神障害、いま/中 退院後
 
急性期治療病棟の作業療法で書道に取り組む=愛知県豊明市栄町の桶狭間病院藤田こころケアセンターで、大竹禎之撮影
 
 ◇病院施設に頼る現実
 昼下がり、愛知県豊明市のデイケア施設1階の広間。並べられた長机に向かって、約100人の利用者が肩を寄せ合うようにして座っていた。そのほとんどは、道を挟んだところにある精神科病院を退院した人たちだ。
 
 桶狭間病院藤田こころケアセンターが運営するデイケア。日中、自宅やグループホームなどから通い、コンピューター教室や体操、買い物などの訓練プログラムに参加している。
 
 国は、入院医療中心から地域生活中心へと方針を変え、10年間で約7万人の入院解消を目指して、早期退院を促している。だが入院患者が減る一方、地域の受け皿不足から、退院後の居場所がない人が目立ってきた。その多くは病院が準備した施設を利用している。「退院を促進するには行き先も、病院が作らざるを得ない」と同病院の医療福祉相談室の池戸悦子課長は言う。
 
    ■
 
 同病院は06年3月、原則として3カ月で退院させる急性期治療病棟を開設した。明るい待合室など、先進的な取り組みが知られる。入院治療中心から方針転換したのはデイケアが始まった98年のころだ。
 
 早期退院を順調に進めるため、入院中に、料理や外出の仕方、洗濯物の干し方などを訓練する作業療法を取り入れた。退院後も訪問看護で、服薬、栄養管理や家族のケア、障害者年金などの制度利用も手助けした。この結果、10年前は200〜250人いた5年以上の入院患者を、100人以上減らすことができた。
 
 だが、早期退院を推し進める病院の負担も大きい。同病院を経営する医療法人静心会は、精神保健福祉士、看護師、医師らが連携する医療体制を整えたことにより、スタッフが10年前に比べ50人以上増えた。山田晃管理部長は「今は入院中心の時代より、人件費の負担が重くのしかかってきている」と話す。
 
 精神保健制度に詳しい愛知淑徳大学医療福祉学部の瀧誠准教授は「国は、患者を病院から押し出すための医療面での施策は行ったが、退院後の行き先を作る福祉政策を準備しなかった。結局、医療法人に任せてしまっている」と指摘する。
 
 サポートを受け退院できた人が、同じ病院が経営する別の施設に行く現実がある。池戸課長は「医療法人の努力だけでは、限界が来る」と話す。地域での暮らしを望む障害者を支えるNPOや社会福祉法人、行政の相談支援体制の拡充が重要だと訴える。【高橋恵子】
 
毎日新聞 2010年3月22日 中部朝刊
 
 地域で暮らす:精神障害、いま/下 支援施設
 

洗濯物を干すことも生活訓練の一つ=名古屋市守山区の「守牧」で、高橋恵子撮影
 
 ◇経営不安理念に障壁
 「人と話をする気力もなくなる時がある」。名古屋市に住む統合失調症の50代男性は言う。27年前に発症、2年間入院した後は、親と自宅で生活。デイケアなどに通うが、気分が重くなると病院に行かざるを得ない。
 
    ■
 
 精神保健福祉法で設置された精神障害者の社会復帰を促す施設は、障害者自立支援法の移行期間が完了する12年3月末までに様変わりする。同じ建物で24時間生活する施設体系を改める。日中の活動と住まいを分離することで、地域生活を営めるようにする狙いだ。
 
 ところが、病院を退院した人が寝泊まりしながら生活習慣を学んだ「生活訓練施設」から、新体系の施設へ移行を済ませたのは、支援法が施行された06年の約2割に当たる66件にとどまる(厚生労働省調べ、昨年10月現在)。医療法人や社会福祉法人などの事業主が経営上の不安をぬぐえないのが大きな理由だ。
 
 従来は、規模に応じ施設に支給されていた補助金が、支援法では日々の利用実績に応じた報酬支払いに変わる。精神障害は症状に波がある。昨日まで元気に見えた人が、入院してしまうことも。一方で、空いた定員にすぐ別の人が入ることもできない。全国約550事業者からなる「全国精神障害者地域生活支援協議会」(伊澤雄一代表)は昨年12月、民主党に対し「事業所の運営困難が浮き彫りになった」などと制度の見直しを求めた。
 
 名古屋市守山区の医療法人が運営する生活訓練施設「守牧」は、97年から掃除や洗濯などの生活訓練を行い、自立につなげてきた。1年後には支援法に基づく日常介護のみのケアホームとして再出発する。定員は20人から12人へ、スタッフも5人から3人に減らす。
 
 石田竹男施設長は「退所による収入減を嫌って、自立できる人を留め置くような施設が出てくるのでは」と、地域移行の流れと逆行する事態を危惧(きぐ)する。さらに「社会福祉法人やNPOなどが新たに地域の受け皿を作ろうとしても、すぐ財政難に直面するのではないか」と指摘した。
 
 精神障害者家族でつくる名古屋市精神障害者家族会連合会の堀場洋二会長も同様の懸念を持つ。「事業者が行き詰まれば、当事者や家族には死活問題。支援が必要な人が引きこもったり、病院に戻ったりしかねない」
 
    ■
 
 障害者自立支援法は第1条に「障害の有無にかかわらず安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与する」とうたう。その理念と、現実とのギャップは残ったままだ。【高橋恵子】
 
毎日新聞 2010年3月23日 中部朝刊

自殺者数「3月の月曜日」が最多 年度末と週初め重なり
2010年3月30日22時41分朝日新聞

  
 「3月の月曜日」の自殺者数が1日あたり平均105人にのぼり、最も多いことが30日に発表された内閣府の調査で明らかになった。年度末と週初めという生活環境の変化が重なることが要因とみられる。内閣府は時期や属性、地域別の傾向を詳しく分析・公開することで、より効果的な自殺対策を進めたいとしている。
 
 自殺について厚生労働省が人口動態統計、警察庁が自殺統計でそれぞれ集計しているが、内閣府が初めて両省庁のデータを集約・分析した。
 
 内閣府によると、2004年から5年間の自殺者数を月別にみると、3月が最多の1日あたり91.0人で、4月87.5人、5月86.6人の順。最も少ないのは12月で72.9人だった。リーマン・ショック直後の10月が最多だった08年を除くと、毎年3月が最も多かった。
 
 3月に自殺者が多かった職業は、09年では「自営業・家族従業者」「被雇用者・勤め人」などの有職者が4割を占めた。一方、「主婦」は4〜5月、「失業者・年金・雇用保険等生活者」は5〜6月に多い傾向があるという。
 
 曜日別では月曜が92.8人と最多で、週末の土曜、日曜は少ない。また、月初めや月末に多い傾向がある。月と曜日で合わせてみると「3月の月曜」が平均105.3人で最も多く、最少は「12月の土曜」の63.1人だった。
 
 内閣府参与として分析にあたった、自殺予防や遺族の支援に取り組むNPO「ライフリンク」の清水康之代表は「3月は決算期で、月曜や月初めとともに生活、環境の変わり目であることが影響している可能性がある。『3月の月曜日』はそうした要因が重なり、自殺のきっかけとなってしまうのかも知れない」と分析する。
 
 また、有名人の自殺や無理心中、いじめによる自殺などが報じられた直後に、自殺が増える傾向も明らかになった。前後で1週間あたりの自殺者数を例年の数値と比べると、当日からの1週間の自殺者数が突出していた。
 
 鳩山内閣は3月を自殺対策強化月間と位置づけ、自治体と連携した対策に取り組んでいる。今回は都道府県ごとに職業や時期、市区町村の特徴などについて自殺との関連を幅広く分析しており、今後の対策に役立てていく方針。清水氏は「さらに検証を続け、この複合的な分析を地域の自殺実態に合わせた対策につなげて欲しい」と話している。(佐藤美鈴)

市幹部、車いす生活保護は「わがまま病だ」 賠償10万円命令
2010.4.1 12:25産経新聞

  車いす生活を送りながら生活保護を受けている香川県丸亀市の女性(60)が、市の幹部職員から「わがまま病だ」と中傷されたなどとして、市に100万円の損害賠償を求めた訴訟で、高松地裁丸亀支部(熱田康明裁判官)は1日までに、発言の違法性を認め、市に慰謝料10万円の支払いを命じた。判決理由で「許容限度を超える表現で、原告の自尊心や名誉感情を損なった」と指摘した。
 
 判決によると、平成19年10月、生活保護の受給審査をする市福祉課が、女性の障害の程度に疑問を持ち調査。幹部職員(当時)が女性を担当していた相談支援専門員から聞き取りした際「(女性は)わがまま病だ」などと発言、相談員から内容を聞いた女性に精神的苦痛を与えた。
 
 女性側は「市からはほかにも誹謗中傷を受けた」などと主張しており、控訴する方針。丸亀市は「主張が認められず遺憾。判決内容を精査し、適切に対応する」としている。

2010.4.1読売新聞
精神医療の改革へ、医師・患者らが会議発足
 精神科医と患者・家族の有志らが1日、精神保健医療の改革案を協議する「こころの健康政策構想会議」を発足させると発表した。
 
 東京都立松沢病院の岡崎祐士院長が座長を務め、第1回会議が3日、同病院で開かれる。
 
 会議は患者・家族12人と医師、看護師、心理士、保健所職員ら計57人の委員で構成。統合失調症患者への薬の多剤大量投与や、長期入院が患者の社会復帰を妨げている現状を踏まえ、心理士らを加えたチーム医療や、医療チームが患者宅を訪問する体制など、海外で成功した施策の国内導入を検討。5月末までに提言をまとめ、長妻厚生労働相に提出する。
 
(2010年4月1日19時47分  読売新聞)

2010.3.28毎日新聞
医療訴訟:向精神薬処方過失で妻死亡 夫ら提訴 /東京

 併用禁忌の向精神薬を処方する過失で妻を中毒死させたとして、中央区の会社社長、中川聡さん(49)らが26日、都内の医師に約7400万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
 
 訴状によると、中川さんの妻一美さん(当時36歳)は04年1月から都内の精神科クリニック(08年閉院)で睡眠障害の治療を受け、中枢神経抑制剤、精神神経用剤などの向精神薬を処方されていた。04年9月には1日分として11種33個、その後も10回にわたり同量の薬を医師から処方され、05年1月に死亡した。
 
 行政解剖で胃や血中から、処方されていた精神神経用剤など複数の向精神薬の成分が検出された。死因は薬物中毒と推定された。
 
 この精神神経用剤の医師向け添付文書には、禁忌として「中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者には投与しないこと」と記載されている。中川さんらは、承認用量の2倍など医師の処方は明らかに大量投与と指摘し、一美さんは「中枢神経抑制剤の強い影響下」だったと主張している。
 
 また添付文書で併用注意とされる多数の向精神薬を、漫然と長期間投与したことも医師の過失と訴えている。
 
 医師の代理人弁護士事務所は「何も話すことはない」としている。【和田明美】
 
〔都内版〕
 
毎日新聞 2010年3月28日 地方版

たん吸引、特養で解禁 研修受ければ介護職員も可能に
2010年3月25日22時59分朝日新聞
    
 厚生労働省は25日、原則として医師や看護師にしか認められていない医療行為のうち、たん吸引などについて、特別養護老人ホーム(特養)の介護職員に一定の条件下で認めることを決めた。近く局長通知を出し、5月にも研修を始める予定。
 
 医師らによる同省の検討会が同日、研修を受けるなど看護師と連携して実施すれば、違法にはあたらないとする報告書を大筋で取りまとめた。解禁されるのは、口の中のたんや唾液(だえき)などを機械で吸い出す「吸引」と、胃に通したチューブから流動食を入れる「経管栄養」。
 
 この二つは医療行為と解釈され、医師らにしか認められていない。ただ、比較的危険性が低く、1日に何度も実施する必要があることなどから、自宅で家族が行う場合は違法とされない。2005年には、研修を受けたヘルパーが在宅でたん吸引することが解禁されている。
 
 特養など施設の入居者の高齢化が進み、たん吸引などを必要とする人が増加。夜間に看護師を置けない特養から入所拒否されるケースも出て、介護職員が実施しても問題がないか検討されてきた。
 
 同検討会は昨年9〜12月、全国125の特養でモデル事業を実施。その結果、手順を忘れたり、間違ったチューブを装着しそうになったりした事例が計274件あった。嘔吐(おうと)を招いたケースもあったが、救急車を呼ぶほどの事案はなかったとして、検討会は「おおむね安全」と判断した。
 
 実施にあたっては、入所者の同意、研修のほか、医師の指示のもと看護職員との連携が必要。今回の解禁で、入所者の自己負担が増えることはない。グループホームなど他の施設について、厚労省は「今後の検討課題」としている。
 
 
特養:介護職員のたん吸引、厚労省が容認
2010年3月25日 21時23分毎日新聞
 
 厚生労働省は、特別養護老人ホーム(特養)で介護職員が入所者のたんを吸引するなどの医療行為の一部を容認することを決めた。近く通知を出して「解禁」する。25日の有識者らによる検討会で大筋了承された。
 
 認めるのは、たん吸引と、胃に通じたチューブで栄養を補給する「経管栄養」。たん吸引は口腔(こうくう)内(のどの手前まで)で、経管栄養はチューブの接続を除くなど、限定的にする。

2010.3.24キャリアブレイン
子どもの心の診療提供、医療計画に「記述あり」は2割弱
   
 厚生労働省が各都道府県を対象に実施した子どもの心の診療提供体制に関する調査結果によると、都道府県が策定する医療計画に、子どもの心の診療提供体制確保に関する記述があるのは17.8%に当たる8自治体にとどまった。医療計画以外の文書に記述があると回答した4自治体を除いても、7割以上の自治体が医療計画には記載していなかった。
 
 調査は、全都道府県を対象に、昨年12月8日−今年1月18日に実施。45都道府県から回答があった。
 
 調査結果によると、医療計画に子どもの診療体制確保の「記述がある」と答えたのは8自治体(17.8%)で、「医療計画以外の文書に記述がある」が4自治体(8.9%)、「記述がない」が33自治体(73.3%)だった。
 
 心の診療が必要な小児の入院機能を持つ医療機関の有無に関しては、「あり」が29自治体(64.4%)で、「なし、または病床について把握していない」が15自治体(33.3%)、「次年度に整備予定」が1自治体(2.2%)。
 
 入院機能を持つ医療機関がある29自治体に、その医療機関の種類を聞いたところ、「総合病院」が全医療機関の49%と約半数を占め、「精神科単科病院」が32%、小児専門病院が8%など。入院できる病床数は平均で43.6床だった。
 
 診療体制整備を困難にしている要因については(自由記述、複数回答)、「子どもの心の診療に携わる専門医不足」(22自治体)が最多で、次いで「関係機関の連携が取りにくい」(5自治体)、「県の担当課が分かれている」(4自治体)などが続いた。
 
更新:2010/03/24 21:21  キャリアブレイン

精神科も夜間や休日の救急センター開設へ
2010年03月22日 10時18分配信福島放送

福島県は平成22年度、心の病がある人や精神的に不安定な人から夜間や休日に寄せられる相談を受ける「精神科救急情報センター」を開設する。
 
精神科がある県内の病院1カ所に設置して精神保健福祉士らを配置、精神障害の救急患者に対応する。
 
現在は県内4ブロックで輪番制をとり夜間や休日の診察や相談受け付けに当たっているが、病院が公開されていないため誰もが相談できる窓口が求められていた。
 
センターは県精神科救急病院協会に委託して運営する予定で、県と協会が現在、センターの開設場所や開設時期を調整している。
 
センターは1カ所に設け、相談員は常時1人が対応できる体制にする予定。

2010.3.19毎日新聞
医療事故:カテーテルから空気入り男性死亡 静岡の病院

 国立病院機構静岡医療センター(静岡県清水町)は19日、入院していた80代の男性が、カテーテルから体内に空気が入り込む医療ミスで死亡したと発表した。カテーテルの連結部が緩み、心臓などに空気が混入し窒息死した可能性が高いという。センターから異状死として届け出を受けた県警沼津署は業務上過失致死容疑で調べている。
 
 センターによると、男性は2日、下部胆管がんの手術を受け、首から静脈に約10センチの深さでカテーテルを挿入された。看護師が6日夕、カテーテルの連結部が緩み、輸液が漏れているのに気づいて締め直したが、約10分後に容体が急変し呼吸が停止。12日に死亡した。心臓に空気が入っていたことがCT検査で判明したという。看護師は輸液漏れに気付く15〜30分前にも確認していたが、異常はなかった。
 
 野見山延院長は記者会見で管理ミスを認め、「患者が動くなどし連結部が緩むことはあるが、空気が入り込んで患者が亡くなるケースは聞いたことがない。男性と遺族に深くおわびしたい」と話した。【山田毅】
 
毎日新聞 2010年3月19日 20時17分

2010.3.19読売新聞栃木
自殺未遂者25%「以前にも」
県が実態調査
 自殺抑止策に役立てるため、県が自治医大に委託して実施した自殺未遂者を対象とした実態調査の報告書がまとまった。自殺未遂者のうち以前にも自殺を図った経験のある人が25%に上った。報告書では「救急外来と精神科の連携を強化することが自殺防止につながる」と提案している。
 
 調査は、県自殺対策連絡協議会長を務める同大公衆衛生学教室の中村好一教授と千原泉助教が、県内の各医療機関に質問票を配布、昨年9月に自殺を図って救急外来を受診した81人を対象に行った。
 
 報告書によると、20人は、以前にも自殺を図って医療機関で受診した経験があり、15%にあたる12人は以前の受診から1年未満で再び自殺を図っていた。自殺を図った曜日は、平日が平均3・2人で、休日の同1・6人の2倍となり、「平日は家族が出掛けて1人だけ自宅に残されることが多いため」と分析している。
 
 一方、救急外来の受診後、精神科での受診が必要だったのに、「本人や家族が受診を拒否する」「精神科医が不在」といった理由で、実際には18人が受診できていなかったことが判明。「未遂者には精神的なサポートが必要で、救急外来と精神科の連携を強化することが自殺予防につながる」とし、医療機関同士のマニュアルを整備することなどを提案している。
 
 また、27人は救急外来での受診後に入院したりせず帰宅していたこともわかり、「地域の健康福祉センターに連絡するなど、その後の対応を検討する必要がある」とした。中村教授は「自殺しようとする人は必ずシグナルを送っている。関係機関の連携を強化して自殺防止につなげたい」と話している。
 
(2010年3月19日  読売新聞)

<特定看護師>広範囲の医療行為可能に 厚労省検討会が提言
毎日新聞 2010年03月19日20時14分
 
 経験豊富な看護師を活用し、医師不足解消や医療の質向上につなげようと、厚生労働省の有識者検討会(座長、永井良三・東京大教授)は19日、従来より広範囲の医療行為ができる「特定看護師」の導入を求める提言をまとめた。10年度に試行を始め、11年度にも第1号が誕生の見通し。資格を得た看護師は医師の指示下で、簡単な傷の縫合などが可能になる。
 
 提言によると、特定看護師の資格は、一定の実務経験があり、養成カリキュラムを組む大学院を修了後、第三者機関の評価を受けた人に与える。認めるのは合併症などのリスクが低い医療行為。例えば、在宅療養中の患者に、医師が処方した薬の中から実際に使う薬を選ぶことができる。
 
 厚労省は来年度、養成モデル校を指定し、第三者機関の設立を進める。業務の実態調査を基に、特定看護師やそれ以外の看護師ができる医療行為を明確化する予定だ。当初は通知で対応し、実施状況を踏まえ数年後の保健師助産師看護師法改正を目指す。【清水健二】
 
 ■特定看護師ができる行為例
 
・患者の重症度判定(トリアージ)のための検査
 
・エコー(超音波検査)の実施
 
・X線撮影、CT、MRIなどの実施時期の判断
 
・人工呼吸器を装着する患者への気管内挿管と抜管
 
・縫合など傷口の処置
 
・患者の状態に応じた薬剤の選択・使用
 
・副作用が出た時などの薬の変更や中止
 

2010.3.20日本経済新聞
厚労省検討会、「特定看護師」導入を提言 投薬など可能に
 厚生労働省の「チーム医療の推進に関する検討会」は19日、看護師が医師の指示を受けて実施できる医療行為の範囲を広げる「特定看護師」(仮称)の導入を提言する報告書をまとめた。初期救急や在宅医療などで検査や投薬などの判断ができるようになる。報告書では安全を確保したうえで試行的に実施し、将来的に法制化を視野に入れた対応を求めている。
 
 同省は昨年8月に検討会を設置。医師の負担軽減や医療の質向上を図るため、医師と看護師や薬剤師らの連携を高める方法を検討していた。
 
 報告書では、特定看護師が医師の指示を受けて実施できる「特定の医療行為」として、患者の重症度の判断(トリアージ)のための検査や超音波検査、エックス線、コンピューター断層撮影装置(CT)など検査の実施時期の判断を例示。傷の縫合などの処置や人工呼吸器を使っている患者への酸素投与量の調整も挙げた。(01:12)

2010.3.17河北新聞
差別は禁止 市条例制定へ始動 仙台・障害者グループ
 
障害者が差別を受けた体験を話した勉強会
 
 
 仙台市の障害者団体でつくるグループが、障害者への差別を禁止する市条例の制定を目指し、活動を始めた。手本は差別を定義し、救済委員会への申し立てを盛り込んだ千葉県の条例。勉強会やシンポジウムを通じて差別の実例を集めて体系化し、3年後の成立を目指す。
 
 グループは「誰もが暮らしやすいまちづくりをすすめる仙台連絡協議会」。市民団体「CILたすけっと」や社会福祉法人「つどいの家」、市身体障害者福祉協会などの代表者ら17人の運営委員で構成する。
 
 2月に仙台市福祉プラザ(青葉区)で開いた初の勉強会には、約50人が参加し、身体、知的、精神障害者の3人が経験談を発表した。
 
 重度の障害があり、車いすを使う及川智さん(31)は、小学生の時、教師から行事に参加しないよう言い渡された体験を紹介。「何と理不尽で暴力的なことだったか。隣にいた母親の涙を覚えている」と打ち明けた。
 
 千葉県の条例は2006年に全国で初めて制定された。障害者に対する差別を(1)福祉サービスの提供や雇用を拒否すること(2)教育で必要な指導や支援を受ける機会を与えないこと―などと定義し、第三者機関による解決を盛り込んだ。
 
 同様の条例制定を目指す動きは、全国各地で始まっている。北海道は昨年3月、障害者の権利擁護をうたう条例を成立させた。内閣府の障がい者制度改革推進会議も昨年12月に初会合を開き、障害者自立支援法に替わる新しい福祉制度創設に向け、障害者差別の議論を始めた。
 
 仙台連絡協議会代表の杉山裕信さん(43)は「障害者差別をなくすため、実効性のある条例をつくりたい」と話している。次回の勉強会は6月に開く予定。今後、市や市議会に条例化を働き掛ける。
 
 連絡先は市身体障害者福祉協会022(266)0294。
 

2010年03月17日水曜日

2010.3.17毎日新聞
向精神薬:自殺者、過剰摂取も 「適切な管理が必要」
 国立精神・神経センターの加我牧子医師らの研究グループが行った自殺実態調査で、生前に精神科などを受診していた自殺者の半数が医師から処方された向精神薬を過量摂取していたことが分かった。グループの松本俊彦医師は「自殺予防のためには処方薬の乱用を防ぐことが急務。精神科医師の質の向上も必要」と指摘している。
 
 調査対象は08年1月〜09年12月の自殺者のうち遺族が調査に応じた76例。死亡前1年間に精神科か心療内科の受診歴があった人は半数の38人だった。うち死亡時に向精神薬を医師の指示より多く服用した人が19人いた。
 
 埼玉県立精神医療センターの成瀬暢也副病院長は「向精神薬は乱用すると量が増える。追加処方には応じない、薬を家族に管理してもらうなど、医師側の対応が必須だ」と話している。【和田明美】
 
毎日新聞 2010年3月17日 東京朝刊

2010.3.15朝日新聞鳥取
【底から生きる】
 
1 体験語り合い 希望の光
2010年03月15日
 
鳥取ダルクを支援する教会で昨年洗礼を受けた。月に1度の牧師との聖書勉強会を楽しみにしている=鳥取市元大工町
◆アルコール依存症と向き合う トモさん(31)
 
 8階建てのマンションの屋上から見下ろすと、足元に人影のない駐車場が広がっていた。チューハイ12缶とウイスキー2本で酔いが回っていても、足がすくんだ。
 
 大学を中退し、仕事に就けず、心の支えだった女性に去られた。「これを吸って、ぶっとんだまま死んでやろう」。ポリ袋のシンナーを一気に吸い込んだ。気絶した。
 しばらくして気がついた。目を開けると青空が見えた。屋上で仰向けに倒れていた。
 
 2001年の春。当時22歳。自らのアルコール依存症と向き合えずにいた。
 
      ◇
 
 親の顔色ばかりうかがう「いい子」だった。中学では「親が安心するだろうから」とサッカー部に入ったが、黙ってさぼった。教室で手を上げて発言することもなかった。自分の意見を押しつけ、先生や友達に迷惑をかけるようでためらわれた。
 

 山口県の大学に進学し、学生寮で暮らした。3畳半の部屋はベッドと机を入れただけでいっぱいになった。入学した直後、部屋でギターをかき鳴らす仲間に焼酎のコーラ割りを勧められた。炭酸の刺激とともに酒が食道を下ると胸が熱くなった。
  10杯ほどあおると人目が気にならなくなった。「ストリートミュージシャンでもやらないか」。気持ちを素直に言える自分に驚いた。その年の学園祭にパンクバンドのボーカルで出演した。また酒の力を借りた。アルコールを手放せなくなり、飲まないのは寝ている時だけになった。
  大学2年になると毎朝手が震え、脂汗が額を流れるようになった。警備員やスナックのバイト中、酒入りのペットボトルを隠し持った。禁断症状に苦しみ、恋人のアパートに転がり込んだ。部屋に引きこもり、酒を飲んで、吐いた。1年半後、恋人は「嫌いじゃないけど好きじゃなくなった」と実家に帰った。
  飛び降りるのにちょうどいい高さのビルを探して、街をふらつくようになった。
 
      ◇
 
 ビルから飛び降り損ね、帰った福井県の実家にジャージー姿の男性が現れた。薬物依存症の回復を支援する「鳥取ダルク」(岩美町牧谷)の施設長、千坂雅浩さん(49)だった。両親が相談していた。
  07年4月、寮生活をする15人ほどの依存症の人たちと暮らし始めた。朝7時半に朝食を食べた後、入寮者が互いに経験を語り合い、回復への希望を育む「ミーティング」。掃除。午後にもミーティングが続く。隠れて酒を飲み、2カ月ほどで逃げ出した。
  JR鳥取駅で特急列車に飛び乗った。衝動的にカミソリで左腕を20カ所ほど切り、血まみれになった。病院で30針を縫った。実家に帰り着くと、「おまえの帰る場所はここじゃない」と両親に突き放された。
  再びダルクへ。「1年間、クリーン(酒に依存しない状態)が続けば何かが変わるかもしれない」と一歩踏み出す決心をした。欲求は消えないが、手を出せば余計苦しいと知っている。左腕の傷が生々しい。耐える中でうつ病になったが、「社会に戻りたい。親を安心させたい」と反芻(はん・すう)した。11年間飲み続けた酒をやめた。
 
      ◇
 
 ダルクの寄付者に患者の近況を伝える「鳥取DARC(ダルク)通信」の昨年10月号に手記を書いた。「苦しかった分、喜びはでかかった。逃げる事しか知らない俺(おれ)が逃げなかった。俺の心は満たされた」。食事したり、読書したり。普通の暮らしが幸せだった。
  08年秋、ダルクのスタッフになった。ダルクでは入寮者の回復に向けて一緒に歩むスタッフ自身も依存症を抱える。入寮者17人の処方薬や生活費を管理し、鳥取砂丘の清掃活動の準備をする。「優しく接すれば、優しく接してもらえる」。苦手だった人間関係の基本を学んだ。責任ある立場にいる充実感も大きい。
  手記に仲間への感謝もつづった。「仲間と出会えて、アディクト(依存症)になって良かったとさえ思う」。いま初めて、生きたいと感じ始めている。(徳永悠)
 
    ◆   ◆
 
 酒、パチンコ、覚せい剤……。ふとしたきっかけで依存症になり、深みで苦しむ人がいる。薬物依存症のリハビリ施設「鳥取ダルク」を訪ね、生きる力さえ尽きてしまった「底」から社会復帰を目指す人たちの声に、耳をすませた。
  
企画特集2
 
【底から生きる】
 
2 やり直し 回復祈る毎日
2010年03月16日
  
仲間に線香を上げるスンズロさん。「供養というよりは自分を見守ってくださいと祈る場所」と語った=岩美町牧谷の鳥取ダルク
 ◆高校時代市販薬で依存症 スンズロさん(38)
 
 日が差し込む東向きの窓際の棚を毎朝掃除する。棚に赤、青、緑と色とりどりの10体のだるまが並ぶ。時々高さ5センチほどの人形をつまみ上げて、並び順を変えてみる。ちょっとした気分転換だ。
  棚に2人の男性の写真が飾ってある。かつて施設で一緒に暮らした仲間。薬物依存症を抱えたまま施設を去り、過剰摂取などで亡くなった。
  いま一緒に暮らす仲間より死んだ2人が自分と距離が近しい。そんな気がする。ブラックコーヒーを注いだコップを写真の前に供え、線香を立てた。「どうか自分を回復に導いてください」と手を合わせる。細い煙が陽光と重なって揺らいだ。
 
      ◇
 
 千葉県で生まれた。3歳上の兄と同じ進学校の私立高校に合格し、あこがれていたギターを手にした。でも練習に集中できず、いつまでたっても指が思い通りに動かない。ギターが巧みな知人に相談した。「気持ち分かるよ。いいのがあるから」と紹介されたのが市販の風邪薬だった。

 帰り道、教えられた薬を買った。60錠入りで1200円ほど。5錠ずつスポーツ飲料で流し込んだ。1時間ほどで体がむずむずし、気分が高揚した。「やったる」。ギターのネックを握りしめ、面倒だった練習に没頭した。1週間はかかる曲が2日で仕上がった。1カ月の練習でロックバンド、レッド・ツェッペリンの難曲を弾きこなし、文化祭で披露した。「すごいな」と周囲の目が変わった。1日1瓶が日課になった。
 
 卒業後、東京にある音楽の専門学校に入った。ゲームセンターのアルバイト代を薬の費用に充てた。副作用で口の中が乾いて発疹が広がり、全身に痛みが走った。病院で薬物依存症と診断された。罪悪感にさいなまれ、副作用の苦しさもあって飲むのをやめた。発疹は悪化し、目の奥が痛くてまぶたが開けられない。目にタオルを縛り付けて1週間苦痛に耐えた。
 
 4年ほど薬と無縁で過ごし、父の建設資材会社に勤めた。北海道から鹿児島県まで工事現場を飛び回り資材の使い方を指導した。年に60回以上も飛行機に乗り、客室乗務員と顔なじみになった。年収は手取りで400万円あった。芽生えた自信が心にすきを作った。「自分でコントロールできる」。快楽を求めてまた薬瓶を手にした。

 薬を使い出すと金遣いが荒くなった。時計はロレックス、スーツはアルマーニ。仕事にも、親に甘える自分にも嫌気がさした。目的もなく米国へ向かい、シアトルやニューヨークをうろついた。金が尽きて半年後に帰国した時、体はコカイン漬けだった。
 
 元の会社に戻ったが、パニック障害で病院に入院。父から依存症の社会復帰に取り組むダルクのことを聞かされ、福岡、沖縄、茨城と各地のダルクに足を運んだ。6年ほど前に一度、鳥取ダルクの寮に入ったが、一緒に暮らす仲間の向精神薬を盗み飲んだ。恥ずかしくて施設から無断で逃げ出した。
 
 薬はやめたとうそをついて千葉県の親元に戻った。親が実家近くに用意した団地で暮
らした。介護士の勉強を始めたものの、薬が切れると「おれを病院やダルクに入れやがって」と母を脅した。両親は実家から逃げた。持ち帰り弁当の空き殻と薬瓶が散乱する薄暗い自室で寂しさに身もだえた。
 
 2008年11月中旬の朝、鳥取ダルクに電話した。番号は覚えていた。施設長の千坂雅浩さん(49)が「助けてやる。死ぬな」と告げた。薬に代わって心の穴を埋めてくれる言葉だった。
       ◇

 ダルクに戻って1年4カ月がたつ。今は薬はやめているが、施設を出た後も手を出さずにいる自信はまだない。「何度も薬で家族や仲間を裏切った。もう一度やり直したい。薬を使わない一日一日を重ねたい」。亡くなった2人への朝の祈りは続く。(徳永悠)
 

企画特集2
 

【底から生きる】
 
3 さらけ出し仲間と共に
2010年03月17日
 
「ただいま」「元気そうな顔だな」。1週間ぶりに再会した仲間とがっちり握手する千坂雅浩さん(左)=岩美町牧谷の鳥取ダルク
 
◆クスリを使いたい自分がいる 千坂雅浩さん(49)
 
 目の前に立ちこめる霧がスッと晴れていく。「俺(おれ)はようやく、すっきりと生きていけるのかもしれない」。初めて覚せい剤を左腕に打った時に覚えた感覚だ。
 
 20歳の頃、違法なポーカーゲームの賭場で働いた。先輩が女性を連れて自宅に遊びに来た。「これを使ったら時間が止まる。お前もどうだ」。気持ちよさそうな2人を見て、ためらわず腕を差し出した。クスリなんか自分でコントロールできる、と思った。
 
      ◇
 
 仙台市の中学校で英語教諭をする父は、野球部の監督としてチームを東北大会優勝に導く熱血漢だった。全精力を生徒に注ぎ、家で会話することはほとんどなかった。
 
 母からは「親が学校の先生なんだから」と口癖のように言われ、優等生でいなければと心がけた。息苦しさを感じながら暮らした小学3年の頃、食べたものを吐くようになり、3カ月入院した。
 
 中学卒業を控え、陸上自衛隊の養成学校へ進みたいと父に相談した。体を鍛えるのが好きだった。勇気を振り絞った言葉だったが、「お前には集団生活についていく能力はない」と突き放された。
 
 意に沿わない高校に進み、不良仲間と付き合い、けんかや万引き、恐喝に明け暮れた。「教師の息子」のレッテルをはがしたくて悪事に手を染めた。酒やたばこは当たり前。シンナーにも手を出した。高校2年で追い出されるように自主退学した。
 
      ◇
 
 賭場の先輩に教えられた後、月に2度ほどで覚せい剤を打ち続けたが、仲間が警察に捕まった。自分にも捜査が及ぶと思い、怖くてやめた。
 
 21歳で勤め始めた牛タン店では、学歴も自信もない自分を打ち消すようにがむしゃらに働いた。26歳で結婚。臨月を迎えた妻が実家に戻った際、寂しさを紛らそうとまた覚せい剤に手を出した。長女が生まれた日も使った。病院に駆けつけたが、罪悪感で我が子を抱けない。
 
 覚せい剤のことを知られたくなくて、家から足が遠のいた。しばらくして妻から離婚を切り出された。長女とは中学に入学する頃に会ったきり、音信は不通だ。
 
 暴力団に加わり、覚せい剤も続けた。36歳の時、付き合う女性に「クスリがやめられない」と告白した。教えられたのが、依存症のリハビリ施設「仙台ダルク」だった。茨城、福島、秋田と各地のダルクを転々とした。
 
 福岡のダルクで暮らしていた2005年、母から電話が入った。「お父さんががんみたいなの」。末期の膵臓(すい・ぞう)がんだった。金づちで殴られたような衝撃を受けた。
 
 高校を中退して以降、父とは疎遠だった。病院を見舞っても交わす言葉は見つからない。でも、父を救いたかった。がん関連の専門書を読み、医師と治療方針を話し合う日々。「今、ここで暮らしているんだ」とダルクに関する本を渡したことも。父は黙って読んでくれたみたいだ。
 
 体力の衰えが目立つ父を病院の食堂に誘った。父の腕を支えながら「お父さん、生んでくれてありがとう」と告げた。ずっと言いたかった。父はただ深くうなずいた。2週間ほど後、永眠した。
 
      ◇
 
 ダルクの関係者から指名され、06年4月に鳥取ダルクの責任者に就いた。20人ほどの入寮者のケアや施設管理を担う。寄付金に頼る運営費は常に火の車だ。依存症の人がいる家族からは深夜でもSOSの電話が鳴り響く。
 
 覚せい剤を絶って7年4カ月になる。しかし疲れがたまると、目の前にある先のとがったボールペンさえ注射器に見える。家庭を失い、どん底にいた時より楽に生きていられる今の自分と、覚せい剤ですっきりしたいもう1人の自分。分身がせめぎ合う。
 
 「今日はクスリを使いたいんだ」。苦しい時は入寮者ら仲間の前ですべてをさらけ出す。そして呼びかける。「共に生きよう」と。(佐藤建仁)  
 

企画特集2 

【底から生きる】
 

4 復帰へ 目標と自覚促す
2010年03月18日
  
回復に向けて必要な10個を挙手で決めていく。自分や仲間はどれほど大切にできているか、と入寮者は考えた=岩美町牧谷の鳥取ダルク
 
 浦富海岸が見下ろせる丘にある木造2階建ての建物が鳥取ダルク(岩美町牧谷)だ。2月中旬、大広間に集まった入寮者ら24人は、依存症を治すために必要なこと、回復を目指す意味を思いつくままに挙げた。
 
 「正直さ」「信じること」「NAミーティング(依存症の経験を当事者同士で話し合う会)」「筋トレ」「希望」「趣味を持つこと」。20個の言葉が白板に書き出された。続いて鳥取ダルクにとっていま大事なことを、この中から10個多数決で選んだ。
 
 「今日のあなたは守れていますか」とスタッフが問いかけた。10個とも守れていたら満点。入寮者同士で仲間の点数を付け、1位、2位と順位を発表する。最下位の人は「あなたはビリです」と全員の前で告げられた。恥ずかしさと悔しさを押し殺したような表情で黙っていた。
 
 独りよがりにならず、一緒に暮らす仲間の意見を受け止め、社会復帰までの距離を自覚するプログラムだ。依存症の人に最も大事な希望と目標を持ってもらう狙いがある。先進的な取り組みを進める群馬ダルクから代表のオーバーヘイム・ポールさん(41)らスタッフ2人を招き、初めて試みた。
 
 「みんなが正直に答えた結果の順位。この10個が守れなければ絶対に回復できない。自分を変えよう。回復するか、死んでしまうか、どちらかなのだから」。スタッフが入寮者を励ました。
 
      ◇

 薬物などの依存症になった人には行き場がない。ダルクのような民間の支援施設か病院、刑務所が主な場所だ。かろうじて一般社会に踏みとどまっても、薬の過剰摂取で死んでしまったり、自殺したりするのも珍しくない。
 
 社会復帰を後押しする支援者は、依存症をがんや糖尿病と同じように「病気」ととらえる。しかし、病気という認識は一般には薄い。

 ドラッグ(薬物)・アディクション(依存)・リハビリテーション・センターの頭文字をとったダルク(DARC)が、日本で初めて発足したのは1985年。現在は、北海道から沖縄まで全国約60カ所に広がる。依存症への偏見から犯罪者のように見られ、ダルク開設に地域の住民が反発することも多い。

 2005年にできた鳥取ダルクの場合は、岩美町や住民の理解を得られて大きな反対はなかった。施設長の千坂雅浩さん(49)は「依存症は『自己責任』と言われるが、家庭環境など背景には自己責任で済まされない事情がある」と、依存症の人たちへの理解を求める。

      ◇ 

 施設の資金繰りは難題だ。鳥取ダルクの入寮者の利用料は月額15万円だが、入寮している16人のうち家族らの支えで費用が払えるのは8人。6人は月額9万5千円の生活保護を受給するものの足りず、2人は生活保護すら受けられないので無料にせざるを得ない。ダルク以外に居場所がない人ばかりだ。 

 足りない費用は寄付が支えとなっている。08年度は200万円が集まった。寄付者にはニュースレターを送り、入寮者の生活を伝える。 

 千坂さんを含めて5人いるスタッフの将来も不安定だ。みな、依存症の経験者。仲間の苦しみに共感し、支援に生きがいを感じる。高いノウハウを持つ人もいる。施設に欠かせない人材だが、有給は千坂さん1人だけ。4人はボランティアとして働く。 

 「違法な薬物であれ、市販の酒や錠剤であれ、必ず誰かが依存症に陥る。今の社会には不可欠な施設」と、千坂さんは公的な助成の必要性を訴える。「当事者が当事者を支えるからこそ、回復を後押しできる。今後もダルクを守っていきたい」。(徳永悠)
 
 
企画特集2
 
【底から生きる】
 
5 自分の生き方見つけて
2010年03月19日
  
依存症の回復方法について語る渡辺病院の山下陽三診療部長=鳥取市東町3丁目
 
 アルコールや薬物に限らず様々なタイプの依存症に苦しむ人たちがいる。薬物依存症の治療に取り組む渡辺病院(鳥取市東町3丁目)の山下陽三診療部長に、依存症の仕組みや回復の方法について聞いた。(佐藤建仁)
 

 ――どのような状態を依存症と呼ぶのか
 
 アルコールや薬物などの「物質」、ギャンブルやゲームなど行為の「過程」、児童虐待やストーカーなどの「人間関係」と、何かにはまって抜け出せない状態にあることを依存症という。 

 ありのままの自分を大切な存在だと思うことができないなど、生きづらさを感じている人や、「こうしないといけない」と思いこみが強く、無理な生き方をしている人がなりやすい。現実から逃避し生き延びるため、何かを使って自分の感覚をまひさせているといつの間にか依存症になってしまう。
 

 ――依存症は治すことが出来るのか
 

 薬物を体内に取り入れたい欲求の程度は、1日に何杯も飲まずにいられなくなることがあるコーヒーのカフェインを基準にすると、ニコチンは8〜16倍、麻薬は16〜64倍、アルコールや覚せい剤は32〜64倍というデータが動物実験で出ている。一度アルコール依存症になると、断酒はできても、適量をコントロールして飲む状態には戻らない。つまり、依存症には依存行為をやめ続ける「回復」はあっても「治癒」はない。回復のためには自己を肯定し、新しい自分の生き方を見つけるのが必要。少なくとも3〜5年はかかる。
 
 ――回復する有効な方法は

 医療機関は薬物依存症の患者に対し、不眠や幻聴などを取り除く処方薬を出したり、回復への知識を教えたりすることはできる。しかし2、3カ月入院したとしても回復にまで至るのは難しい。対応に手詰まりを感じていたところ、依存症のリハビリ施設「鳥取ダルク」(岩美町牧谷)を作りたい、と関係者から協力を求められた。
 
 ダルクでは依存症の人同士が寮生活をする中で、薬物を使いたくなった時に仲間に胸の内を打ち明け、気持ちを静めることができる。回復のモデルを目の前で見るのは大きな支えだ。
 

 薬物依存症の人は10代で薬物に手を出すケースが多く、社会経験が少ないので簡単に仕事につけない。しかし1年、2年と寮で暮らすうちに少しずつ社会性を身につけることも出来る。渡辺病院では、鳥取ダルクの協力医療機関として利用者の解毒入院や通院を受け入れて、医療面でのサポートをしている。
 

 ――依存症の人を抱える家族や周囲は、どう行動したらよいのか
 

 回復するための居場所が本人に必要であるように、家族には相談できる相手がいることが重要だ。世間体を気にするあまり、抱え込んで苦しむ家庭は多い。家族をコントロールしようとしがちな依存症の人と、世話することで思い通りにしようとする家族の間で「共依存」の関係が出来ると回復はさらに遠のく。
 

 周りの人は決して本人の尻ぬぐいをせず、信頼できる自助グループ、家族会、医療機関などに相談して欲しい。=おわり
 

□■アルコール・薬物関連の相談窓口■□
 

 ◆薬物依存症リハビリ施設「鳥取ダルク」
  岩美町牧谷645−4
  電話・ファクス=0857・72・1151
  メール=tottori−darc@jewel.ocn.ne.jp
 

 ◆県立精神保健福祉センター
  鳥取市江津318−1
  電話=0857・21・3031
  ファクス=0857・21・3034
  メール=seishincenter@pref.tottori.jp
 

 ◆渡辺病院
  鳥取市東町3丁目307
  電話=0857・24・1151
  ファクス=0857・24・1024
  ホームページ=http://www.mmwc.or.jp/index.html
 

 ◆鳥取県警(薬物110番)
  電話=0857・26・3774

2010.3.18毎日新聞
障害者の「罪と罰」:イギリスからの報告/上 ケア優先、低い再犯率

 殺人などの重大事件を起こした容疑者が発達障害や人格障害と診断されることがある。いじめ、孤立などが背景にあるが、障害ゆえの言動が「悪質」「猟奇的」と糾弾される。一方、特性に配慮されず刑事手続きが取られ、刑務所では矯正教育が乏しいため、再び罪を犯す人も少なくない。現在の司法は加害者の矯正や社会の安全に役立っているのか。イギリスを訪ね、考えた。【野沢和弘】
 
 ◇「病院」で個別治療 段階的に地域へ復帰
 冬枯れの雑木林が広がるロンドン郊外にブロードモア高度保安病院はある。収容患者は250人。殺人や強姦(ごうかん)容疑などで逮捕されたり、既に服役していた人が7割。統合失調症、人格障害、発達障害などと診断された人々である。
 
 まず受付で指紋と顔写真をとられ、ボディーチェックを受けた。厳重に施錠されたドアを四つ通り抜けて敷地内に入ると、19世紀に建てられた赤いレンガ造りの病棟が並ぶ荘厳な風景が現れた。
 
 不安定な患者を集中ケアする病棟に案内された。リビングで、患者らがテレビを使ったボウリングゲームに興じている。肥満解消などのためという。不自由なことはないかと問うと、太った黒人男性は「特にないね」と笑った。
 
 処遇の難しい患者がいる病棟では、工芸活動や音楽療法が行われていた。日本の障害者施設の雰囲気と似ている。ユニット型居室の中央に広いリビングがあり、数人がくつろいでいた。「コミュニケーションをうまく取れるようにすること、自分のことをポジティブに考えることを学んでいる」と男性患者が落ち着いた口調で話した。
 
 一人の男性の部屋を見せてもらった。整頓された室内に音楽が静かに流れ、窓辺の観葉植物に光が差し込んでいる。知的な笑みを浮かべ大学教授のような雰囲気だが、3人の女性を強姦したとして有罪判決を受けた。普段はおとなしいが、突然激高して暴れることがあるという。
 
 同院では患者の特性や能力に応じて個々の治療プログラムを作成し、認知行動療法や心理療法を行っている。原因となる疾患をコントロールし、自分の病を理解する。なぜ法を犯したのか内省を促し、行動を管理することを目指している。「院内の治療が地域の福祉サービスと統合されていること、本人が治療に積極的に向き合えるようにすることが必要だ」と管理者の男性は言う。
 
 英国では容疑者に精神的な問題が指摘されると治療が優先される。共感や内省が難しい障害のある人を服役させるだけでは矯正につながらないとの考えが根底にある。特に「危険で重度な障害」と判断されると高度保安病院などに送られる。再犯リスクが減ると中度保安病院や刑務所、改善すればさらに開放病棟から地域生活へと移行する。そうして地域に戻った障害者が再び法に触れたりして病院に戻ってくる率は5〜6%という。
 
 「刑罰でなくなぜ病院に入れるのか、と思っている人は英国にも多い」とブロードモア病院の医師は言う。厳重な管理下で多数の医療スタッフが手厚いケアを施す同院では、患者1人に年約4000万円をかける。国の財政悪化で体制の継続が危ぶまれてはいるが、必要なのは刑罰ではなくケアという思想が、厳罰を求める世論の濁流にあらがう岩のように存在している。
 
   *
 
 日本では刑事責任能力が認められると通常の刑事手続きが取られる。人格障害や発達障害で「責任能力なし」とされることはまずない。刑務所では障害特性に合わせた矯正教育はなく、医療刑務所でも再犯防止プログラムはほとんど行われていない。05年には重大事件を起こしながら責任能力がない人を指定医療機関で治療する心神喪失者医療観察法が施行された。イギリスがモデルだが、統合失調症などに限られ、薬物治療での改善が難しい発達障害や人格障害は対象外だ。
 
 イギリスでは犯罪を起こさなくても重度の自傷や他害行為があり専門的なケアが必要な人は保安病院で治療される。「入退院の判断は、精神科医と裁判官と心理士などで構成される裁定機関が緊密にかかわって行うことが精神保健法で定められている」とコリーン・シンガー弁護士は言う。
 
 イギリス自閉症協会にはヘルプラインがあり、発達障害の人がトラブルを起こしたり逮捕されると、すぐに自閉症に詳しい弁護士のネットワークにつながる、と同協会のリチャード・ミルズ氏は語る。=次回は4月10日掲載
 
毎日新聞 2010年3月18日 東京朝刊

患者骨折:カメラ設置後被害なし 看護師、体制強化察知か
2010年3月14日 2時33分 更新:3月14日 2時33分毎日新聞
 
 佐用共立病院(兵庫県佐用町)で患者6人の肋骨(ろっこつ)が折られた事件で、傷害容疑で逮捕された元看護師の羽室沙百理(さおり)容疑者(26)は、ダミーだった病院の防犯カメラに本物が増設されて以降、患者に危害を加えていないことが病院などへの取材で分かった。病院は「看護師らはカメラがダミーだとは知らなかった」としているが、県警佐用署は、羽室容疑者が病院の防犯体制強化を知って暴行を控えたとみている。
 
 病院などによると、ダミーカメラは連続骨折が起きる以前から病棟の廊下などに設置されていた。病院は08年12月に1人目の患者の骨折を確認。以降も相次ぎ、09年1月19日には2人の骨折を確認したことから、同28日から順次、廊下や重症患者の病室に計12台の本物のカメラを設置した。また、佐用署も病院からの相談を受け、同27日に捜査を本格化。19日以降は新たな骨折者はなかった。
 
 羽室容疑者は調べに対し、「患者が感謝の気持ちを示してくれない」などと供述しているという。【山川淳平】

心神喪失で罪問えぬ人 社会復帰へ入院施設
2010年03月12日朝日新聞
 
  他人を傷つけたが、精神障害などで刑事責任を問われなかった人を治療して、社会復帰させるための「指定入院医療機関」が、県立こころの医療センター(宇部市)にできる。県は2010年度当初予算案に病棟などの設計費約5200万円を盛り込み、12年度の開院を目指すという。
(笹円香)
 

  指定入院医療機関は、国が全国で設置を進めている。01年に大阪教育大付属池田小学校で起きた児童殺傷事件などをきっかけに、05年7月に施行された心神喪失者等医療観察法(医療観察法)に基づく。 

  医療観察法は、他人を傷つけたが精神障害などで裁判所が「心神喪失」または「心神耗弱」で入院や通院の治療が必要と判断した場合に適用される。通院の場合は3年間、入院の場合は約1年半をめどに治療を受けるという。 

  同法が施行されてから昨年7月までに、山口地裁が適用対象と判断したのは8件。全員が入院決定だったが、県内には指定入院医療機関がなく、県外に入院したという。 

  新設する病棟はすべて個室にして、他の入院患者との接触がないよう、診察室や治療室など専用の空間を設けることになる。県は、こころの医療センターで病棟を増築して8床を設置する予定。設置費用はすべて、国からの補助金で賄われる。補助金の申請が通ってから、地元への説明も行う。 

  国は、全国に720床の専門病床を設ける目標を掲げて、都道府県に働きかける。しかし、09年3月末で全国に16カ所、441床にとどまる。県の担当者は、「今まで他県のお世話になっていた。また、面会に通う家族の負担や、退院後に山口に戻って通院することを考えると、県内にあることが望ましい」と話している。

退院直前の入院患者が入浴中に死亡 千葉・習志野
2010.3.11 22:43産経新聞

  千葉県済生会習志野病院(千葉県習志野市泉町)は11日、肺炎で入院していたの男性患者(84)が、1人で入浴中に浴槽内で死亡したと発表した。
 
 同病院によると、男性は10日午後9時〜10時の間に入浴を希望し、1人で入浴。翌11日午前1時ごろ、浴室の電気がついており、中から鍵がかかっていることに気づいた看護師が、浴槽内で顔を湯船につけてぐったりしている男性を発見。心臓マッサージなどの救命処置を施したが、同日朝、死亡が確認された。男性は同日退院予定だったという。
 
 船橋東署が12日の解剖結果を待って事故の原因を調べる。

2010.3.9毎日新聞
障害年金:少ない受給者 「手帳」所持の1/3未満−−厚労省調査へ
 障害年金の受給者が障害者手帳を持つ人の3分の1に満たないことから、厚生労働省が実態調査することを決めた。両者の認定基準は異なるが、同省は障害年金を受け取れる可能性があるのに申請していない障害者がいるとみている。
 
 障害基礎年金や障害厚生年金の受給者は計約179万人。一方、公的福祉サービスを受ける際に必要な障害者手帳の所持者は約630万人(身体約503万人、知的約79万人、精神約48万人)。
 
 心臓手術でペースメーカーを埋め込んだ場合、障害者手帳の等級は1級でも障害年金は3級とされて支給されないなど、認定基準が異なり、同数にはならない。だが障害年金を受給できるのに、手続きをしていない人が少なくないとされる。視覚障害の場合、障害年金1級と身障者手帳2級の要件は「両眼の視力の和が0・04以下」で同じだが、1級(同0・01以下)と2級の手帳取得者計約23万人に対し、障害年金の受給者は約10万人にとどまる。【野倉恵】
 
毎日新聞 2010年3月9日 東京夕刊
 
 

薬事日報
2010年3月8日 (月)
【東大病院】うつ診断で新プログラム開始

  
 東京大学病院精神神経科は、うつ症状の診断の正確性を高め、治療の適正化を目指した「こころの検査入院プログラム」を本格的に開始した。
 

 プログラムは、臨床評価に有用であるものの、外来診療では行うことが難しい各検査を集中的に行い、より的確な診療の一助とすることを目的にしている。中心的な診断補助法として用いる光トポグラフィー(NIRS)検査は、「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助」として、精神医療分野で初めての先進医療に承認されている。
 
 具体的には、同病院精神神経科開放病棟への4 日間程度の入院期間中に、短期間の休養と併せ、光トポグラフィー検査をはじめとする集中的な検査・心理プログラムを行い、患者の診断治療の新たな方向づけを行い、検査結果や結果から考えられる現在の状態評価、今後の治療、追加検査の必要性などについて主治医へフィードバックする。
 
 プログラム参加には、現在受診している医療機関(主治医)からの紹介が必要で、基本的に退院後も紹介元の医療機関での治療を継続する。
 
 年間約100人程度の受け入れが可能で、入院費用は4日間で7万円前後。

2010.3.8キャリアブレイン
精神障害者への交通費優遇の充実を働き掛け−日精協
 
 日本精神科病院協会(日精協)は、3月5日の定期代議員会議で、精神障害者の交通費に対する優遇措置をより充実させるため、国土交通省などへの働き掛けを強化する方針を確認した。
 
 精神障害者の各種優遇措置については、2006年に施行された障害者自立支援法によって、知的障害者や身体障害者と同等のサービスが受けられるよう定められている。ただ、日精協の内部からは「精神障害者に対する交通費優遇は十分ではない。知的障害者や身体障害者のそれと同等の水準にまで引き上げる必要がある」という声が上がっていた。
 
 このため日精協では昨年10−11月、全国の47支部を通じて、電車、タクシー、バスなどにおける精神障害者に対する交通費割引の有無や、サービスの具体的な内容を調査した。その結果、精神障害者に対して、自治体単独による優遇措置を講じていない市町村が1053あることが分かった。一方で、すでにある優遇措置では「交通費の助成」(493件)や「通院通所交通費助成」(161件)が多く、「乗車券発行」(41件)などを実施する自治体もあった。
 
 調査結果を受け、日精協では、国交省に対し▽高速道路や鉄道、バス、飛行機などの運送事業に係る標準約款(国土交通省告示)の割引対象に、「精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者」を追加する▽精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人が運賃割引を受けられるよう、国交省から各自治体へ働き掛けを強化すると同時に、その実績を評価する−の2点を要望していくことを確認した。
 
更新:2010/03/08 13:00  キャリアブレイン

認知症患者の精神病床受け入れ増 緊急度低くても7割
2010年3月5日(金)信濃毎日新聞

 
 
 信濃毎日新聞社は精神病床で入院治療を受けている認知症患者の状況を探るため、精神病床がある全国の病院にアンケートを行い、4日、結果をまとめた。認知症の入院患者が「かなり増えている」「増えている」との回答が76・2%に上り、精神科病院などでも認知症患者の増加が見られることが分かった。さらに、緊急度は低いが施設介護などが望めないため受け入れたケースが「ある」が73・4%、退院が可能なのに入院が続いているケースが「ある」も78・0%で、多くの病院が「社会的入院」を引き受けている実態が浮き彫りになった。
 
 入院治療の必要度が低い認知症患者が精神病床で入院を続ける背景には、介護施設の不足などがある。精神病床がどこまで受け皿になるべきか。認知症患者の増加に対応するため、国は病院と施設の役割分担を早急に示す必要がある。
 
 調査は2月、精神病床がある全国の精神科病院、総合病院などを対象に行い、県内外の288病院から回答を得た。
 
 退院が可能なのに入院が続く主な理由を2つまで聞いたところ、「介護施設に空きがなく、順番待ちをしている」が最も多く70・0%。次いで▽「家族が退院を望んでいない」52・9%▽「転院先が見つからない」21・1%▽「介護施設に入所を拒まれている」15・2%−の順。「行き先が決まらないのに退院させられない」「退院できない認知症患者は増えている」といった記述が目立った。
 
 認知症の入院患者のうち、入院期間が1年以上の人が5割以上いる−とした病院は32・8%で、入院の長期化もうかがえる。一方で、精神病床が主に担っている統合失調症の入院患者は「かなり減っている」「減っている」が37・0%で、「かなり増えている」「増えている」の9・4%を大きく上回った。
 
 認知症患者の受け入れについては、激しい症状が収まるまでの「急性期(3カ月以内)に限るべきだ」が41・6%、「急性期以外でも受け入れるべきだ」が33・2%、「治療の必要度が低い社会的入院も含めて受け入れるべきだ」が8・0%で、意見は分かれている。
 
 薬物治療以外の療法に「力を入れている」は62・2%に上った一方、「力を入れていない」も34・6%あった。身体拘束を軽減する取り組みは、82・5%が「行っている」と回答した。
 
 

2010.3.4読売新聞
統合失調症の治療中断、3割
初診から半年以内
 幻聴や妄想に苦しむ統合失調症患者の3割が、初診から半年以内に治療を中断してしまうことが、厚生労働省研究班の家族調査で分かった。
 
 調査は、都内の家族会などの協力で昨年実施。患者の家族1485人の回答(うつ病などを一部含む)をまとめた。
 
 治療中断の理由(複数回答)は、「本人が精神疾患と思っていなかった」が52%で最多。統合失調症患者は当初、幻聴などを現実の出来事と考えるのが特徴で、病気の知識を深めることが重要だが、十分に対応できない医療機関が多い現状が結果に表れた。
 
 また「精神科の通院に抵抗感」(32%)、「薬の副作用が苦痛、心配」(30%)、「カウンセリングなど薬以外の治療が十分利用できない」(20%)などの回答も目立ち、精神医療への不信感が浮かび上がった。
 
 家族が異変に気づいてから、本人が精神科を受診するまでに1年以上かかる例も36%に上った。家族が受診を勧めても患者が嫌がり、初診までに症状を悪化させるケースが多かった。
 
 東京都精神医学総合研究所研究員の西田淳志さんは「症状悪化で初診が強制的な入院になると、本人や家族が医療に不信感を抱き、退院後、治療を中断してしまう。悪循環を断つには、精神医療の質を高めると共に、医師らのチームが家庭に出向いて対応するなど、早期支援の仕組み作りが欠かせない」と話す。
 
(2010年3月4日 読売新聞)

2010.3.3共同通信
障害福祉職員の月収7200円増 報酬改定で、効果は限定的

 厚生労働省は3日、2009年4月に実施した障害福祉サービス事業所向けの報酬改定で、常勤職員の平均月収が08年から2・4%、7176円増え30万5660円になった、との調査結果を発表した。非常勤職員では2461円増の11万9962円。
 
 深刻な人材不足を受け、職員の処遇改善のため改定で報酬を平均5・1%引き上げたが、人員確保や福利厚生に充てた事業所もあり、賃金面では限定的な効果にとどまった形だ。
 
 06年の障害者自立支援法施行後、初の改定だった。調査は09年10月、全国の約1万4千事業所を対象に実施。9月時点で給与の前年比較が可能な約7千人分を集計した。
 
 職種別では、常勤の理学療法士と作業療法士で1万7528円増など、ほとんどの職種が賃上げとなったが、非常勤の職業指導員では5175円の賃下げとなった。
 
 また厚労省は、09年9月時点の介護職員の平均月収について確定値を公表。22万9930円で08年から8930円増えた。1月公表の速報値と大きな違いはなかった。
 
2010/03/03 12:43   【共同通信】
 
2010.3.3時事通信
障害福祉従事者、7000円増=報酬改定後の平均給与−厚労省

 厚生労働省は3日、障害福祉サービス従事者の処遇状況の調査結果を公表した。2009年4月、障害者自立支援法の施行後に初めて報酬が5.1%増額されたため、同年9月の常勤職員の平均給与は08年9月比7176円増の30万5660円、非常勤職員は同2461円増の11万9962円だった。
 全国1万3800カ所の施設・事業所を対象に調査、9400カ所、6900人分の回答を得た。報酬のプラス改定を受け、給与の引き上げを実施済みか予定しているのは43.7%だった。(2010/03/03-10:17)

2010.3.5キャリアブレイン
来年度事業計画を決定―日本精神科病院協会
 
 日本精神科病院協会(日精協)は3月5日、定期代議員会で来年度の事業計画を決定した。事業計画には、精神医療改革に関する政策的な検討と提言作りなど、42項目にわたる重点事業などを盛り込んだ。
 
 日精協は、政策や経済、病院の経営管理などを議論する各委員会から提起された項目を基に、来年度の事業計画を決定。このうち、重点事業に掲げているのは、▽厚生労働省の「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」の報告書(昨年9月)を踏まえた精神医療改革に関する政策的な検討と提言作り▽来年度の診療報酬改定への対応と12年度の医療保険と介護保険の同時改定に向けた情報収集や提言作成▽看護師の精神科病院就職のための研修会支援―など、計42項目。
 中でも、12年度に控えた医療・介護保険の同時改定を、精神科医療をめぐる大きな転換期と位置付け、慢性期医療の評価法や、認知症医療における精神科の役割の整理などを重点項目に挙げている。
 
 計画にはこのほか、一般事業として、▽24時間ケア付きの地域の受け皿作りなど、精神障害者福祉の拡充▽今年7月に施行後5年を迎える医療観察法の改正点や実施上の問題点についての提言―など、33項目を盛り込んだ。
 
更新:2010/03/05 15:25  キャリアブレイン

生活保護 免許取得の費用、条件を緩和 通勤費も前倒し
2010年3月2日21時21分朝日新聞

    
 厚生労働省は2日、生活保護世帯の高校卒業予定者が自動車の運転免許証を取得する費用の支給要件を緩和する方針を決めた。「貧困ビジネス」の温床とも指摘される無料低額宿泊所についても、別の宿泊所に移りやすくする。生活保護の実施要領を改正し、4月からの実施を目指す。
 
 運転免許証の取得費用は現在、生活保護世帯の就労支援として38万円を上限に支給されているが、採用条件として欠かせない場合などに限られている。今回の実施要領改正で、高卒予定者に対しては仕事上免許証が必要な場合などに対象を広げる。
 
 生活保護の受給者が新たに就職した際の通勤費については、前倒しを認める。今までは、初任給を受け取るまでは受給者が立て替えなければならなかったが、就職支度費として支給可能にする。
 
 無料低額宿泊所では、別の宿泊所に転居する際の敷金や引っ越し代についても支給することができるようにする。一方で、自治体が不適切な施設と判断した場合には、敷金などの支給はしない。
 
 無料低額宿泊所は、一部の事業者で受給者から高い利用料を徴収したり、劣悪な環境に住まわせたりする実態が問題となっている。厚労省では現在、法律による規制強化策を検討中で、それまでの間も対応する必要があると判断した。

2010.2.27毎日新聞
救える命・自殺未遂者を支える:第1部・現場/4 相次ぐ精神科病棟休止 /秋田

 ◇地域との連携に難題
 09年11月半ばの深夜、厚生連由利組合総合病院(由利本荘市)の夜間救急に、10代後半の男性がやってきた。統合失調症の病歴があり、自傷の恐れに加え、「殺したい」などと口走ったのを心配した家族が連れてきたのだった。
 
 病院はすぐ自宅に待機していたこの日の当番医に連絡。当番医が救急車で付き添って、精神科専門の秋田東病院(秋田市)に引き継いだ。
 
     ◆
 
 由利本荘市の救急搬送先の65%を占め、本荘・由利地域の医療の中核を担う同病院。しかし常勤の精神科医がいなくなり、08年1月に精神科病棟を休止した。平日の外来は秋田大からの派遣で対応するが、夜間は県の「精神科救急医療システム」に基づき、輪番制の当番精神科病院に受け入れてもらう。
 
 内閣府の自殺対策白書で示された世界保健機関の統計では、自殺者の6割以上がうつ病などの精神疾患を抱えていた。精神科救急は、自殺未遂者のケアとも密接な関係がある。
 
 本荘・由利地域は域内の受け入れ先が2病院のみで、秋田市か大仙市がほとんどだ。由利組合の菊地顕次院長は「当番を務める精神科以外の医師が輪番の病院と連携し、全体で機能を維持している」と話す。
 
     ◆
 
 県によると、精神科病棟がありながら休止している総合病院(09年4月現在)は由利組合のほか、鹿角組合、米内沢の2病院。地域の中核的な位置付けである平鹿、雄勝、仙北、秋田の各組合病院などは、精神科病院と機能分担し精神科病棟自体を持たない。
 
 自殺未遂者をフォローするためには、入り口となる中核病院の救急と地域医療との連携が不可欠となる。だが入り口が身近な地域でない場合、その後のケアにつなぐのは容易ではない。身体の病気から精神的な病気を引き起こす患者もおり、総合病院で同時に治療が必要な場合もある。
 
 「なんとか精神科病棟を復活してほしい」との声を住民や地域の診療所などから受ける菊地院長は「非常に危うい綱渡りをしている。このままでいいわけではない」と厳しい現状を吐露する。
 
     ◆
 
 自殺未遂をする人の多くは、精神科に行く前に別の診療科にかかっている。地域の診療所や病院内の別の科の医師が気づき専門医に橋渡しすれば、継続ケアにつなげられる。
 
 常勤医確保が困難な状況で、いかにして危険サインをいち早く察知できるか。菊地院長は言う。「人はいきなり自殺をするのではなく、必ず前兆がある。まわりの医師もそれを見逃さないようにすることが大事だ」=つづく
 
 ◇従事医師数に格差
 県によると、08年の精神科従事医師数は秋田周辺医療圏(秋田市、男鹿市など)が人口10万人当たり19・1人に対し、湯沢・雄勝5・5人▽大館・鹿角6・6人▽北秋田7・3人▽横手8・0人▽由利本荘・にかほ8・7人▽能代・山本9・8人▽大仙・仙北15・4人−−と地域差が大きい。一方、秋田大医学部付属病院の中永士師明医師によると、秋田市消防本部がまとめた県内で自殺を試みた人の救急搬送事例は05〜07年に1288例。人口10万人当たりでみると由利本荘の53・6が最も多く、次いで鹿角が51・4。だが両地区とも精神科医が常勤している総合病院は一つもない。
 
毎日新聞 2010年2月27日 地方版

【愛知】愛知県は城山病院の建て替えを計画(2010/2/26)建通新聞
 
■  愛知県病院事業庁は、県全体の精神科医療体制の中核病院として、先進的な専門医療を提供するため、「城山病院」を建て替える。2010年度は基本設計の発注を予定しており、当初予算案に約7200万円の事業費を盛り込んだ。
 改築後の施設は病棟、医療観察法病棟、診療管理棟、デイケア・体育館棟の4棟となる予定。機能は急性期治療対応、難治症例対応、回復期リハビリ対応のほか、新たに精神科救急対応、思春期対応、ストレス関連疾患対応を加え、病床数は300床規模。
 医療観察法病棟では、心神喪失などの状態で重大な他外行為を行った精神障害者を対応し、病床数は35床規模。
 所在地は名古屋市千種区徳川山町4ノ1ノ7。現在の場所で診療機能を継続しながら建替え工事を実施する。
 同病院は1932年に現在地に「愛知県立精神病院」として開設した。35年に100床(鉄筋コンクリート造2階建て延べ2359平方b)となり、47年に「愛知県立城山病院」に改称した。
 その後、東病棟、北病棟、中病棟、南病棟、デイ・ケアセンターなどが順次竣工し、現行の許可病床数は342床。2005年に外科を廃止し、精神科・神経科・内科・歯科の4診療科となった。
(2010/2/25)

2010.2.27読売新聞
心神喪失で不起訴から、責任能力認め懲役10年

 自宅で寝ていた母親(当時71歳)の胸を包丁で刺して殺害したなどとして殺人などの罪に問われた無職根本和彦被告(42)に対し、東京地裁は26日、求刑通り懲役10年の判決を言い渡した。
 
 根本被告を巡っては計4回の精神鑑定が実施され、結論が分かれていたが、田村政喜裁判長は「働く気力が沸かずに自殺を考え、母親らを道連れにしようとした動機は理解できる」などと述べ、完全責任能力を認めた。
 
 判決によると、根本被告は2007年12月、自宅1階の寝室で母親の胸を包丁で刺して殺害、兄にも10日間のけがを負わせた。
 
 捜査段階で行われた2度の鑑定で、根本被告は、「心神耗弱」「心神喪失」とされたため、東京地検はいったん不起訴とし、心神喪失者医療観察法に基づく審判を同地裁に申し立てた。しかし、審判での鑑定の結果、完全責任能力があったと判断されたため、08年7月、根本被告を起訴した。
 
 同地裁は、公判中、根本被告が裁判官の呼びかけに応じなくなったことなどから、4度目の鑑定を実施し、責任能力を認める鑑定書が提出されていた。
 
(2010年2月27日00時28分  読売新聞)

2010.2.23毎日新聞
損賠訴訟:措置入院中に男性死亡 県に賠償命じる−−地裁判決 /宮城

 仙台市宮城野区の精神病院で男性(当時30歳)が死亡したのは、県の「措置入院」に基づいて入院したのにかかわらず医師の適切な治療がなかったためとして、石巻市の男性の両親が、男性を入院させた県を相手に損害賠償など約7548万円の支払いを求めた訴訟の判決が22日、仙台地裁であった。畑一郎裁判長は「男性を速やかに総合病院へ転院させていれば、救命できたがい然性が高い」として約2558万円の支払いを命じた。
 
 判決によると、男性は06年4月に統合失調症と診断され、県が精神保健法に基づき精神病院に入院させた。その後、男性は医薬品投与の副作用で口腔(こうくう)内出血や湿疹(しっしん)を伴う「スティーブンス・ジョンソン症候群」(SJS)を発症し、同5月に死亡した。
 
 畑裁判長は、県の責任について「措置入院患者への治療行為は公権力の行使に当たる」と認定。担当医師についても「発熱や口腔内出血からSJSの可能性は予見できた。医師には投薬中止義務違反と転院義務違反があった」と指摘した。【鈴木一也】
 

毎日新聞 2010年2月23日 地方版
 
 
2010.2.23河北新聞
措置入院訴訟 宮城県の責任認定 2560万円支払い命令
 仙台市宮城野区の民間病院に措置入院させられた石巻市の男性=当時(29)=が死亡したのは処方された薬の副作用が原因だとして、両親が措置入院を決めた宮城県に約7550万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁は22日、県に約2560万円を支払うよう命じた。
 
 畑一郎裁判長は「医師は薬の説明書にある注意に従い、副作用の可能性がある症状が出た段階で直ちに投与を中止すべきだった」と判断。さらに「専門医がいる総合病院に転送させる義務があった」と述べた。
 
 地裁は2007年12月、病院の責任を否定し「措置入院者に対する病院の医療行為は県の公権力の行使に当たり、公務員の職務行為と解される。賠償責任を負うのは医師や病院ではなく県だ」とする中間判決を出した。
 
 判決によると、男性は統合失調症を患い06年4月、県の決定で措置入院し、向精神薬の投薬治療を受けた。歯痛を併発して鎮痛剤を服薬した後、薬の副作用で全身の皮膚がただれ、翌月に中毒性表皮壊死(えし)症のため転院先で死亡した。
 

2010年02月23日火曜日

2010.2.23神戸新聞
自殺食い止めへ一般開業医と精神科医連携 神戸
 
 全国の自殺者が12年連続で3万人を超える中、神戸市医師会は3月から、一般のかかりつけ医と精神科専門医の連携を緊密にする「神戸G‐Pネットワーク」を稼働させる。自殺の大きな要因となっているうつ病などをかかりつけ医が早期発見し、専門医や総合病院と連携し、自殺を食い止めるのが狙いだ。
 
 兵庫県内では1998年、自殺者が1000人を超えて以降、高止まりの傾向が続いている。2008年、1300人を切ったが、09年は再び増加し、1354人になった。このため、同市医師会は08年12月から、神戸市や県精神科病院協会、県精神神経科診療所協会などとともに検討委員会を設置し、同ネットワーク設置を決めた。
 
 同医師会によると、情報を集約するセンターを、精神科専門病院内に設置。精神保健福祉士が、一般のかかりつけ医と専門医のつなぎ役を務め、患者の治療状況などについて追跡調査もする。
 
 具体的には、同医師会会員の1500開業医を受診した患者に、幻覚、妄想などの訴えがある▽自殺念慮が強い‐などの症状が出た場合は、同センターを通じ計20カ所の専門診療所、専門病院に患者の容体や生活状況を記した「G票」を送り、患者を紹介する。また、約130カ所はうつ病などの早期治療を施す「登録かかりつけ医」に指定する。
 
 専門医は患者を治療するとともに、病名や治療計画、薬の処方内容を記した「P票」を作り、かかりつけ医と情報を共有。そのほかの病気との合併症がある場合などは総合病院とも連携する。
 
 同医師会の近藤誠宏理事(55)は「将来的には、産業医や企業、学校にもネットワークに入ってもらい、県内全域の取り組みにしたい」と話す。
 
 同医師会は、同ネットワークの稼働に合わせ、3月20日午後2〜4時半、同市中央区橘通4の市医師会ホールで「神戸自殺総合対策拡大会議」を開き、民間団体との連携を考える。入場無料。定員100人。申し込みは同12日まで。神戸市医師会TEL078・351・1410(高田康夫)
 
(2010/02/23 08:35)

2010.2.25読売新聞
精神疾患の調査報告会
 3月4日午後1時、東京・世田谷区の成城ホール。統合失調症患者らの家族1485人の調査結果をもとに、家族支援のあり方を考える。無料。問い合わせはNPO法人世田谷さくら会((電)03・3308・1679)。
 
(2010年2月25日 読売新聞)

思春期の心の病 県が治療専門科
2010年02月22日朝日新聞
 
  摂食障害や引きこもり、うつなど、思春期に目立つ心の病の治療にあたる専門科が、県立精神医療センター芹香(きんこう)病院(横浜市港南区)に設置されることになった。16歳から20歳前後の患者を対象にする。2014年度のスタートを目指し、外来や専門の病室も完備する予定という。
 
(木村尚貴)
 
  何度も手を洗うなどの強迫性障害や、摂食障害、うつ病、手首を切るなどの自殺未遂といった精神疾患の症状は早ければ小学校の低学年からあらわれ、その数は増加傾向にあるとされる。思春期の患者の症状は複雑で、大人と一緒の治療によってかえって症状が悪化するケースもあり、専門家の間では思春期の心の病に対してはきめ細やかな対応が必要と指摘されている。
 
  だが、思春期の心の病のケアについて、県内では県立こども医療センター(同市南区)が15歳以下を対象にした専門科を開くなどしているだけで、16〜20歳前後の患者は大人と同じように通常の精神科にかかっているのが実態だった。県病院局県立病院課によると、採算が取れないため民間病院に専門科が設置されることはほとんどなく、県内の民間病院での治療例も「把握していない」という。
 
  こうした背景から、県は14年度の新病棟開設に向けて整備が進んでいる精神医療センター内に専門科を設置する方針を決め、新年度から設計に着手する。
 
  専門科は患者一人一人にきめ細かい治療をするため、個室中心の病床を30床近く作り、外来も用意する。外来では、大人の患者と診療時間をずらすなどの配慮もする。
 
  診療報酬上の「児童・思春期精神科入院医療管理加算」の対象施設としての基準を満たすことを念頭に置き、精神保健福祉士や臨床心理技術者など専門スタッフを配置。入院治療中に学校の勉強をフォローする「学習室」もつくる。
 
  同課は「思春期特有の心の病の治療に対するニーズにこたえたい」としている。
 

精神障害者の全県ネットワーク設立へ 有志が準備
2010年2月19日(金)信濃毎日新聞
 
 
 県内の精神障害者が4月、障害者自身でつくる当事者会や個人を結ぶ「県ピアサポートネットワーク」を立ち上げる。これまで家族会や作業所などの職員が主体となる組織はあったが、障害がある人自身の全県的ネットワークはなかった。各地の当事者会の連携を深めるとともに、作業所などに通っていない個人にも参加を呼び掛け、悩みや情報を共有していく。
 
 県精神保健福祉センター(長野市)によると、県内には当事者会が少なくとも10はある。当事者会の連絡会をつくりたいとの声が寄せられたことから、センターが検討を呼び掛けた。
 
 集まった10人余が昨年秋、設立に向けた準備会合を始めた。ネットワークをつくり、情報の交換や、障害への理解を深める啓発活動などに取り組むことを決めた。
 
 精神障害者らでつくるNPO法人「ポプラの会」(同市)の事務局で18日に開かれた5回目の会合には12人が参加。同会事務局長の大堀尚美さんが代表に内定した。
 
 ネットワーク設立の背景には当事者の活発な活動がある。ポプラの会は当事者による相談業務のほか、英会話やヨガ教室、高校に出向いて体験を語る活動などに取り組んでいる。県内の作業所などでつくる組織「せいしれん」のセミナーは、障害がある人が実行委員になり毎年開かれている。
 
 一方、当事者会のない地域では悩みを抱えても話せる場がない、情報が行き渡りにくいといった課題があるという。ネットワーク設立には、当事者会を地域に増やし、患者の孤立を防ぐ狙いもある。
 
 「ポプラの会で活動することで元気をもらい、人の役に立てる幸せを感じた」と大堀さん。「当事者同士だから話せることもある。互いに支え合いながら自分の得意なことをしたり、やりたいことを実現させたりして、その人らしく暮らせるようにしたい」。
 
 副代表に内定した男性(39)は「身体・知的と同様に精神障害者にも鉄道などの運賃割引が実現されるよう活動したい」と、活動を通じて障害への理解が深まることを期待している。
 
 4月下旬にネットワークの発足式と交流会を予定している。発足式などで入会を募る計画だ。

2010.1.30毎日新聞
累犯障害者:出所後の自立支援 県、来月に定着センター開設へ /宮城
 ◇「福祉とつなげ再犯防止」

 知的障害や高齢の受刑者の出所後の自立を促すために、県は2月1日に「県地域生活定着支援センター」を開設し、社会福祉施設への入所などさまざまな福祉サービスを利用できるよう支援する事業を始める。知的障害を持つ受刑者は出所しても住居などの生活拠点がなく、福祉サービスを受ける行政手続きも知らないまま自立した生活を送れずに再び犯罪を繰り返すケースが多く、「累犯障害者」として社会問題化している。宮城県の開設は全国で11番目。立岡学センター長(36)は「福祉とつなげれば再犯は防げるはず」と意気込んでいる。【比嘉洋】
 
 県社会福祉課によると、支援センターの運営は、立岡氏が理事長を務めるNPO法人「ワンファミリー仙台」に委託する。同NPOは02年に路上生活者の就労や住宅支援活動を開始。09年2月には路上生活者を一時的に保護する「シェルター」の運営を始めたところ、これまでに約100人が利用し、うち5人が知的障害者だったという。
 
 この5人のうち4人は前科があった。累犯障害者の多くは社会や人とのつながりが切れているためアルコールやギャンブルに依存しやすくなり、定職に就けず、所持金がなくなると犯罪を犯す「負の連鎖」に陥っているという。立岡氏はシェルターの運営を巡って県と話し合いを続けている中で、今回の支援センターのことを知り、事業に乗り出すことを決めた。立岡さんは「福祉関係者とのネットワークを広げることで、より良いサービスを提供できる」と語る。
 
 支援センターのスタッフは5人。宮城刑務所に非常勤で勤める社会福祉士や精神保健福祉士と、元保護観察官が仙台保護観察所などと連携し、障害者手帳の発給など受刑者に必要な福祉のニーズを出所前から把握する体制を整える。さらに、ワンファミリーを中心に出所後の受け入れ先となる授産施設や養護老人ホームと連携し居住地を確保する。
 
 事業費は国庫で全額負担。県は約1700万円を10年度当初予算に計上する方向で厚生労働省と調整している。
 
 ◆「拒否」の恐れも
 
 しかし、支援センターの開設後も、「元犯罪者」との理由で受け入れを拒否する福祉施設が相次ぐ恐れもある。仙台保護観察所によると、宮城刑務所からは年間20人ほどの知的障害者が出所する。保護観察所側は「犯罪は軽微な場合も多く、受け入れ先には事件の内容をできるだけ丁寧に説明し理解を求めたい」としている。
 
 受け入れ先の確保に加え、別の課題も浮上している。厚労省の狙いと裏腹に支援センターの開設が全国で足並みがそろわなかったため、他県の刑務所を出所した元受刑者が支援センターのある宮城県への居住を希望する可能性もある。国が負担する事業費には支援センターの事務所の家賃などが含まれていないため、事業の受託を見送るNPOや社会福祉法人は多い。県社会福祉課は「先に開設した自治体ほど業務の負担が重くなる可能性もある」と指摘する。
 
 法務省のまとめによると、08年に入所した全国の受刑者2万8963人のうち237人(0・8%)が、医師により知的障害者と診断された。このうち再犯者は155人(65・4%)に上っている。
 
毎日新聞 2010年1月30日 地方版
 

性暴力を問う〜被害者たちの叫び 最新記事
 
<8>「社会変える」勇気の一歩2010年2月20日
<7>ひとりぼっちと思わないで2010年2月19日
<6>裁判員制に懸念と期待2010年2月18日
 

<8>「社会変える」勇気の一歩
私も顔を上げて生きる
 何かを訴えるような目で見つめる女性、少年時代に性虐待を受けた場所でむせび泣く青年、バラが彫られた腕に残るリストカットの跡――。写真一点一点に、被写体になった性暴力被害者のプロフィルが添えられている。
 
 米国在住のフォトジャーナリスト、大藪順子(のぶこ)さん(38)は、性暴力のむごさと、生き抜く被害者の力強さを、カメラを通じて伝え続けている。
 
 新聞社のカメラマンだった1999年、イリノイ州の当時の自宅で強姦(ごうかん)に遭った。うつ状態やパニック障害に苦しむ日々。「レイプで人生を終わらせたくない」。2年後、米国やカナダで撮影を始め、70人の素顔に向き合った。日本でも、写真展や講演会で体験を語る。
 
 2006年4月、故郷の大阪で開いた講演会。大藪さんは、聴衆の中にいるだろう〈声なき被害者〉に呼びかけた。
 
 「自分を責めないで。あなたは犠牲者じゃなくて、サバイバーなんです」
 
 苦難を乗り越え、生き抜いた人をたたえる意味が込められた言葉、サバイバー。
 
 会場で、兵庫県に住む響子さん(仮名)(31)が涙を流しながら聞いていた。
 
     □■□
 
 響子さんは13歳の時、警察官を名乗る男に、民家の陰に連れ込まれ、性器を触られた。怖くて誰にも言えず、胸の奥に封じ込めた。
 
 それからは、度々体調を崩し、学校を休んだ。何度も死にたいと考える。出会い系サイトで知り合った男たちとの関係に依存もした。「私は、どこかおかしい」。でも、自分では理由が分からなかった。
 
 記憶の扉が開いたのは、26歳の時。ふと手にした本に「性的虐待」という言葉を見つけ、突然、13年前の被害がよみがえった。本にあったトラウマの症状が、自分に当てはまっていた。あれが私の人生を狂わせてきたのか――。
 
 過去を克服するために、被害者の自助グループに参加し、思いを打ち明けた。フラッシュバックと闘い、わき上がる怒りと「犯人から逃げなかった自分が悪い」という自責の念に、もがいた。
 
 大藪さんの講演を聞いたのは、そんな時だった。
 
 「私も顔を上げて生きる」
 
 07年11月、自らの企画で、仲間とともに大藪さんの写真展を開いた。さらに一歩を踏み出そうと、春からは、1年間の滞在予定でカナダに渡る。
 
 「過去は消せない。それでも、生き延びた自分に誇りを持ちたい」
 
     □■□
 
 大藪さんと、「性犯罪被害にあうということ」の著者、小林美佳さん(34)。実名で被害を公表した2人の女性は昨夏、支援者らに後押しされ、「性暴力をなくそう」キャンペーンを始めた。
 
 啓発用の冊子には、こう記した。
 
 〈みんなが性暴力の本当の姿を理解し、「あなたが悪いのではない。悪いのは暴力をふるった側だ」と言ってあげられるようになることが、被害者が声をあげられる条件です。そして、この犯罪を根絶する第一歩なのです〉
 
 2人は口をそろえる。
 
 「今、社会が耳を傾け、知ろうとしてくれている、と肌で感じる。この機会を逃してはいけない」
 
(おわり)
 社会部・岸辺護、久場俊子、辻阪光平、佐々木栄が担当しました。
 
(2010年2月20日  読売新聞)
 
 
 
<7>ひとりぼっちと思わないで
「命守る」支援者も連携
 
 
(上)被害者の相談に乗るヴィスコの森さん(下)SACHICO設立に尽力する加藤さん 岡山市の犯罪被害者支援団体「VSCO(ヴィスコ)」専務理事の森陽子さん(60)には、忘れられない少女がいる。
 
 自宅で同級生から強姦(ごうかん)の被害に遭った中学1年生。2006年秋、母親からの依頼で初めて対面した。カウンセラー歴を積んできたが、「最近の子はこんな感じなのかな」と戸惑った。取り乱す様子もなく、淡々として見えたからだ。
 
 しかし、少女は家出や自傷行為のリストカットを繰り返すようになった。連絡を取り続け、やんわりと精神科の受診を勧めてもみたが、「私は弱くない」と嫌がった。
 
 2年後、家出先で睡眠薬を飲み、亡くなった。死因はショック死。15歳だった。
 
 苦しみの深さに気づけていたら――。以来、「見えない奥底の傷もくみ取れるようになりたい」と願い続けてきた。
 
     □■□
 
 犯罪被害者保護法成立から10年。性犯罪では、告訴期限(6か月)の撤廃、集団強姦罪の新設、事件直後の感染症検査や避妊措置の公費負担などが進められてきた。
 
 しかし、お茶の水女子大の戎能(かいのう)民江副学長(法女性学)は指摘する。「性暴力で仕事や安心できる家を失った人への公的支援は、なきに等しい。医療・精神面をケアする専門的な受け皿も足りない。社会が議論を避けてきたからだ」
 
 そんな「壁」に立ち向かい、森さんら25人のスタッフは日々、奔走している。
 
 自宅で襲われた女性が公営住宅に転居できるよう、自治体にかけあう。通院や、事情聴取の行き帰りに付き添う。商店街で募金活動をし、精神科の受診費用などを支給する独自の基金も設けた。
 
 「大切な命をもう失いたくない」と森さん。「DV(家庭内暴力)もセクハラも、見向きもされない時代があった。実情を訴え続ければ、社会はいつか受け止めてくれる」
 
     □■□
 
 医療関係者も動き始めた。4月、阪南中央病院(大阪府松原市)内に、全国初の総合支援窓口「性暴力救援センター・大阪(SACHICO)」が誕生する。
 
 女性支援員が24時間、SOSの電話を受け、寄り添う。外来とは別に、専門の待合室や診察・面談室を設け、精神科医や弁護士にもつなぐ。必要なサポートを一か所の窓口で提供する仕組みだ。
 
 「女性の一生を診る医師として、性暴力の問題は避けて通れない」。センター準備室長の加藤治子さん(60)は、同病院の産婦人科医として長年、勤務する中で、そう思い続けてきた。心身の早い回復には初期対応が重要だが、一人で悩んだ末、心の傷が深くなってから来院する人も少なくない。専門家が連携し、「被害者のための場所」をつくろう、と呼びかけた。
 
 「置き去りにされてきた被害者のために、まず旗を立てたい。そして『ひとりぼっちと思わないで』と伝えたい」
 
 旗の下には今、支援員希望者36人が集う。
 
(2010年2月19日  読売新聞)
 
 
 
<6>裁判員制に懸念と期待
抵抗できずは「合意」じゃない
 「裁判員裁判の対象から、性犯罪を除いてほしい」
 
 昨年10月、日本弁護士連合会の犯罪被害者支援委員会が開いた意見聴取の場で、東京都在住の美月さん(仮名)(29)が訴えた。
 
 9年前、3人組の男に車に押し込められ、強姦(ごうかん)の被害に遭った。「抵抗すれば殺される」。防衛本能から従順を装った。刑事告訴はしていない。
 
 「抵抗できなかったことが、合意と取られる恐れが少しでもあるのなら、心配です。今の法制度では、被害者が守られている、と実感できません」
 
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 日本では61年前の最高裁判例が今も生きている。強姦罪の成立には、「抵抗が著しく困難になるほどの暴行・脅迫」が必要とされる。
 
 被害者側の行動がこと細かに突き詰められ、「叫ぶなど激しい拒絶がなかった」と、無罪になった事件もある。
 
 中京大法科大学院の柳本祐加子准教授は「『嫌なら大声を上げて逃げるはず』『知人なら合意があるだろう』といった〈強姦神話〉は根強い。合意を巡って、被害者の性的な過去が引き合いに出されることもある。裁判員に女性が落ち度を責められ、追及される場面が出てこないか」と危惧(きぐ)する。
 
 2008年10月、国連規約人権委員会は、日本政府に、強姦罪の適用範囲をもっと広げ、被害者に「抵抗」の証明を課す負担を取り除くべきだ、と勧告した。米国では、法廷で被害者の性的過去を聞くことを制限するレイプ・シールド法があるが、日本にはない。
 
□■□
 日弁連での会合では、別の被害者、岡山県のゆかりさん(仮名)(28)が、裁判員制での審理に賛成意見を述べた。
 
 「社会の目が性犯罪の深刻さに向き始めたのに、除外されたら、被害者は、また闇に取り残されてしまう」
 
 同僚の男からの被害をきっかけに出社できなくなり、1か月足らずで解雇された。社会への不信を抱えていたが、男が準強姦罪に問われた公判では、泣きながら書いた意見陳述書の全文を、裁判長が読み上げてくれた。
 
 思いに耳を傾けてもらえたことに、心に日が差す思いだった。裁判員にも被害者の声が届くのなら――。
 
 裁判員裁判で扱われる事件のうち、2割を性犯罪が占める。これまでに審理された性犯罪事件で被害者本人が別室からの「ビデオリンク方式」などで意見陳述したケースでは、裁判員から「生の声に心が痛み、気持ちが伝わった」との感想が聞かれた。
 
 「裁判員の理解が進み、少しでも被害者が溶け込める社会になれば」とゆかりさん。一方、美月さんは「裁判員にアピールする“道具”として、嫌でも引っ張り出されるようにならないか」と心配する。
 
 〈市民感覚〉への、懸念と期待が交錯する。
 
(2010年2月18日  読売新聞)


性暴力を問う〜被害者たちの叫び 最新記事
 
<5>出社できず解雇、困窮2010年2月17日
<4>不用意な言葉で2次被害2010年2月16日
<3>よみがえる記憶と闘う2010年2月15日
<2>私たちを置き去りにしないで2010年2月13日
<1>実名告白 2000人つなぐ2010年2月12日
 

<5>出社できず解雇、困窮
これからどうすればいいの
 「このまま休むようなら、辞めてもらわざるをえない」
 
 2008年3月。会社に呼び出された岡山県在住のゆかりさん(仮名)(28)は、信じられない思いで社長の言葉を聞いた。「うちは母子家庭です。困ります」。何度も訴えたが、手続きは進められた。
 
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 その1週間前、同僚の男に「現場を手伝って」と言われて車に同乗し、意識がもうろうとしたところを襲われた。車から逃げ、警察に届けたが、悪い夢のようだった。
 
 後になって、直前に男から手渡され、「眠気覚まし」と思って飲んだ薬が、睡眠薬だったと知った。
 
 誰とも会いたくない状態が続き、部屋に引きこもった。「ママ、どっか痛いん? 大丈夫か?」。泣いてばかりいると、小学生の息子が心配してくれた。でも、「自分は汚れてしまった」と感じ、抱きしめてやることもできなかった。
 
 会社には、男から勤務中に受けた被害を訴え、「出社できない」と伝えていたが、1か月足らずで辞めさせられた。一方、男は準強姦容疑で逮捕されるまでの2か月間、何食わぬ顔で出勤。会社側は事件を知っていたのに――。
 
 「社会ってこんなものなの?」。食欲がなくなり、眠れない日が続いた。自殺さえ考えたが、「息子を残しては逝けない」と踏みとどまった。
 
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 生活がある。心にむち打ってハローワークに通った。
 
 「辞めた理由は何ですか」。失業手当の申請時に聞かれた。「解雇された」と訴えたが、信じてもらえない。手続きに必要な会社作成の離職票では、自主的に退職したことになっていた。思い切って、性被害が原因、と明かしたが、気まずそうにされただけだった。
 
 その後は、退職理由を「セクハラ」にした。ある日、職探しの窓口で、女性職員から「私も前の職場でセクハラされたけど、バネにしてきた。あなたも頑張って」と明るく言われ、たまらず言い返した。
 
 「あなたの被害とは違う。一緒にしてほしくない」
 
 なぜ辞めたのか、聞かれるのがつらい。ハローワークまで行っても、ドアの前で足がすくむようになった。
 
 再就職先は今も決まっていない。失業手当はとうに切れた。貯金も、もう底をつく。暮らしに不可欠な車の所有が認められないと知り、生活保護はあきらめた。
 
 「これからどうすればいいの」。見えない糸に縛られ、一歩も動けないと感じる。
 

 生活まで脅かす事件の影響。法務省による犯罪被害者の追跡調査(1999年)では、強姦事件の被害者の4人に1人が「引っ越さなければならなかった」、6人に1人が「仕事や学校を続けられなくなった」、「生活が苦しくなった」と答えた。
 
(2010年2月17日  読売新聞)
 
 
 
<4>不用意な言葉で2次被害
虐待されている気分だった
 
 昨年11月、性犯罪被害者の支援をテーマに開かれたフォーラム。家族など身近な人からの2次被害についても話し合われた(岡山市内で) 数年前、自宅で強姦(ごうかん)事件に遭い、今なお、忌まわしい記憶と闘う久美子さん(仮名、20歳代)は、当時の捜査を思い返し、こう表現する。
 
 「精神的に虐待されている気分でした」
 
 あの日、男が逃げた後110番し、放心状態で玄関先にうずくまっているところへ、警察官が駆けつけた。風呂上がり直後の事件で、髪はぬれたまま。殴られた顔は紫色に腫れ上がっていた。しかし、着替えも治療も後回しで、現場検証が始まった。
 
 「写真を撮ります」。警察官に求められるまま、襲われた場所を震えながら指さした。刑事が加害者役になり、マネキン相手に暴行を再現する写真にも一緒に写るよう言われた。みじめさが募った。
 
 誰かにそばにいてほしい一心で、知人を呼んだが、被害の詳細を明かすつもりは、まだなかった。それなのに、「妊娠していたらいけないから――」という警察官の不用意な一言ですべて知られてしまった。不信は今も消えない。
 
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 性暴力の被害者が事件後も傷つけられる「セカンドレイプ(2次被害)」。捜査の過程だけで起こるものではない。
 
 埼玉県に住む女性(22)は、飲み会で知り合った男に強引に自宅に連れ込まれ、体を触られた。幼少期からの性被害もよみがえり、自殺を考えるほど思い詰めた。「この苦しみをみんなに知ってもらって、被害を減らせれば」。そう思い、体験をインターネットのブログにつづった。
 
 ある日、批判コメントが集中する“炎上”が起きた。
〈いい事されて良かったね〉
〈しょせん未遂〉
〈ブログのアクセス(閲覧)数を上げたいだけでしょ〉
 
 書き込みの欄に、言葉の刃(やいば)が並んでいた。
 
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 横山ノック大阪府知事(当時)が1999年の知事選中、運動員の女子大生にわいせつ行為をしたとして強制わいせつ罪で有罪判決を受けた事件。告訴した女子大生をサポートした市民団体「性暴力を許さない女の会」の栗原洋子代表は「初めて彼女に会った時、ずっと泣いていて、重圧につぶれかけていた」と振り返る。女子大生は知事に「真っ赤なウソ」と公然と非難され、週刊誌には写真を載せられた。好奇の目にさらされ、大学も変わらざるをえなかった。
 
 法廷では実名で呼ばない、証言の際には、ついたてを置く――。この事件の公判で、女子大生の弁護団が求めた「異例の措置」は今や、被害者の当然の権利になった。
 
 しかし、被害者の支援活動を続けてきた栗原代表は言う。「確かに制度面は前進したかもしれない。でも、被害を訴え出た女性が『そんな服を着ているからだ』『なぜ逃げなかったのか』などと責められ、孤立する現状は、10年たっても変わっていません」
 
(2010年2月16日  読売新聞)
 
 
 
<3>よみがえる記憶と闘う
いつになったら楽に
 
 
「社会に訴えたいことは?」。記者の質問に、関東在住のある被害者が、しばらく考えた後、書き残してくれた言葉 ベッドに横になり、何気なくテレビのバラエティー番組を見ていた時だった。
 
 お笑い芸人が、おどけた様子で、急に脇から画面に現れた。その瞬間、久美子さん(仮名、20歳代)は、思わず身をすくめた。慌ててふとんに潜り込み、手探りでテレビのリモコンを探す。電源を切った手が震え、動悸(どうき)がなかなか治まらない。
 
 「あの日」から、すべてが変わった。
 
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 襲われたのは数年前。深夜の自宅アパートだった。風呂上がりに脱衣所で髪をふき、ふと顔を上げると、覆面の男が物陰から飛び出してきた。「騒ぐな、殺されたいのか」。怖くて声も出なかった。
 
 自宅は、忌まわしい強姦(ごうかん)の記憶を呼び起こすだけの場所になった。「泥棒が入った」ことになっていたが、近所の人から「大丈夫だった?」と声を掛けられるたび、びくびくした。
 
 耐え切れず引っ越したが、何も変わらない。ミシッという家鳴りが、男の足音に聞こえる。「絶対また侵入してくる」。何度、鍵を確かめても安心できない。目をつむると、覆面の男が殴りかかってくる姿が浮かび、眠れない夜が続いた。
 
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 <生きる気力をなくす>
 
 <記憶が抜け落ちる>
 
 <自分を責める>
 
 性暴力の被害者は、特に精神的な後遺症が重いと言われる。記憶や恐怖が鮮明によみがえり、パニックになる「フラッシュバック」に苦しむ人も多い。加害者と同じ服の色、コロンの香り、車のエンジン音――。何でも引き金になる。
 
 久美子さんの場合、それは「目の前に突然現れる男性」だった。途端に恐怖で足がすくむ。商品棚の陰から人が出てくるのが怖くて、近くのスーパーにも、一人で行けなくなった。
 
 半年後、男は逮捕された。一人暮らしの女性宅を狙い、同様の犯行を重ねていた。
 
 「負けたくない」と、勇気をふるって裁判を傍聴し、男の素顔も見届けた。しかし、今もフラッシュバックが起きては、振り出しに戻る日々が続く。「いつになったら楽になれるの」と途方に暮れる。
 
 何も知らない両親に悟られぬよう気丈に振る舞っているが、後ろめたい。将来、誰かと結婚しても、打ち明けられるかどうか。「何年か後、刑務所を出た男は、何食わぬ顔で日常に戻れるかも知れない。でも私は、死ぬまで一人で闘わなくてはならないんです」
 

 「思い出すのがつらくて、昨日は一睡もできなかった」。取材後、久美子さんは記者にこう打ち明けた。「それでも、被害者の苦しみを少しでも知ってほしかった」と話した。
 
(2010年2月15日  読売新聞)
 
 
 
 
 
<2>私たちを置き去りにしないで
社会に求める「理解」
 

全国から講演の依頼が相次ぐ。「被害者がきちんと伝えれば、周囲もわかってくれる。そう信じて活動していきたい」と小林さん(東京・千代田区の日比谷公園で)=源幸正倫撮影 2009年9月、青森地裁。性犯罪を裁く全国初の裁判員裁判が開かれた。「性犯罪被害にあうということ」の著者、小林美佳さん(34)も、法廷に足を運んだ。被害者の一人として、裁判の実相を知っておきたいと思ったからだ。
 
 2件の強盗強姦(ごうかん)罪などに問われた被告の男。入廷する姿を目にした途端、傍聴席で体の震えがとまらなくなった。
 
 <Aさんの背後から包丁を突きつけ、「言うことを聞け。殺すぞ」と言って脅し……>。検察官の冒頭陳述が、自らの記憶と重なる。男の弁明を聞くうち、憤りと悔しさがこみ上げた。たまらず法廷を飛び出し、廊下で泣き崩れた。
 
 翌日、被害女性2人が別室からの「ビデオリンク方式」で意見陳述した。〈一生傷を負ったまま生きなくてはいけないなら、いっそ死にたい〉〈許せない。女性として一番ひどいことをされた〉。一言一言が胸に刺さった。「男と同じ建物内にいることさえ、耐えられないはずなのに」
 
 判決は懲役15年。2人の声が裁判員に届いたのか、求刑通りの厳刑だった。
 
 それでも、小林さんは思う。「いくら刑が重くなっても、心の傷は消せない。振り絞る思いで語った2人の葛藤(かっとう)、声も上げられない被害者たちの苦しみを、置き去りにしないでほしい」
 

 内閣府の08年調査では、無理やり性交された経験のある女性の62%が「恥ずかしい」「無駄と思った」と誰にも言うことができず、警察に相談したのはわずか4%だった。
 
 警察庁は10年度、性犯罪被害者対象の「ワンストップ支援センター」を試験導入する。女性の負担を減らすため、病院に民間の支援スタッフと専門の警察官が常駐。事情聴取と診療、カウンセリングを1か所で行う。
 
 だが、被害者は「まず捜査ありきなら、敷居は高いまま」と不安を漏らす。精神科医の小西聖子(たかこ)・武蔵野大教授は「被害を打ち明けづらいことが、性暴力の特徴。水面下の被害者をすくい上げ、支える意識が社会全体に必要だ」と指摘する。
 

 小林さんと交流する2000人の「仲間」も、警察に届けたのは1%に過ぎない。小林さんは「普通に生活することさえどんなに大変か、わかってもらえなければ、一歩を踏み出せない」と語る。
 
 社会に何を求める?
 
 世間との溝を感じた時、仲間にメールで問いかける。
 
 あったかい気持ち
 
 聞いてくれる人
 
 理解
 
 〈声なき被害者〉の叫びが、小林さんの背中を支える。
 
(2010年2月13日  読売新聞)
 
 
 
 
 
<1>実名告白 2000人つなぐ
「なぜ隠れなきゃいけないの」
 
 
毎日のようにメールで寄せられる被害者の声に向き合う小林さん。「込められた思いを精いっぱい受け止めたい。そして返したい」 小林美佳さん(34)(東京都)は毎晩、勤務先から帰宅すると、パソコンと向き合う。
 
 画面に浮かぶ新着メール。
 
 私も性暴力の被害者です
 誰も分かってくれない
 死にたい
 
 同じ苦悩を味わった女性たちのつぶやき。<話してくれてありがとう>。一つずつ、思いを巡らせながら返信を終えると、午前3時を回っていることもある。
 
 2008年4月、「性犯罪被害にあうということ」を著し、実名で体験を公表した。以来、ホームページに掲載したアドレスに、多くの女性たちからメールが届く。
 
 初めて打ち明けます
 言えてよかった
 
 勇気を振り絞っただろう、告白に胸が詰まる。「行き場を失って、ここにたどり着いたんだと思う。私にできるのは、精いっぱい受け止めること」
 
 こうして、つながった「仲間」は、2000人を超えた。
 
□■□
 00年8月、道を尋ねてきた2人の男に車に押し込まれ、強姦(ごうかん)された。カッターナイフの刃を出し入れする音、スピーカーから響く大音量、恐怖で凍りついた体――。
 
 20分後に解放された時、24年かけて築いた自分のすべてが崩れ去った、と感じた。
 
 〈汚れた体〉〈生け贄(にえ)〉――。自らを蔑(さげす)む言葉ばかりが頭を巡る。あの車に似た車や大きな音に出くわすと、震えがとまらない。記憶が途切れ、折り返しの電車で何往復もしていたことがあった。体重は13キロ減った。犯人の行方はわからない。
 
 迷った末、身近な人に打ち明けた。「お前だけがつらいんじゃない」「誰にも言わないで」とさとす家族。「ごめん」「何も言えない」と困った顔をする友人。腫れ物に触るような態度が、「黙っていろ」という圧力に思えた。周囲とすれ違い、気持ちが荒れた。最初は受け入れてくれていた恋人も、「支え切れない」と去っていった。
 
 2年後、事情を知る別の男性と結婚。「マイナスの人生を一気にプラスに」と願ったが、夫に体を求められるたび、こっそり吐いた。3年で離婚した。
 
□■□
 転機は、インターネットで見つけた、性暴力の被害者が集う掲示板だった。
 
 「顔見知りに」「薬を使われた」「就職面接と偽られた」――。あまりの多さに驚いた。
 
 同年代で、事件に遭った時期も近い「りょうちゃん」の書き込みを見つけた。冷静に意見を述べ、ほかの被害者にも的確にアドバイスしている。
 
 思い切ってメールすると、すぐに返事が来た。〈わかるよ〉の一言に、心から癒やされ、やり取りを重ねた。
 
 思い通りにならない心身のつらさ、被害を隠して生きるやましさ、周囲に理解されない苦しみ……。すべて分かち合えた。
 
 仲間の輪が広がるにつれ、共通して抱える〈生きづらさ〉が見えてきた。「悪いのは被害者じゃないのに。いつまでも隠れていなきゃいけないのか」。誰かが立ち上がって声をあげないと、思いは伝わらない。実名で、自らを語る覚悟を決めた。
 
□■□
 実名手記への驚きと反響は大きく、小林さんが講演やシンポジウムで発言する機会も増えた。
 
 人前で話すたび「美佳さんって強いんですね」と言われる。そうじゃないのに、と恥ずかしくなる。
 
 今でも壇上で涙がとまらなくなり、パニックに襲われる。体験を語った翌日はぐったりする。それでも活動を続けるのは、そこでまた、仲間と言葉を交わし、つながれるから。
 
 「一人でも多くの被害者の声を聞きたい。そして『あなたの気持ち、わかるよ』『あなたの存在は尊いんだよ』って言ってあげたいんです」
 
(2010年2月12日  読売新聞)

障害者、就農で活路を
2010年02月18日朝日新聞
 
滑川町の農場でのブドウ栽培に向けた作業=昨年8月、けやきファーム提供
 
◇関東での事例報告 県内でも取り組み/耕作放棄地利用も

 障害者の就労の場として農業を活用する動きが全国的に広がっているとして、関東での事例が17日、「農業分野における障害者就労セミナー」(関東農政局主催)で発表された。増加する耕作放棄地の新たな利用法としても注目され、県内でも取り組む団体がある。
 
   ◇
 
 「一人ひとりに合った支援が必要。器具などを工夫し、障害者の能力を引き出す環境を」。この日、さいたま市中央区のさいたま新都心合同庁舎で開かれたセミナーで、厚生労働省障害福祉課の武田牧子・地域移行支援専門官が述べた。千葉県の農場で障害者を雇っている企業も「才能に障害はない」と、障害者が様々な農作物を作っていることを紹介した。

 県農地活用推進課によると、県内の耕作放棄地は3219ヘクタール(2008年度)。高齢化や後継者不足から増加傾向にあるという。

 そんな中、さいたま市のNPO法人「けやきファーム」(塩浦綾子理事長)は、知的障害者の就労の場として、耕作放棄地の利用を計画している。塩浦理事長が会長を務める関東自動車(本社・同市浦和区)は30年以上、養護学校のバス送迎に携わってきた。「自分が稼げなくなったらどうしよう」と生徒の将来を不安がる親の声もあり、07年、同法人を立ち上げた。

 経済的に自立できる環境として耕作放棄地に着目。心身に好影響があるとされる園芸療法の効果も狙っている。

 08年、滑川町福田に約7千平方メートルの農地を確保。1年がかりで整備し、昨年3月にはブドウなど200本以上を植樹した。事務局長の塩浦一穂さん(50)は「農業の素人なので、収穫物だけでは商品として太刀打ちできない」。収穫物をジャムやジュースに加工して販売する考えだ。

 加工作業所やグループホームとして、現在は使われていない同市桜区の同社の寮を改装する案もある。職場と住居を確保し、障害者の自立を側面支援できるというわけだ。将来は作業所の近くにも畑を確保し、大豆や小麦などを作りたいという。

 ブドウを収穫できるのは2、3年後。現在はボランティアが協力して作業しており、運営が安定してから障害者を受け入れる予定。塩浦さんは「できることから一歩ずつ。みんなが安心して生きていける社会を作りたい」と話している。

2010.2.15キャリアブレイン
「障がい者総合福祉法」の議論スタート―改革推進会議
 
 内閣府は2月15日、「障がい者制度改革推進会議」の第3回会合を開き、障害者自立支援法に代わる「障がい者総合福祉法」(仮称)の在り方などについて議論した。
 
 会議ではまず、「障害者が地域で生活する権利」がテーマとなった。委員からは、障害者権利条約での自立した生活および地域社会に受け入れられることとの規定を受け、「総合福祉法」で明文化すべきとの意見が続出した。
 障害者にとっての「自立」の概念については、障害者団体などでは「自己決定」とイコールという共通理解があるとされた。その上で、北野誠一委員(おおさか地域生活支援ネットワーク理事長)は、「仲間や支援者の支援などを活用して、自分で選んだ当たり前の市民生活を生きること」とする定義を示した。
 また、障害者の定義については、社会モデルやICF(国際生活機能分類)に基づいて考えるべきとの意見が多く示された一方で、新谷友良委員(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会常務理事)からは、「社会モデル的な障害というのは誰が判断するのか。個別分野で慎重な議論が必要ではないか」などと疑問が投げ掛けられた。佐藤久夫委員(日本社会事業大教授)は「総合福祉法」の対象について、障害者の法律とうたうのであれば、「機能障害か疾患症状があるということを確認した上でサービスの提供対象にする、という手続きが必要ではないか」と述べるなどさまざまな論点が示され、今後継続して議論をしていくことが確認された。
 
 このほか、新谷委員は同推進会議での議論とは別に、国土交通省で交通体系における議論が別個に行われている例を示し、同会議とは無関係に障害者関連の施策を進めている状況を訴えた。
 これに対し福島瑞穂消費者・少子化担当相は、「うまく(推進会議の)意見が反映できるように、どういうチャンネルでやったら良いのかも含め、各省庁と検討させてほしい」と述べた。
 
■専門部会で「総合福祉法」を議論
 同会議では、夏ごろまでに項目ごとに議論を行う専門部会を設置するとしていたが、東俊裕室長はこれに先行して「総合福祉法」に関する部会を3月にも設置することを提案し、了承された。
 
更新:2010/02/15 22:00   キャリアブレイン

2010.2.12キャリアブレイン

2010年度診療報酬改定のポイント(1

 2010年度診療報酬改定は、中央社会保険医療協議会(中医協)が212日に長妻昭厚生労働相に答申し、方向性が固まった。これまでに分かっている主な改定の内容と点数を整理した。

初・再診料
 再診料については、診療所(71点)を2点引き下げる一方、病院(60点)を9点引き上げ、69点で統一する。また、再診料に対する「外来管理加算」(52点)は、2008年度の診療報酬改定で導入された「5分要件」を廃止し、診療時間が短くても算定できるようにする。代わりに、薬の処方をメーンにしたいわゆるお薬外来をなくすための要件を加える。

 一方で、標榜している診療時間以外に患者からの電話の問い合わせに対応し、必要に応じて診察したり、専門医を紹介したりする診療所には、「地域医療貢献加算」(3点)の再診料への上乗せを認める。
 また、レセプト並みの明細書を無料発行している診療所には、「明細書発行体制等加算」として再診料ごとに1点の算定を認める。
 これら2つの加算を新設するのに伴い、地域医療に貢献したり、明細書を発行したりすれば再診料の引き下げ分を上回る最大4点を上乗せできることになる。厚労省では、地域医療貢献加算を算定できるのは全診療所の3割程度と見込んでいる。

 中医協による議論では、再診料の統一と外来管理加算の「5分要件」の取り扱いをめぐり、診療側と支払側が激しく対立。特に診療側の安達秀樹委員(京都府医師会副会長)は、「個人診療所の71点(の維持)は増点でも何でもない」などと抗議し、診療所を引き下げる形での統一に最後まで反対した。
 決着は中立の公益側による裁定に持ち込まれ、210日の総会で診療所を2点引き下げる公益案が示されると、安達委員は「許容することは到底できない」と抗議し、いったん退席した。

 中医協が改定案と共に長妻厚労相に提出した附帯意見では、再診料を含む基本診療料に対する影響を検証し、その結果を今後の報酬改定に反映する方向性が盛り込まれた。

入院料(一般病棟など)
 一般病棟の151入院基本料(1日につき954点)は934点に下げる一方で、一般病棟での入院早期の加算を、現在の428点から450点(14日まで)に引き上げる。08年度に新設された準71入院基本料は廃止する。

 また、一般病棟や結核、精神病棟のうち「71」と「101」の看護配置を敷いている病棟で、「72時間ルール」だけを満たせない場合に算定できる「71」「101」特別入院基本料を新設。所定の入院基本料の80%の算定を3か月間だけ認める。ただし、▽算定期間中も引き続き看護師の確保に努力し、その旨を地方厚生局などに届ける▽最後に算定してから1年以内は、この基本料を算定できないなどの条件付き。

 このほか、現在は71入院基本料に導入している入院患者の「看護必要度・重症度」の概念を101入院基本料にも拡大する。71入院基本料で実施している「一般病棟用の重症度・看護必要度」の評価票で全入院患者の状態を継続的に測定・評価している場合に、「一般病棟看護必要度評価加算」として1日につき5点の算定を認める。
 一般病棟のほか、特定機能病院や専門病院の101入院基本料についても同じ取り扱いにする。

 「後期高齢者特定入院基本料」は、名称から「後期高齢者」を削除。75歳以上に限定している対象年齢の要件を廃止する。現在の仕組みでは、75歳以上の患者が90日を超えて入院する場合は、後期高齢者特定入院基本料として通常よりも低い928点を算定、検査や処置などに対する診療報酬もこの中に包括される。
 ただし、「人工呼吸器を装着している」など12通りの「特定除外項目」のどれかに該当する患者は減額対象にならず、通常の出来高の入院基本料を算定する。
 これに対して来年度の報酬改定では、90日を超えた入院に対する減額措置の対象を全年齢に拡大する。ただ、新たに対象となる患者については、「退院支援状況報告書」を地方厚生局などに毎月提出すれば、90日を超えても従来の出来高算定を認める。

入院料(精神、療養病棟)